天駆龍格納庫には大量のHBが待機状態で佇んでいる。
これらの機体は殆ど2種類に分けられる。
1つは量産傭兵(カスタムアーミー)用の機体、もう1つは無人機。
量産傭兵用の機体はその操縦技術を遺憾なく発揮できるようにかなりのカスタムを施されている。
無人機はそこまでのカスタムはされていないが、機体を制御するのは自立型特化式AIのツクヨミだ。
ツクヨミは本来艦船補助用のAIだが、そのプログラムを組み替える事で無人機の制御に専念する事になる。
量産傭兵の機体も要塞補助用AIのアマテラスがサポートを行い、リンクを行う。
この2つの指揮系統によって天駆龍の戦力の質を一気に引き上げたのだった。
さらに全ての機体に共通する改造も施されている。
それはフォトングラビティ対応機としての改造だ。
粒子炉は生産出来なかったが、その代わりに粒子を機体内で循環させて程度は低いが同種の効果を得る事に成功した。
名をつけるならばグラビレイトVer.simpie――グラビレイトの先行量産型になる。
その完全な戦力の中にただ1人だけ、普通の人間がいる。
同盟軍内で銀騎士(シルバーナイト)と呼ばれ、そしてリクに部下を全滅させられた事でそのエースの名を捨てた男だ。
彼の眼には強い感情が渦巻いている。
それは強く何かを求める感情、白い魔弾(ホワイトバレット)との戦いを望む物だ。
彼の後ろには新たに製造された専用機がある。
それはかつての銀騎士のような殆ど改造されていない手つかずの機体ではなく、フルチューンされていると言っても過言ではない。
「リク・ゼノラス……いや、キセノ・アサギは奴を陸羽と言っていたな……」
彼は倒すべき敵の名を呟く。
「待っていろ、陸羽。お前が戦うのは俺で最後だ」
これらの機体は殆ど2種類に分けられる。
1つは量産傭兵(カスタムアーミー)用の機体、もう1つは無人機。
量産傭兵用の機体はその操縦技術を遺憾なく発揮できるようにかなりのカスタムを施されている。
無人機はそこまでのカスタムはされていないが、機体を制御するのは自立型特化式AIのツクヨミだ。
ツクヨミは本来艦船補助用のAIだが、そのプログラムを組み替える事で無人機の制御に専念する事になる。
量産傭兵の機体も要塞補助用AIのアマテラスがサポートを行い、リンクを行う。
この2つの指揮系統によって天駆龍の戦力の質を一気に引き上げたのだった。
さらに全ての機体に共通する改造も施されている。
それはフォトングラビティ対応機としての改造だ。
粒子炉は生産出来なかったが、その代わりに粒子を機体内で循環させて程度は低いが同種の効果を得る事に成功した。
名をつけるならばグラビレイトVer.simpie――グラビレイトの先行量産型になる。
その完全な戦力の中にただ1人だけ、普通の人間がいる。
同盟軍内で銀騎士(シルバーナイト)と呼ばれ、そしてリクに部下を全滅させられた事でそのエースの名を捨てた男だ。
彼の眼には強い感情が渦巻いている。
それは強く何かを求める感情、白い魔弾(ホワイトバレット)との戦いを望む物だ。
彼の後ろには新たに製造された専用機がある。
それはかつての銀騎士のような殆ど改造されていない手つかずの機体ではなく、フルチューンされていると言っても過言ではない。
「リク・ゼノラス……いや、キセノ・アサギは奴を陸羽と言っていたな……」
彼は倒すべき敵の名を呟く。
「待っていろ、陸羽。お前が戦うのは俺で最後だ」
スタークのハンガーにグラビレイトが修繕された姿をさらしている。
リクにジョージはその前で今回の機体の変更点を説明する。
「――以上だ、仕様変更はあるが基本は同じと考えて貰って構わない」
「大体分かりました、これならいけそうです」
屍のように倒れ込んでいる整備班に心の中で感謝をしながらグラビレイトの足元に向かう。
今回の修繕はかなり大掛かりなものになった。
Typeαはすでに実戦に耐えきれない程にボロボロになっていた為Typeβを素体として手を加えている。
演算装置をTypeβのコックピットに移し、背部の巨大なバックパックには回収したTypeγの粒子炉を積んでいて、機体内部の粒子炉もTypeαと
Typeβの粒子炉を一基づつ搭載して三種類の粒子の使用を可能としている。
両機共に使用が難しかった右腕部は新規の物に交換されている。
所要時間14時間強、ぶっ続けの作業は偶然にも次の砲撃にぎりぎり間に合った。
グラビレイトの足元にはクルーが集まっていた。
「今回は戦場まで辿り着けるのがあなたとリキさんの二人だけです。厳しいと思いますが、お願いします」
カルラは深々と頭を下げる。
「リク、俺に出来るのは援護くらいだと思うがやれるだけやるつもりだ。お前は出来るだけ敵を無視して進んでいい」
いつになく真剣なリキには頼もしさを感じる。
「ありがとう、カルラさん、リキ。俺に出来るかどうか、そんなことは言わない。絶対に生きて世界を救って見せる」
頷きながらリクは言う。
キセノを止められるのは自分だけなのだと気持ちを再び引き締める。
「リク、気をつけてね?絶対に帰ってきて」
機体が無い為付いてこれないミキの不安そうな声にリクは頷きかけて少し止まった。
「ちょっといいか、ミキ。こっち来い」
首をかしげながらリクに一歩近づくミキを、リクはグッと引き寄せて顔を寄せる。
それはまさしくキスの体勢だった。
突然の出来事にミキは唖然、クルーは呆然。
たっぷりと5秒はそのままで、ゆっくりと顔を離すリク。
状況を理解したクルーの冷やかしの声で一歩遅れて気付いたミキの顔が真っ赤に染まる。
「な、なななな、な」
「な?よくわからないぞ、ミキ」
ニヤニヤしながらリクはミキの頭をなでる。
「おうおう、大胆だねぇ!」
ゴースがからかうように言うがミキにしか効果が無い。
「仕方ないだろ?だってさっきまでは忙しかったんだからさ!」
誰かが指笛まで鳴らし始めた所でミキの言葉が落ちついてきた。
「いきなり何してるのッ!?」
「何って、キス?」
「そうじゃない!なんで人前で!?」
「いや、だってキスしたかったし?」
「TPOを考えなさい!恥ずかしさで死にそうよ!」
「それは大変だ、医務室まで運んでやろう」
「ちょっと!?抱えあげないでぇぇぇ!?」
そんな2人の掛け合いを見てクルーのテンションは逆に落ちつき、リクのキャラ変貌への疑問にすり替わって行く。
「うぅぅ……なんでこんな事に……」
「それはあれだ、愛のパワーだ」
「だからやめなさいって!」
大笑いしながらリクは手を振ってグラビレイトのコックピットに乗り込む。
「イザナミ、起きてるか?」
『マスター、あんた何やってるんですか?』
再起動の終了したイザナミも先程の光景を見ていたらしい。
「だからキスだっての」
『いや、そうじゃなく……私が寝てる間に何があったんですか……』
「そんなことはどうでもいいさ。少し……俺の中の何かが変わっただけだ」
機体が起動してヘルメット内部に明かりが灯っていく。
「行くぞ、イザナミ。世界にはまだ存在してもらわないと、ミキと過ごせないからな」
リクにジョージはその前で今回の機体の変更点を説明する。
「――以上だ、仕様変更はあるが基本は同じと考えて貰って構わない」
「大体分かりました、これならいけそうです」
屍のように倒れ込んでいる整備班に心の中で感謝をしながらグラビレイトの足元に向かう。
