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大は小を兼ねる 中篇

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大は小を兼ねる 中篇




「じゃっくん、お坊さん拾ったよ」
「捨ててきなさい」
「いや、待て」

小さな少年が高熱にうなされる坊主を運んでくるの図。
駆け寄ったのは豆蔵である。
近づいて顔色を見やればはっきり分かる。

「……こいつも会ったな、ミサキに」
「ミサキ?」
「おい、話してもらうぞ、俺の熱について」

意識を失っている坊主を横に寝かせて。
じゃっくん、瓜坊、そして豆蔵が座す。

年端も行かぬ少年二人と鬼。
なかなかに誤解を招く取り合わせであった。

「まずは自己紹介だ。俺は豆蔵という。一応、人間だ」
「俺は天邪鬼」
「僕はじゃっくんと呼んでいます」
「どうとでも呼べばいいさ」
「僕はもともと名前の概念がありませんので、ある薬師の方に毘羯羅という名をいただいたんですよ」
「俺は瓜坊と呼んでいる」

瓜坊。
猪の赤ちゃんをこう呼んだはずだ。
今の姿こそ良家のお坊ちゃんと言われて頷ける涼やかな少年。

「……」
「何か?」

しかし先程の廃屋を越す巨大な猪の正体を思い返して豆蔵は納得いかなげに毘羯羅をしげしげと見つめた。

「いや、なんでもない。それよりもミサキだ」
「女性の名……ですよね」
「そう、言ってみれば生物兵器だな」
「はぁ?」

ミサキが女性であるのは分かる。
そして女性は生物だろう。
さて、兵器とはまた突拍子もなく、また物騒だ。

「ヴァンパイアウィルスは知ってるか?」

そしてさらに、豆蔵の発言は飛ぶのだ。
天邪鬼も毘羯羅も小首をかしげるしかない。

「吸血鬼が眷属を増やすための?」
「そうだ」
「おい、それとどう話がつながるんだ」

異形。
その中において吸血種も存在は多数確認されている。
そして、伝承における眷族の増やし方。
すなわち「血を吸われた者も吸血鬼になる」という話の裏づけ。

そこにヴァンパイアウィルスなる存在を豆蔵は聞いている。
これは、豆蔵の作り主の勝手な呼称かもしれないし、正式名称かもしれない。
しかし、伝説や恐怖譚の内に留まらずはっきりと存在するものだ。

とどのつまりは吸血種の体内に存在するウィルスが対象に転写される事により、
その吸血種と同じ遺伝情報で肉体が作り変えられるというもの。

むろん、吸血種の全部が全部このウィルスを保持しているというわけではない。

しかし存在するヴァンパイアウィルスの中には、
ウィルスを保持する吸血種が感染対象の精神を支配してしまうタイプさえあった。

このタイプとミサキは深く関わる。

「それを改良して……いや、何か偶発的に保持できるような研究の糸口を掴んだ馬鹿がいてな。それでできたのがあのミサキという生物兵器だ」
「……」
「……」
「もう詳しく話す」
「そのヴァンパイアウィルスと俺の熱がどう関係する」
「お前は今、品種改造されたヴァンパイアウィルスに蝕まれている」
「何?」
「じゃあ、放っておくとじゃっくんも吸血種になるんでしょうか?」
「いや、ならない。高熱でまず死ぬ。まぁ、死ぬと言うのは正確ではなくてな。もっと正しく言うと乗っ取られるんだよ。死体がミサキの支配下に置かれると考えて問題ないし分かりやすい」
「おい、俺はその女に触れてもないぞ?」
「出会っただけでもう感染しちまうのさ。まぁ、誰を感染させるかはミサキが選べるらしいがな」
「駒の選別ができるわけか」
「そうだ」
「駒に代用が利くのは厄介だな」
「まさしく。お前が壊れても、また別の人間なり異形なりに改造ヴァンパイアウィルスを感染させ、殺し、支配下に置けるんだ」
「支配下に置いて……異形を殺し、異形を殲滅する兵器……という事でしょうか?」

