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「ヒューマン・バトロイド」第13話

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世界が第四次世界大戦に突入した原因は日本が行った鉄の雨と呼ばれる大規模降下作戦だ。
日本は地上での情勢が金若王(トップガン)とハーミスト・レインの活躍で厳しい状態になった時、秘密裏に宇宙まで手を広げていった。
最大規模の地上基地である要塞・富士を前面に押し出し、籠城戦を行っているかのように見せた。
しかし実際は北極に密かに建設したシャトル打ち上げ施設から様々な資材を打ち上げ、宇宙に1つの要塞と4つの護衛艦を作った。
最終宇宙要塞天川(アマノガワ)、1番艦大国主(オオナムヂ)、2番艦白兎(ハクト)、3番艦大蛇(オロチ)、4番艦羅摩(アメノカガミ)。
この護衛艦には出雲国風土記に収録されなかった出雲神話にちなみ、たとえ正史に乗せられなくとも日本と言う意思が後世に残り芽吹く事を祈
って名づけられている。


「こんな事を聞くと日本は負ける気だったみたいに聞こえるな」
「そうか?俺個人としてはどれだけ絶やされようとも必ず喉笛食いちぎってやる、みたいな執念を感じるんだが」
現在スタークは北極に向かう為太平洋を北上している。
その時間を利用してリクは第三次世界大戦の時の日本の行動を解説していた。
意外と日本の前大戦時の動きの意味は知られていなかった。
だからどうしてリクが北極のシャトル打ち上げ施設を知っていたのかが疑問に思われた。
それを説明するための解説だった。
「で、その宇宙にひっそりと上げられた"兵器"の1つが俺って訳だ」
宇宙に打ち上げられた資材、および兵士は日本にとってとても重要な最終防衛ラインを維持するための物だ。
国家中枢機能を宇宙に移し、そこを厳重に守り、そこから地上に降下して直接都市を攻略。
そして補充の資材を打ち上げる。
それを繰り返して日本はしぶとく生き残り続けた。
「俺が乗ってた3番艦は実は一番信用性が低い艦だった」
「嘘だろ?こんな能力をもってるお前が乗っているのに……」
リクは苦笑しながら話を続ける。
「今でこそこれだけ畏怖の目で見られる完成孤児(パーフェクトアーミー)だがな、当時は正直プロパガンダだと思われていたんだ」
完成孤児製造実験。
孤児を被研体として薬物の過剰投与、強力な催眠による暗示、最終的には後天的な遺伝子改造を行い、完全無欠な兵士を作り出そうとした実験
だ。
しかしそんな無茶がそうそう上手くいく訳もなく、試験段階で300人以上の孤児が死亡した。
生き残った孤児の数は50人前後。
その生き残った子供達も精神が崩壊しており、まともに使える状態では無かった。
「結局まともに生き残ったのはたった4人、その中でも衰弱が激しい物が2人、規定以上の数値が出せないなりそこないが1人」
「そんな……それじゃ完璧に……」
ミキが驚愕した表情で言った。
リクは自分がグラビレイトで殺した友人を思い出す。
「そう、失敗だ。結果として出来あがった理想形はたった1人、それが俺。大量の資金と時間と人材を投入した結果がたった1人」
上層部はそんな失敗だらけの計画からかろうじて生まれた完成品を、プロパガンダと認識した。
「俺は実戦になるまでその存在を認められなかった。だがそれも第一次衛星兵器攻略戦までの話だ」
天川の攻略戦は3回行われた。
第一次攻略戦は残存兵力の掃討として行われた作戦だが、その戦闘で完成孤児の力を世界が知った。
「第二次攻略戦で行われた戦闘も殆ど3番艦の能力で日本は勝利した」
それ程完成孤児の能力は高かった。
そして第三次攻略戦、つまり第三次世界大戦の最終決戦。
「そこで投入された金若王の活躍で遂にオロチの戦力が大きく削られた。その結果の投降で戦争が終結した」
「つまりその基地は作戦時の名残だって事か」
リクは頷く。
「そうだ。これを企んだ男、キセノ・アサギはJTCの技術者で日本軍の技術部副長だった。そして完成孤児製造実験の責任者でもある」
「それが、あなたの戦う理由――復讐の相手なのね?」
リクは頷く。
リクは無理矢理作りかえられた身体の恨みを晴らすべく戦っている。
キセノにどんな事情があろうとも必ずこの手で……罪を償わせる。