今回の修繕はかなり大掛かりなものになった。
Typeαはすでに実戦に耐えきれない程にボロボロになっていた為Typeβを素体として手を加えている。
演算装置をTypeβのコックピットに移し、背部の巨大なバックパックには回収したTypeγの粒子炉を積んでいて、機体内部の粒子炉もTypeαと
Typeβの粒子炉を一基づつ搭載して三種類の粒子の使用を可能としている。
両機共に使用が難しかった右腕部は新規の物に交換されている。
所要時間14時間強、ぶっ続けの作業は偶然にも次の砲撃にぎりぎり間に合った。
グラビレイトの足元にはクルーが集まっていた。
「今回は戦場まで辿り着けるのがあなたとリキさんの二人だけです。厳しいと思いますが、お願いします」
カルラは深々と頭を下げる。
「リク、俺に出来るのは援護くらいだと思うがやれるだけやるつもりだ。お前は出来るだけ敵を無視して進んでいい」
いつになく真剣なリキには頼もしさを感じる。
「ありがとう、カルラさん、リキ。俺に出来るかどうか、そんなことは言わない。絶対に生きて世界を救って見せる」
頷きながらリクは言う。
キセノを止められるのは自分だけなのだと気持ちを再び引き締める。
「リク、気をつけてね?絶対に帰ってきて」
機体が無い為付いてこれないミキの不安そうな声にリクは頷きかけて少し止まった。
「ちょっといいか、ミキ。こっち来い」
首をかしげながらリクに一歩近づくミキを、リクはグッと引き寄せて顔を寄せる。
それはまさしくキスの体勢だった。
突然の出来事にミキは唖然、クルーは呆然。
たっぷりと5秒はそのままで、ゆっくりと顔を離すリク。
状況を理解したクルーの冷やかしの声で一歩遅れて気付いたミキの顔が真っ赤に染まる。
「な、なななな、な」
「な?よくわからないぞ、ミキ」
ニヤニヤしながらリクはミキの頭をなでる。
「おうおう、大胆だねぇ!」
ゴースがからかうように言うがミキにしか効果が無い。
「仕方ないだろ?だってさっきまでは忙しかったんだからさ!」
誰かが指笛まで鳴らし始めた所でミキの言葉が落ちついてきた。
「いきなり何してるのッ!?」
「何って、キス?」
「そうじゃない!なんで人前で!?」
「いや、だってキスしたかったし?」
「TPOを考えなさい!恥ずかしさで死にそうよ!」
「それは大変だ、医務室まで運んでやろう」
「ちょっと!?抱えあげないでぇぇぇ!?」
そんな2人の掛け合いを見てクルーのテンションは逆に落ちつき、リクのキャラ変貌への疑問にすり替わって行く。
「うぅぅ……なんでこんな事に……」
「それはあれだ、愛のパワーだ」
「だからやめなさいって!」
大笑いしながらリクは手を振ってグラビレイトのコックピットに乗り込む。
「イザナミ、起きてるか?」
『マスター、あんた何やってるんですか?』
再起動の終了したイザナミも先程の光景を見ていたらしい。
「だからキスだっての」
『いや、そうじゃなく……私が寝てる間に何があったんですか……』
「そんなことはどうでもいいさ。少し……俺の中の何かが変わっただけだ」
機体が起動してヘルメット内部に明かりが灯っていく。
「行くぞ、イザナミ。世界にはまだ存在してもらわないと、ミキと過ごせないからな」
2つの光が遠ざかって行く。
ミキは最後の最後でリクの傍にいれない事に少しだけ落ち込む。
光の進む先はここからでも見る事が出来る巨大な要塞。
世界を滅ぼそうとする狂気の塊。
義兄を殺した忌むべき存在。
きっとあの周辺で2人は死闘を繰り広げるのだろう。
「見えなくなっちゃったな」
HBのブースター程度の光ではもうここまで届かない。
自分に出来る事はもう祈るだけ、信じるだけになってしまった。
「そうでもないぞ?」
後ろに立っていたのはリリだった。
ミキは最後の最後でリクの傍にいれない事に少しだけ落ち込む。
光の進む先はここからでも見る事が出来る巨大な要塞。
世界を滅ぼそうとする狂気の塊。
義兄を殺した忌むべき存在。
きっとあの周辺で2人は死闘を繰り広げるのだろう。
「見えなくなっちゃったな」
HBのブースター程度の光ではもうここまで届かない。
自分に出来る事はもう祈るだけ、信じるだけになってしまった。
「そうでもないぞ?」
後ろに立っていたのはリリだった。
「敵機接近、数80」
[こっちでも確認した。とりあえずあの要塞の懐まで飛びこむぞ!]
守護狂神(ガーディアン)はレールガンを連射して敵機を近づけない。
「イザナミ、いけるな?」
『一応OSを書き換えましたから、これなら戦闘も可能です』
「なら行くぞ!」
リクは操縦桿とフットペダルから手足を離すが、グラビレイトの動きは止まらない。
完全に目を閉じて操縦を放棄したリクの代わりに機体を動かしているのはイザナミだ。
リクの操縦パターンを組み込んだOSはイザナミにリクの戦闘行動をトレースさせる。
逆にリクは今までイザナミが行っていた全ての作業を担う。
AIよりも高い演算能力を戦闘の補助に注ぐ。
これがリクが当初からイザナミに行わせようとしていた役割だった。
グラビレイトは接近する敵機の間を猛スピードですり抜ける。
「問題は無い、システムは良好だな」
『ですね。流石私』
「調子に乗るな」
後ろにレーザーが広く放射される。
恐らくは守護狂神の一撃が敵機の群れを呑みこんだのだろう。
「新たに敵機、数138」
『えー、ゴホン……「俺の前に立ったんだ。ただで済むと思うな」』
「待て、俺のものまねは必要か!?しかも似てないし!」
恐らく顔があればドヤ顔をしていたと思われるイザナミに突っ込みを入れる。
『そんなー、今のは会心の出来でしたよ?』
「そもそも声質が違うだろ!?それより敵をどうにかしろよ!」
『仕方ありませんね』
グラビレイトは後ろのバックパックにマウントされている2丁のレーザーライフルを手に取る。
それは質量兵器と重力場兵器を無効化してくる反重力場粒子に対する対抗手段だった。
大型のレーザーライフル、金若王の武装だったそれを構えて連射する。
若干の威力の低下は否めないが、それでも充分な破壊力を持っている。
『無人機と有人機で半々ぐらいですかね』
「だな。しかもかなり質の高い奴等が多い」
機体をその場で反転させて進行方向を変える。
直前までグラビレイトが攻撃を行っていた宙域がレーザーの弾幕に呑まれていく。
常に意識を向けなければならない味方の位置も、戦闘を行うのがAIなら常に把握できて、補助を行うのが人間ならその細かいタイミングを見抜
ける。
2人にとって理想的な戦闘スタイルが実現している。
「イザナミ、要塞のハッチに取り付け。ルートは示す。リキ、しばらくこの機体はイザナミだけで動かす。フォロー頼んだ!」
[分かってるが……速過ぎるっての!]
必死にグラビレイトの後を追う守護狂神には被弾は見られない。
『新装備、過密重力場制御腕、起動!』
右手に所持したレーザーライフルをマウントして、交換された右腕に重力場粒子を集中させる。
本来ならば過密重力場、つまりブラックホールにはグラビレイトも耐えられない。
グラビティジェネレーターの爆発に巻き込まれたVer.assaultの右足と同じ結末をたどる。
だが、反重力場粒子を一定量使用すれば耐える事が出来る。
その機能を右腕に発揮させるべく集中して粒子経路が作られている。
「15秒だけこっちに敵を近づけるな!」
[無茶言いやがるな!この野郎!]
