太平洋上、スタークは連邦の追撃部隊と戦闘を行っている。
物量の差が大きく開いているが質で巻き返している。
しかし、そのバランスも完璧では無い。一隻の戦艦がスタークに迫る。
照準が合わされ、後は指示を出すだけでその砲撃は放たれる。
だがその瞬間、スタークの艦底レールガンが先に放たれる。
そして敵艦の艦首が一気に持ち上がった。
「いてて……最高出力で射出しやがったな、ラウル……」
リクは衝撃と共に射出されて目の前の艦に激突していた。
『第一層粒子皮膜剥離、最高速じゃなければむしろ危険なんですよ』
「え?それって……ああ、なるほど」
イザナミの言葉の意味は機体を見ればすぐに分かった。
純白だった機体の色は黒くなっている。しかし焼け焦げた訳ではない。
その証拠に黒くない部分、白い銃のモチーフが見えるからだ。
新たなグラビレイトの姿、それはかなり特殊な見た目だった。
機体サイズは継ぎ足された追加装甲で中型2区分クラスまで大きくなり、その両肩には円筒形を横にした様な武装が一体化している。
両足は延長され1.3倍ほどに、その足先は完璧にブースターになっていて地面に接する事が出来ない。
背中のブースターはロケットを4つつけた様な物に交換されていて、そのロケットがそれぞれ根元から動くようになっている。
両腕には白い銃のモチーフが描かれた1つで機体の半分を隠せる巨大なシールド、胸部装甲は分厚い物を取り付けられている。
機体色は装甲の隙間からわずかにのぞく白が見えるだけで、他は全て漆黒に包まれている。
[リク、生きてるか?]
「本気で撃ちやがった奴の言う事じゃない」
ラウルからの通信に顔をしかめて言う。
[死ぬわけ無いって、そういう仕掛けもあっただろ?]
「粒子皮膜なんて、よく考えついたな」
最初の白い塗装、そこにはTypeβの重力偏向粒子が混ぜられていた。
その粒子の効果でかかるGを軽減、威力の向上した体当たりを敵に当てる事が可能になっている。
『グラビティジェネレーター稼働状況、正常。発電量にも問題ありません。続いて演算領域の取得開始……リンク成功。立体型戦略盤、起動し
ます』
新型のジェネレーターとシエルの使っていた立体型戦略盤、この2つがあって初めてリクはこの機体で本気を出せる。
[リク、大丈夫?すごい音がしたけど……]
[リク!生きてるか!?今レールガンで飛んだよな!?]
リリとミキが同時にしゃべりかけてくる。
「生きてるよ。大丈夫だから少し声のボリューム下げて!グワングワンする!!」
だんだん人の話を聞かずにヒートアップする2人の声に挟まれて、リクは頭を振る。
[あ、ああ。悪い]
[生きてるなら大丈夫だな。……後でラウルを殴らなきゃな]
ラウルにこっそり追悼の念を送るとリクは顔をあげてイザナミに支持を出そうと―――
『あ、マスター。射撃来ます』
「そしてお前はロックされたらすぐに言ってくれよ!」
『だって、私も頑張ってたんですよ?マスターが女の子といちゃいちゃしてる間もセットアップとか』
「いちゃいちゃって何!?それよりすぐにリンクを!その間の回避は任せる!」
連邦には手が知られている為、実弾とレーザーが混じって飛んでくる。
イザナミがオートパイロットでそれをかわし、リクはそれを意識の外に追いやりヘルメットを通して自分を情報へ沈めていく。
立体型戦略盤。
戦況の様子を子機を通して観測し、その様子を立体投射機で映し出す装置。
そこから無人機の部隊への指示や、有人機の指揮が可能になる。
膨大な並行処理能力と指揮能力がなければ使いこなせない無名の決戦兵器。
大規模な装置だがその中身は単純で、巨大な演算処理装置と立体投射機がくっ付いている様なものだ。
そこに子機との大容量通信装置と、戦況を操作するための巨大スクリーンがつく。
つまり、無駄な装置を省けばグラビレイトに搭載できるほどに小型化できる。
通信領域を拡大するために取り付けた両肩の武装についた巨大アンテナを足がかりにして、リクは意識を広げていく。
脳波で直接電子情報を操り、自分が電子世界に入り込んだような錯覚に陥る。
膨大な演算処理装置が第二の脳として稼働し始める。
「よし、弾丸の軌道および粒子操作、演算……完了。イザナミ、もういい」
『オート操作切ります』
せわしなく弾丸を避けていたグラビレイトは動きを止め、そこに大量の弾丸が降り注ぐ。
実弾を防ぐ重力場フィールド。レーザーを曲げるリフレクション。
演算と電力の二つの不足の問題で2つを同時に使う事は出来ない。
「でも今は……」
速度の速いレーザーが曲がる。
次々と海に落ちて水しぶきを上げていく。
速度の遅い実弾が迫る。
同時に重力場フィールドを発生させて弾丸を押しつぶす。
2つの防御を両立させている。
「これは楽だな」
『無駄弾撃ってるとそろそろ気付かないんでしょうかね?』
棒立ちでも攻撃は1つとして通らない。
「そろそろ反撃だ。イザナミ、粒子チャージ」
『既に終わってます』
リクはまた意識を沈める。
今度は機体の外に意識を伸ばし、敵戦艦のメインシステムをハックする。
そこから敵の1機1機の位置を詳細に把握する。
頭の中に作った戦場に正確にそれらの座標情報を打ち込む。
全ての機体を把握するまでかかった時間は21秒。
219機のHB、3隻の戦艦、9隻の巡洋艦を認識する。
「行くぞ、グラビティキャノン。照射!」
両肩の武装が正面に黒い光柱を照射する。
闇にのみ込まれた機体が消滅するのを感じていく。
快感と恐怖が同時にリクを襲う。
無言でリクは機体の向きを変えていく。それに合わせて光柱も移動する。
HBが撒き込まれ、戦艦が潰れていく。遠距離まで伸ばした粒子でのみ込んだ敵を潰していき、粒子が切れる。
「次、加速するぞ」
『姿勢制御は完璧です。どうぞ』
背中の4つのロケットノズルが火を吹く。急な加速に周囲の空気が爆音を上げる。
「ぐ、あぁ……ああ!!」
Gに耐えながら一気に敵に接近し、急停止。
そこからグラビティキャノンの側面のハッチを開ける。
そこから数発のミサイルが飛びだす。
敵機の中心に向かったミサイルは爆発と共に―――空間を食らう。
重力場粒子を詰めた弾頭は爆発と同時に周囲を重力で押し潰し、飲み込む。
敵機を把握する事で生々しく消えていく感触を味わう。
辟易としながらもリクは前を向く。
「もう、殺す事は躊躇わない」
物量の差が大きく開いているが質で巻き返している。
しかし、そのバランスも完璧では無い。一隻の戦艦がスタークに迫る。
照準が合わされ、後は指示を出すだけでその砲撃は放たれる。
だがその瞬間、スタークの艦底レールガンが先に放たれる。
そして敵艦の艦首が一気に持ち上がった。
「いてて……最高出力で射出しやがったな、ラウル……」
リクは衝撃と共に射出されて目の前の艦に激突していた。
『第一層粒子皮膜剥離、最高速じゃなければむしろ危険なんですよ』
「え?それって……ああ、なるほど」
イザナミの言葉の意味は機体を見ればすぐに分かった。
純白だった機体の色は黒くなっている。しかし焼け焦げた訳ではない。
その証拠に黒くない部分、白い銃のモチーフが見えるからだ。
新たなグラビレイトの姿、それはかなり特殊な見た目だった。
機体サイズは継ぎ足された追加装甲で中型2区分クラスまで大きくなり、その両肩には円筒形を横にした様な武装が一体化している。
両足は延長され1.3倍ほどに、その足先は完璧にブースターになっていて地面に接する事が出来ない。
背中のブースターはロケットを4つつけた様な物に交換されていて、そのロケットがそれぞれ根元から動くようになっている。
両腕には白い銃のモチーフが描かれた1つで機体の半分を隠せる巨大なシールド、胸部装甲は分厚い物を取り付けられている。
機体色は装甲の隙間からわずかにのぞく白が見えるだけで、他は全て漆黒に包まれている。
[リク、生きてるか?]