北極、シャトル打ち上げ場前にて――
1機の大型区分HBが崩れ落ちた。
そのHBと相対していた機体は小型3区分程の大きさの機体だった。
銀色の装甲を持つ小柄な機体はカメラアイを光らせる。
「次に掛かってくる者は誰だ?」
周囲には数十機のHBが布陣を組んでいる。
しかしその兵の戦意は既に地に落ちている。
理由はついさっきの戦闘の結果にあった。
エース3人斬りをやってのけた目の前の機体は一筋の傷も無い。
銀騎士(シルバーナイト)と呼ばれる同盟軍最強のエースは屈辱的な敗北を体験したが、その腕は微塵も落ちていない。
その証拠が現在行っている戦闘だ。
かつて彼が行った千人斬りを再び行おうとしているのだ。
現在は587人目、内エースは13人。
連邦の総戦力によるシャトル打ち上げ阻止は銀騎士により抑えつけられている。
[団長、遠方より戦艦の反応。この反応は恐らくスタークと思われます]
「来たか……白い魔弾(ホワイトバレット)……私に汚名を着せた貴様を新たな伝説への礎にしてやろう」
白い魔弾を千人目に斬る事を心に決めていた銀騎士は、周りの恐れをなした連邦兵たちに近づいていく。


リクは機体を一気に加速させていく。
既に出撃済みのTypeαは最高速度で施設に向かっていた。
この機体の元々の運用法に沿った作戦だ。
それを後ろから遅れて追いかけるのはミキのTypeβ。
リクの進行を補佐する役割がある。
その後ろでリキはウィンスと共に弾幕を張りながら二人を追っていた。
「やっぱり数は多いなっと」
近づく敵機をレーザーの雨で削り取る。
[おまけに質も高い。流石に本気だと言う事だ]
灰被り(グレーボマー)が放つクラスターミサイルが視界を炎で赤く染める。
「確かにエースっぽいのもちらほら―――っとと!?」
ミサイルが機体を掠めて飛んでいく。
お返しにレールガンで地面代わりの氷ごと蒸発させる。
[あ、てめぇ!見つけたぞ!白い魔弾!忘れたとは言わせない!俺達四聖じゅ―――]
リクに対する声が聞こえたと思ったらリクはそれを無視したらしい。
Typeαのブースター音にドップラー効果が掛かる。
[………いっちゃったよ?青龍]
[あんのやろう……ふざけやがって……追うぞ、今すぐ追うぞ!]
[まて青龍、あのスピードは無理だ。人が耐えられない。中身が化物だ。人じゃなさそうだ]
[とりあえず落ちつけ。あの時の二の舞にはなりたくあるまい?]
賑やかな声が聞こえた。
リキはどこかで聞いた事があると首を捻って、思い出した。
「ああ、中国ビックリ動物園!」
[四聖獣部隊だ!]
どうやらこちらの声を拾ったらしい。
[てめぇまで俺等をこけにするつもりか!]
「いや、だって名乗って無かったじゃん。あの時」
そう、四聖獣部隊。
中国山岳部でリクと戦闘を行った後、リクとリキのチームプレイで沈黙したあの部隊だった。
[そういうお前はあの時の一般兵A!]
「残念、今は守護狂神(ガーディアン)っていう二つ名があるんだよ」
[うわ、だっさ]
「テメェらに言われたかねぇよ!?」
青龍と呼ばれている若い青年が素で言うのでリキも素で返してしまった。
[ふん、あの腰ぎんちゃくじゃあ俺等のスコアとしては役不足だな]
「……連邦軍に入った時の初戦のスコア」
リキはぼそりと告げる。
[何言ってやがる?]
「白い魔弾は三機とエース一機。二人連れた小隊率いてた俺は個人で三機、小隊で六機だ」
[へぇ、それが?]
リキは笑みを浮かべながら答えを出す。
「奴はあの機体で、四機。俺は一般機で三機。どっちの方が強いんだろうな?」
これは完璧なハッタリだ。
リクは合計四機をパイロットを殺さずに落している。
技量の問題を考慮すればリクの方が遥かに強い。
だが今は青龍の興味を引き付けるだけで充分だ。
[へぇ、おもしろい。行くぞお前ら!こいつを足がかりに白い魔弾をやっちまうぞ!]
「蜥蜴に鳥に亀に虎?その程度でこの盾を破れるかよ!」


