走馬灯は、終着点へとたどり着こうとしている。
CR capter2 The Nightmare THE MAIN STORY 結 ―道化は笑い、矛盾を嘲る― 前編
第七機関統括領域第六区画。
全ての始まりの地。
ほんの数ヶ月前までは、ここは第七機関の統括区域でも最大の観光地であった。
自然が生い茂り、澄んだ空気と土と木々の香りはそこを訪れた人の心を癒す。
そう言われ、毎年、数百万もの人がこの土地を訪れた。
しかし、今はその自然は見る影もない。
生い茂っていた木々は消し炭となり、大地は焦土となって、空気は未だ人の死臭に淀んでいる。
既にこの区画が閉鎖されてから5ヶ月程の時間が立つが未だそこは地獄だった。
そこにほんの数分ほど前、一機の鋼機が着陸した。
その鋼機は悪魔のような双眸に、その禍々しさを象徴する紅い光を纏っている。
今や地獄と化したその地に相応しいような禍々しい漆黒の機体。
その機体から一人の男降りた。
男の風貌でまず目に付くのは白い髪だろうか・・・色素が抜けたそれとはまた違う透き通るような白だった。
男の名前は黒峰潤也。
漆黒の機体CR-02 リベジオンの操縦者である。
潤也は、異臭に鼻を抑えながらも目的地へと歩を進める。
目的地、それは第七機関の研究機関の一つである琴峰機関の研究施設の一つであった。
第四研究所と立て札のある研究施設の前に立ち、それを一瞥した後、潤也は塀をよじ登りその中に入る。
研究所は既に人の気配がなく、仕掛けられていた筈の防犯装置も機能していないようだ。
潤也は開いていた正面の扉から研究室の中に入った。
その中で最初に潤也の目に入ったのは死体だった。
それも一つではない、いくつもの焼死体が中に転がっている。
潤也はその光景に特に感慨を覚えない事に死に対して酷い慣れ方をしたものだと自嘲して目的地である地下2階へと歩を進めた。
突き当りにあった階段を降りて、地下二階の扉の前に付く。
扉の電子鍵は既に壊されていたようで、潤也が横に引くだけで扉は簡単に開いた。
全ての始まりの地。
ほんの数ヶ月前までは、ここは第七機関の統括区域でも最大の観光地であった。
自然が生い茂り、澄んだ空気と土と木々の香りはそこを訪れた人の心を癒す。
そう言われ、毎年、数百万もの人がこの土地を訪れた。
しかし、今はその自然は見る影もない。
生い茂っていた木々は消し炭となり、大地は焦土となって、空気は未だ人の死臭に淀んでいる。
既にこの区画が閉鎖されてから5ヶ月程の時間が立つが未だそこは地獄だった。
そこにほんの数分ほど前、一機の鋼機が着陸した。
その鋼機は悪魔のような双眸に、その禍々しさを象徴する紅い光を纏っている。
今や地獄と化したその地に相応しいような禍々しい漆黒の機体。
その機体から一人の男降りた。
男の風貌でまず目に付くのは白い髪だろうか・・・色素が抜けたそれとはまた違う透き通るような白だった。
男の名前は黒峰潤也。
漆黒の機体CR-02 リベジオンの操縦者である。
潤也は、異臭に鼻を抑えながらも目的地へと歩を進める。
目的地、それは第七機関の研究機関の一つである琴峰機関の研究施設の一つであった。
第四研究所と立て札のある研究施設の前に立ち、それを一瞥した後、潤也は塀をよじ登りその中に入る。
研究所は既に人の気配がなく、仕掛けられていた筈の防犯装置も機能していないようだ。
潤也は開いていた正面の扉から研究室の中に入った。
その中で最初に潤也の目に入ったのは死体だった。
それも一つではない、いくつもの焼死体が中に転がっている。
潤也はその光景に特に感慨を覚えない事に死に対して酷い慣れ方をしたものだと自嘲して目的地である地下2階へと歩を進めた。
突き当りにあった階段を降りて、地下二階の扉の前に付く。
扉の電子鍵は既に壊されていたようで、潤也が横に引くだけで扉は簡単に開いた。
「いやっほー、待っていたよ、兄弟。」
扉の向こうから陽気な声がする。
死体が転がっていた一階とは似つかわしくない程、緊張感を欠いた声だ。
扉の向こうで椅子に座って手を振っている銀髪の男を見た後、潤也は男の元へと歩を進め、顔面を殴りつけた。
男は椅子から転げ落ちて地面に衝突する。
死体が転がっていた一階とは似つかわしくない程、緊張感を欠いた声だ。
扉の向こうで椅子に座って手を振っている銀髪の男を見た後、潤也は男の元へと歩を進め、顔面を殴りつけた。
男は椅子から転げ落ちて地面に衝突する。
「いたた、痛いじゃないか、兄弟。スキンシップは嬉しいけどさ、ちょっと過激だよ・・・。普通、出会い頭に殴る?」
そういって、男は頬を擦りながら、ヘラヘラと笑って立ち上がる。
「アテルラナ、前から趣味が悪いとは思っていたが、こんな胸糞悪いところに呼び出してどういうつもりだ?」
そう、疑うような口調で潤也はへらへらと笑う銀髪の男アテルラナに尋ねる。
「胸糞悪い?ほんとにそう思ってる?そう思いたいだけじゃなくて?」
「・・・。」
「・・・。」
黒峰潤也がここに訪れたのはこのアテルラナと会う為である。
黒峰咲との邂逅の後、潤也の元に入った通信でアテルラナは黒峰咲に関する真実についての情報を掴んだと連絡が入った。
そして、それを伝えると同時に渡したいものがあるので潤也に直接会いたいと言ってきたのである。
何故、アテルラナが?と思う所はあったが、様々な情報を提供してきたアテルラナである、黒峰咲から告げられた事実というものに納得などしていなかった潤也からしてみれば、藁にもすがる気持ちでそれを了解した。
そして、指定された場所がこの閉鎖された第六区画にある研究所の地下であった。
アテルラナは場所の不快さを顔に出す潤也を楽しそうに眺めて笑みを浮かべて言う。
黒峰咲との邂逅の後、潤也の元に入った通信でアテルラナは黒峰咲に関する真実についての情報を掴んだと連絡が入った。
そして、それを伝えると同時に渡したいものがあるので潤也に直接会いたいと言ってきたのである。
何故、アテルラナが?と思う所はあったが、様々な情報を提供してきたアテルラナである、黒峰咲から告げられた事実というものに納得などしていなかった潤也からしてみれば、藁にもすがる気持ちでそれを了解した。
そして、指定された場所がこの閉鎖された第六区画にある研究所の地下であった。
アテルラナは場所の不快さを顔に出す潤也を楽しそうに眺めて笑みを浮かべて言う。
「いやいやいや、兄弟、そんな怖い顔するなって、仕方ないよ。君が使っているものはそういうものなんだからさ・・・。しかし、君が黒峰咲と出会ったのを聞いて僕は驚き者の木傘寿の木だったよ・・・。どうだい兄弟、肉親との再会っていうのは中々に身に染みたんじゃないかな・・・。」
潤也はアテルラナに引っかかるものを感じた。
振り返れば、このアテルラナの言動は明らかにおかしい点が多い。
潤也はアテルラナの胸ぐらを掴んで言う。
振り返れば、このアテルラナの言動は明らかにおかしい点が多い。
潤也はアテルラナの胸ぐらを掴んで言う。
「さっきもそうだ・・・お前がなんで咲の事を知っている。一体どこで、いつその情報を手に入れた。お前は一体何を隠している!」
アテルラナ。
この奇妙な銀髪の協力者を潤也はリベジオンの修理や鋼獣など情報提供を一手に引き受けてくれていたのもあり、アテルラナ自身の素性に関してはそれ程詮索はしないように努めてきた。