「本気で撃ちやがった奴の言う事じゃない」
ラウルからの通信に顔をしかめて言う。
[死ぬわけ無いって、そういう仕掛けもあっただろ?]
「粒子皮膜なんて、よく考えついたな」
最初の白い塗装、そこにはTypeβの重力偏向粒子が混ぜられていた。
その粒子の効果でかかるGを軽減、威力の向上した体当たりを敵に当てる事が可能になっている。
『グラビティジェネレーター稼働状況、正常。発電量にも問題ありません。続いて演算領域の取得開始……リンク成功。立体型戦略盤、起動し
ます』
新型のジェネレーターとシエルの使っていた立体型戦略盤、この2つがあって初めてリクはこの機体で本気を出せる。
[リク、大丈夫?すごい音がしたけど……]
[リク!生きてるか!?今レールガンで飛んだよな!?]
リリとミキが同時にしゃべりかけてくる。
「生きてるよ。大丈夫だから少し声のボリューム下げて!グワングワンする!!」
だんだん人の話を聞かずにヒートアップする2人の声に挟まれて、リクは頭を振る。
[あ、ああ。悪い]
[生きてるなら大丈夫だな。……後でラウルを殴らなきゃな]
ラウルにこっそり追悼の念を送るとリクは顔をあげてイザナミに支持を出そうと―――
『あ、マスター。射撃来ます』
「そしてお前はロックされたらすぐに言ってくれよ!」
『だって、私も頑張ってたんですよ?マスターが女の子といちゃいちゃしてる間もセットアップとか』
「いちゃいちゃって何!?それよりすぐにリンクを!その間の回避は任せる!」
連邦には手が知られている為、実弾とレーザーが混じって飛んでくる。
イザナミがオートパイロットでそれをかわし、リクはそれを意識の外に追いやりヘルメットを通して自分を情報へ沈めていく。
立体型戦略盤。
戦況の様子を子機を通して観測し、その様子を立体投射機で映し出す装置。
そこから無人機の部隊への指示や、有人機の指揮が可能になる。
膨大な並行処理能力と指揮能力がなければ使いこなせない無名の決戦兵器。
大規模な装置だがその中身は単純で、巨大な演算処理装置と立体投射機がくっ付いている様なものだ。
そこに子機との大容量通信装置と、戦況を操作するための巨大スクリーンがつく。
つまり、無駄な装置を省けばグラビレイトに搭載できるほどに小型化できる。
通信領域を拡大するために取り付けた両肩の武装についた巨大アンテナを足がかりにして、リクは意識を広げていく。
脳波で直接電子情報を操り、自分が電子世界に入り込んだような錯覚に陥る。
膨大な演算処理装置が第二の脳として稼働し始める。
「よし、弾丸の軌道および粒子操作、演算……完了。イザナミ、もういい」
『オート操作切ります』
せわしなく弾丸を避けていたグラビレイトは動きを止め、そこに大量の弾丸が降り注ぐ。
実弾を防ぐ重力場フィールド。レーザーを曲げるリフレクション。
演算と電力の二つの不足の問題で2つを同時に使う事は出来ない。
「でも今は……」
速度の速いレーザーが曲がる。
次々と海に落ちて水しぶきを上げていく。
速度の遅い実弾が迫る。
同時に重力場フィールドを発生させて弾丸を押しつぶす。
2つの防御を両立させている。
「これは楽だな」
『無駄弾撃ってるとそろそろ気付かないんでしょうかね?』
棒立ちでも攻撃は1つとして通らない。
「そろそろ反撃だ。イザナミ、粒子チャージ」
『既に終わってます』
リクはまた意識を沈める。
今度は機体の外に意識を伸ばし、敵戦艦のメインシステムをハックする。
そこから敵の1機1機の位置を詳細に把握する。
頭の中に作った戦場に正確にそれらの座標情報を打ち込む。
全ての機体を把握するまでかかった時間は21秒。
219機のHB、3隻の戦艦、9隻の巡洋艦を認識する。
「行くぞ、グラビティキャノン。照射!」
両肩の武装が正面に黒い光柱を照射する。
闇にのみ込まれた機体が消滅するのを感じていく。
快感と恐怖が同時にリクを襲う。
無言でリクは機体の向きを変えていく。それに合わせて光柱も移動する。
HBが撒き込まれ、戦艦が潰れていく。遠距離まで伸ばした粒子でのみ込んだ敵を潰していき、粒子が切れる。
「次、加速するぞ」
『姿勢制御は完璧です。どうぞ』
背中の4つのロケットノズルが火を吹く。急な加速に周囲の空気が爆音を上げる。
「ぐ、あぁ……ああ!!」
Gに耐えながら一気に敵に接近し、急停止。
そこからグラビティキャノンの側面のハッチを開ける。
そこから数発のミサイルが飛びだす。
敵機の中心に向かったミサイルは爆発と共に―――空間を食らう。
重力場粒子を詰めた弾頭は爆発と同時に周囲を重力で押し潰し、飲み込む。
敵機を把握する事で生々しく消えていく感触を味わう。
辟易としながらもリクは前を向く。
「もう、殺す事は躊躇わない」
リクの活躍を見るミキ。
自分が想像するよりも強い彼に驚く。
その時、リクの最初の一撃で動かなくなっていた戦艦が浮かび、Typeαに向かって突っ込んでいった。
「まさか、特攻!?リク!!」
あれほどの質量を押しつぶせるとは思えない、リクでも危険になるだろう。
急いで加速するが、行く手を阻まれる。
「邪魔を……するんじゃない!」
