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正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 第6話 C 3/3


―――…

 「ふぇ…これはひどい…」
 『お前は…!』
 屋上へと足を踏み入れたトエル。そこに有ったモノは、酷く損傷し、もはや原型をとどめていない人だった肉塊と、
一体の黒龍。以前トエルが見た幻の黒龍よりも二回り近く大きな、黒い霧を体中から吹き出す龍の異形。
綺麗なガラス細工のような龍のその瞳。トエルはその瞳に見覚えがあった。
 「ふぇ…あなたはまさか、かりん?…ずいぶんおっきくなったね!」
 火燐。あの、龍神族の彼女がまさかこんな大きな龍になるのにはトエルも驚いたが、だからと言ってトエルが恐れることはない。
 人を殺した異形は等く駆除すべし。トエルの核たる行動理念である。人を殺さなくても危険と判断すれば殺す。
人に害となるならば殺す。人間の為、国の為に動き、人々が平和に暮らせる未来の実現を原動力にする。トエルはそんな機械であった。
 『お前…タケゾーとカナミはどうした…?』
 「ふえぇ…わたしもそうするつもりはなかったけど、いぎょーセンサーがはんのうしちゃってその…しにました、ふぇふぇ」
 タケゾー達を殺したのは、異形センサーが反応してしまったから。しかし、タケゾー達は人を殺している。
さらにトエルの護衛する人物を殺そうとしていたのだ、これは当然の結果と言ってもおかしくはないのかもしれない。
そもそも殺さない理由が見つからないくらいだ。異形で、人を殺している。トエルにとっては疑う余地もないくらいの、
悪。たとえ元々人であり、彼女の友であったとしても…あの状況では"殺傷相当"であったのだ。トエルはそれに従っただけ。
 異形でなくとも、悪行を罰するのは当たり前のことなのだ。罰せられるべき罪なのだ。
 しかし今、この国にそれを罰するものはいない。…ならば我らがやるしか無い。法と秩序の元に…
それが、再生機関という組織の根本の総意なのである。平和と秩序を乱す異形達のことは絶対に許さない。
 『き…き…貴様アァッァァァアッァァアァアアアアアアッッ!!!」
 「ふぇ!しかしながらこれほどのにんげんをあやめたいぎょーをのばなしにするわけにはいきませんし!」
 刑罰の執行者に、個人的な感情は邪魔である…そういった点で、機械であるトエルは都合がいいのかもしれない。

 「だい12えいゆートエル!こうせいなるちつじょのもとに、おまえをとーばつします!」
 『"ジャンクション""デスサイズ"』

 大身の鎌がトエルの頭上に現れる。そしてそれをトエルは難なく手にとり、三回転振り回した後、刃を黒龍に向けた。

 『みんな死んでしまえばいい!!トエル!お前もな!!』

 火燐の悲痛な叫び。世界に絶望した彼女の怒りが目の前のトエルの小さな体にぶつけられる。
黒く、鞭のようにしなる火燐の尻尾が上空から振り下ろされ、トエルを襲った。
 「ふぇふぇ」
 『"ガード""デスサイズ"』
 電子音が鳴り響く。大鎌の前に展開される防護壁が火燐の巨大な尻尾を受け止めた。ものすごい重圧。
トエルの周りの床がひび割れ、一秒ごとにどんどん亀裂が広がっていく。このままでは押しつぶされてしまうと
トエルはしっぽを受け流し、攻勢に出た。
 「ふぇい!」
 『ぐぅッ!』
 火燐の巨体の側面にまわりこんだトエルは、その横っ腹を鎌で斬りつける。…苦痛に顔を歪める火燐だったが、
体には全く傷が付いていない。ダメージは微々たるものだろう。火燐はトエルを遠ざけたいのか黒光りさせる鋭い爪
の生えた腕をがむしゃらに振り回す。トエルはホバリングでスイスイと後退し、それを回避する。
 「ふえぇ…ぼうぎょりょくたかすぎ!」
 まるで鋼のような皮膚。あれほど硬いとなると、致命傷を与えるのはかなり困難だ。
 トエルはじっと巨竜、火燐の体全体見澄ます。弱点は…そう簡単には見つからない。
 冷たい風が吹く。両者は互いに睨みを利かせ、相手の出方を見る。風にそよぐトエルの金髪が止まった時、
それを合図に一機と一体は宙へと舞う。
 「ふえーい!」
 『ぎゃぁぁあす!!』
 すれ違い様に斬りかかり、刃を交える。虚空の空にガキンと、とんでもなく大きな知恵の輪が抜けずに
引っかかった様な音が一帯に甲走る。体積の差でトエルは力負けし、ビルの屋上へとたたきつけられた。