しかし、このアテルラナは本来知り得ない情報いくつも知り得ている。
アテルラナの言動は偶然関わったのではなく、まるで最初から全てを知った上で潤也に協力していたとしか取ることの出来ない発言だ。
その答えをはぐらかされるのはもう終わりにしなければならない。
そして、彼の知り得る情報を全て聞き出さなければならない。
そう真剣に問う潤也をアテルラナは面白そうに見つめた後、言う。
この奇妙な銀髪の協力者を潤也はリベジオンの修理や鋼獣など情報提供を一手に引き受けてくれていたのもあり、アテルラナ自身の素性に関してはそれ程詮索はしないように努めてきた。
しかし、このアテルラナは本来知り得ない情報いくつも知り得ている。
アテルラナの言動は偶然関わったのではなく、まるで最初から全てを知った上で潤也に協力していたとしか取ることの出来ない発言だ。
その答えをはぐらかされるのはもう終わりにしなければならない。
そして、彼の知り得る情報を全て聞き出さなければならない。
そう真剣に問う潤也をアテルラナは面白そうに見つめた後、言う。
「んふ、まあ、ねー、どこでというよりかは僕も当事者なんだよね。」
「当事者?」
「この研究所、琴峰機関第三研究所、通称『神秘研究部』というんだけどね、ここで行われていた実験に僕は出資していたんだよ。技術提携も行なっていたんだ。」
「研究?」
「兄弟、君の妹が乗っているあの巨大な鋼機、CR-01メタトロニウスはここで開発された機体なんだ。」
「なるほどな・・・。」
「当事者?」
「この研究所、琴峰機関第三研究所、通称『神秘研究部』というんだけどね、ここで行われていた実験に僕は出資していたんだよ。技術提携も行なっていたんだ。」
「研究?」
「兄弟、君の妹が乗っているあの巨大な鋼機、CR-01メタトロニウスはここで開発された機体なんだ。」
「なるほどな・・・。」
潤也は納得した。
アテルラナは支竹という人間が残したレポートを持っている。
そのレポートにはDSGCシステムに対しての記述もあり、それを用いてブラックボックスだらけのリべジオンの修理を行なっていたのだという。
何故、そんなものをアテルラナが持っているのかとは思っていたが、そもそもとして、彼がこのDSGCシステムの開発に一枚噛んでいたのだとするならば、色々納得がいく話ではある。
アテルラナは支竹という人間が残したレポートを持っている。
そのレポートにはDSGCシステムに対しての記述もあり、それを用いてブラックボックスだらけのリべジオンの修理を行なっていたのだという。
何故、そんなものをアテルラナが持っているのかとは思っていたが、そもそもとして、彼がこのDSGCシステムの開発に一枚噛んでいたのだとするならば、色々納得がいく話ではある。
「つまり、偶然俺の戦闘を見て、怨念機だと確信したってくだりは嘘だったっていうわけか・・・。」
「そうだよ~ま、色々混乱させてしまうのもよくないし、何より君が『真実』を知るのはあの時は割りと避けたかったからねぇ。きっとあの時の君では受け入れる事なんて出来なかっただろうから・・・。」
「そうだよ~ま、色々混乱させてしまうのもよくないし、何より君が『真実』を知るのはあの時は割りと避けたかったからねぇ。きっとあの時の君では受け入れる事なんて出来なかっただろうから・・・。」
そう軽く言うアテルラナを睨んで、
「さっきもそうだ・・・・・・アテルラナ、お前は一体何を知っている?」
潤也はそう棘のある口調で尋ねた。
アテルラナは顔に笑みを絶やさずに言う。
アテルラナは顔に笑みを絶やさずに言う。
「ふふ、まあ、その話も後でするよ。」
「今言え!」
「せっかちは嫌われるぜ、兄弟。さて、まあ、どこから話そうかな・・・。君もなんとなく察しているんじゃないかと思うけど、君が使っている怨嗟の魔王CR-02 リベジオンは僕が開発した機体なんだよ。正確には研究して改修した機体・・・というべきかな?」
「だろうな・・・。」
「今言え!」
「せっかちは嫌われるぜ、兄弟。さて、まあ、どこから話そうかな・・・。君もなんとなく察しているんじゃないかと思うけど、君が使っている怨嗟の魔王CR-02 リベジオンは僕が開発した機体なんだよ。正確には研究して改修した機体・・・というべきかな?」
「だろうな・・・。」
これまでの話を聞けば、それはなんとなくだが予想がついていた話ではある。
そもそも、たった1日で半壊した機体を修理するという所業がおかしい。
元々代用のパーツが無ければそんな事は不可能な筈だ。
しかし、それを成しているという事は、そもそもとしてリベジオンのスペアパーツを彼が持っていたという事に他ならない。
つまり、このアテルラナという男自身がリベジオンの実質的な開発し組み立てた人間なのだという可能性がある。
そして、そしてアテルラナがそれを認める事で、その予想は正しいものとなった。
そもそも、たった1日で半壊した機体を修理するという所業がおかしい。
元々代用のパーツが無ければそんな事は不可能な筈だ。
しかし、それを成しているという事は、そもそもとしてリベジオンのスペアパーツを彼が持っていたという事に他ならない。
つまり、このアテルラナという男自身がリベジオンの実質的な開発し組み立てた人間なのだという可能性がある。
そして、そしてアテルラナがそれを認める事で、その予想は正しいものとなった。
「元々、琴峰機関でのメタトロニウスのDSGCシステムの調整が終わったら、その成果を頂いてこちらの調整をしようと思っていたんだけどね。メタトロニウスは起動実験の際に色々不慮の事故があってね・・・。その際、何に引き寄せられたのかリベジオンも無人で起動してどこかに行っちゃってね・・・まさか、何の因果か君が乗っているとは・・・色々な意味で驚きだった、僕は運命というものを感じずにはいられなかったよ・・・兄弟。」
「メタトロニウスは暴走?どういう意味だ?」
「メタトロニウスは暴走?どういう意味だ?」
潤也の問いにアテルラナは撫でるような声で答える。
「ねぇ、兄弟、君は黒峰咲からどれぐらい話を聞いている?」
「何の話をだ・・・。」
「そうだな~例えば、彼女がメタトロニウスの操縦者に選ばれた理由とか・・・。」
「―――知らない。」
「そうかー、ふむ、まあ、そもそも黒峰豪鉄がそんな話を君にするかどうか少し疑問ではあったし不思議ではないか・・・。じゃあ、兄弟、君が家族を失った事件の記憶はどれぐらいある?」
「事件の記憶・・・?」
「何の話をだ・・・。」
「そうだな~例えば、彼女がメタトロニウスの操縦者に選ばれた理由とか・・・。」
「―――知らない。」
「そうかー、ふむ、まあ、そもそも黒峰豪鉄がそんな話を君にするかどうか少し疑問ではあったし不思議ではないか・・・。じゃあ、兄弟、君が家族を失った事件の記憶はどれぐらいある?」
「事件の記憶・・・?」
そう問いかけるアテルラナ。
そんな事を知らないと喉から出かけて潤也はそれを言うのを止めた。
そういえば、咲も潤也が咲が両親を殺したという事実を知らない事を不思議がっていた。
彼女曰く、目の前で殺したと発言していたでは無かったか?