レーザーウォールを展開した守護狂神は接近する敵機をレールガンで撃ち抜いて行く。
その隙にグラビレイトは要塞の側面にあるハッチにたどりつく。
『必ィィィッ殺!グラビティィィィ、ナッコォォォォォ!』
要塞表面に重力場が触れた瞬間、嫌な音を立ててハッチが吹き飛ぶ。
「お前、テンションおかしいだろ!?」
『ストレス解消ですよ』
いきなり叫んだ本人であるイザナミはいつもの口調に戻っている。
『マスターもやってみたらどうです?きっと積年の恨みもスッキリしますよ』
「お前なぁ……いや、分かったよ……」
コックピットから要塞内部に入り込むリク。
グラビレイトは既に接近してきた敵機を回収したTypeγのブレードで斬りつける。
「少し行ってくる……ありがとな、イザナミ。感謝してる」
『その台詞……マスターに死亡フラグが立ちましたね。ヤッタ!』
「ヤッタ!、じゃねぇ!」
リクはツッコミと共に要塞内部に姿を消した。
[こっちでも確認した。とりあえずあの要塞の懐まで飛びこむぞ!]
守護狂神(ガーディアン)はレールガンを連射して敵機を近づけない。
「イザナミ、いけるな?」
『一応OSを書き換えましたから、これなら戦闘も可能です』
「なら行くぞ!」
リクは操縦桿とフットペダルから手足を離すが、グラビレイトの動きは止まらない。
完全に目を閉じて操縦を放棄したリクの代わりに機体を動かしているのはイザナミだ。
リクの操縦パターンを組み込んだOSはイザナミにリクの戦闘行動をトレースさせる。
逆にリクは今までイザナミが行っていた全ての作業を担う。
AIよりも高い演算能力を戦闘の補助に注ぐ。
これがリクが当初からイザナミに行わせようとしていた役割だった。
グラビレイトは接近する敵機の間を猛スピードですり抜ける。
「問題は無い、システムは良好だな」
『ですね。流石私』
「調子に乗るな」
後ろにレーザーが広く放射される。
恐らくは守護狂神の一撃が敵機の群れを呑みこんだのだろう。
「新たに敵機、数138」
『えー、ゴホン……「俺の前に立ったんだ。ただで済むと思うな」』
「待て、俺のものまねは必要か!?しかも似てないし!」
恐らく顔があればドヤ顔をしていたと思われるイザナミに突っ込みを入れる。
『そんなー、今のは会心の出来でしたよ?』
「そもそも声質が違うだろ!?それより敵をどうにかしろよ!」
『仕方ありませんね』
グラビレイトは後ろのバックパックにマウントされている2丁のレーザーライフルを手に取る。
それは質量兵器と重力場兵器を無効化してくる反重力場粒子に対する対抗手段だった。
大型のレーザーライフル、金若王の武装だったそれを構えて連射する。
若干の威力の低下は否めないが、それでも充分な破壊力を持っている。
『無人機と有人機で半々ぐらいですかね』
「だな。しかもかなり質の高い奴等が多い」
機体をその場で反転させて進行方向を変える。
直前までグラビレイトが攻撃を行っていた宙域がレーザーの弾幕に呑まれていく。
常に意識を向けなければならない味方の位置も、戦闘を行うのがAIなら常に把握できて、補助を行うのが人間ならその細かいタイミングを見抜
ける。
2人にとって理想的な戦闘スタイルが実現している。
「イザナミ、要塞のハッチに取り付け。ルートは示す。リキ、しばらくこの機体はイザナミだけで動かす。フォロー頼んだ!」
[分かってるが……速過ぎるっての!]
必死にグラビレイトの後を追う守護狂神には被弾は見られない。
『新装備、過密重力場制御腕、起動!』
右手に所持したレーザーライフルをマウントして、交換された右腕に重力場粒子を集中させる。
本来ならば過密重力場、つまりブラックホールにはグラビレイトも耐えられない。
グラビティジェネレーターの爆発に巻き込まれたVer.assaultの右足と同じ結末をたどる。
だが、反重力場粒子を一定量使用すれば耐える事が出来る。
その機能を右腕に発揮させるべく集中して粒子経路が作られている。
「15秒だけこっちに敵を近づけるな!」
[無茶言いやがるな!この野郎!]
レーザーウォールを展開した守護狂神は接近する敵機をレールガンで撃ち抜いて行く。
その隙にグラビレイトは要塞の側面にあるハッチにたどりつく。
『必ィィィッ殺!グラビティィィィ、ナッコォォォォォ!』
要塞表面に重力場が触れた瞬間、嫌な音を立ててハッチが吹き飛ぶ。
「お前、テンションおかしいだろ!?」
『ストレス解消ですよ』
いきなり叫んだ本人であるイザナミはいつもの口調に戻っている。
『マスターもやってみたらどうです?きっと積年の恨みもスッキリしますよ』
「お前なぁ……いや、分かったよ……」
コックピットから要塞内部に入り込むリク。
グラビレイトは既に接近してきた敵機を回収したTypeγのブレードで斬りつける。
「少し行ってくる……ありがとな、イザナミ。感謝してる」
『その台詞……マスターに死亡フラグが立ちましたね。ヤッタ!』
「ヤッタ!、じゃねぇ!」
リクはツッコミと共に要塞内部に姿を消した。
「どけどけどけどけぇ!!」
守護狂神にレールガンを連射させながらグラビレイトを追うリキ。
真後ろに到着すると同時に機体を反転、三半規管が悲鳴を上げて軽く戻しそうになる。
「うぉっぷ……」
『さっきの雄たけびはどうしたんですか?』
「だ……黙ってろ……リクみたいに慣れてたり、お前みたいに何も感じない奴は別だけどよぉ……」
ぐらつく頭でコンソールを叩いてレールガンの余剰熱を放熱する。
「俺、つい1日前に初めて宇宙に来て、この機動は普通に酔うっての!」
両肩のレーザーで迫る機体を吹き飛ばす間に、グラビレイトは戦闘の準備を終える。
『私、離れると色々大変なんで基本動きませんよ?』
「分かってるっての。その為の俺だろうが」
攻撃範囲外からの敵機にレールガンを向ける。
実弾、レーザー入り混じる波状攻撃をレーザーウォールでねじ伏せる。
「いくらこっちの装甲を軽くしようが……」
グラビレイトの援護を受けながらもレールガンをさらに撃ち続ける。
「当たらなきゃ意味がねぇだろ!」
リクが戻るまで、何があってもグラビレイトを守りきる。
あいつの背中を守れるだけの力を得た仲間の事を、リクを化物扱いした奴らに見せつけてやる。
『侵入者あり、どうしますか?』
キセノは天駆龍の制御室でその報告を受ける。
アマテラスの報告は予想には無かった展開だ。
「ふむ……とりあえず迎撃。対侵入者用防衛兵器を全部起動しろ」
通路の方からかすかに銃声が聞こえ始めた。
「まさか、直接乗り込んでくるとはね」
『映像出します』
そこには紛れもなく、ハンドガンで防衛兵器に牽制する陸羽の姿が映っていた。
「あいつに何があったかよく分からないが……流石の手腕だな」
気付けば防衛兵器のシステムはクラックされて使いものにならなくなっている。
『な、何で……僕が制御していた筈なのに……』
「まあ、所詮AIだしな。気休め程度にしか考えてなかったが……来るか」