粒子ブレードで薙ぎ払い、ワイドグラビティで牽制し、抜ける。
「届けぇ!!」
ミキは迷わず右手の粒子ブレードを投げる。
回転しながら飛ぶブレードは途中で粒子を放ち、白い光輪をまとって戦艦を縦に切り裂く。
Typeαは接近するそれを掴み構える。粒子の色が白から黒に変わり、薙ぎ払った範囲の敵がのみ込まれる。
[ミキ、ありがとう]
リクはブレードを投げ返す。
「この程度で何を言うのよ。私は自分の為に、自分の理由の為に戦うの。それにあなたがいないと意味がないの。あなたの隣でなければ」
それだけ言うとミキはすぐに加速する。右手のブレードと持ち替えた左手の小銃で高速戦闘を行う。
『マスター』
イザナギがおずおずと声をかけてきた。
「どうかした?」
『さっきの言葉、完璧に告白ですよね?』
「……………」
ミキが黙りこくる。図星なのだろうかとイザナギが言おうとした時。
「そ、そそそうなのか!?」
『……気付いて無かったんですか?』
「いやそんな気はなかったし私は自分で思った事を言っただけだしすると私は無意識でリクの事をてうぁぁぁ!?」
ミキは顔を真っ赤にしてあたふたしながら言い訳とも取れない言葉を紡ぐ。
『………』
「……お願い黙らないで!少し混乱があぁぁああ!」
ぎりぎり敵機をかわし、攻撃を加える。
『あ、マスター。イザナミからメッセージが』
「な、なに?」
ミキはリクの指示かと思ったが……
『「マスターは超ド級の鈍感王なので気付いて無いと思いますよ☆」だそうです』
「…………わかった」
安心したような、それでいて虚しいような感情を抱きつつ、ミキは戦場に戻る。
自分が想像するよりも強い彼に驚く。
その時、リクの最初の一撃で動かなくなっていた戦艦が浮かび、Typeαに向かって突っ込んでいった。
「まさか、特攻!?リク!!」
あれほどの質量を押しつぶせるとは思えない、リクでも危険になるだろう。
急いで加速するが、行く手を阻まれる。
「邪魔を……するんじゃない!」
粒子ブレードで薙ぎ払い、ワイドグラビティで牽制し、抜ける。
「届けぇ!!」
ミキは迷わず右手の粒子ブレードを投げる。
回転しながら飛ぶブレードは途中で粒子を放ち、白い光輪をまとって戦艦を縦に切り裂く。
Typeαは接近するそれを掴み構える。粒子の色が白から黒に変わり、薙ぎ払った範囲の敵がのみ込まれる。
[ミキ、ありがとう]
リクはブレードを投げ返す。
「この程度で何を言うのよ。私は自分の為に、自分の理由の為に戦うの。それにあなたがいないと意味がないの。あなたの隣でなければ」
それだけ言うとミキはすぐに加速する。右手のブレードと持ち替えた左手の小銃で高速戦闘を行う。
『マスター』
イザナギがおずおずと声をかけてきた。
「どうかした?」
『さっきの言葉、完璧に告白ですよね?』
「……………」
ミキが黙りこくる。図星なのだろうかとイザナギが言おうとした時。
「そ、そそそうなのか!?」
『……気付いて無かったんですか?』
「いやそんな気はなかったし私は自分で思った事を言っただけだしすると私は無意識でリクの事をてうぁぁぁ!?」
ミキは顔を真っ赤にしてあたふたしながら言い訳とも取れない言葉を紡ぐ。
『………』
「……お願い黙らないで!少し混乱があぁぁああ!」
ぎりぎり敵機をかわし、攻撃を加える。
『あ、マスター。イザナミからメッセージが』
「な、なに?」
ミキはリクの指示かと思ったが……
『「マスターは超ド級の鈍感王なので気付いて無いと思いますよ☆」だそうです』
「…………わかった」
安心したような、それでいて虚しいような感情を抱きつつ、ミキは戦場に戻る。
一気に急降下、勢いに任せた腕の先が弾幕に包まれる。
二連レーザーガトリングで敵を蹴散らしながらリクの後ろで止まる。
[リキか。どうだった?新型の気分は]
「せっかくの高揚も、お前の活躍の前じゃ霞んじまうぞ……」
リキとリクは背中合わせになって殲滅を開始する。
広域破壊に優れた2機に空白地帯が生まれる。
「ま、死なない様にがんばろうか!!」
[ああ、もちろんだ!]
一気に2人は距離を開け、それぞれの攻撃に戻る。
リキのレーザーが弾幕を作り、そこにガトリングを撃ちこむ。
さらに隙間をレーザーが埋めていく。
その背後にはスターク。まさに守護神といった印象を突き付ける。ただし、かなり過剰防衛気味だが。
リキがエース、守護狂神(ガーディアン)と呼ばれるのはまだ少し先の話になる。
二連レーザーガトリングで敵を蹴散らしながらリクの後ろで止まる。
[リキか。どうだった?新型の気分は]
「せっかくの高揚も、お前の活躍の前じゃ霞んじまうぞ……」
リキとリクは背中合わせになって殲滅を開始する。
広域破壊に優れた2機に空白地帯が生まれる。
「ま、死なない様にがんばろうか!!」
[ああ、もちろんだ!]
一気に2人は距離を開け、それぞれの攻撃に戻る。
リキのレーザーが弾幕を作り、そこにガトリングを撃ちこむ。
さらに隙間をレーザーが埋めていく。
その背後にはスターク。まさに守護神といった印象を突き付ける。ただし、かなり過剰防衛気味だが。
リキがエース、守護狂神(ガーディアン)と呼ばれるのはまだ少し先の話になる。
[たぁぁ!!]