自身の記憶を検索する・・・全てが始まったあの日、あの絶望の前の記憶が明確に思い出せない。
記憶にあるのは千切れた父親の腕の記憶だけだ。
そんな事を知らないと喉から出かけて潤也はそれを言うのを止めた。
そういえば、咲も潤也が咲が両親を殺したという事実を知らない事を不思議がっていた。
彼女曰く、目の前で殺したと発言していたでは無かったか?
自身の記憶を検索する・・・全てが始まったあの日、あの絶望の前の記憶が明確に思い出せない。
記憶にあるのは千切れた父親の腕の記憶だけだ。
「あれは兄弟にとってもショックな事だったしね、その後にいきなり未調整のDSGCシステムで怨念に当てられたんだ、あの日の記憶がグチャグチャになるのは無理もない。催眠が解けたタイミングもそのぐらいだったんだろうし・・・。」
「催眠が解けた?」
「そうさ、君は実の両親から催眠をかけられていたんだよ。」
「ふざけるな、何の為にだ!」
「催眠が解けた?」
「そうさ、君は実の両親から催眠をかけられていたんだよ。」
「ふざけるな、何の為にだ!」
潤也はアテルラナの怒りの形相で胸ぐらを掴む。
アテルラナはそれに対しても顔色一つ変えずに言う。
アテルラナはそれに対しても顔色一つ変えずに言う。
「1つは情報漏洩を防ぐ為、もう1つは君を守るためにさ、兄弟。」
「なん・・・だと・・。」
「そうだね、まず順を追って説明しようか・・・CRシリーズ、つまるところの君の怨嗟の魔王に代表される怨念機シリーズは琴峰機関でも極秘裏に開発されたものだ。この怨念機を制作したのは『とある人物の複製を人為的に作る』事を目的とした琴峰機関としては、計画外の行動だったとは言える。いや、一応は神秘の側面から彼女を造る事を目的とした研究・・・なんて言い訳じみたコンセプトはあったけど、その本当の理由は当時、資金繰りに困っていた琴峰機関に出資者からの条件だったわけだ。まあ、その出資者ってのは僕だったんだけど・・・。」
「ちょっと、待て、お前は一体何を言っている・・・。」
「なん・・・だと・・。」
「そうだね、まず順を追って説明しようか・・・CRシリーズ、つまるところの君の怨嗟の魔王に代表される怨念機シリーズは琴峰機関でも極秘裏に開発されたものだ。この怨念機を制作したのは『とある人物の複製を人為的に作る』事を目的とした琴峰機関としては、計画外の行動だったとは言える。いや、一応は神秘の側面から彼女を造る事を目的とした研究・・・なんて言い訳じみたコンセプトはあったけど、その本当の理由は当時、資金繰りに困っていた琴峰機関に出資者からの条件だったわけだ。まあ、その出資者ってのは僕だったんだけど・・・。」
「ちょっと、待て、お前は一体何を言っている・・・。」
そう言って話を遮ろうとする潤也の口にアテルラナは人指し指を当ててしーっとジェスチャーを取る。
「黙って聞きなよ、兄弟。人が話してる時は茶々入れずに聞く事だって大事なんだぜ?」
押し黙る潤也。
それに満足したようにアテルラナは続ける。
それに満足したようにアテルラナは続ける。
「まあ、君にわかるようにいうと凄い技術力を持った研究機関があって、それは一つの目的を持って行動していたんだけれども、この研究所は資金難に悩まされていてね。僕はそれにある条件を付けて、資金提供を行ったんだ。資金と情報をくれてやるから、怨念機を作ってみてくれないか?と・・・彼らは十数年間、同じ研究しかしていなかったせいか、少々その研究に飽きていて燻っていたらしくてね。結構好意的に受け入れられたらしいよ。そして、僕は彼らに『遺産』を提供した。」
アテルラナの小馬鹿にした物言いに不快になりながらも潤也はそれを流す。
「『遺産』?」
「察しろよ、兄弟、支竹博士のレポートさ。僕は当時、支竹博士のレポートとDSGCシステムの雛形を手に入れていてね。これを実際に使える者にしてくれる技術力を持った人間を探していたんだよ。いかんせん、支竹博士が残したDSGCシステムは化石も同然だった。搭載されていた鋼機も数世代前のものだったわけだしね・・・正直システム以外は粗大ごみだったよ。琴峰機関っていうのは機械工学の観点からも『とある人物』・・・まあ、言ってしまえば、顔に皺だらけの辛気臭いクソババアなんだけど、そんなものを機械的に再現するって研究していた時期もあってね、世界中から鋼機の技術者を引きぬいてもいたんだ。」
「察しろよ、兄弟、支竹博士のレポートさ。僕は当時、支竹博士のレポートとDSGCシステムの雛形を手に入れていてね。これを実際に使える者にしてくれる技術力を持った人間を探していたんだよ。いかんせん、支竹博士が残したDSGCシステムは化石も同然だった。搭載されていた鋼機も数世代前のものだったわけだしね・・・正直システム以外は粗大ごみだったよ。琴峰機関っていうのは機械工学の観点からも『とある人物』・・・まあ、言ってしまえば、顔に皺だらけの辛気臭いクソババアなんだけど、そんなものを機械的に再現するって研究していた時期もあってね、世界中から鋼機の技術者を引きぬいてもいたんだ。」
『とある人物』に言及する時、アテルラナの口調が少し厳しくなったように潤也は感じた。
しかし、すぐにアテルラナは元の気持ちの悪い笑みに戻って言う。
しかし、すぐにアテルラナは元の気持ちの悪い笑みに戻って言う。