制御室のドアのロックが開けられて、同時に素早く影が飛びだしてくる。
「キィィィセェェノォォォォ!!」
その影、リクは思いっきりキセノを殴った。
「がぁ!?ぐ!」
その勢いで後ろに流されそうになるがそれをリクは掴んで止める。
「なんでこんな事をしてる!」
「いきなり殴ってくるとは思って無かったぞ?お前の事だから出会いがしらに俺を撃ち殺すかと思ってたが?」
「黙れ、そんな事は聞いて無い!世界をなぜ滅ぼそうとするんだ!」
「いきなりだな……まったく……菜穂が泣いたからだ。あいつは世界から敵視されて、日本の中にも味方は俺しかいなかった。そんな世界なら
、俺にとっては必要ない。なら、滅ぼすしかないだろ?」
「……今すぐにこの要塞を止めろ。俺はまだ、世界にはまだ存在し続けて欲しんだ」
リクはその言葉にキセノの襟首をつかむ手を緩める。
キセノはそんなリクの態度に怪訝な表情をする。
「殺さないのか?せっかく俺がここに居るのに?」
「殺す必要があるか?」
リクは即答する。
「お前は俺を許せないんだろ?そんな風にお前の体を化物にした俺を」
「ああ、許せない」
「なら殺せばいい。それはお前が望んだ、化物として望んだ事だろ?」
キセノはリクの心に働きかけようと言葉を紡ぐが、思ったよりもリクの反応は薄い。
「……なぜ黙っている?」
「許せない、確かにお前は俺をこんな身体にして、クーリをそそのかして、今は世界を滅ぼそうとしている。でもな……」
リクは顔を上げる。
そこには憎しみなど籠っていない。
「お前がそんな風に狂気に染まってる理由ってのは菜穂さんなんだろ?それなら俺にお前を殺す権利は無い」
「黙れよ、今更人間気取りか?許せないなら化物らしく自制も理性もなく殺してみろよ!」
「ああ!許せない!だけどお前の考えを理解は出来る!一発殴るだけでチャラにしてやる!だから、俺はお前を殺さない!」
キセノは何も言えない。
前提条件から違っていたのだ。
今のリクは決してキセノを怒りにまかせて殺そうとしない。
「あぁ……そうかよ……だけど俺はお前を許せない。菜穂を直接的に死に追いやったのはお前だ」
「分かってる、別にただで許してもらおうとは思ってない。俺の命以外なら何でもやる。好きにしろ」
「命以外?はッ、侮様に命乞いか?ふざけてんじゃねぇ!世界を滅ぼしてもまだ足りないこの怒りをお前の命すら奪わずに解決しろだと!?」
「もう俺の命は仲間の、俺の愛する人の物だ。俺の独断じゃ交渉材料に出来ない」
「そんな理屈で、この世界にどちらも生き延びる事なんてありえねぇんだよ!ガキが理想論を振り回してんじゃねぇ!」
「その理想を実現するのがお前みたいな技術者や、俺みたいな常人じゃない力を持った奴らの仕事だろ!」
「そんな事はッ!……そんな……」
キセノの身体から力が抜ける。
「……そうだな、そうかもな」
「来い、キセノ。菜穂さんだってこんな事は望んでいない筈だ」
リクはそう言うと力を完璧に抜いた。
その瞬間、キセノは勢い良くリクに体当たりをした。
リクの身体は制御室から飛び出て通路の壁に当たる。
「ッぐ!?」
「だけど俺は、技術者じゃなくて、復讐鬼なんだよ。お前みたいに戻る事はない」
そう言うとキセノはコードで繋がっていた端末を引き抜いてリクに投げる。
「ここからはお前と俺の決闘だ。俺が世界を滅ぼすか、お前が世界を救うか。天駆龍の主砲はあと4分で再発射が可能になる。それが俺達の時間
の最期だ」
そう言うとキセノは制御室のドアを閉めてロックをかけ、そして要塞内のロックの制御プログラムを削除した。
「この扉は開かない。お前は外に出るしかないぞ」
「くそ……時間が無いか……」
リクは立ち上がると端末に気付く。
「これ……」
『マスター?……お前はリク・ゼノラスか!』
そこには起動しているAIがいた。
「お前はアマテラス、でいいのか?」
『なんでお前がこの端末を……僕を持っている?』
「いや、キセノが投げてきたみたいだが?」
『ふざけるな!なんでお前なんかと……マスター!答えて下さい、マスター!』
ドアに近づき、アマテラスの声がキセノに聞こえるようにする。
『マスター、なんで僕をこんな奴に渡しているんですか!』
「用済みだからだ。ここから先はお前の役目は俺の所にはない。だがそっちでなら役目ぐらいあるだろう?」
『嫌です!僕が用済みになるとしても僕はマスターの下で―――』
「行け、俺の見つけられなかったモノを見つけに。陸羽、もういい」
それっきりキセノはアマテラスに反応しない。
リクは動こうとして、足を止める。
「キセノ、お前はなんで俺の名前を変えたんだ?」
リクの名前、リク・ゼノラスとはキセノがつけたものだ。
本来は姓は無く、陸羽というコードネームだけだった。
「……お前から羽根を奪いたかった。そんな子供じみた理由だ。姓の方はお前に対する憎しみを増やすために、どうしても許せなかった野郎の
姓をつけた」
「そうか。なら、名前は大事にさせて貰う。意外と気にいってるんだ、リクって名前」
リクはそう言って来た道を戻り始めた。
「っは……結局、飛び立つ羽根を奪ってもちゃんと脚で立ててるのか。地面さえあればあいつはいいってのか……畜生」
キセノはそう言うとコンソールの前に立つ。
守護狂神にレールガンを連射させながらグラビレイトを追うリキ。
真後ろに到着すると同時に機体を反転、三半規管が悲鳴を上げて軽く戻しそうになる。
「うぉっぷ……」
『さっきの雄たけびはどうしたんですか?』
「だ……黙ってろ……リクみたいに慣れてたり、お前みたいに何も感じない奴は別だけどよぉ……」
ぐらつく頭でコンソールを叩いてレールガンの余剰熱を放熱する。
「俺、つい1日前に初めて宇宙に来て、この機動は普通に酔うっての!」
両肩のレーザーで迫る機体を吹き飛ばす間に、グラビレイトは戦闘の準備を終える。
『私、離れると色々大変なんで基本動きませんよ?』
「分かってるっての。その為の俺だろうが」
攻撃範囲外からの敵機にレールガンを向ける。
実弾、レーザー入り混じる波状攻撃をレーザーウォールでねじ伏せる。
「いくらこっちの装甲を軽くしようが……」
グラビレイトの援護を受けながらもレールガンをさらに撃ち続ける。
「当たらなきゃ意味がねぇだろ!」
リクが戻るまで、何があってもグラビレイトを守りきる。
あいつの背中を守れるだけの力を得た仲間の事を、リクを化物扱いした奴らに見せつけてやる。
『侵入者あり、どうしますか?』
キセノは天駆龍の制御室でその報告を受ける。
アマテラスの報告は予想には無かった展開だ。
「ふむ……とりあえず迎撃。対侵入者用防衛兵器を全部起動しろ」
通路の方からかすかに銃声が聞こえ始めた。
「まさか、直接乗り込んでくるとはね」
『映像出します』
そこには紛れもなく、ハンドガンで防衛兵器に牽制する陸羽の姿が映っていた。
「あいつに何があったかよく分からないが……流石の手腕だな」
気付けば防衛兵器のシステムはクラックされて使いものにならなくなっている。