 「ふえぇ…いまのはいたかった…いたかったぞーーー!!」
 『損傷率0.8%.動作に支障なし。目標の駆逐を続行します』
 しかし、叩きつけられた程度で壊れるほどやわな装甲じゃない。トエルはまだまだ余裕綽々。
 『"ジャンクション""ソード"』
 武器を変更するトエル。大鎌は光りに包まれ、第六英雄・北条院の武器、大剣へと姿を変える。
 調子を確かめるように大剣を一振り。トエルの華奢な体には少しアンバランスな気がしないでもないが、幼女に
大型武器というのはギャップ萌えの黄金比というヤツで。
 「ふぇ!かくご!」
 『"エナジー""ソード"』
 光が大剣に集まる。対峙する火燐に向け、眩く輝く大きな刃を振り落とす。剣先から漏れ出した光が斬撃となって
火燐に襲いかかった。その巨体故、火燐は俊敏な動きができない上、この特大サイズ。攻撃を当てるのは簡単な事。
 『ギャアアアアアアアアッ!!』
 斬撃は難なく命中。被爆箇所が煙を上げる。正直なところ、この程度では致命傷ではなさそうだ。
 火燐はすぐに反撃にうって出る。重い足をどしどしと動かし、圧倒的なビジュアルの下、今度はその大きな口を開き
トエルを噛み砕こうと接近する。危機を察知し、トエルは"ハイジャンプ"で空高く飛び上がる。
トエルの立っていた場所は火燐の大口によってえぐり取られ、床がだいぶ削れた。

 一進一退の攻防が続く中、トエルの頭の中を、再びあの声が支配する。

―もうやめてよこんな事!何の解決にもならないよ!―

 (ふぇ!このいぎょーをほうっておくというのはきけんです。いますぐやっつけなきゃ)

―…彼女は貴方の友達でしょう…?―

 (ともだちであろうとなかろうと、ひとをころしたいぎょーにちがいはありませんし)

―あなたは…それでいいの?友達を傷つけて…なんとも思わないの…?―

 (そういうふうに、つくられていますから)

―嘘。ホントはこんな事したくないって、思ってるはずだよ?そうじゃなきゃ、おかしいよ―

 (きかいにいしなどありません…わたしは…!?)

 トエルの視界がぐるりと逆さになる。火燐の尻尾で転ばされたようだ。思わず尻餅をつくトエル。それが命取りとなった。
 『シネエェェェェェェッッ!!!』
 「…ッッ!!」
 トエルの全身を、火燐の腕が圧し潰す。想像を絶する圧力をトエルはモロに受けた。
 『破損率63%.戦闘続行困難。メインCPUをシャットダウンしサブCPUのオート稼働に移行します』

*******


 「…ふぇ?」
 そこは白い空間だった。物というものが一切排除された無の空間。空気さえもあるかどうか分からない、
限りなく広がるまっさらな白。どういう訳か、トエルはそんなところに立っていた。
 「…やっと、面と向かって話ができたね」
 「!?…だれですか?ふぇふぇ?」
 目の前に経つ、黒い癖毛の少女。背はトエルと同じくらい。
 「私はあなた。あなたの中に居る"私"だよ」
 「…にほんごでおk」
 「もう…私はあなたの中に入ってる精神だよ?」
 「ふぇ!?あー…いつもおせわになってます。ふぇ」
 トエルは丁寧にお辞儀をした。トエルが人間のように振る舞えるのは、彼女…精神のおかげ。感情をデータ化し、
引用することでトエルはさまざまな表情を見せることができる。…言ってしまえば、トエルは彼女の感情を
使っているに過ぎない。いつも見せている笑顔はトエル自身のものではないのだ。
 「そんで、なんのようです?いまなんかすごーくやばいじょうきょうなんですけど」
 「…あなたの、あなた自身の気持ちを知りたいの」
 「…?」
 「そう、貴方の本当の気持ち。火燐ちゃん…あの子、本当に殺しちゃっていいの?」
 「しつこいですね。わたしのこたえはかわらないですし」
 「それはあなたの答えじゃない…プログラムが導き出した答えでしょ?そうじゃなくって…あなた自身が考え
あなた自身の言葉で伝える答えが知りたいの」
 「ふぇ…?」
 (わたしじしんの…こたえ…)
 「わたしは…わたしは、いぎょーでも、かりんは…なかよくできるとおもいました」
 「そうだね…初めて彼女と会った時…私がやめてって言ったの…ちゃんと聞いてくれたね」
 「やっぱりあのときのこえもおまえか!ふぇふぇ!」
 「だって、あなたならなかよく出来ると思ったの…だから」
 「…ありがとう」
 「へ?」
 「あなたのおかげでわたしはすこしのあいだですがともだちというものをもつことができました」
 「そんな…私はちょっとだけ貴方の背中をおしただけだよ…」
 「ともだちは、すてきなものだとわたしはしりました。ですが、やっぱりかりんはころします」
 「!?」
 「かりんはひとをたくさんころしたいぎょーです。ゆるすことはできませんし」
 「殺さなくても…生きて罪を償う事だってできるでしょ!?何が貴方をそんなに…」
 「わたしは…ひとびとをまもるためにつくられたえいゆーですし。かりんをほうっておけば、またたくさんのひとが…
しにます。ひとりでもおおくのひとをまもるのがえいゆーだから、ひとびとにきけんがおよばないようにするのが
えいゆーだから。…わたしはかりんをころします」
 「…答えは変わらないんだね?」
 「ふぇ」