「彼らは一応、世間的には知られざる機関だ。かの研究所の存在の実態を知っているのはほんの一握りの人間だった。だから、情報が漏れる心配もない。僕は彼らに資金提供を条件に、そのDSGCシステムの雛形を渡して、それを現代に復元させようとしたのさ・・・。その結果、出来るのがメタトロニウスとリベジオン。ただ、これの製作途中には色々問題があってね・・・。」
「問題?」
「稼働実験さ。システムを解析する内にDSGCシステムには酷い欠陥がある事がわかった。」
「問題?」
「稼働実験さ。システムを解析する内にDSGCシステムには酷い欠陥がある事がわかった。」
潤也はそれを察して言う。
「怨念のフィードバックのことか?」
「そういうことだね。しかもこのシステムは遠隔操作で稼働させる事が出来ないんだ・・・いかんせん古過ぎてね。だから稼働をテストするという事は誰かが、このシステムを内部から起動させる必要があった。結果、当然ながら、その人間は怨念に晒されてしまう。大変危険な実験だ。だから、DSGCシステムを動作させる被験者を探すのには相当難儀した。まず琴峰の候補生たちは排除された。琴峰機関が普段行なっている人体実験は少なくとも彼らを救うという名目で行なっている実験だ。この実験では操縦者になるものは失うものはあっても得るものはない。ただ、ただ、危険なだけだ。とはいえ、一般人からそういった人間を仕入れるわけにもいかない。死に瀕した人を救うという名目は非人道の琴峰機関の最後の生命線でもあり、今回のそれはそれとは解脱しすぎていた。人間、外道に手を染めるにもそれなりに良心を騙せる理由が必要だったという訳さ。被験者候補すら見つからず頭を悩ませていた頃、当時の第三研究部の部長であった黒峰豪鉄と副部長であった黒峰恵は自らの身を切る決断をした。」
「それが――――」
「そう、君と君の妹だよ、黒峰潤也。可哀想にねぇ・・・君は肉親にモルモットにされたのさ。」
「馬鹿な、俺にそんな記憶は無い!」
「そういうことだね。しかもこのシステムは遠隔操作で稼働させる事が出来ないんだ・・・いかんせん古過ぎてね。だから稼働をテストするという事は誰かが、このシステムを内部から起動させる必要があった。結果、当然ながら、その人間は怨念に晒されてしまう。大変危険な実験だ。だから、DSGCシステムを動作させる被験者を探すのには相当難儀した。まず琴峰の候補生たちは排除された。琴峰機関が普段行なっている人体実験は少なくとも彼らを救うという名目で行なっている実験だ。この実験では操縦者になるものは失うものはあっても得るものはない。ただ、ただ、危険なだけだ。とはいえ、一般人からそういった人間を仕入れるわけにもいかない。死に瀕した人を救うという名目は非人道の琴峰機関の最後の生命線でもあり、今回のそれはそれとは解脱しすぎていた。人間、外道に手を染めるにもそれなりに良心を騙せる理由が必要だったという訳さ。被験者候補すら見つからず頭を悩ませていた頃、当時の第三研究部の部長であった黒峰豪鉄と副部長であった黒峰恵は自らの身を切る決断をした。」
「それが――――」
「そう、君と君の妹だよ、黒峰潤也。可哀想にねぇ・・・君は肉親にモルモットにされたのさ。」
「馬鹿な、俺にそんな記憶は無い!」
狼狽する潤也。
アテルラナを掴む両手に力が入る。
記憶を何度さかのぼってもそんな記憶は欠片すら無かった。
いい両親だったと思う。
父は厳しい人だったが思いやり深い人であったし、母親は優しい人だった。
目の前にいるこの狂人が勝手な妄想を語っているようにしか思えなかった。
アテルラナを掴む両手に力が入る。
記憶を何度さかのぼってもそんな記憶は欠片すら無かった。
いい両親だったと思う。
父は厳しい人だったが思いやり深い人であったし、母親は優しい人だった。
目の前にいるこの狂人が勝手な妄想を語っているようにしか思えなかった。
「当然さ、なんせ、黒峰豪鉄はその辺りのフォローもしっかり考えられていてね。それが君らの催眠処置だ。一つは情報漏洩を避けるための記憶操作の為であるんだけど、もう一つは君たちへの精神的負担を最小限にする為さ。かのシステムの中にある時、君たちは自意識を閉じさせる。それによって、怨念から受ける負担を最小限にし、その記憶を催眠で処理する事で後遺症をなくそうとしたのさ。だから君にはその記憶が無い。」
「――――嘘だ!!」
「ほんとだよ!!!ぐふふふ、あははは、なんて三流、なんて五流!!!!!有能にも程があるったらありゃしない!!!君の両親はまったくもって天才だ!!!!自分の子供を危険に晒すなら、自分をモルモットにすればいいのに、わざわざ子供にやらせるなんて、なんて最高、なんて素晴らしい両親なんだ。僕の両親に欲しいぐらいだよ!!!」
「――――嘘だ!!」
「ほんとだよ!!!ぐふふふ、あははは、なんて三流、なんて五流!!!!!有能にも程があるったらありゃしない!!!君の両親はまったくもって天才だ!!!!自分の子供を危険に晒すなら、自分をモルモットにすればいいのに、わざわざ子供にやらせるなんて、なんて最高、なんて素晴らしい両親なんだ。僕の両親に欲しいぐらいだよ!!!」
大笑いするアテルラナ。
何がそんなに面白いのか?何がそんなに可笑しいのか?
心底面白そうに笑うアテルラナに黒峰潤也は初めて戦慄を覚える。
何がそんなに面白いのか?何がそんなに可笑しいのか?