毘羯羅と天邪鬼の表情に硬度が増していく。
一方で豆蔵は苦い顔になっていく。
あんまり思い出したくない事を思い出して喋っているからだ。
むかつく作り主の話。
この世のアホの結晶なのに天才的な英知を持ち合わせた男。

「作り主が生きていた時はとりあえずそんな感じで機能してたんだがな、死んでからは暴走の一途だ。人間にもウィルスを感染させている」
「だから止めようとしているのですね」
「そうだ」
「俺はあとどれくらい持つ?」
「その様子ならまだ一週間は大丈夫だろうが、すぐ治せるから安心しろ」
「どうすればいい?」
「運動」
「……」
「……」
「まぁ聞け」

胡散臭がられた。
まぁ、当然と言えば当然だ。


「いいか、ウィルスにかかった者は魔素を強制的に増やされる」
「それで体調が崩れるのか?」
「そうだ。高熱が出るのは無理な魔素の生産のせいだ。で、ウィルスが魔素を作るためには、そもそも魔素が一定量体内に存在してなきゃならん」
「つまり、魔素をがんがん使っちゃえばいいんですね」
「その通りだ。寝込んで体を休めてるのはこの場合逆効果なんだよ。お前、魔法は使えるか?」
「少しだけなら」
「よし、ならどんどん魔法使って魔素出し切れ。そしたら格段に治りが速くなる」
「いまさらだけど、看病してた僕には感染しないのでしょうか?」
「しねぇ。普通のウィルスは、体内でどんどん増えていくんだがな、この改造されたヴァンパイアウィルスは増殖しねぇんだ。だから増殖して他人に感染するって話にゃならねぇん」
「ミサキから感染させられたウィルス分だけ死滅させりゃいいってわけか」
「そうだ。魔素を生産する事で生き続けるウィルスだから、魔素が空っぽにならすぐに死んでいく。調子に乗って魔法使ってみろ」

それならば試してみようか。
とばかりに天邪鬼が意識を集中させる横。
毘羯羅は難しい面持ちだ。

「これで感染が拡大していくタイプだったら、とんでもない生物兵器でしたね」
「ミサキ一人に対して、その支配下に置けるのは七人までと決まってるんだ」
「七人?」
「そう、それが操れる容量の限界らしい。魔素を増やして殺して、魔素が凝った死体は生前よりも強く機能する。外道な兵器さ」
「ミサキ本人も強いのですか?」
「ヴァンパイアクラスにしたい……ってのが作り主の希望だったらしいが、そこまでは無理だったみたいだ。まぁ、異形とバチバチやりあえる程度には強いがな」

ぼ、と毘羯羅の隣で火が上がる。
焚き火ではなく、天邪鬼の魔法によるものだ。

「いつもよりも楽に魔法が使えるな」
「結構寝込んでいたんだろう? なら随分な魔素が蓄積されてるはずだ」
「……ミサキさんを止める方法はないのでしょうか?」
「殺すしかないな」
「……そう、ですか」

殺さずに止めるが最上。
そう言わんとする毘羯羅の心情は豆蔵にも分かる。

「同情の余地はねぇ。作り主が死ぬ前からそもそも手綱握れなかった事がしばしばあった」
「……その、作り主という方はどのような方だったのでしょう」
「御伽 草子郎という名……多分偽名だろうが。一言で言えばマッドサイエンティストって所か。生粋のアホのくせに天才って生まれてこなければ良かった類の人間だ」
「御伽ですって!?」

思わず毘羯羅が立ち上がる。

「知ってるのか?」
「お名前は、桃太郎という方からうかがっています! では、先程豆蔵さんが青年にまでなったのも……魔法ではなく人体改造で!?」
「なにぃ!? お前、桃太郎さんを知ってるのか!」
「やっぱり豆蔵さんもご存知でしたか!」
「御伽 草子郎に改造された中じゃ初期組なんだよ! 憧れの人だよ! 強く優しく義に厚く、清廉潔白、品行方正、正しい者の味方をしてどんな悪にも屈さず戦う武人だって聞いてる!」
「……う~ん」

あんまりそんな感じじゃない。
毘羯羅の知ってる桃太郎は悪戯好きな飄々とした男だ。
違う桃太郎さんだろうか?