右下後方42度、左上前方50度。
同時に迫る2機を確認したリクはそれぞれにシールドの下の銃口を向けて発砲。
機体を降下させてグラビティキャノンを発射しながら振り回す。
氷の大地に圧力が掛かってひびが入る。
そこにショットマグナムを撃ち込み、周囲を海に落としていく。
一旦戦況を確認すると、どうやらはぐれたミキは施設の最終防衛ラインまでたどり着いたらしい。
リキはエースの小隊を手玉に取っているようだし、ウィンスは北極を沈めかねない勢いで火の海を作っている。
スターク周辺もそこまで戦況は酷くない。
こちらの被害は小破1機と中破1機で軽傷が1人。
「上々だな……なんだ?」
ふと戦場の流れに違和感を感じて振り返ると、そこには1機のHBがいた。
おかしい。
リクは立体式戦略盤で戦場の通信機1つですら場所を把握している。
だがこの機体は把握できなかった。
通信機能はあるようだがこちらから侵入が出来ない。
「対抗されてる?どういう事だ?」
リクのハック能力に対抗できる者などいない筈だ。
その機体はアサルトライフルとミサイルポットという一般的すぎて個性的な装備をしている。
見た目はチューンされていない新品に見える。
見えないモノに弱気になる気は無い為、リクはグラビティキャノンを撃つ。
消し飛ばしてしまえばただのスクラップだ。
「……来る!?」
とっさにシールドを構えるとアサルトライフルの弾が飛んできた。
シールドで被害は無いが、今度こそリクは驚愕した。
その謎のHBが無傷でライフルを構えていたからだ。
「イザナミ、データバンクにあの機体は?」
『ありません、あっても一般機としてしか……』
念の為重力場フィールドを張ると同時に二射目が来た。
二射目はフィールドで潰されてリクには届かない、筈だった。
「突き抜けただと!?」
またとっさにシールドを構えるが、今度の弾は弾けなかった。
「……くっ!?」
姿勢を変えて弾丸を受け流す。
今の攻撃は重力場フィールドでも潰せず、減衰しない程の質量があったのだろうか?
「だが……そうならなぜ、アサルトライフルの質量しか無かったんだ?」
腕部にかかった圧力から逆算すると、普通の弾丸程度の質量しか存在していない。
なのにフィールドを突き破った。
「何かがおかしい。何なんだ?あの機体は……」
その時、通信が入った。
『リクさん、マスターが危険です!早く来て下さい!』
「イザナギ?ミキが危険だと!?」
リクは最大火力で消し飛ばす事にした。
グラビティキャノンとグラビティジェネレーターからのプラズマを同時に発射する。
「これで駄目なら逃げるしか………やった?」
そのHBはあっさりと消滅した。
「何だったんだ、一体……いや、今はミキだ」
リクはその場を後にする。