心底面白そうに笑うアテルラナに黒峰潤也は初めて戦慄を覚える。
「いーやいやいやいやいや、ごめんごめん。そんなに怖い顔しないでくれよ、兄弟。僕は君が大好きなんだ。だから、僕は君に真実を伝えている。それにこの件は僕にだって責任はある。研究が被験者探しで1年近く止まっていてね、それで僕は催促したからね。」
「催促?」
「資金の提供を打ち切るぞってね。彼らは大慌てだったよ。そして、責任は第三研究部の部長だった君の父親にいったといわけさ・・・。しかし、君さっきから信じられないみたいな顔をしてるね。」
「当然だ。そんな話、信じられるか!」
「だろうと思ってさ、だから君をここに招待した訳だよ。というか、さっきから首が締まってて息苦しいんだ。いい加減離してくれない?良い物見せてあげるからさ・・・。」
「催促?」
「資金の提供を打ち切るぞってね。彼らは大慌てだったよ。そして、責任は第三研究部の部長だった君の父親にいったといわけさ・・・。しかし、君さっきから信じられないみたいな顔をしてるね。」
「当然だ。そんな話、信じられるか!」
「だろうと思ってさ、だから君をここに招待した訳だよ。というか、さっきから首が締まってて息苦しいんだ。いい加減離してくれない?良い物見せてあげるからさ・・・。」
アテルラナがいう良い物がろくでもないものだと予感しながら、潤也はアテルラナから手を離す。
真実を知らなければならないという思いがアテルラナ本人に持つ不快感を上回ったといえた。
その咲をあそこまでの凶行に走った理由がそこにあるかもしれないのならば、それを知らなければならない。
潤也の中にあるのはただ、その思いだけだった。
アテルラナは乱れた服を正した後、最初に腰掛けていた椅子に座り、目の前にあった端末を操作した後、カードリーダーにポケットから取り出したカードを通す。
すると、施設が稼働する音と共に立体モニターに明かりがついた。
モニターには歪な鋼機の3Dモデルと様々な記号や数値が映しだされていた。
その3Dモデルを見て潤也は息を呑む。
禍々しいフォルムに悪魔のような双眸を持つ機体。
真実を知らなければならないという思いがアテルラナ本人に持つ不快感を上回ったといえた。
その咲をあそこまでの凶行に走った理由がそこにあるかもしれないのならば、それを知らなければならない。
潤也の中にあるのはただ、その思いだけだった。
アテルラナは乱れた服を正した後、最初に腰掛けていた椅子に座り、目の前にあった端末を操作した後、カードリーダーにポケットから取り出したカードを通す。
すると、施設が稼働する音と共に立体モニターに明かりがついた。
モニターには歪な鋼機の3Dモデルと様々な記号や数値が映しだされていた。
その3Dモデルを見て潤也は息を呑む。
禍々しいフォルムに悪魔のような双眸を持つ機体。
「――――リベジ・・・オン?」
潤也は思わず、その鋼機を見てそう呟く。
細部が違い、カラーリングも白だがモニターに映るのは確かにリベジオンに似ていた。
そんな潤也の驚きの最中、近くにあったスピーカーから声が流れる。
その声に潤也ははっと息を呑む。
今は亡き父親、黒峰豪鉄の声だった。
細部が違い、カラーリングも白だがモニターに映るのは確かにリベジオンに似ていた。
そんな潤也の驚きの最中、近くにあったスピーカーから声が流れる。
その声に潤也ははっと息を呑む。
今は亡き父親、黒峰豪鉄の声だった。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。『道化師』から提供されたシステムの解析が終了した。これは脅威のシステムだと言っていい。人はついにディールダインすら超える力を手に入れる時が来たのだと実感させる。人の残留思念をかき集め、それをエネルギーへと変換する、そんなお伽話のような事を可能とするこのシステムはまさに革命だ。こんなシステムが100年程前に誕生していたというのにはにわかに信じられない。確かに危険ではあるが、もし、この力を制御する事が出来るならば、人は新たにステージに進めるのではないか・・・・『至宝』の稼働すら可能になるのではないか?これの前には究極の個体を作り出す実験などなんと陳腐なことか・・・。すまない、つい感情的になってしまった。しかし、それほどにシステムは素晴らしい。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。問題が起こった。DSGC稼働実験の際、搭乗者を志願した研究員が稼働と共に発狂した。原因の解明を急いでいる。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。先日の事件の原因が判明した。DSGCシステムが収集した思念はエネルギーに変換される前に搭乗者にフィードバックされるようだ。DSGCシステムは不遇の死を迎えた物の思念を中心に収集しているらしく、それが先の事件の際、志願した研究員にフィードバックされたのだと思われる。DSGCシステムは遠隔操作を受け付けないため、内部からの操作は必須となっている。小型ロボット等を用いて動かすことを実験してみたが、どうも、DSGCシステムは機体内部にて搭乗者が人であるかどうかの識別が行われているようだ。現在、解決策を模索している。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。先の事件への解決案が出た。史竹博士のレポート調べた結果、一つ情報が壊れていた部分を発見した。これを琴峰機関の解析班に回し、復元した。それで1つ重大な事実が発覚した。怨念機と呼ばれる機体には適格者と呼ばれる人が必要だという事がわかったのだ。この適格者というのは一定の精神波長を持つものであり、怨念の影響を受けてもなお、自我を保てる精神構造を持った人間の事をいう。しかし、この適格者は耐性があるだけであり、長時間システムの中にいれば、発狂した研究者のようになってしまう危険性も孕んでいる。ファイルの中には適格者の特徴だというマイクロβと呼ばれる脳波の詳細もあった。第七機関に健康診断時に適格者の適正テストを統括地域で行なって貰うよう要請し、受諾された。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。テストが終了し結果を収集した。結果、適格者への適正値B+以上であるものが統括区域で7名、A+が1名いることがわかった。A+の人間の名を黒峰咲という。」
潤也ははっと息を呑んだ。
「そう、私の娘だ。史竹博士のレポートによればA+未満の人間はすぐに精神をシステムに奪われてしまう可能性があるとされている。その為、これから実験を進める上では、私の娘の強力が必要不可欠である。普通の人間をこのような実験の被験体にするのは父親として、そして琴峰機関の理念としても相応しくない。その為、私は実験の中止を申し入れたが却下された。道化師の資金援助が無ければ、それほどまでに琴峰機関の財政状況は苦しい状況にあったといえる。そこで私が代案として提案したのは、かねてからあった0から時峰九条の復元を作り上げる研究を利用するという事だ。つまりはクローン技術、私の娘のクローンを作り上げ、それを持って実験を行うという事だ。個体名はナンバーIとされている。クローンの完成までかかる時間は1年ほどになるそうだ。娘と同じ見形をしたものを実験体として扱うのは良心が痛む所である。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。『道化師』から新たな提供品があった。至宝の設計図である。図と言ってもそれは図面ではなく特殊な粒子であり、風に飛んでいってしまう程の小さなものがビーカーの中に詰められていた。これに膨大なエネルギーを送り込む事で至宝を構成する唯一無二の物質を収集し、至宝を精錬するのだという。至宝は窮地に陥った人を救うための力だという。使用するためには生物の体内にこれを取り込ませる必要があるらしく、ナンバーIにこの至宝の設計図を急遽組み込む事を決定した。以降、プラン109をProject Code Rebirth、CR計画と改める事になった。