後ろから迫る1機のHB。大きく振りかぶられたブレードがTypeαを狙う。
「甘いね、不意打ちにもならない!」
しかしリクは戦場の全ての敵機の位置を把握している。
右手のシールドを構えて受ける。
[バカな!?]
「終わりだ!」
左手の拳を叩きつけ、ギミックが働き、破裂音がする。左手のシールドの下から煙が出ている。
撃ち抜かれた敵機は上半身と下半身がばらばらになり、海に落ちていく。
両手のシールドの下にはグラビティショットマグナムが装備されている。
グラビティライフルを装備する事もできるが、リクはあえて殺さなければならないグラビティショットマグナムを選んだ。
正面から飛ぶ攻撃を力任せにはねのけ、抑え込み、消し去る。
『あ、レールガン』
「まずい!?」
押しつぶせず曲げられないプラズマはグラビレイトにとって数少ない苦手な攻撃だ。
背中のロケットノズルを展開、十字型に開き左側のブースターをフルに吹かす。
機体を横に直角移動させてかわし、上側のブースターを吹かして真下に落ちる。
海面に降下しながら巡洋艦の目の前で急停止。
艦橋に向けてゆっくりと右手を向ける。
[あ、悪魔……]
「確かに、そうかもしれない」
散弾が艦橋を吹き飛ばす。
[接近する機影、30機のHB。中立国家群領からだ!]
ゴースの警告に緊張が走る。
「来たね……」
[どうする?]
ミキの問いに答える。
「俺が交渉するよ。それが一番いい」
リクはすぐに暗号通信の回線を解析し、交信を始める。
「こちら元世界地球主義連邦所属、リク・ゼノラス中尉。そちらと取引がしたい」
[……いきなり暗号回線を破って言う事じゃないな。白い魔弾(ホワイトバレット)]
若い男の声が苦言を呈した。
「無礼は承知している。しかし状況が状況だ。こちらは取引材料としてこの機体をさし出す準備がある、我々をかくまってくれないか」
[連邦と敵対しろと?それこそ無茶苦茶じゃないか。ふざけているのか]
「連邦との取引材料も別途に用意している。恐らく向こうはその条件で納得する筈だ」
リクの淀みの無い言葉に一瞬考え込む男。
[……いいだろう、乗ってやる。だが今言った事の1つでも偽りがあれば、その時は分かっているな?]
「ああ、構わない」
通信が途切れ、30機の援軍となったHBの一斉射撃が開始される。
大型のレーザーを交代で撃ちまくる。1機が撃っている間に1機がチャージ、もう1機が照準を合わせている。
「三段撃ちか……なかなかに効果的な弾幕だな」
[リクさん?さっきの条件って何の事ですか?私達は把握していないんですけど?]
カルラの質問にリクは答える。
「即興で考えた物ですよ。時間が無かったから少々でっち上げました」
[ちょっと!?それまずいでしょ!?]
シエルが叫ぶ。
[いや、あのカスを向こうに引き渡すんですね?]
「カス?あ、おっさんね」
ガリスを向こうに引き渡せばそれなりの条件になるだろう。
「それもそうですけど、少し推測があるんです」
[推測?]
「そのうち、連邦が絶対にこっちの力を欲するでしょうね。それも性急に」
[なにがあるんですか?]
「今はここまでです。後は帰ってからですよ!」
『グラビティジェネレーター、熱量限界が迫ってます。排気を』
「よし、ハッチ展開」
Typeαの胸部装甲の中心のハッチが開く。
胸部にある新型のジェネレーターであるグラビティジェネレーター。
中心部でマイクロブラックホールの精製と崩壊を繰り返し、大量のエネルギーを生み出す機関。
しかしそこには大量のプラズマが生まれて熱が発生する。
その熱量はジェネレーター直結の胸部ハッチから一気に放出される。
「過重力点式精製プラズマ、排気開始!」
不可視の熱が目の前の戦艦を溶かす。
さらに両肩のグラビティキャノンも同時に稼働させる。
「消し飛べ!」
振り回し、消し飛ばす。
敵部隊はほぼ全滅。
「協力感謝する」
[嘘こけ、むしろこちらが感謝するべきだろう?とりあえず、入国を許可する。ついてこい]
スタークは中立国家群に入って行く。
後ろから迫る1機のHB。大きく振りかぶられたブレードがTypeαを狙う。
「甘いね、不意打ちにもならない!」
しかしリクは戦場の全ての敵機の位置を把握している。
右手のシールドを構えて受ける。
[バカな!?]
「終わりだ!」
左手の拳を叩きつけ、ギミックが働き、破裂音がする。左手のシールドの下から煙が出ている。
撃ち抜かれた敵機は上半身と下半身がばらばらになり、海に落ちていく。
両手のシールドの下にはグラビティショットマグナムが装備されている。
グラビティライフルを装備する事もできるが、リクはあえて殺さなければならないグラビティショットマグナムを選んだ。
正面から飛ぶ攻撃を力任せにはねのけ、抑え込み、消し去る。
『あ、レールガン』
「まずい!?」
押しつぶせず曲げられないプラズマはグラビレイトにとって数少ない苦手な攻撃だ。
背中のロケットノズルを展開、十字型に開き左側のブースターをフルに吹かす。
機体を横に直角移動させてかわし、上側のブースターを吹かして真下に落ちる。
海面に降下しながら巡洋艦の目の前で急停止。
艦橋に向けてゆっくりと右手を向ける。
[あ、悪魔……]
「確かに、そうかもしれない」
散弾が艦橋を吹き飛ばす。
[接近する機影、30機のHB。中立国家群領からだ!]
ゴースの警告に緊張が走る。
「来たね……」
[どうする?]
ミキの問いに答える。
「俺が交渉するよ。それが一番いい」
リクはすぐに暗号通信の回線を解析し、交信を始める。
「こちら元世界地球主義連邦所属、リク・ゼノラス中尉。そちらと取引がしたい」
[……いきなり暗号回線を破って言う事じゃないな。白い魔弾(ホワイトバレット)]
若い男の声が苦言を呈した。
「無礼は承知している。しかし状況が状況だ。こちらは取引材料としてこの機体をさし出す準備がある、我々をかくまってくれないか」
[連邦と敵対しろと?それこそ無茶苦茶じゃないか。ふざけているのか]
「連邦との取引材料も別途に用意している。恐らく向こうはその条件で納得する筈だ」
リクの淀みの無い言葉に一瞬考え込む男。
[……いいだろう、乗ってやる。だが今言った事の1つでも偽りがあれば、その時は分かっているな?]