 「じゃあ…最後に聞かせて。彼女は…火燐ちゃんは、今でも貴方の友達ですか?」
 「…もちろん!かりんもタケゾーもカナミもほむらも、みーんなともだち!」
 「…そう…よかった…」

 …悲しい…残酷だ…

 あなたはちゃんと"異形"じゃなくて"友達"と認識して、火燐ちゃんを殺すんだ…

 あなたは、それ以外の選択肢を選ぶことができないんだね…そう、"作られている"から…

 機械だから、友達のために泣くこともできない…そんなのって、酷すぎるよ…辛すぎるよ…

 「じゃあ、わたしはいきます。かりんをとめないといけませんし」
 「うん…私…ずっとあなたのこと見てるから…!どんな時だって絶対…あなたの苦しみは…私も共有する…!」

 あなた一人に、苦しい思いはさせないから…!


********


 『トエル…流石にもう生きてはいないだろう…』
 「ふえ…ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 『!?』
 トエルを押しつぶした筈の右腕が何かに押し上げられる。トエルは確実に潰したはずだ、
にもかかわらず再び立ち上がるのは一体どうして?
 「またせたな…showtimeのはじまりだ!!」
 火燐の足を押し退け、再び姿を表したトエル。その体はボロボロで…
 『お前…顔が…』
 顔には亀裂が入って、僅かに中身が見えていた。
 『そうか…お前…人間じゃないのか…』

――……・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 「火燐…」
 「どうした?焔…?」
 「さっき私…トエルちゃんの手…握ったでしょ…?」
 「?…うん」
 「あの子の手ね…とっても、冷たかったの…」
 「…ただの低体温じゃないのか?」
 「違う…そういうのじゃない…心の芯まで冷たいような…おかしいよね、トエルちゃんはあんなにいい子なのに…」
 「…?」

  •  ・ ・ ・ ・ ・・・・・・……――

 『あの時の焔の反応は…そういうことだったのか…お前は…』
 「ちょっとダメージうけたけど…これくらいのハンデがちょうどいいですし」
 トエルはボロボロであるにも関わらず、強がってみせる。足はふらついているし、体中ヒビだらけ。
満身創痍であるのは火を見るより明らかだった。
 『もう…やめろ…何がお前をそこまで動かすんだよ!』
 「ほうが…ちつじょが…こじんの、みがってなちからにくっしちゃいけない…」

 「ちつじょがくっしては、『平和』なんてえいえんにやってきませんし!!」

 「えいゆーとは、それらをまもるためにあるのです。だからわたしはまけられません、とくにわるいいぎょーには!!」
 『トエル…!』
 「さあ、おわりにしましょう!」


 救いの無い贖いの戦いを!!


 (なんていったけど…しょうじきもう、げんかいですし)
 トエルの体は、次の一撃を繰り出すのがやっとの状態だった。一度の攻撃で勝負を決めなくてはならない。
 「それでも、やるしかない!ふぇ!」
 『"オーラ""ソード"』
 大剣が光り輝き、虹色の膜が剣先を覆う。トエルの精一杯、ありったけのエネルギーを剣に込める。
 「いきます!」
 思いっきり地を蹴り、特攻するトエル。一歩進む度に体の破片がこぼれ落ちた。
 『そんな体で…何が出来る!!』
 「ふぇい!まもるものがあるときのえいゆうのつよさにはなぁ、じょうげんがないものなんだよぉ!ふぇ!ふぇ!」
 『なにを!』
 火燐はトエルの体をその爪で貫こうと左腕を突き出す。だが当たらず、ならばと今度は右腕!
 「ふぇーい!」
 『!?』
 体をくるりと一回転させて、掠りつつもぎりぎり回避するトエル。火燐との距離はそう無い。トエルは大剣を振り上げ
渾身の力を一撃にかける。
 「これで…おわりだぁ!!!!」
 振り下ろされた大剣。そこから放出される虹色の光柱。
 『ぐあぁぁっぁぁぁっぁああああああ!!!!』
 火燐の体が虹色の光りに包まれた。みるみる姿が消失していく。
 「く…!」
 大剣を振った時、トエルの片腕が大破した。握っていた大剣があさっての方向へ飛んでいく。