『な、何で……僕が制御していた筈なのに……』
「まあ、所詮AIだしな。気休め程度にしか考えてなかったが……来るか」
制御室のドアのロックが開けられて、同時に素早く影が飛びだしてくる。
「キィィィセェェノォォォォ!!」
その影、リクは思いっきりキセノを殴った。
「がぁ!?ぐ!」
その勢いで後ろに流されそうになるがそれをリクは掴んで止める。
「なんでこんな事をしてる!」
「いきなり殴ってくるとは思って無かったぞ?お前の事だから出会いがしらに俺を撃ち殺すかと思ってたが?」
「黙れ、そんな事は聞いて無い!世界をなぜ滅ぼそうとするんだ!」
「いきなりだな……まったく……菜穂が泣いたからだ。あいつは世界から敵視されて、日本の中にも味方は俺しかいなかった。そんな世界なら
、俺にとっては必要ない。なら、滅ぼすしかないだろ?」
「……今すぐにこの要塞を止めろ。俺はまだ、世界にはまだ存在し続けて欲しんだ」
リクはその言葉にキセノの襟首をつかむ手を緩める。
キセノはそんなリクの態度に怪訝な表情をする。
「殺さないのか?せっかく俺がここに居るのに?」
「殺す必要があるか?」
リクは即答する。
「お前は俺を許せないんだろ?そんな風にお前の体を化物にした俺を」
「ああ、許せない」
「なら殺せばいい。それはお前が望んだ、化物として望んだ事だろ?」
キセノはリクの心に働きかけようと言葉を紡ぐが、思ったよりもリクの反応は薄い。
「……なぜ黙っている?」
「許せない、確かにお前は俺をこんな身体にして、クーリをそそのかして、今は世界を滅ぼそうとしている。でもな……」
リクは顔を上げる。
そこには憎しみなど籠っていない。
「お前がそんな風に狂気に染まってる理由ってのは菜穂さんなんだろ?それなら俺にお前を殺す権利は無い」
「黙れよ、今更人間気取りか?許せないなら化物らしく自制も理性もなく殺してみろよ!」
「ああ!許せない!だけどお前の考えを理解は出来る!一発殴るだけでチャラにしてやる!だから、俺はお前を殺さない!」
キセノは何も言えない。
前提条件から違っていたのだ。
今のリクは決してキセノを怒りにまかせて殺そうとしない。
「あぁ……そうかよ……だけど俺はお前を許せない。菜穂を直接的に死に追いやったのはお前だ」
「分かってる、別にただで許してもらおうとは思ってない。俺の命以外なら何でもやる。好きにしろ」
「命以外?はッ、侮様に命乞いか?ふざけてんじゃねぇ!世界を滅ぼしてもまだ足りないこの怒りをお前の命すら奪わずに解決しろだと!?」
「もう俺の命は仲間の、俺の愛する人の物だ。俺の独断じゃ交渉材料に出来ない」
「そんな理屈で、この世界にどちらも生き延びる事なんてありえねぇんだよ!ガキが理想論を振り回してんじゃねぇ!」
「その理想を実現するのがお前みたいな技術者や、俺みたいな常人じゃない力を持った奴らの仕事だろ!」
「そんな事はッ!……そんな……」
キセノの身体から力が抜ける。
「……そうだな、そうかもな」
「来い、キセノ。菜穂さんだってこんな事は望んでいない筈だ」
リクはそう言うと力を完璧に抜いた。
その瞬間、キセノは勢い良くリクに体当たりをした。
リクの身体は制御室から飛び出て通路の壁に当たる。
「ッぐ!?」
「だけど俺は、技術者じゃなくて、復讐鬼なんだよ。お前みたいに戻る事はない」
そう言うとキセノはコードで繋がっていた端末を引き抜いてリクに投げる。
「ここからはお前と俺の決闘だ。俺が世界を滅ぼすか、お前が世界を救うか。天駆龍の主砲はあと4分で再発射が可能になる。それが俺達の時間
の最期だ」
そう言うとキセノは制御室のドアを閉めてロックをかけ、そして要塞内のロックの制御プログラムを削除した。
「この扉は開かない。お前は外に出るしかないぞ」
「くそ……時間が無いか……」
リクは立ち上がると端末に気付く。
「これ……」
『マスター?……お前はリク・ゼノラスか!』
そこには起動しているAIがいた。
「お前はアマテラス、でいいのか?」
『なんでお前がこの端末を……僕を持っている?』
「いや、キセノが投げてきたみたいだが?」
『ふざけるな!なんでお前なんかと……マスター!答えて下さい、マスター!』
ドアに近づき、アマテラスの声がキセノに聞こえるようにする。
『マスター、なんで僕をこんな奴に渡しているんですか!』
「用済みだからだ。ここから先はお前の役目は俺の所にはない。だがそっちでなら役目ぐらいあるだろう?」
『嫌です!僕が用済みになるとしても僕はマスターの下で―――』
「行け、俺の見つけられなかったモノを見つけに。陸羽、もういい」
それっきりキセノはアマテラスに反応しない。
リクは動こうとして、足を止める。
「キセノ、お前はなんで俺の名前を変えたんだ?」
リクの名前、リク・ゼノラスとはキセノがつけたものだ。
本来は姓は無く、陸羽というコードネームだけだった。
「……お前から羽根を奪いたかった。そんな子供じみた理由だ。姓の方はお前に対する憎しみを増やすために、どうしても許せなかった野郎の
姓をつけた」
「そうか。なら、名前は大事にさせて貰う。意外と気にいってるんだ、リクって名前」
リクはそう言って来た道を戻り始めた。
「っは……結局、飛び立つ羽根を奪ってもちゃんと脚で立ててるのか。地面さえあればあいつはいいってのか……畜生」
キセノはそう言うとコンソールの前に立つ。
「イザナミ、聞こえるか?」
『モチのロンです。 混一、混老、対々、三暗刻、役々、小三元で数え役満です』
[それは麻雀だろ!?]
相変わらず暴走しているイザナミを呼びつけて乗り込もうとするリク。
守護狂神は援護を行っているが、その攻撃を掻い潜ってきた敵機がグラビレイトに接近する。
「ヤバい!?」
『マスター、離れて!』
攻撃に移れないグラビレイトを危惧してイザナミがリクを引き離そうとする。
[動かないで!]
しかしその声が届くとイザナミは反射的に動きを止め、グラビレイトを狙う敵機が爆散する。
[生きてるか、リク!?]
「あ、あぁ。大丈夫だ、リキ。今のは何だ?白い光線?」
リクが捕えたのは白い光の筋が敵機を貫いた事。
次々とその光は周囲の敵機を破壊していく。
[大丈夫だった?リク]
「ミキ?これは何だ?」
攻撃を行っているにしても姿を確認できない。
だが方角はつかめている。
スタークがある筈の方向だ。
『モチのロンです。 混一、混老、対々、三暗刻、役々、小三元で数え役満です』
[それは麻雀だろ!?]
相変わらず暴走しているイザナミを呼びつけて乗り込もうとするリク。
守護狂神は援護を行っているが、その攻撃を掻い潜ってきた敵機がグラビレイトに接近する。
「ヤバい!?」
『マスター、離れて!』
攻撃に移れないグラビレイトを危惧してイザナミがリクを引き離そうとする。
[動かないで!]
しかしその声が届くとイザナミは反射的に動きを止め、グラビレイトを狙う敵機が爆散する。
[生きてるか、リク!?]