「ああ、構わない」
通信が途切れ、30機の援軍となったHBの一斉射撃が開始される。
大型のレーザーを交代で撃ちまくる。1機が撃っている間に1機がチャージ、もう1機が照準を合わせている。
「三段撃ちか……なかなかに効果的な弾幕だな」
[リクさん?さっきの条件って何の事ですか?私達は把握していないんですけど?]
カルラの質問にリクは答える。
「即興で考えた物ですよ。時間が無かったから少々でっち上げました」
[ちょっと!?それまずいでしょ!?]
シエルが叫ぶ。
[いや、あのカスを向こうに引き渡すんですね?]
「カス?あ、おっさんね」
ガリスを向こうに引き渡せばそれなりの条件になるだろう。
「それもそうですけど、少し推測があるんです」
[推測?]
「そのうち、連邦が絶対にこっちの力を欲するでしょうね。それも性急に」
[なにがあるんですか?]
「今はここまでです。後は帰ってからですよ!」
『グラビティジェネレーター、熱量限界が迫ってます。排気を』
「よし、ハッチ展開」
Typeαの胸部装甲の中心のハッチが開く。
胸部にある新型のジェネレーターであるグラビティジェネレーター。
中心部でマイクロブラックホールの精製と崩壊を繰り返し、大量のエネルギーを生み出す機関。
しかしそこには大量のプラズマが生まれて熱が発生する。
その熱量はジェネレーター直結の胸部ハッチから一気に放出される。
「過重力点式精製プラズマ、排気開始!」
不可視の熱が目の前の戦艦を溶かす。
さらに両肩のグラビティキャノンも同時に稼働させる。
「消し飛べ!」
振り回し、消し飛ばす。
敵部隊はほぼ全滅。
「協力感謝する」
[嘘こけ、むしろこちらが感謝するべきだろう?とりあえず、入国を許可する。ついてこい]
スタークは中立国家群に入って行く。
キセノは地球を見つめる。
その後ろには1人の男が立っている。
「なぜ地球を見ている?そんなロマンチストじゃないだろう?」
「確かにきれいな星だが……住む人々は忌々しい欲望しか持てない。君はどう思う?」
「何かを思うなんてことはない。今の俺にはな」
キセノは笑う。
「あくまで復讐かい?」
「当たり前だ。奴は殺しつくしてもまだ足りない」
ねっとりとからみつく悪意が肌をなでる。
「まぁ本命に断られたし、君に任せてもいいよ。準備は怠らないでくれ」
男は無言で立ち去る。
『彼で構わないんですか?』
アマテラスの言葉にキセノは楽しげに答える。
「復讐が強い事はお前も知っているだろう?」
『ですが……』
キセノは椅子に座ると1つの画像データを表示する。
「俺は知っている。自分が復讐に捕らわれているからな」
それを一瞥するとすぐに閉じる。
「地球に対して、人類に対して、そして―――」
キセノは地球を睨みつけ、言う。
「リク・ゼノラスに対しての、復讐に」
その後ろには1人の男が立っている。
「なぜ地球を見ている?そんなロマンチストじゃないだろう?」
「確かにきれいな星だが……住む人々は忌々しい欲望しか持てない。君はどう思う?」
「何かを思うなんてことはない。今の俺にはな」
キセノは笑う。
「あくまで復讐かい?」
「当たり前だ。奴は殺しつくしてもまだ足りない」
ねっとりとからみつく悪意が肌をなでる。
「まぁ本命に断られたし、君に任せてもいいよ。準備は怠らないでくれ」
男は無言で立ち去る。
『彼で構わないんですか?』
アマテラスの言葉にキセノは楽しげに答える。
「復讐が強い事はお前も知っているだろう?」
『ですが……』
キセノは椅子に座ると1つの画像データを表示する。
「俺は知っている。自分が復讐に捕らわれているからな」
それを一瞥するとすぐに閉じる。
「地球に対して、人類に対して、そして―――」
キセノは地球を睨みつけ、言う。
「リク・ゼノラスに対しての、復讐に」
「では、連邦から無事脱走できた事を祝しましてっ!!」
「「「かんっぱ~い!」」」
スターククルーは宴会を開いていた。元々がお祭り好きな人間が多いので宴会はすぐに開きたがる。
「あの、ちょっといいですか?」
ミキの声が響く。
「どうした?」
全員がミキに注目する。ミキは元々そのつもりだったとはいえ、少しの緊張を持つ。
「皆さんに言わなければならない事があります」
静寂、真面目な話を聞く態度を示すクルーにミキは顔を伏せて言う。
「私は、同盟軍のエース、黒揚羽(ブラックバタフライ)なんです……皆さんを何回も殺そうとした……」
「…………」
「それだけじゃありません、私は皆さんが慕っていたこの艦の艦長、ハーミスト・レインの敵のゴードン・レンストルの義娘なんです……」
ミキの告白にクルーは静かに聞き入っていた。
「ミキさん、貴女はこれからどうしたんですか?」
カルラはゆっくりと問いかける。
「……私は、戦う理由を見つけたいです。皆さんがいいのなら、ここで」
「…………」
ミキは目をつぶる。次に上げられる声に耳を澄ます。
「「「いぃぃぃよっしゃぁぁぁ!!」」」
「……………あれ?」
ポカンとするミキに構わずクルーのボルテージが上がる。
「やったぜ!新しいクルー!それが美人!」
「この出会い、無駄にはせん!」
「しかもスタイルがいいね!この艦の発育不良率は深刻なレベルに達してぐっほゎ!?」
「ざっけんな!」
最後の人(ラウル)がリリに殴り飛ばされる音がする。
その他のスタイル云々を言っている奴らにはシエル(発育不良者)がスタンガンを振りかぶっている。ちなみに殺傷可能レベルの代物である。
「なぁ、リク。ここは本当に軍隊か?」
「俺も最初は信じられなかったよ」
互いに苦笑するとそれを見ていたクルーの動きが止まる。
「全員、囲めぇ!!」
「「「サーイエッサー!!」」」
「ぬぁ!?ちょ、皆何これ!?」
リキの掛け声で無駄に統率のとれた動きで囲まれるリク。
「うるせぇ!一人抜け駆けして既に仲良くなってるだと!?」
「ふざけんな!俺の春を返せ!」
「もういいだろ!お前もういいだろ!?」
リクは囲まれて見えなくなってしまった。何人かが宙を舞うが気にしたら負けだ。
ミキは呆然と見ていると傍で視線を感じる。
そちらを見るとリリとゴースがこちらを見ている。
リリは探る様な、ゴースはニヤニヤしながら近づいてきた。
「お、やっぱりリリちゃん気になるみたいだな?」
「………むぅ」
「えっと、どうしたんですか?」
ミキは意味が分からず聞くと、ゴースは頷きながら答える。
「ふむ、恋のライバルの偵察をこっちの子がやりたくてたまらないみた(がす)………」
「だ、黙ってろ!!」
リリは顔を真っ赤にしてゴースを殴りつける。
ミキは唖然とする。
恋のライバル?つまり自分がリクに好意を持っている事に気付かれている?