目的は至宝の再誕である。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。困った事になった。『道化師』から催促があったのである。あと2月以内に結果を出さなければ、資金援助を打ち切るというものだ。もはや第七機関全体で取り組んでいる研究であり、もう後戻り出来ないところまで来ている。しかし、素体であるナンバーIは未だ完成していない。まだ半年は時間がかかるのだという。私に残された手段はただ1つ、オリジナルを使うという事だ・・・しかし・・・そんな事が許されていいのだろうか・・・。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。オリジナルの使用が決定した。私は地獄に落ちるだろう。助手でありオリジナルの母親、つまり私の妻が最後まで強く反対したが安全への最善を尽くすと説得した。もしDSGCシステムが至宝を構成する事が可能な程の力を秘めているのだとすれば、エネルギー問題、環境問題、食料問題、また紛争の起因になる様々な出来事が全て解決する可能性がある。『道化師』から提供されたDSGCシステムは2基だ。これは当時の鋼機のジェネレーターに直結されており、システムにより供給したエネルギーが機体の全身を循環するように構成されている。この機体のコードをCR-01、CR-02とする。02に関しては『道化師』が直々に改修を行うらしく、地下格納庫の一室を借り入れて調整を行うようだ。その為、我々が実験に扱うのはCR-01のみとなる。次に安全面についてだ。人の怨念に触れるという実験の為、いくら適正があってもそれは被験体への大きな精神的負担があると想定される。その為、今回の実験においては、被験体に催眠をかける事を決定した。催眠と暗示で被験者の意識を一時的に沈下させ、思考と感情を奪う。これによって被験体は思念によっておこるフィードバックを大きく軽減する。またこれは機密保持に置いても有効である。実験が終わった後、被験体は自分がどのような怨念のビジョンを見たのか覚えてすらいないだろう。また、DSGCシステムにもリミッターを設けて一定以上の出力をマークした場合、自動的に緊急停止させるという仕組みだ。これに伴い黒峰咲の兄であり、私の息子である黒峰潤也にも同様の処置を行う事を決定した。理由としては、私と妻、娘までこの計画に関わる事になった今、息子にこの計画を隠し通す事は不可能であるという事からの予防措置である。扱いとしては黒峰咲のサブプランとして扱う事になった。黒峰潤也の適正はB+である。」
画面が切り替わる。
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。実験の段取りが決まった。第七機関の第六区ハナバラでの決行となった。オリジナルとサブへの催眠処置は順調に進んでいる。彼らは実験当日、私と妻と共に旅行に・・・」
少し言葉を飲み込むようにした後、息を吐いて豪鉄は続ける。
「旅行に来るという刷り込みを行なっている。このままいけば、実験は予定通り行われるだろう。―――――――――――――やはり迷いはある。しかし――――――」
画面が切り替わる。
これまでとは打って変わって辺りが騒がしい。
何か怒号のような音がなる。
鼓膜をやぶらんばかりの悲鳴。
これまでとは打って変わって辺りが騒がしい。
何か怒号のような音がなる。
鼓膜をやぶらんばかりの悲鳴。
「まずい事になった。事態は最悪だと言っていい。」
豪鉄の声にも焦りの色が見える。
これまでになく感情的でかつ、息も切れ切れだ。
これまでになく感情的でかつ、息も切れ切れだ。
「CR-01に搭載されたDSGCシステムが暴走した。段取りは完璧だった筈だ。この件の可能性として考えられるのは、DSGCシステムのリミッターが誤作動を起こし作動しなかったというケースだ。しかし、誤作動を想定し三重にかけられたリミッターのどれもが作動しないという事態に陥るとはこれではまるで誰かが・・・いや、今はこれを論じる時では無い。既にシステムは制御不能な状態に陥っている。CR-01は暴走状態にあり、それに巻き込まれて多くの研究員が死んだ・・・私の妻も・・・だ・・・。この暴走が結果になるのか私にも想像がつかない。ただ少なくともこの一帯が無事に済むという事はないだろう。これから私は催眠状態にある息子を連れて、ここから脱出を図るが生きて出れる事はないのでは無いかと思う。もし、私の息子が生き伸びる事が出来たならば、誰か伝えて欲しい・・・すまなかった、やはり、これは我々が手を出して良い領域のモノでは――――」
爆発音と共に音が切れる。
これでこの記録は終わったようだった。
父から語られた記録、その真実に潤也はただ呆然と立ち尽くす。
これでこの記録は終わったようだった。
父から語られた記録、その真実に潤也はただ呆然と立ち尽くす。
「な、僕が言うより信頼度ありありだろう?」
アテルラナは潤也に相場違いな陽気な声で、そう問いかける。
「しっかし、ほんとひでぇー父親もいたもんだなぁー。羨ましいよ、うんうん。」
慰めるようにして言うアテルラナ。
潤也は静かにアテルラナに尋ねる。
潤也は静かにアテルラナに尋ねる。
「なあ、アテルラナ。」
「なんだい、兄弟?」
「これは真実なのか?」
「真実だよ。肉親の声から聞いても信じられない?」
「お前の作り話とかそういう事じゃないのか?」
「勿論、全ての元凶は君の父親と母親だー。そのせいで咲ちゃんはあんな事になっちゃって僕ホロリと来たよ。兄弟、君はなんて不幸なんだ・・・。」
「なんだい、兄弟?」
「これは真実なのか?」
「真実だよ。肉親の声から聞いても信じられない?」
「お前の作り話とかそういう事じゃないのか?」
「勿論、全ての元凶は君の父親と母親だー。そのせいで咲ちゃんはあんな事になっちゃって僕ホロリと来たよ。兄弟、君はなんて不幸なんだ・・・。」
笑うアテルラナ。
潤也は目をつむり、湧き上がる感情を塞き止めてその事実を飲み込む。
飲み込まなければならない。
激情に流されるのは後でいい。
そして、アテルラナに問う。
潤也は目をつむり、湧き上がる感情を塞き止めてその事実を飲み込む。
飲み込まなければならない。
激情に流されるのは後でいい。
そして、アテルラナに問う。
「父さんが言ってた『道化師』っていうのはお前の事か?」
この質問にアテルラナは顔をにんまりさせた。
「思いの外冷静に物事を聞いてるねー、兄弟、君に新しい魅力を感じてきたよ。ちなみになんでそう思う?」
「一つはさっきお前がぺちゃくちゃ喋ってた時に言ってた資金提供がどうだのと合致するというのが一つ。もう一つはお前の名前だ。何処の国だったか忘れたがアテルラナの意味は『低俗な道化劇』という意味だった筈だ。お前と同じ道化という名前だ。違うか?」
「ピンポンピンポンピンポン!大正解!博識だね、兄弟。そう彼の話に出てきた『道化師』は何を隠そう僕なのさ。」
「一つはさっきお前がぺちゃくちゃ喋ってた時に言ってた資金提供がどうだのと合致するというのが一つ。もう一つはお前の名前だ。何処の国だったか忘れたがアテルラナの意味は『低俗な道化劇』という意味だった筈だ。お前と同じ道化という名前だ。違うか?」
「ピンポンピンポンピンポン!大正解!博識だね、兄弟。そう彼の話に出てきた『道化師』は何を隠そう僕なのさ。」
アテルラナはそう言って胸を張った。
「ならば、この惨事の発端はお前にあるって事じゃないのか!?」
声を荒げる潤也に対してアテルラナはため息混じりに答える。
「ある意味ではそうとも言えるし、ある意味では違うとも言える。解析の進行は予定より大幅に遅れていたからね。クライアントとしては催促するのは当たり前の事だろう?ちゃんと段階は踏んだんだよ?これまでに完成させてねーって2回ぐらいは言ったんだよ?」
「それが原因でこんな惨事になったんじゃないのか?」
「それが原因でこんな惨事になったんじゃないのか?」
憎悪を込めて潤也は言う。
こいつがDSGCシステムなんてものを提供しなければ、こいつが計画の催促なんてしなければ、父も母も・・・咲もあんな風にはならなかったのではないか?