 「おわり…ましたね…」

―――…

 「ふぅ…大体片付いたな…全く、…」
 「青島先輩、あれ」
 「ん…?」
 裳杖と青島は見る。ビルの屋上に輝く虹色の光を。

―――…

 「…あれは…くく、そうか…」
 武藤は何かを悟ったように呟いた。その光は、戦いの終わりを告げるものであった。

―――…

 「わたしは…わたしは…!」
 ―人間を殺した人殺し!
 逃れられない罪の意識に、永遠に苦しみ続けろ…!
 殺人鬼め…!―
 「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
 陰伊の目にそれは映らない。終わることの無い罪が、彼女の心を蝕む。

―――…

 「冴島さん…」
 「一体…何が…?」
 光の柱は、天まで昇る勢いだった。屍が散らかる酷い街の中、こんなにも綺麗な光景を見れるとは、白石も思っていなかった。

―――…

 「くっ二人がかりなんて卑怯だぞおらぁ!」
 「卑怯もらっきょも大好きだぜ…ん?」
 オールバケーションの後方、ビルの屋上で 強い光が空へと伸びる。
 「あれは…!?」
 ふと、オールバケーションの視界に入る黒い小さな塊。よく見るとそれは人の形をした何かであった。
 「まずい!キング!鳥人モード!」
 「イエス。マスター」
 筋肉隆々のペンギンは、ふんっと力んだ。何をしたのかと思えば、その背中には大きな羽が生えていた。
 「キモ!!」
 炎堂の率直な感想であった。
 「いくわよキング!!」
 オールバケーションはペンギンの足をつかみ、空へと舞い上がる。それを黙ってみている炎堂ではない。
逃すまいとブーストユニットで飛び上がろうとするが…
 「逃がすか!」
 「いえ、逃げさせてもらいますわ。"解"!」
 「!?」
 炎堂の足元が赤く発光する。光の線が6つの点を結び、炎堂囲う。点の場所にはいつ置いたのか、複雑な術式が
書かれた札があった。
 「結界術よ…瞬間韋駄天丸を使った時にこっそり配置させてもらったわ。しばらくは動けないからねぇ~」
 「あっ!くそまちやがれ…!ああ!足が地面から離れねぇ!!」

―――…

 「わたしは…どうなったのだろうか…」
 (…負けたんだ。そうか…はは…)
 火燐は、ビルの屋上から吹き飛ばされ、宙を漂っていた。じきに体は降下し、地に落ちるだろう。
 火燐にはどうすることもできなかった。体に力が入らないのだ。
 「でも…もうどうでもいいや…」
 意識が遠のく。自分はもう死ぬ。そんな事、もはや火燐にとっては些細なことでしかなかった。
 諸有事が火燐にとってはどうでもいい事だった。少女はそっと、瞼を閉じる。憎しみも悲しみも苦しみも全部忘れ、
この肉体という器から開放されよう。力なくそう呟いた火燐が目を閉じる間際に見たものは、ペンギンのようなマッチョだった…

―かくして幕を引いた喜劇は、誰も救われることがなかった。

―――…

 「気が付いたかしらん?」
 少女は二度と開くことはないと思っていた目を開ける。そこは街中ではなく、何処かの見慣れぬ山道だった。
 「お前は…」
 「春夏秋冬 志希(ひととせ しき)またの名を、オールバケーション!!あなたの命の恩人よ~!」
 少女、火燐は朦朧とする意識が徐々にハッキリとするにつれ、自分がこの人物に運ばれた事を理解した。
 「…余計なことをしてくれた。私は…もう、生きていても仕方がない。全てを失った」
 「辛気臭いわねぇ~…命が助かったんだから、いいじゃないのよ」
 「いいもんか…私は、もう、何のために生きればいいのか、分からない…憎むべき森は死んだ…後はタケゾー達の
仇をとるしか…」
 「復讐なんてやめなさい。そんなもの、己の憎しみを晴らすためだけのくだらない行為。
残された人間の自己満足でしか無いわ。それより…あなた、夢はないの?」
 「夢…?」