リクが謎のHBと遭遇した頃、ミキはシャトル打ち上げ施設の最終防衛ラインまで進んでいた。
『敵機7機確認、これ以外には見当たりません』
「たった7機でこの軍勢を!?」
そこにいたのは銀騎士だった。
「銀騎士、最強のエース……」
[同じ機体か……そのモチーフ、黒揚羽(ブラックバタフライ)だな?]
「お会いできて光栄ですよ。生きた伝説、銀騎士殿」
ミキの上を行く戦績を今もなお更新し続けている青年。
だがミキはTypeβに乗っている今の自分なら、何より新たな理由を手に入れた自分になら勝てない相手では無いと思っていた。
[999人目が貴女か]
「え……?」
[千人斬りの千人目は白い魔弾に決めていたのだがな、999人目が貴女というのも悪くは無い]
「まさか……千人斬りをまた!?」
どう見てもそれ程戦闘をしたように見えない。
少なくとも消耗はしていない。
なんて実力なのかと震えが止まらない。
[怖じ気づいたか?]
「……誰が!私は負ける事を自分に許してなんていない!」
[いいだろう、掛かってこい!黒揚羽!]
Typeβが刺突刀を突き出してモーション無しで加速する。
上手くいけばそれで勝負はつく。
しかし銀騎士はそれに対して横に半歩ずれるというアクションを起こした。
「見切られてる!?でも!」
真横を通り過ぎるのではなく、そこで止まってから横薙ぎに変えればダメージを与えられる。
予定通り刀身の真横に銀騎士が来た瞬間、足を地面につけて急減速。
そして刀の刃の向きを変え―――られなかった。
[装甲に攻撃が触れたのは999人中貴女だけだ]
「なんで……動かないの!?」
刺突刀は銀騎士の左肘関節を覆う装甲の間に挟まれていた。
絶妙な力で抑えられているらしく、押しても引いても揺らしても刺突刀は動かない。
[これで終わりか?]
「くっ……馬鹿にするな!」
粒子ブレードを抜き放ちながら刺突刀を放棄。
刺突刀が氷の大地に虚しい音を立てる。
「この粒子ブレードはいくらなんでも受けられないでしょ?」
[そうだな。だが、当たらなければいい]
「っ、どこまでも人を小馬鹿にして!」
『落ちついて下さい!マスター!』
一気に刀身を伸ばして振り下ろす。
銀騎士はまた横にずれてかわす。
そこから刃を返して降り上げて、薙ぎ払う。
しかしそれもかわされる。
かつて自分に与えられた蝶の様な動きとは、このエースにこそ与えられるべき評価では?
そこまで思わせるような動きだった。
決して受ける事無く、ただこちらとの距離を縮める。
「この……この、このっ、このっ、このっ!」
[それで終わりか?ならこちらから行く!]
一瞬の踏み込みが一瞬の隙をついて、Typeβの右肩が斬り落とされた。
「そんな!?」
[たわいも無い]
次の一閃で左脚部の膝関節から先が奪われた。
その次の一閃はギリギリミキが反応した為、右の足首が斬り落とされるに留まった。
銀騎士はミキに恐怖をつき付けるように目の前に立つ。
[これで……終わりだ!]
「いや……リク!」
思わずその名を叫んだとき、轟音が響いた。
銀騎士は後ろを振り向く。
[シャトルが、同胞がまた宇宙に飛び立った、か……我らもすぐに追いつかなければ]
すぐにミキに向き直りその剣が降り上げられる。
またしても轟音が響いた。
[何!?くっ!?]
「あれ……きゃっ!?」
気付けば飛び立ったばかりのシャトルが爆発した。
さらにミキと銀騎士との間に回転しながら飛んできたシールドが突き刺さった。
「り……りく……」
[悪い、遅くなった]
Typeαが取り落とされていた刺突刀を持って現れた。