思い出す、あの変わり果ててしまっていた咲を・・・。
まるで黒峰咲という皮を被った化物に成り果ててしまっていた姿を・・・。
潤也の中で憎悪の感情が渦を巻く。
それを否定するようにアテルラナは首を振った。
こいつがDSGCシステムなんてものを提供しなければ、こいつが計画の催促なんてしなければ、父も母も・・・咲もあんな風にはならなかったのではないか?
思い出す、あの変わり果ててしまっていた咲を・・・。
まるで黒峰咲という皮を被った化物に成り果ててしまっていた姿を・・・。
潤也の中で憎悪の感情が渦を巻く。
それを否定するようにアテルラナは首を振った。
「いやいや、確かにそれは僕のせいでもあるけどさ、僕を責めるのはお門違いだぜ。決めたのは君の両親たちだぜ?自分の子供を使いたくないのならば子供を連れて立場も捨てて逃げ出せばよかったんだ・・・それが出来なかった君の両親こそ君が責めるべき存在だ。結局彼らは立場だとか、研究だとか、そういったものを君たちよりも優先したんだよ。まあ、責めるのはもう死んじゃってて無理なんだけどね?」
「アテルラナァ!!」
「アテルラナァ!!」
掴みかかる潤也。
アテルラナはそれをあしらうようにして回避する。
アテルラナはそれをあしらうようにして回避する。
「うひゃひゃひゃ、ああ、そうだそうだ。兄弟もさ、咲ちゃんに協力したらどうだい?なんだっけ全ての人間を蘇生して不死の世界を作るとかなんちゃらかんちゃら、すっげー居心地悪そうで狭そうな世界だけど、そこなら君の両親は蘇るんだろう?そこで存分に責めてあげればいいじゃない?その後、仲直りして君たち皆で胸糞悪いハッピーエンドさ。」
「ふざけるな!あんな本当に出来るかどうかすらわからない事に協力なんて出来るか!!」
「ふむ、君の言い方だと出来たら別に問題ないみたいな風に聞こえるね・・・。」
「――――それは――――――」
「彼女とUHがやろうとしているのは無差別な殺戮だ。至宝を探し出すという名目のもと人を殺す事を純粋な目的としている分ある意味ではテロより質が悪い。交渉の余地が無いんだからね。君がごく一般的でまともな倫理観を持っているのならば、まず彼女のやっている事自体を否定すべきだ。人を殺すことはいけない事ですなんてのは子供だって知ってる事だぜ?後で生き返る今は死んでと言って彼女は殺戮を行わせているんだ。そもそもこの時点で彼女のやり方は間違っていると思わないかい?」
「―――。」
「つまり君は彼女の本当か嘘かわからない話に少しは心を惹かれたのさ・・・本当に君の両親が生き返るのならば、それはそれで良いのでは無いかと・・・。やり方が過剰に人を殺し、なおかつそれが高い確率で失敗すると君の目に映るから君はそれを否定しているだけでさ・・・。」
「ふざけるな!あんな本当に出来るかどうかすらわからない事に協力なんて出来るか!!」
「ふむ、君の言い方だと出来たら別に問題ないみたいな風に聞こえるね・・・。」
「――――それは――――――」
「彼女とUHがやろうとしているのは無差別な殺戮だ。至宝を探し出すという名目のもと人を殺す事を純粋な目的としている分ある意味ではテロより質が悪い。交渉の余地が無いんだからね。君がごく一般的でまともな倫理観を持っているのならば、まず彼女のやっている事自体を否定すべきだ。人を殺すことはいけない事ですなんてのは子供だって知ってる事だぜ?後で生き返る今は死んでと言って彼女は殺戮を行わせているんだ。そもそもこの時点で彼女のやり方は間違っていると思わないかい?」
「―――。」
「つまり君は彼女の本当か嘘かわからない話に少しは心を惹かれたのさ・・・本当に君の両親が生き返るのならば、それはそれで良いのでは無いかと・・・。やり方が過剰に人を殺し、なおかつそれが高い確率で失敗すると君の目に映るから君はそれを否定しているだけでさ・・・。」
押し黙る潤也。
潤也は確かに思った。
黒峰咲を止めなければならないと・・・。
その過程で様々な人々が犠牲になるのだから・・・。
そして、彼女の言うとおり至宝を集めたとしても今度はたった一人で世界中の怨念を受け止めてそれを読み込んだ上で、それを再生するという過程を踏む。
こんなものに人間が耐えられる訳がないとそう思った。
こんな事は止めなければならないと思った。
だが、これは様々な不確定要因が絡んでいるからこそ、そう思ったのではないか?
もし100%咲が思い描いたように事が進むのだとしたら問題ないのではないか?
そんな思いが、ほんの砂粒ほども自分には無いと断言する事は潤也には出来なかった。
――止めなければならない―――けれど―――と思う潤也の心理をアテルラナには見透かすように言う。
潤也は確かに思った。
黒峰咲を止めなければならないと・・・。
その過程で様々な人々が犠牲になるのだから・・・。
そして、彼女の言うとおり至宝を集めたとしても今度はたった一人で世界中の怨念を受け止めてそれを読み込んだ上で、それを再生するという過程を踏む。
こんなものに人間が耐えられる訳がないとそう思った。
こんな事は止めなければならないと思った。
だが、これは様々な不確定要因が絡んでいるからこそ、そう思ったのではないか?
もし100%咲が思い描いたように事が進むのだとしたら問題ないのではないか?