「うお、顔真っ赤。勘が当たった」
「勘だったの!?」
ミキの驚きが更なる裏付けをする。
「なるほどなるほど、これは強力なライバルでは?リリちゃん」
「う、どういう事だよ……」
後ずさるリリに対してゴースは客観的なミキのデータを言い放つ。
「推定、D」
「ちくしょー!!」
泣き崩れるリリ。だってAAAだもの。
「な、なぜそれを……」
ミキも胸を押さえて後ずさる。
「ははは!この俺の眼力にかかればこれくらい楽勝だ!」
「なにアホな発言してるんですか?」
暴動(という名の嫉妬の嵐)をねじ伏せてきたリクがげっそりしながら尋ねる。
「女のプライド、後は察しろ」
「プライド?」
「余計な事言わないでー!」
ミキが血管が切れたと思う程顔を赤くする。
「大丈夫だ、ミキちゃん。あいつは鈍感だからプライドが何を指すのか気付かない。全く触れてこないさ」
「………むしろ触れてきてくれた方が楽な気がする」
リリの投げやりな発言にゴースはにやりと笑う。
「なるほど!リリちゃんは胸を揉みし抱いて欲しい(ぼこがっ)ぶほぉ!?」
「………………」
「いやまじ(がすっ)無言とかやめ(ばこっ)いた(がこっ)ま(がしゅっ)や(ぐっしゃぁ)…………」
マウントポジションから無言でラッシュ。少量の返り血を浴びながらにっこりとリリは微笑む。
「大丈夫だぞ?変な発言しなければ問題無い」
「は、はい………」
萎縮するリク。目の前で向けられる笑みが怖くてたまらない。
「おらぁ!酒飲めぇ!」
「ぶわ!?ウィンスさん!?そうだ忘れてた!」
酒乱のウィンスが突っ込んできた。
あっという間にリクは大量のアルコールを飲まされる。
「あ、リクに飲ませたら!?」
クルーが少し怯える。リクの二日酔いの時の記憶がよみがえる。
「あ、大丈夫です。あれ演技ですから」
「へ?」
誰もが首をかしげる。
「ごめんなさい。いくつか俺からも謝らないといけない事があります」
リクは頭を下げて話し始める。
「まず俺は二日酔いであんな風にはなりません。少し機嫌が悪いのを誤魔化す為でした。あの時の事は全部覚えてます。もう一つは俺の正体で
す。俺は19じゃなくて16です」
「ちょ、ちょっとまて!?16で強化孤児(チャイルドアーミー)って!?」
周りの慌てぶりから少し目をそむけながらリクは告白する。
「俺は後天的に遺伝子を弄られて、薬物で強化された強化孤児。日本製の完成孤児(パーフェクトアーミー)なんです」
「そ、それだから、あの戦果か……驚いた」
周りは驚きこそするが、全く拒絶の意思を示さない。
「よかったな、リク。受け入れられたみたいだ」
「ごめん、まだあるんだ」
笑顔のミキに顔を向けず、最後の言うべき事を口に出す。
「最後に、俺は不沈艦オロチの戦術指揮をやっていました」
「は…………は?」
今度こそ完璧に固まるクルー。
無理も無い、伝説の不沈艦オロチが戦闘を行ったのはたった一回。その時のリクの年齢は5歳。
そしてそのオロチの部隊と戦っていたのは………
「俺は、当時ハーミスト艦長と戦っていました。あなた達の命を、同胞を奪うために戦っていました」
誰もが口を開かない。
「総勢27560機の無人HB、570基の砲塔、それを同時に操ってあなた達の仲間を80437人殺しました」
全てを把握しているのは罪の意識からか、それとも自己顕示欲の為か。
だが今のリクの懺悔には後悔の念が混じっている。
「今更許して欲しいとか、思いません。それでもこの艦で戦う上でどうしても言っておきたかった。恨まれて当然だと思います。出て行けと言
うならそれも受けます。本当にごめんなさい」
静寂の中足音が響く。
「リク君、君は殺した事を後悔していますか?」
カルラの言葉にリクは頷く。
「なら充分です。それと同時に君がやりたい事っていうのもなんとなく分かりました」
「…………」
「君の復讐、我々にとっても大きな物になりました」
リクは思う。
誰もが最終決戦での事に恨みを持っていて、それをぶつける相手が当時5歳だった。
それでは恨みをぶつける先はリクを戦わせた者に向かう。
そんな歪な結束でも、仲間に加えて貰えるのなら―――
「そうだな、5歳を戦場にやるとか考えられねぇ!」
「え?」
だが掛けられた言葉は―――
「リクのトラウマとか、性格が曲がってんのとかもその復讐の相手の所為なんだろ!なら俺達の理由にもなる!」
「俺を、恨んだりとかしないんですか?」
その言葉で場が止まる。しかし凍りついたのではなく、きょとんとされている。
「なんでお前を恨むんだ?」
「だって、俺が殺したから……」
「あー、そのランクで悩んでんのか」
「いや、その話をしてんたんじゃ?」
やれやれといった感じで溜息をつかれる。
「そんな話、誰も気にとめてないぞ?」
「え、……うっそぉ!?」
リクが珍しく大声を出す。
「そもそも1桁の年齢の子供に責任を問うのはお門違いだ。その点以前にすでにそんなに恨みも持ってない。こっちがしてんのは仲間だからって
話だ」
「いやでも、実行犯ですよ?」
「そうでもないでしょ?オロチの戦略指揮なら」
シエルが歩み出す。