「あの、桃太郎という名で他にも改造された方っています?」
「いや、一人だけだぜ」
「そうですか……」

どうやら同一人物らしい。
多分間違った情報を豆蔵は得ているのだろう。
仲間の一騎など、ロリコンとずっとなじられてるし、豆蔵の言う人物像は当てはまるまい。

「お前、桃太郎さんをどこで知ったんだよ」
「京の近くのある村の防衛を助けていただきました」
「……本当に人間よりな異形なんだな」
「争うより仲良くした方がいいでしょう」
「もっともだ」

毘羯羅の隣で今度は天邪鬼が氷を現す。
それをうなされている坊主の額に乗っけ、皮肉げに笑った。

「甘い話だ」
「じゃっくん」
「いや、実際は天邪鬼の言うとおりだぜ。山小屋にちょっとこもったけで恐がられる」
「ここまで国が荒れてしまえばな」
「荒らしたのは僕やじゃっくんじゃないのにね」
「……もはやそういう問題ではないな、瓜坊」
「じゃあどういう問題なのさ」
「違う種族が同じ国に混ざっている、という問題だ」
「種族?」
「人間は俺たちを異形と一つにくくるだろう。俺と毘羯羅で比べても違うもんだが、まぁ、それはいい。異形とひとくくりにして考える。問題は人間と異形が同じ国でやっていけるかどうかだ」
「異形が人を食べちゃうかも、って事?」
「違うな。そんな原始的な話ではない。人間は異形に抗せる。俺を恐がるとか恐がらないとかの問題の向こう側さ」

毘羯羅が小首をかしげる横。
豆蔵の表情は険しい。
なんとなく、天邪鬼の言いたい事が分かる。
しかしまだなんとなくだ。
掴みきれていない。
だから豆蔵は搾り出すようにこれだけ言った。

「土地……か?」

天邪鬼が頷く。

「物理的な話をすればそうだ。大枠で言えば国だな」
「なんとなくお前の言いたい事が分かってきた気がする。つまり50年先を見据えた話だな?」
「そうだ。人間の自治体一つ一つは小さな国。異形も異形で、集団を作っている者たちが多々いる。これも国。これから時間と共に数は減って、一つ一つが大きくなっていく」
「自治体と言っても連携もすれば合併もするからな」
「そうやって大きくなっていけば人も順調に増える。国が大きくなる。土地が要るようになる」
「その国の成長の中に異形の居場所が残っているかどうか、だな」
「そうだ」
「え、残ってないの?」

毘羯羅がマジでという顔だ。

「もともと日本にいた数が取り戻ったとしよう。その数に俺たち異形の数が合わさる。それを抱え込めるかどうかだ」
「抱え込めないの?」
「知らん。ある世代で融和しても、次の世代で決別するかもしれん」
「……見えない話は、ここらにしようか」

豆蔵が嘆息した。
霞がかかったような未来の話だ。
それよりも見なければならないものは今にある。

「そうだな、まずはミサキだ」
「豆蔵さん、ミサキさんの目的は何なんでしょう?」
「異形を殺して回る事なんだがな、集団を作っている異形に襲撃を仕掛けてるってのが分かってる」「集団、ですか?」
「そうだ。だから次の目的地にゃ検討がついているんだ」

豆蔵が地面に簡単な地図を描いてみせる。
大まかな福井と京都。
現在地は福井。
そして、京都の北……日本海に一点を作った。

「異形が出てきた地震で起こった地殻の変動。こいつできた新しい島と、その一帯の地方だ」
「あ、知ってます、確か……浦島!」

浦島。
京都圏の北部に位置する地方の名称である。
その範囲は主に日本海の島々を中心とし、沿岸の漁村も含まれている。

この島々というのが少々特殊で、
異形出現の原因となった地震による隆起で現れた島なのである。
そして現在、いくつかの島では異形が多々纏まっている暮らしているはずだ。