―親しき友として笑い合える、そんな人と妖の明日―

 「…所詮は、一時の夢物語だった」
 「いいじゃない。今は夢物語でも…」
 「うるさい。お前に何がわかるんだ」
 「何もわからないわ。だからこれから少しづつ教えてくれないかしら?」
 「…?」

 「…あなた、私の妹になりなさい」

 凛とした顔で言うオールバケーション、もとい春夏秋冬志希。火燐は言葉の真意の理解に困った。
 「…はぁ?」
 「そして私のことはお姉さまと呼びなさい」
 「…お前、馬鹿か?」
 「むきー!馬鹿じゃないけん!天才だぜよ!…と、ともかく、しばらく宛がないならその命、救った私に預けなさい」
 「なんで?」

 「…このまま野垂れ死んだら、あなたを産んでくれたお母さんはどう思う?」

 「…!」
 (おかあさん…私は…)
 「生きる意味が無ければ、これから見つけなさい。生きていれば、できることもあるでしょう?」
 「…う…」
 「んん~?」
 「~~ッ!わかったよ…このまま死んだら…焔に合わせる顔がない…」
 「よーし!じゃあ私のことをお姉さまと…」
 「そ れ は こ と わ る !」

 そんなこんなで一命を取り留めた火燐は、おかしな人物に拾われてしまったようで…

 (うひひ…美少女異形っ子ゲットだぜ!)

 …本当に、おかしな人物に拾われてしまったようで…

―――…

 「酷い…」
 戦いが終わり、街中を見回る白石と冴島。陰伊の行方が分からないということで、彼女を探すこととなったのだが…
街の惨状に、白石は思わず目を覆いたくなってしまった。
 「目を背けない。これが現実です」
 「冴島さん…」
 冴島は、しっかりとその光景を目に焼き付ける。二度とこんな悲劇を起こさないためにも…
 「冴島さん…森喜久雄は死んだんだべさ?」
 「ええ…」
 「じゃあ…これは何のための戦いだったのかなぁ…っておもいます」
 「そうね…」
 「何で、争いが起きてしまうんだろうって…」
 「それはね…」

 「争いは、皆が皆優しいから、起きるのよ」

 「え…?」
 「何か譲れないものがある時、誰かを守りたいとき、争いは起きるの。そんな人が沢山居たから、
これほどまで大きな戦いに発展したのよ。戦争なんてものはね、何かを守りたいと思う人間がいなかったら起こらないのよ?知ってた?」
 「…愛する家族のため…自分の育った国を守るため…人は戦うんですね」
 「そう。そしてそれらが集まって集まって集まった末に起こるのが戦争よ…この街で起きたことも多分…
そんな優しい人達が起こした、自分達の大切なものを守るための戦いだったのでしょうね」
 「…悲しいですね」
 「人が死んで悲しいのは当たり前です。現実は物語のようにドラマチックには出来ていません。
血生臭い現実に涙するより、一刻も早い秩序の開拓が必要なのよ、私達英雄には」
 「そうですね…殺し合いで争わなくて済む…そんな世界に…早くしなくちゃいけないですよね」

 優しさが生んだこの惨劇、誰も望まぬ惨劇は、誰が為の者なのか?

 誰のためでも無い。誰も、その優しさを憎む事などできはしない。

 これは優しい人達の、悲しいお話。




―次回予告
青島「事件は会議室で起きてんじゃないんだ!現場で起きてんだ!!」
裳杖「懐かしいですね」
青島「そうかぁ?最近は時が経つのが早く感じて困るぜ…」
裳杖「PCの性能なんて一年も経てばゴミみたいな扱い受けますからね」
青島「二年前20万で買ったPCが今じゃ5万もあれば組めるスペックになっちゃうもんなー、時の流れって怖いぜ」
裳杖「人は年をとればとるほど、体感時間が短くなるって話ですよ」
青島「そーなのか」
裳杖「60代なんてあれですよ。レーシングカーですよ」
青島「何が?」
裳杖「速さが」
青島「100歳とかならどうなるんだよ」
裳杖「もうなんて言うか、あれです。光る風を追い越す勢いです」
青島「ハピマテかて」
裳杖「ハイパークロックアップ!」
青島「時戻ってんじゃね?それ」
裳杖「良いツッコミっすね」
青島「あ?うん、ありがとう…」

次回、正義の定義~番外編~
「異形の花屋さん/AnotherWorld」
乞うご期待!

青島「…あれ、俺らあんま次回予告してなくね?」


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