「リク君は、言い方悪いけど情報処理用のパーツだったんだよ?そんな意思もへったくれも無い様な状況で人間らしさってある?」
「それは……」
「君は正直言ってそもそも恨むべき対象じゃないんだと思うよ?」
「そんなことより飲もうぜ!せっかくの宴会だ!」
「なるほどなー。リクの強さはそういう理由が……」
「酒足りねェぞ!この野郎が!」
「ウィンスさんが暴れ出した!誰か止めてくれ!」
既に雰囲気に流されてしまっている場にリクは肩の力を抜く。
「気負い過ぎだった、のかな?」
「だな。私もあなたも。とりあえず飲もう!」
ミキにグラスを渡されて一気に飲む。
「あ、リク!うやむやだったな!」
「ん、リリ?どうしたの?」
リリは少しためらい、そして指さして言う。
「そっちの、ミキがなぜ最初からお前の正体知ってんだよ!」
「話したからだよ。断れない状況で聞かれたから」
「なんでそんな状況になったんだよ!?」
「それは、ってミキ!?」
気が付いたらミキはリクの背中に張り付いていた。サイズD(確定情報)の素敵物質がリクの背中にくっ付いていたりする。
「な!?おおおおおお前!離れろ!リクから離れろ!はーなーれーろー!」
ぐいぐいとリリが引くが、すでによ酔いが回っている為思うように力が出ない。
のろのろとミキは顔をあげてリリを見る。
「ほら!リクから離れろ!」
「ふにゅ?うにゃー………」
「泥酔!?1杯で!?いや、これ3分の1しか飲んでない!?」
リクが驚きの声を上げるが、リリは俯いてプルプルして聞いていない。
ミキは普段のイメージとはかけ離れた小動物をイメージさせるしぐさを取り続ける。
だがリクの背中にくっ付いて離れようとしない。
「り、リリ?大丈夫?落ちついて、落ちつくんだ!」
「な……」
「な?」
リリは顔を上げると目を輝かせて言った。
「何この子!?すごく餌付けしたい!!」
リリは調理場へと走って行ってしまった。
「な、なにあれ?」
「乙女モード発動だ」
復活したゴースはそう言って親指を立てた。
「ははは……本当にバカバカしいくらいに」
リクは窓から覗く月を見る。
「気楽だな……」
晒した自分も、晒した過去も。
全て慣らされて、大したことじゃなくなった。
久々にリクは心の底から安らぎを――
「リリちゃん!?その量のケーキは多すぎるって!」
「作り過ぎた!」
「――得るには少しばかり、騒がしいかな……」
「「「かんっぱ~い!」」」
スターククルーは宴会を開いていた。元々がお祭り好きな人間が多いので宴会はすぐに開きたがる。
「あの、ちょっといいですか?」
ミキの声が響く。
「どうした?」
全員がミキに注目する。ミキは元々そのつもりだったとはいえ、少しの緊張を持つ。
「皆さんに言わなければならない事があります」
静寂、真面目な話を聞く態度を示すクルーにミキは顔を伏せて言う。
「私は、同盟軍のエース、黒揚羽(ブラックバタフライ)なんです……皆さんを何回も殺そうとした……」
「…………」
「それだけじゃありません、私は皆さんが慕っていたこの艦の艦長、ハーミスト・レインの敵のゴードン・レンストルの義娘なんです……」
ミキの告白にクルーは静かに聞き入っていた。
「ミキさん、貴女はこれからどうしたんですか?」
カルラはゆっくりと問いかける。
「……私は、戦う理由を見つけたいです。皆さんがいいのなら、ここで」
「…………」
ミキは目をつぶる。次に上げられる声に耳を澄ます。
「「「いぃぃぃよっしゃぁぁぁ!!」」」
「……………あれ?」
ポカンとするミキに構わずクルーのボルテージが上がる。
「やったぜ!新しいクルー!それが美人!」
「この出会い、無駄にはせん!」
「しかもスタイルがいいね!この艦の発育不良率は深刻なレベルに達してぐっほゎ!?」
「ざっけんな!」
最後の人(ラウル)がリリに殴り飛ばされる音がする。
その他のスタイル云々を言っている奴らにはシエル(発育不良者)がスタンガンを振りかぶっている。ちなみに殺傷可能レベルの代物である。
「なぁ、リク。ここは本当に軍隊か?」
「俺も最初は信じられなかったよ」
互いに苦笑するとそれを見ていたクルーの動きが止まる。
「全員、囲めぇ!!」
「「「サーイエッサー!!」」」
「ぬぁ!?ちょ、皆何これ!?」
リキの掛け声で無駄に統率のとれた動きで囲まれるリク。
「うるせぇ!一人抜け駆けして既に仲良くなってるだと!?」
「ふざけんな!俺の春を返せ!」
「もういいだろ!お前もういいだろ!?」
リクは囲まれて見えなくなってしまった。何人かが宙を舞うが気にしたら負けだ。
ミキは呆然と見ていると傍で視線を感じる。
そちらを見るとリリとゴースがこちらを見ている。
リリは探る様な、ゴースはニヤニヤしながら近づいてきた。
「お、やっぱりリリちゃん気になるみたいだな?」
「………むぅ」
「えっと、どうしたんですか?」
ミキは意味が分からず聞くと、ゴースは頷きながら答える。
「ふむ、恋のライバルの偵察をこっちの子がやりたくてたまらないみた(がす)………」
「だ、黙ってろ!!」
リリは顔を真っ赤にしてゴースを殴りつける。
ミキは唖然とする。
恋のライバル?つまり自分がリクに好意を持っている事に気付かれている?