「あ、あぁ。大丈夫だ、リキ。今のは何だ?白い光線?」
リクが捕えたのは白い光の筋が敵機を貫いた事。
次々とその光は周囲の敵機を破壊していく。
[大丈夫だった?リク]
「ミキ?これは何だ?」
攻撃を行っているにしても姿を確認できない。
だが方角はつかめている。
スタークがある筈の方向だ。
スタークの艦底、レールガンの先端で1機の機体が銃を構えている。
「全弾命中だぜ!さっすがだね!」
リリは狭いコックピットの中で叫ぶ。
「ちょっと、暴れると見えないってば!」
伸ばした手でモニターを遮るリリに文句を言うシエル。
「次弾装填、粒子チャージ開始」
ミキは1人落ちついて狙いを定める。
3人が乗っているのはボロボロだったTypeαを素体としてラウルが改良した物。
とは言っても修繕は最低限しかなされておらず、修繕された部位もつぎはぎである。
右足は金属フレームが露出していて、さらに取ってつけた様な細かいサブアームを機体固定用にスタークに取りつかせている。
左腕は肘から先は重力場レールガンの長距離狙撃型が直接装着されている。
機体各部からは大量のコードとチューブが繋がっていて、艦内に設置されている大型コンデンサーに粒子をチャージする役目を担っている。
グラビレイトVer.snipe――それはいくつかの力を合わせて初めて使える機体だった。
常人では見えない距離を見抜いて狙撃を可能にするリリ、常人では出来ない程の演算で大量の粒子を制御するシエル、そして全ての情報から的
確な攻撃ポイントを見抜くミキ。
3人の連携が不可能な超長距離狙撃を可能にしている。
[まさかふざけて作ったこのコンデンサーが役に立つ日が来るとは……]
ラウルのぼやきは3人には聴こえていない。
このコンデンサーは作ったはいいものの、あまりにも巨大すぎて艦に搭載しなければ使用不可という実戦ではなく研究用に作った代物だ。
[まて、ちょっとうるさい、事情を説明してくれ!]
「まぁ、援護したいなと思ったからさ」
リクの疑問にリリが答える。
[だからって簡単にできるのか!?]
「リク君が帰ってくる前からラウル君を働かせて作ったんだって」
シエルは何気なく言うがリクは思わずラウルに合掌した。
[まあ、いいや。ありがとう、助かった]
「とりあえず抜けて来た奴らは撃ち抜くから、リクは急いでそいつを止めて!」
リリから送られてくる視覚情報で狙いを定めてトリガーを引くミキ。
[わかってる!あと2分で止めなきゃ発射されるらしいからな!]
「2分!?ちょっと待って、急がなきゃ間にあわないじゃない!」
砲塔を破壊するには1分以上かかると思われる。
あと2分では時間の余裕的には1分以下だ。
[お前らにも援護を頼む、ミキ、リリ]
「あ、私もいるよ!」
シエルの声が通信に乗る前にリクは回線を切った。
「私の扱いって……」
1人涙ぐむシエルを気にも留めず、ミキは戦闘の光を見て呟く。
「リク、信じてるから」
「全弾命中だぜ!さっすがだね!」
リリは狭いコックピットの中で叫ぶ。
「ちょっと、暴れると見えないってば!」
伸ばした手でモニターを遮るリリに文句を言うシエル。
「次弾装填、粒子チャージ開始」
ミキは1人落ちついて狙いを定める。
3人が乗っているのはボロボロだったTypeαを素体としてラウルが改良した物。
とは言っても修繕は最低限しかなされておらず、修繕された部位もつぎはぎである。
右足は金属フレームが露出していて、さらに取ってつけた様な細かいサブアームを機体固定用にスタークに取りつかせている。
左腕は肘から先は重力場レールガンの長距離狙撃型が直接装着されている。
機体各部からは大量のコードとチューブが繋がっていて、艦内に設置されている大型コンデンサーに粒子をチャージする役目を担っている。
グラビレイトVer.snipe――それはいくつかの力を合わせて初めて使える機体だった。
常人では見えない距離を見抜いて狙撃を可能にするリリ、常人では出来ない程の演算で大量の粒子を制御するシエル、そして全ての情報から的
確な攻撃ポイントを見抜くミキ。
3人の連携が不可能な超長距離狙撃を可能にしている。
[まさかふざけて作ったこのコンデンサーが役に立つ日が来るとは……]
ラウルのぼやきは3人には聴こえていない。
このコンデンサーは作ったはいいものの、あまりにも巨大すぎて艦に搭載しなければ使用不可という実戦ではなく研究用に作った代物だ。
[まて、ちょっとうるさい、事情を説明してくれ!]
「まぁ、援護したいなと思ったからさ」
リクの疑問にリリが答える。
[だからって簡単にできるのか!?]
「リク君が帰ってくる前からラウル君を働かせて作ったんだって」
シエルは何気なく言うがリクは思わずラウルに合掌した。
[まあ、いいや。ありがとう、助かった]
「とりあえず抜けて来た奴らは撃ち抜くから、リクは急いでそいつを止めて!」
リリから送られてくる視覚情報で狙いを定めてトリガーを引くミキ。
[わかってる!あと2分で止めなきゃ発射されるらしいからな!]
「2分!?ちょっと待って、急がなきゃ間にあわないじゃない!」
砲塔を破壊するには1分以上かかると思われる。
あと2分では時間の余裕的には1分以下だ。
[お前らにも援護を頼む、ミキ、リリ]
「あ、私もいるよ!」
シエルの声が通信に乗る前にリクは回線を切った。
「私の扱いって……」
1人涙ぐむシエルを気にも留めず、ミキは戦闘の光を見て呟く。
「リク、信じてるから」
「行くぞイザナミ。実力行使しかもう手段は無い」
『了解です、今度は砲塔殴ってみますか?』
「粒子チャージが間にあわない、内部から破壊する」
グラビレイトが行動を開始する。
砲塔付近は敵機の数が少ない。
恐らくは砲撃の際の邪魔にならない様にしているのだろう。
わずかにいた敵機にレーザーライフルを向ける。
放たれた2つのレーザーは2機に命中、だが敵機はまだ15機いる。
上方と下方の両側から近接戦を仕掛けてくる4機にグラビレイトは反応しない。
なぜなら既に攻撃は届いている。
真下からのレーザーに対応する事も出来ずに敵機が爆発する。
重力場粒子で光を捻じ曲げ、反重力場粒子でそれによる周囲への影響を無効化する。
真空の状態でも使えるようになったリフレクションをこちらからの攻撃を当てるために使用する。
あっという間に14機を破壊するが、1機だけは生き延びている。
その機体に注意を向けるとリクは顔をゆがませる。
光を呑みこむような光沢の無い黒、背中には悪魔の羽根のようにウイングブースターが広がっている。
宇宙での高機動を実現するために機体各部にブースターが増設され、関節の可動域を広めるために装甲は少なめになっている。
機体の全長よりも長い巨大なブレードを構えるその機体の肩には、銀色の騎士の鎧の頭部のモチーフが赤いバツを塗り重ねられている。
[見つけたぞ、白い魔弾、完成孤児(パーフェクトアーミー)陸羽!]
「銀騎士か!」
[違うなァ!今の私はただの!お前に挑む者だ!]
構えたブレードを身体で包み込むように振り下ろしてくる銀騎士に、粒子を纏わせたブレードで受ける。
『結構重いですね……』
[さあ、俺にお前と戦わせろ!]
粘つくような感情をぶつけてくる銀騎士にリクはキレる。
「世界が滅亡の危機に瀕してるってのに戦ってる場合か!そこをどけ!」
[それがどうした!俺にとってはお前と戦う事だけが世界のすべてだ!]
「部下の仇討なら後で相手してやるってんだよ!」
[仇討?違うな!]
鍔迫り合いから弾けるように機体を引き離す。
細かく斬り込もうとするが全てを巨大な刀身に弾かれる。
[俺が戦うのは俺の為にだ!お前のような強い奴と戦う事を望んでいたんだよォォ!]
