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無限桃花外伝~始まりの唄~

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無限桃花外伝~始まりの唄~

投下日時:2010/09/05(日) 19:13:28

 空を見上げた。雪が降りそうだった。
 渇いた空気を吸い込む度に鼻の粘膜が乾燥していく。吐き出すと、息は白く染まる。寒かった。

 そこに居た少女は刀を構える。真っ黒な刀身のそれは冷たい空気を切り裂き、まるで空間を超越してそこに存在しているかのように、真っ黒に輝く。
 闇の結晶のような刀だった。

 一匹の魔物が襲い掛かる。
 一刀。それだけでその魔物は命を絶たれ、黒い影となり消失。しかしながら、彼らは怯まない。それは勇気があったからでは無く、目の前に居る少女がどういう敵か、理解していなかったからに過ぎない。
 ただ一匹を除いて。

 少女、無限桃花は村正に稲妻を湛える。一振り。稲妻が走る。
 無数の魔物達――寄生の群れは、それだけで成す術なく倒れる。
 叶う訳がないのだ。その少女は、こと寄生に対してはほぼ無敵に近い強さを持っていたのだから。
 ただ一匹。明らかに他とは違うそれが動き出した時、ほかの寄生は全滅していた。

「……あとはお前だけだ」
「ただの小娘にしてはなかなか……。面白いではないか。私が直接切り裂いてやる」

 その一匹はまるで金属で造られたような身体を揺らし、桃花に迫る。両手は巨大な剣そのものであり、徹底した破壊の意思が込められていると解る。

「私の名は練刀。この名、冥土の土産にするがいい」


――どくん


 練刀はその巨体に見合わぬ素早さで斬りかかる。しかし、神速の体術を修めた桃花にたやすく見切られる。それに彼女には、人間を超えた力、寄生の力が宿っている。


――どくん


 村正と練刀の刃がぶつかる。火花。金属音。桃花は身体を返し、巨躯の練刀の懐へ。
 桃花は笑っていた。なぜ笑っていたかは解らない。むしろ、今の相手は他の寄生より数段上の相手のはずだ。だが、笑っていた。


――どくん


 桃花は、桃花の奥に居る魂のかけらは、この時を待っていた。
 ついに来たのだ。『奴』の息がかかった者が、目の前へと現れた。ついに、始まるのだ。


――どくん


 袈裟斬り。金属のような練刀の身体は肩から切り裂かれる。そして、返す刀は下から上へ、速度を落とさず襲い来る。
 回転両袈裟斬り。桃花の必殺剣。
 練刀は倒れる。理解できなかった。よもや人間の小娘に、自らが敗れるなど想像すらしていなかったから。
 桃花の口からは、桃花の意思とは別の言葉が発せられる。魂の奥底から、再び宣戦布告する言葉。

「千年前の続き……。今度こそ、始末する」


――どくん


 桃花は、笑っていた。待ち望んでいた時が、ついに訪れた。


※ ※ ※


「手助けせずともよいのかな?」
「うん。あんなの居てもいなくても一緒だし」

 桃花と練刀。二人の怪物が衝突する様を見ている者達。
 彼女達は、いずれ来るであろうこの時を恐れていた。

「練刀じゃやっぱり相手にもならないか。アイツ結局逃げたじゃない」
「むしろ……よく逃げおうせた物だと」
「でもやっぱり……。来たね。姉さん」
「十年ぶりかな。姿を見るのは……」

 彼女達はその戦いの様子を観察し、これから戦うであろう敵の戦力を計ろうとしていた。
 結果は、敵は恐るべき脅威である。そう結論づけた。

「……さて、練刀はもう要らないから始末してくる」
「よろしいのか? いかに我等の中で最弱とはいえ、滅多には居ない程の妖」
「いいわよ。次に目をつけてるのも居るし。それに……あいつは私の父さんを殺した奴だから……」
「……。うむ、では、任せよう。彼方」
「うん。婆盆」

 彼方は練刀の元へと向かう。
 運命は動き出す。千年の宿命は、決着の時へと流れだす。止められない。

「姉さん。やっぱり、戦う事になる」


――開戦。


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