「うお、顔真っ赤。勘が当たった」
「勘だったの!?」
ミキの驚きが更なる裏付けをする。
「なるほどなるほど、これは強力なライバルでは?リリちゃん」
「う、どういう事だよ……」
後ずさるリリに対してゴースは客観的なミキのデータを言い放つ。
「推定、D」
「ちくしょー!!」
泣き崩れるリリ。だってAAAだもの。
「な、なぜそれを……」
ミキも胸を押さえて後ずさる。
「ははは!この俺の眼力にかかればこれくらい楽勝だ!」
「なにアホな発言してるんですか?」
暴動(という名の嫉妬の嵐)をねじ伏せてきたリクがげっそりしながら尋ねる。
「女のプライド、後は察しろ」
「プライド?」
「余計な事言わないでー!」
ミキが血管が切れたと思う程顔を赤くする。
「大丈夫だ、ミキちゃん。あいつは鈍感だからプライドが何を指すのか気付かない。全く触れてこないさ」
「………むしろ触れてきてくれた方が楽な気がする」
リリの投げやりな発言にゴースはにやりと笑う。
「なるほど!リリちゃんは胸を揉みし抱いて欲しい(ぼこがっ)ぶほぉ!?」
「………………」
「いやまじ(がすっ)無言とかやめ(ばこっ)いた(がこっ)ま(がしゅっ)や(ぐっしゃぁ)…………」
マウントポジションから無言でラッシュ。少量の返り血を浴びながらにっこりとリリは微笑む。
「大丈夫だぞ?変な発言しなければ問題無い」
「は、はい………」
萎縮するリク。目の前で向けられる笑みが怖くてたまらない。
「おらぁ!酒飲めぇ!」
「ぶわ!?ウィンスさん!?そうだ忘れてた!」
酒乱のウィンスが突っ込んできた。
あっという間にリクは大量のアルコールを飲まされる。
「あ、リクに飲ませたら!?」
クルーが少し怯える。リクの二日酔いの時の記憶がよみがえる。
「あ、大丈夫です。あれ演技ですから」
「へ?」
誰もが首をかしげる。
「ごめんなさい。いくつか俺からも謝らないといけない事があります」
リクは頭を下げて話し始める。
「まず俺は二日酔いであんな風にはなりません。少し機嫌が悪いのを誤魔化す為でした。あの時の事は全部覚えてます。もう一つは俺の正体で
す。俺は19じゃなくて16です」
「ちょ、ちょっとまて!?16で強化孤児(チャイルドアーミー)って!?」
周りの慌てぶりから少し目をそむけながらリクは告白する。
「俺は後天的に遺伝子を弄られて、薬物で強化された強化孤児。日本製の完成孤児(パーフェクトアーミー)なんです」
「そ、それだから、あの戦果か……驚いた」
周りは驚きこそするが、全く拒絶の意思を示さない。
「よかったな、リク。受け入れられたみたいだ」
「ごめん、まだあるんだ」
笑顔のミキに顔を向けず、最後の言うべき事を口に出す。
「最後に、俺は不沈艦オロチの戦術指揮をやっていました」
「は…………は?」
今度こそ完璧に固まるクルー。
無理も無い、伝説の不沈艦オロチが戦闘を行ったのはたった一回。その時のリクの年齢は5歳。
そしてそのオロチの部隊と戦っていたのは………
「俺は、当時ハーミスト艦長と戦っていました。あなた達の命を、同胞を奪うために戦っていました」
誰もが口を開かない。
「総勢27560機の無人HB、570基の砲塔、それを同時に操ってあなた達の仲間を80437人殺しました」
全てを把握しているのは罪の意識からか、それとも自己顕示欲の為か。
だが今のリクの懺悔には後悔の念が混じっている。
「今更許して欲しいとか、思いません。それでもこの艦で戦う上でどうしても言っておきたかった。恨まれて当然だと思います。出て行けと言
うならそれも受けます。本当にごめんなさい」
静寂の中足音が響く。
「リク君、君は殺した事を後悔していますか?」
カルラの言葉にリクは頷く。
「なら充分です。それと同時に君がやりたい事っていうのもなんとなく分かりました」
「…………」
「君の復讐、我々にとっても大きな物になりました」
リクは思う。
誰もが最終決戦での事に恨みを持っていて、それをぶつける相手が当時5歳だった。
それでは恨みをぶつける先はリクを戦わせた者に向かう。
そんな歪な結束でも、仲間に加えて貰えるのなら―――
「そうだな、5歳を戦場にやるとか考えられねぇ!」
「え?」
だが掛けられた言葉は―――
「リクのトラウマとか、性格が曲がってんのとかもその復讐の相手の所為なんだろ!なら俺達の理由にもなる!」
「俺を、恨んだりとかしないんですか?」
その言葉で場が止まる。しかし凍りついたのではなく、きょとんとされている。
「なんでお前を恨むんだ?」
「だって、俺が殺したから……」
「あー、そのランクで悩んでんのか」
「いや、その話をしてんたんじゃ?」
やれやれといった感じで溜息をつかれる。
「そんな話、誰も気にとめてないぞ?」
「え、……うっそぉ!?」
リクが珍しく大声を出す。
「そもそも1桁の年齢の子供に責任を問うのはお門違いだ。その点以前にすでにそんなに恨みも持ってない。こっちがしてんのは仲間だからって
話だ」
「いやでも、実行犯ですよ?」
「そうでもないでしょ?オロチの戦略指揮なら」
シエルが歩み出す。
「リク君は、言い方悪いけど情報処理用のパーツだったんだよ?そんな意思もへったくれも無い様な状況で人間らしさってある?」
「それは……」
「君は正直言ってそもそも恨むべき対象じゃないんだと思うよ?」
「そんなことより飲もうぜ!せっかくの宴会だ!」
「なるほどなー。リクの強さはそういう理由が……」
「酒足りねェぞ!この野郎が!」
「ウィンスさんが暴れ出した!誰か止めてくれ!」
既に雰囲気に流されてしまっている場にリクは肩の力を抜く。
「気負い過ぎだった、のかな?」
「だな。私もあなたも。とりあえず飲もう!」
ミキにグラスを渡されて一気に飲む。
「あ、リク!うやむやだったな!」
「ん、リリ?どうしたの?」
リリは少しためらい、そして指さして言う。
「そっちの、ミキがなぜ最初からお前の正体知ってんだよ!」
「話したからだよ。断れない状況で聞かれたから」
「なんでそんな状況になったんだよ!?」
「それは、ってミキ!?」
気が付いたらミキはリクの背中に張り付いていた。サイズD(確定情報)の素敵物質がリクの背中にくっ付いていたりする。
「な!?おおおおおお前!離れろ!リクから離れろ!はーなーれーろー!」
ぐいぐいとリリが引くが、すでによ酔いが回っている為思うように力が出ない。
のろのろとミキは顔をあげてリリを見る。
「ほら!リクから離れろ!」
「ふにゅ?うにゃー………」
「泥酔!?1杯で!?いや、これ3分の1しか飲んでない!?」
リクが驚きの声を上げるが、リリは俯いてプルプルして聞いていない。
ミキは普段のイメージとはかけ離れた小動物をイメージさせるしぐさを取り続ける。
だがリクの背中にくっ付いて離れようとしない。
「り、リリ?大丈夫?落ちついて、落ちつくんだ!」
「な……」
「な?」
リリは顔を上げると目を輝かせて言った。
「何この子!?すごく餌付けしたい!!」
リリは調理場へと走って行ってしまった。
「な、なにあれ?」
「乙女モード発動だ」
復活したゴースはそう言って親指を立てた。
「ははは……本当にバカバカしいくらいに」
リクは窓から覗く月を見る。
「気楽だな……」
晒した自分も、晒した過去も。
全て慣らされて、大したことじゃなくなった。
久々にリクは心の底から安らぎを――
「リリちゃん!?その量のケーキは多すぎるって!」
「作り過ぎた!」
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