「は?何だと?」
遠心力にブースターの出力をプラスした連続の薙ぎ払いに細かく対応する。
[最強は戦いたくても戦う相手がいないんだよ!俺は戦う相手にレベルを合わせて近接戦のみ、機体も殆ど手をつけないっていう枷をつけた!俺
を狙ってくるのは強者だけでいい、だからザコに当てる露払いとして聖剣騎士団を従えた!]
「……つまりお前にとっては部下は仲間でなく、選別の為の道具だって事か?」
[当たり前だ!強者を選別するために役立ってくれたあいつらに感謝することはあっても、わざわざ仇討なんてくだらない理由をつけて戦いを汚
す義理はないんだよ!]
銀騎士の機体の肩から放たれたアンカーがグラビレイトに引っ掛かり、そのバランスを崩す。
アンカーに付いたワイヤーを巻き取りながら膝に隠されたパイルバンカーを叩き込もうとする銀騎士に勢いを利用した体当たりをくらわせる。
「お前、腐ってるな」
[腐ってようと何だろうと、俺は戦うためならどうでもいい!]
ワイヤーを切断して距離をとるグラビレイト。
[銀騎士!援護する!]
後ろから追いついてきた有人機が2機程。
『銀騎士を相手にしてる状態で来られたらまずいですよ?』
「分かってる。慌てるな」
次の瞬間、銀騎士は左腕の前腕のグレネードを発射して正確に味方である筈の2機を撃墜する。
[俺の戦いの邪魔をするなァァ!]
銀騎士はそう叫び、そして突っ込んでくる。
[それに、腐っているのはお互い様だ!]
「そう思うか?俺にはお前という人間がよく分かった。その程度で俺に勝てると思っているのなら腹抱えて笑ってやる」
1回だけ斬り結び、後ろに下がるが銀騎士は距離を離さない。
「俺はいつだって、俺を信用した人間を裏切った事は無い!」
[言ってくれるねぇ!それでこそ強敵だ!]
「違うな、無敵だ」
銀騎士の機体を、遥か後方からのミキの援護射撃が絶妙のタイミングで捕える。
[あ?]
左側のウイングブースターを破壊されて姿勢が崩れる銀騎士にグラビレイトは思いっきりブレードを突き立てて、右腕と残ったウイングブース
ターをつなぎとめる。
「愛があるから俺は強いんだ。孤独なお前に負ける訳が無い」
『了解です、今度は砲塔殴ってみますか?』
「粒子チャージが間にあわない、内部から破壊する」
グラビレイトが行動を開始する。
砲塔付近は敵機の数が少ない。
恐らくは砲撃の際の邪魔にならない様にしているのだろう。
わずかにいた敵機にレーザーライフルを向ける。
放たれた2つのレーザーは2機に命中、だが敵機はまだ15機いる。
上方と下方の両側から近接戦を仕掛けてくる4機にグラビレイトは反応しない。
なぜなら既に攻撃は届いている。
真下からのレーザーに対応する事も出来ずに敵機が爆発する。
重力場粒子で光を捻じ曲げ、反重力場粒子でそれによる周囲への影響を無効化する。
真空の状態でも使えるようになったリフレクションをこちらからの攻撃を当てるために使用する。
あっという間に14機を破壊するが、1機だけは生き延びている。
その機体に注意を向けるとリクは顔をゆがませる。
光を呑みこむような光沢の無い黒、背中には悪魔の羽根のようにウイングブースターが広がっている。
宇宙での高機動を実現するために機体各部にブースターが増設され、関節の可動域を広めるために装甲は少なめになっている。
機体の全長よりも長い巨大なブレードを構えるその機体の肩には、銀色の騎士の鎧の頭部のモチーフが赤いバツを塗り重ねられている。
[見つけたぞ、白い魔弾、完成孤児(パーフェクトアーミー)陸羽!]
「銀騎士か!」
[違うなァ!今の私はただの!お前に挑む者だ!]
構えたブレードを身体で包み込むように振り下ろしてくる銀騎士に、粒子を纏わせたブレードで受ける。
『結構重いですね……』
[さあ、俺にお前と戦わせろ!]
粘つくような感情をぶつけてくる銀騎士にリクはキレる。
「世界が滅亡の危機に瀕してるってのに戦ってる場合か!そこをどけ!」
[それがどうした!俺にとってはお前と戦う事だけが世界のすべてだ!]
「部下の仇討なら後で相手してやるってんだよ!」
[仇討?違うな!]
鍔迫り合いから弾けるように機体を引き離す。
細かく斬り込もうとするが全てを巨大な刀身に弾かれる。
[俺が戦うのは俺の為にだ!お前のような強い奴と戦う事を望んでいたんだよォォ!]
「は?何だと?」
遠心力にブースターの出力をプラスした連続の薙ぎ払いに細かく対応する。
[最強は戦いたくても戦う相手がいないんだよ!俺は戦う相手にレベルを合わせて近接戦のみ、機体も殆ど手をつけないっていう枷をつけた!俺
を狙ってくるのは強者だけでいい、だからザコに当てる露払いとして聖剣騎士団を従えた!]
「……つまりお前にとっては部下は仲間でなく、選別の為の道具だって事か?」
[当たり前だ!強者を選別するために役立ってくれたあいつらに感謝することはあっても、わざわざ仇討なんてくだらない理由をつけて戦いを汚
す義理はないんだよ!]
銀騎士の機体の肩から放たれたアンカーがグラビレイトに引っ掛かり、そのバランスを崩す。
アンカーに付いたワイヤーを巻き取りながら膝に隠されたパイルバンカーを叩き込もうとする銀騎士に勢いを利用した体当たりをくらわせる。
「お前、腐ってるな」
[腐ってようと何だろうと、俺は戦うためならどうでもいい!]
ワイヤーを切断して距離をとるグラビレイト。
[銀騎士!援護する!]
後ろから追いついてきた有人機が2機程。
『銀騎士を相手にしてる状態で来られたらまずいですよ?』
「分かってる。慌てるな」
次の瞬間、銀騎士は左腕の前腕のグレネードを発射して正確に味方である筈の2機を撃墜する。
[俺の戦いの邪魔をするなァァ!]
銀騎士はそう叫び、そして突っ込んでくる。
[それに、腐っているのはお互い様だ!]
「そう思うか?俺にはお前という人間がよく分かった。その程度で俺に勝てると思っているのなら腹抱えて笑ってやる」
1回だけ斬り結び、後ろに下がるが銀騎士は距離を離さない。
「俺はいつだって、俺を信用した人間を裏切った事は無い!」
[言ってくれるねぇ!それでこそ強敵だ!]
「違うな、無敵だ」
銀騎士の機体を、遥か後方からのミキの援護射撃が絶妙のタイミングで捕える。
[あ?]
左側のウイングブースターを破壊されて姿勢が崩れる銀騎士にグラビレイトは思いっきりブレードを突き立てて、右腕と残ったウイングブース
ターをつなぎとめる。
「愛があるから俺は強いんだ。孤独なお前に負ける訳が無い」
「何で……」
何故勝てないのか。
機体を大幅に改造に隠し武器と中距離の射撃武器という今までの自分の枷を全てはずす行為、そして粒子を使用した戦闘。
考えうる最高の状態でも勝利は出来なかった。
最後の言葉、愛があるから強い。
孤独は弱い。
だが無理だろう?