「異形だけで纏まってコミュニティーを作ってる。おそらく次の狙いはここだ」
「……豆蔵さん」

じっと、毘羯羅が地図を凝視したまま、硬い声。
天邪鬼は、また魔法で火を出しながら口は出さない。
毘羯羅が何を言おうとしているのか察して、それに何か言おうとも思わない。

「この件、僕も手伝います」
「……実はその言葉、期待しててここまで説明した」
「ミサキさんは不当すぎます」
「俺もそう思う」
「じゃっくん、いいですよね?」
「俺は役に立たんぞ。弱いし」

さて。
豆蔵、毘羯羅、天邪鬼。
奇妙に三人が一丸となった頃合。
横になっていた坊主が身をよじる。

天邪鬼が魔法の火をかき消すと。
坊主が眼を醒ます。

「う……ここ……は」
「おはようございます、意識ははっきりしていますか? ご自分の名前、言えます?」
「僕は……」

坊主は身を起こす。
そして表情が火に照らされて、坊主がとんでもなく消耗しているのが良く分かる。
削げた頬。
どす黒い顔色。
飛び出しているかのように血走った眼球はぼんやりと。
焦点を結ばぬ眼で毘羯羅がいる辺りを見た。
乾いた唇が動く。

「あんりゅう……安流です」
「安流さん。できれば横になっていた方がいいですよ。随分と高い熱です」

徐々に、安流が視界が明瞭になっていく。
それにつれて、きちんと毘羯羅を見る。
火を見る。
そして、

「ひっ……!」

天邪鬼を見て後ずさる。
毘羯羅がなだめるように安流の肩に手をやる。

「大丈夫です。噛み付いたりしません。彼、大人しい異形です」
「食う気ならもう食ってるってのは分かるだろう?」
「あ……はぁ……」

どうにか安流が落ち着いて。
四人が焚き火を囲む。

「俺は、豆蔵と言う。安流、あんたの熱はちょっと他の病気と違う理由でな。だが心配するな、治るもんだ」
「はぁ……豆蔵くんは、医療関係の?」

かすれた声。
ここに来て。
豆蔵も、天邪鬼も、毘羯羅も。
安流の疲労困憊の様子をおかしく感じ取る。

「……いや、そういうわけじゃねぇ。だが、えーっと、そうだな、俺の身内が移しちまったんだミサキという女とな、あんた会ってると思うんだが。十代半ばで長い髪の女だ」
「はぁ……あ、ええ、ええ、覚えがあります。道中、声をかけた覚えがあります」
「そいつからちょっと病気が移っちまったんだよ。ちょっと変な病気でな、魔素が勝手に体にたまっちまう。なぁ、あんた魔法は使えるか?」
「……!!」

安流が息を呑む。
顔が歪む。
体が震える。
落ち窪んだ眼窩の双眸には……恐怖。
かちかちと、安流の歯の根が合わなくなるに至り。
豆蔵も、天邪鬼も、毘羯羅も。
決定的に安流に不審を抱く。

「おい」
「は、はい……」
「あんた、何だ? 何か恐い事でもあったのか?」
「……は、はぁ……」

安流がうつむく。
少しの間。
誰もが黙り込む。
焚き火の爆ぜる音ばかりが耳につく中で。
安流が重い口を開く。

「人を……人を……殺してしまいました……」
「それは……」

毘羯羅がなんとも言えぬ顔になる。
豆蔵と、天邪鬼には表情がない。

「不可抗力で殺してしまったのでしょうか?」
「不可抗力……」
「誰を、殺してしまったのですか?」
「…………賊徒の類でした……しかし……」

一層、安流の顔が歪んでいく。
泣き出してしまいそうになる。

「しかし……ぼ、ぼ、僕は……あれは……あれじゃ……やりすぎ……」
「落ち着いて、安流さん、分かりました。まずは落ち着きましょう、すみません、忘れたい事ですよね、立ち入って尋ねすぎました」
「わ、わすれ、忘れられ、れない……んです……夢に、ずっと夢に……起きてても見える……ひめ、悲鳴が……き、きき、聞こえ……て、僕は……」
「どうやって殺した?」
「豆蔵さん!」
「お前は優しくしすぎだ。明らかにおかしいだろう、この坊主」
「いや、そうですけど……しかし本人がこんなに怯えているのに」