[貴様……白い魔弾!]
「アンタがこんな所で何をしてるんだ?最強なんだろ?」
リクは挑発をして銀騎士の狙いをこちらに向かわせる。
[よくも……よくも同胞を!]
「戦場にいる兵士を殺して何が悪い?」
[ふざけるな!]
刺突刀を構えながらリクは銀騎士の動きを見る。
前回は不意打ちで勝負を決めたが、今回のように正面から戦うとなるとかなり厳しそうだ。
「なんだ?アンタの正義とやらの元に俺を斬るか?」
[当たり前だ!貴様は絶対に許さない!]
銀騎士は一気に突撃してきた。
その速度は踏み込みに起因する挙動を見せた。
対してTypeαは現在、足にブースターを装備していて接地面が無い。
滑るように攻撃をかわすしかない。
[あのシャトルは!整備士や軍医などの非戦闘員が乗っていた!]
リクは眉をひそめる。
[貴様は!そんな無力な彼等を殺したんだ!]
「戦場にいるのなら、死ぬ覚悟が出来ているだろう。非戦闘員も戦闘員も関係ない」
[この……下衆がァァ!]
「なんとでも言え。そんなくだらない意思で揺らぐような信念で戦っていない」
銀騎士の剣を左手に残ったシールドで受ける。
そのまま流して右手の刺突刀で攻撃を仕掛ける。
[その程度、だと?]
「その程度だ。人の倫理観に捕らわれた大衆的な意見なんてな。そんな調子ならアンタの騎士道もたかが知れてる」
[ふざけるな!我の騎士道は人類の進化に助力するための――]
「その進化云々の意見は」
リクは遮る。
「アンタじゃない、同盟の主張だろう?アンタはそれに同意しているだけだ」
[それの何が悪い!騎士道とは優秀な意思を貫く守り手を作る道だ!]
攻撃が止まって、銀騎士の叫びが響く。
「その騎士道で守る意思が、人の尊厳を踏みにじる者に利用されているとしてもか?」
[何を言っている!?]
「俺みたいな……俺みたいな完成孤児を作り出して、あまつさえ邪魔だからという理由で自分勝手に殺そうとするような男が!その意思に紛れ
込んで、利用して!それに同盟自信が乗せられるのでなく、自らのっているとしてもか!」
銀騎士は完成孤児の名を聞いて絶句している。
リクはその隙を逃さない。
「アンタにとっての正義が何かは知らないし興味も無い!俺が悪だと、外道だと言うのなら受け入れよう!だがな……こんな自分勝手な俺の狂
気程度で揺らぐような薄っぺらい意思、俺の言葉を一蹴できない程度の意志!」
呆然としている銀騎士に思いっきり体当たりをして体勢を崩す。
[くっ!?]
銀騎士はとっさに立て直して剣を構える。
「そんな借りものの、紛い物の正義で……俺の悪を邪魔するな!」
その上から一閃。
剣ごと銀騎士の機体の右側を切り裂く。
「これで終わりだ」
切っ先を倒れている機体に突き付けて力を入れる、その瞬間。
[団長!]
「っ……」
6機のHBが斬りかかってきた。
聖剣騎士団、銀騎士の部下達だ。
[団長をシャトルへ、俺達が足止めをする!]
施設から慌てて飛びだしたHBが銀騎士を抱えて施設へ戻る。
『射線から施設を外す事は出来ません』
「分かってる。それにやる気も無い」
近くに突き刺さっていたシールドを右手に装着しなおす。
「聖剣騎士団、と言ったな?お前らがシャトルの離脱まで堪え切れたらシャトルは狙わない。掛かってこい」
[足止めくらいなら、貴様相手でも出来る]
「俺の前に立ったんだ。ただで済むと思うな」
6機の騎士が剣を構えた。
1機目をシールドで殴り、ショットマグナムで吹き飛ばす。
2機目、3機目を順に斬り、4機目を銃口とは逆のシールドの端で殴る。
後ろに回して両側のシールドで固定、ロケットノズルを起動して焼きつくす。
そのまま加速して5機目に刺突刀を突き刺す。
6機目の相手をし始めた時、最後のシャトルが飛びあがった。


「ぅう……ここは……?」
銀騎士は一瞬意識を失って、そして覚醒した。
「シャトル?なぜ……白い魔弾と戦っていた筈……まさか!?」
急いでシャトルの外を窓から見る。
なぜ自分がシャトルで宇宙に上がっているのか?
なぜ部下達、聖剣騎士団がいないのか?
なぜ白い魔弾がこのシャトルを狙っていないのか?
その答えはそこにあった。
既にねじ切られ、焼き尽くされ、切り裂かれた部下の機体がそこにあった。
ブレインチップで急いで通信回線を開く。
[団長、起きてしまわれましたか……]
「何をしている!?お前達はなぜ囮など……」
[あなたの正義は我々が認めます]
「…………え?」
銀騎士は目を見開く。
少し揺るぎかけていた自分の正義を、部下はどうしたいのだろうか?
[自分は、自分達はあなたの意思に惹かれて集いました。自分達に最期まで、死んだ後でも、自分の意思を貫かせて下さい]
次の瞬間、白い魔弾の攻撃が最後の一人を貫いた。
「そんな……私は……」
誇りを奪われ、正義を奪われ、そして部下を奪われた。
全てをたった一人に、白い魔弾に。
「すまない……皆……お前達の望む私は保てそうもない……」
銀騎士の瞳には、何か別種の炎が揺らめいていた。
「何をしても、絶対に敵をとる……」


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