何をやっても上手くできてしまう人間に向けられる感情など、嫉妬や恨みだけだ。
だから強い奴を、自分と対等の才能を持つ者を探して、俺は……
「戦ってたんだろう……」
ただ、仲間が欲しかっただけじゃないか。
孤独は嫌だから、寂しいのは勉強でも運動でも埋まらないから、探してたのに。
だから青年は泣く。
銀騎士というエースでは無く、ロイク・アルカリオという1人の人間として泣く。
[もし、その意味が理解できたのなら俺の仲間たちを見せてやる。そこでは俺も、ただの人間になれる。戦争が終わった時に、また会える事を願
ってる]
そう言い残してグラビレイトは飛び去った。
『もう発射まで1分切ってます!もう間にあわないんじゃ―――』
「弱音を吐くなって!このポイントに行け!」
リクは要塞の主砲の射線の中心を示す。
『死ぬ気ですか!?Typeγの末路を見てたでしょ!?』
「制御はこっちに渡せ!俺だって死ぬ気は無い!」
グラビレイトは光る砲塔と対峙する。
[リク!もう間にあわない!離れて!]
ミキが通信で叫ぶ。
「大丈夫、死なないからさ」
[そん――責に―なこ――ってないで――――]
通信が乱れて途切れる。
「心配掛けちゃったか。後で死ぬほど謝らないと……」
『私達、現在進行形で死にかけてますからね!?』
「だから心配いらないんだって」
右腕を前に付き出して主砲を受ける準備をする。
「粒子炉を限界まで稼働させて一気に発電をしろ!粒子の制御を――全て乗っ取る!」
真正面から粒子砲撃を掌で受ける。
「重力場、粒子輪精製開始!」
右腕の周りに黒い粒子の輪が生まれる。
「ぐ、がぁぁあああ!」
必死に粒子の制御パターンを読み取り、奪った粒子を粒子輪にして右腕に蓄積する。
『粒子蓄積限界まで30%……25%……20%……』
イザナミが粒子を制御できる限界までのリミットを読み上げる。
『15%……10%、もう限界です!』
「いや、まだだ!」
『5%……限界――』
「解放!」
粒子輪が真正面から粒子砲撃にぶつける。
拮抗する粒子がさらに空間をきしませる。
「いっ………けぇぇぇぇぇ!」
そしてついに、要塞からの粒子砲撃が途切れる。
粒子の残滓を押し退けながら粒子輪が突き進んで要塞の砲口から入り込み、突き抜ける。
「キセノ、お前の負けだ!今すぐ脱出しろ!」
[やっぱり、上手くいかないなぁ……]
声が聞こえてきた。
それは何かを諦めるような声色だった。
[俺が世界を許せなかっただけなんだろうな……]
「聴こえているのか!キセノ!」
[そうだよ、お前はこんな事は望んでいなかった……]
要塞が爆発を起こして崩れ去って行く。
もう、間にあわない。
[今更思い出したよ……誰よりも平和を望んだお前が、戦いを嫌ったお前が、なぁ……菜穂]
声はもう聴こえない。
それは誰に語りかけることなく、自分の中に語りかけるだけのように思えた。
死んでしまった。
だが、それは望んだ結果なのだろう。
「……帰ろうか、イザナミ」
『……分かりました』
過負荷の掛かった機体の各部は紫電を散らすが、それも歩みを止める理由になりはしない。
何故勝てないのか。
機体を大幅に改造に隠し武器と中距離の射撃武器という今までの自分の枷を全てはずす行為、そして粒子を使用した戦闘。
考えうる最高の状態でも勝利は出来なかった。
最後の言葉、愛があるから強い。
孤独は弱い。
だが無理だろう?
何をやっても上手くできてしまう人間に向けられる感情など、嫉妬や恨みだけだ。
だから強い奴を、自分と対等の才能を持つ者を探して、俺は……
「戦ってたんだろう……」
ただ、仲間が欲しかっただけじゃないか。
孤独は嫌だから、寂しいのは勉強でも運動でも埋まらないから、探してたのに。
だから青年は泣く。
銀騎士というエースでは無く、ロイク・アルカリオという1人の人間として泣く。
[もし、その意味が理解できたのなら俺の仲間たちを見せてやる。そこでは俺も、ただの人間になれる。戦争が終わった時に、また会える事を願
ってる]
そう言い残してグラビレイトは飛び去った。
『もう発射まで1分切ってます!もう間にあわないんじゃ―――』
「弱音を吐くなって!このポイントに行け!」
リクは要塞の主砲の射線の中心を示す。
『死ぬ気ですか!?Typeγの末路を見てたでしょ!?』
「制御はこっちに渡せ!俺だって死ぬ気は無い!」
グラビレイトは光る砲塔と対峙する。
[リク!もう間にあわない!離れて!]
ミキが通信で叫ぶ。
「大丈夫、死なないからさ」
[そん――責に―なこ――ってないで――――]
通信が乱れて途切れる。
「心配掛けちゃったか。後で死ぬほど謝らないと……」
『私達、現在進行形で死にかけてますからね!?』
「だから心配いらないんだって」
右腕を前に付き出して主砲を受ける準備をする。
「粒子炉を限界まで稼働させて一気に発電をしろ!粒子の制御を――全て乗っ取る!」
真正面から粒子砲撃を掌で受ける。
「重力場、粒子輪精製開始!」
右腕の周りに黒い粒子の輪が生まれる。
「ぐ、がぁぁあああ!」
必死に粒子の制御パターンを読み取り、奪った粒子を粒子輪にして右腕に蓄積する。
『粒子蓄積限界まで30%……25%……20%……』
イザナミが粒子を制御できる限界までのリミットを読み上げる。
『15%……10%、もう限界です!』
「いや、まだだ!」
『5%……限界――』
「解放!」
粒子輪が真正面から粒子砲撃にぶつける。
拮抗する粒子がさらに空間をきしませる。
「いっ………けぇぇぇぇぇ!」
そしてついに、要塞からの粒子砲撃が途切れる。
粒子の残滓を押し退けながら粒子輪が突き進んで要塞の砲口から入り込み、突き抜ける。
「キセノ、お前の負けだ!今すぐ脱出しろ!」
[やっぱり、上手くいかないなぁ……]
声が聞こえてきた。
それは何かを諦めるような声色だった。
[俺が世界を許せなかっただけなんだろうな……]
「聴こえているのか!キセノ!」
[そうだよ、お前はこんな事は望んでいなかった……]
要塞が爆発を起こして崩れ去って行く。
もう、間にあわない。
[今更思い出したよ……誰よりも平和を望んだお前が、戦いを嫌ったお前が、なぁ……菜穂]
声はもう聴こえない。
それは誰に語りかけることなく、自分の中に語りかけるだけのように思えた。
死んでしまった。
だが、それは望んだ結果なのだろう。
「……帰ろうか、イザナミ」
『……分かりました』
過負荷の掛かった機体の各部は紫電を散らすが、それも歩みを止める理由になりはしない。
あいつが望んだ結果なら、認めなければならない。
たった一人の為に世界を相手にとって、そして逃げる事もせずに死んでいく。
それも悪くは無い。
なら、俺は何を望むだろう?
今は……とりあえず、彼女と共に歩きつづけよう。
歩いて歩いて、戦って、自分の意味をまっとう出来れば、それでいい。
その一歩はまず、スタークの外にまで出迎えてくれた彼女を抱きしめる所から、多分始まる。
たった一人の為に世界を相手にとって、そして逃げる事もせずに死んでいく。
それも悪くは無い。
なら、俺は何を望むだろう?
今は……とりあえず、彼女と共に歩きつづけよう。
歩いて歩いて、戦って、自分の意味をまっとう出来れば、それでいい。
その一歩はまず、スタークの外にまで出迎えてくれた彼女を抱きしめる所から、多分始まる。
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