がたがたと震える安流が、意を決したように。
袈裟の内側に手を入れれば。
首飾りが表れる。
透明な珠がつながった。

豆蔵が、飛び掛る。
安流の乱暴に胸倉を掴んで叫んだ。

「てめぇ! これをどこで拾った!」
「ひぃ……!」
「ま、豆蔵さん!」
「答えろ! どこで拾った! おい! 答えろ!」
「豆蔵さん! 落ち着いてください! 乱暴はいけません!」
「か、かぐ……かぐやと言う人が!」
「お前……会ったのか?」

ようやく豆蔵の力が緩む。
ほうほうのていで豆蔵の手から逃げ、安流が息も荒く。
ついに、泣き出した。

「か、かぐや殿を……ご存知なのですか?」
「……俺は、かぐやの兄弟みたいなもんだ」
「! で、では、まさか……御伽 草子郎の!」
「知ってるのか!?」
「き、聞かせていただいたんです、かぐや殿に。かぐや殿の経歴を」
「……それで、かぐやはどうしてる? なぜお前が龍の首の珠を持っている」
「な、」

安流が流す涙が。
一層増していく。
か細い声。

「亡くなりました……かぐや殿は」
「嘘……だろ……」

豆蔵の膝も折れた。
呆然と自失して。
唇がわななく。


「嘘だろ……? なぁ? おい、あいつが死ぬかよ」
「ほ、本当です。金時という子に……殺されて……」
「金時!? 最後期の……!」
「かぐや殿は、ばらばらになった御伽 草子郎の被害者とつながりを持ちたいと願って……」
「それで、金時に会って……殺されたのか……?」
「そう、です……」

また沈黙が降りてくる。
毘羯羅も、天邪鬼も、何もいえない。
毘羯羅はいたわるように二人を見比べ。
天邪鬼は関するつもりないようで、黙りこくったまま。

「それで」

豆蔵が言葉を搾り出す。

「お前は……なんなんだ?」
「僕は……僕は、」

安流の涙は止まらない。
それでも。
強い意志覗かせてこう言った。

「かぐや殿の……兄弟です」
「兄弟……」
「かぐや殿は……兄弟が欲しかったのです。だから御伽 草子郎の被害者とつながろうとしていました」
「それで……結局殺されたのかよ……」

豆蔵がうつむいた。
毘羯羅が、おそるおそる声をかける。

「それで……安流さん、その珠は何なのでしょうか?」
「……これは……」
「魔法の媒体だ」


安流が怯える中。
豆蔵が代弁する。
豆蔵には、もう察せた。
安流がなぜこんなに怯えているのかを。

「それで、火や毒を吹けるようになる」
「これも御伽 草子郎の……?」
「そうだ。こいつを使うために調整された奴の名前がかぐやって言う男だ……おい、安流、お前……これを使ったんだな?」
「……はい」
「これで、人を殺してしまったな」
「……はい」
「使いこなせなかったな」
「……はい」
「恐いか、その魔装が」
「……はい」

仏の御石の鉢。
蓬莱の玉の枝。
火鼠の裘 。
龍の首の珠。
燕の子安貝 。

五つの強力な魔装のためにかぐやは強化、改造されている。
それを。
素人が上手く使えるはずがないのだ。
ではどうなったか。
中途半端な、虐殺、殺戮、破壊があったのだろう。
そしてそれは安流の心には酷い毒だ。

大きく、豆蔵が息を吐く。
厄介事が増えただけか。
それともこの出会いは大きな縁か。

「お前のその熱について詳しく話そう。お前と……かぐやについても、話を聞かせてくれないか?」





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