そんな思いが、ほんの砂粒ほども自分には無いと断言する事は潤也には出来なかった。
――止めなければならない―――けれど―――と思う潤也の心理をアテルラナには見透かすように言う。
「先に断言しておくよ、黒峰咲とメタトロニウスを止める事が出来るのはCR-02リベジオンの適格者になった君だけだ。もし自分以外の誰かが、この自体を収拾出来るんじゃないか?なんてありえない望みを君が持っているとするならば今捨てた方がいい。」
「なんで・・・。」
「簡単な話さ、至宝に対抗できるのは至宝だけだ。至宝とは絶対を超える力を持つとされている。その力はありとあらゆる必然を書き換える。そしてその至宝を扱えるのは怨念機と呼ばれる君たちの2機だけだ。」
「じゃあ、俺以外の誰かがリベジオンを・・・。」
「無理だね、怨念機は適正があると認めた者にナノマシンを打ち込む。怨念機はそのナノマシンで搭乗者をモニターしていね、これが怨念機起動のセキュリティキーにもなっているわけなんだけど・・・怨念機はその搭乗者が死ぬまでその人間しか動かす事が出来ないようになってる。そして君は既に怨念に触れすぎたせいで自殺することも出来ない・・・そうだろう?」
「なんで・・・。」
「簡単な話さ、至宝に対抗できるのは至宝だけだ。至宝とは絶対を超える力を持つとされている。その力はありとあらゆる必然を書き換える。そしてその至宝を扱えるのは怨念機と呼ばれる君たちの2機だけだ。」
「じゃあ、俺以外の誰かがリベジオンを・・・。」
「無理だね、怨念機は適正があると認めた者にナノマシンを打ち込む。怨念機はそのナノマシンで搭乗者をモニターしていね、これが怨念機起動のセキュリティキーにもなっているわけなんだけど・・・怨念機はその搭乗者が死ぬまでその人間しか動かす事が出来ないようになってる。そして君は既に怨念に触れすぎたせいで自殺することも出来ない・・・そうだろう?」
潤也はほんの数時間前の戦いの後、精神に限界を来たし自殺しようとした時の事を思い出す。
崖に埋め込まれたリベジオンのコックピットから飛び降りようとしたとき、酷い吐き気と死への恐怖が潤也を襲い、死ぬ事が出来なかった。
崖に埋め込まれたリベジオンのコックピットから飛び降りようとしたとき、酷い吐き気と死への恐怖が潤也を襲い、死ぬ事が出来なかった。
「それは兄弟がDSGCシステムで死を見すぎたからさ。彼らはきっと君にこう言うんだろう?死にたくない、死にたくないって・・・そんなものを幾度も見返す内に君の潜在意識に人並み以上の自身の死への忌避と生への欲求が刷り込まれたのさ。だから君は自分から死ぬことは出来ない。わかるかい?」
「じゃあ、誰かが俺を殺せばいい!!」
「じゃあ、誰かが俺を殺せばいい!!」
悲鳴混じりの声をあげて潤也が叫ぶ。
無理だ、無理だ、無理だ。
俺にはそんなことは出来ない。
咲を殺す事なんて出来ないし、だからといって、全てを見捨てて傍観している事なんて耐えられる訳がない。
そんな責務俺には重すぎる。
俺が何をした?
俺はただの一人の人間だった筈だ。
それがどうしてこんな事になっている?
ならば、俺以外のそれが出来る奴にやらせるべきなのだ。
もしその過程で俺が死ななければならないというのなら受け入れよう。
それ以上の事なんて俺には出来ない。
出来るわけが無い。
けれど、その願いすらアテルラナは一笑する。
無理だ、無理だ、無理だ。
俺にはそんなことは出来ない。
咲を殺す事なんて出来ないし、だからといって、全てを見捨てて傍観している事なんて耐えられる訳がない。
そんな責務俺には重すぎる。
俺が何をした?
俺はただの一人の人間だった筈だ。
それがどうしてこんな事になっている?
ならば、俺以外のそれが出来る奴にやらせるべきなのだ。
もしその過程で俺が死ななければならないというのなら受け入れよう。
それ以上の事なんて俺には出来ない。
出来るわけが無い。
けれど、その願いすらアテルラナは一笑する。
「誰が殺すんだい?僕は嫌だね、そんな面白くない事は・・・。そもそも並の人間がDSGCシステムの怨念に耐えられるなんて思っているわけじゃないだろう?君も君の妹程では無いが高い適正を持っている。曲がりなりにも狂わずに今までここまでこれたのは君が高い適正を持っていたからだ・・・。」
「だが、親父が言ってたように俺以外に適正の者がいるというのならば―――――」
「それにね、君以外の候補者は既に全員亡くなっているよ。」
「え・・・。」
「さてね、誰がそんな事をしたのやら・・・殺されたり、事故にあったり、鋼獣の災害に巻き込まれたりして、現状DSGCシステムに耐えられる精神適正が少しでもあるのは君だけだ。」
「嘘だ・・・。」
「だから、僕は君には本当の事しか言わないって・・・まったく君は運が無い。既に君には2つしか道が残されていないんだ。」
「・・・・ふ・・たつ?」
「そう、2つさ。全てを捨てて、どっか山奥にでも篭っているか・・・それとも君の妹を止める為に戦うか・・・勿論だけど、この止めるという言葉は殺すという意味だからね、履き違えるなよ兄弟・・・。」
「他の方法だって・・・咲を殺さずに止める方法だって・・・。」
「ないね、断言するよ。無い。」
「何を根拠にそんな事を言う!」
「だが、親父が言ってたように俺以外に適正の者がいるというのならば―――――」
「それにね、君以外の候補者は既に全員亡くなっているよ。」
「え・・・。」
「さてね、誰がそんな事をしたのやら・・・殺されたり、事故にあったり、鋼獣の災害に巻き込まれたりして、現状DSGCシステムに耐えられる精神適正が少しでもあるのは君だけだ。」
「嘘だ・・・。」
「だから、僕は君には本当の事しか言わないって・・・まったく君は運が無い。既に君には2つしか道が残されていないんだ。」
「・・・・ふ・・たつ?」
「そう、2つさ。全てを捨てて、どっか山奥にでも篭っているか・・・それとも君の妹を止める為に戦うか・・・勿論だけど、この止めるという言葉は殺すという意味だからね、履き違えるなよ兄弟・・・。」
「他の方法だって・・・咲を殺さずに止める方法だって・・・。」
「ないね、断言するよ。無い。」
「何を根拠にそんな事を言う!」
呆れたようにアテルラナは首を振る。
そうして子供をさとすようにアテルラナは言う。
そうして子供をさとすようにアテルラナは言う。
「じゃあ、もしあったとしよう。それは一体どんな方法だい?」
「それを今から――――――」
「兄弟・・・それじゃ遅いんだよ。君がそうやって一人で悩んでいる間にだって彼女は人を殺し続けていく、殺戮は続いているんだ。君はそんな彼女を殺さずに止める方法を探す為に、これから死ぬ人達に死んでくれというのかい?」
「それは――――」
「それを今から――――――」
「兄弟・・・それじゃ遅いんだよ。君がそうやって一人で悩んでいる間にだって彼女は人を殺し続けていく、殺戮は続いているんだ。君はそんな彼女を殺さずに止める方法を探す為に、これから死ぬ人達に死んでくれというのかい?」
「それは――――」
潤也は知っている。
今までUHに殺された様々な無念な魂をその身をもって、その死の瞬間を体験している。
だからこそ、UHが行なっている事の意味を理解している。
だからこそ、そのあとに続ける言葉は無かった。
黒峰咲を救うまでの時間、お前らは死ね等ということも出来ない。
黙りこむ潤也を見てアテルラナはくすりと笑う。
今までUHに殺された様々な無念な魂をその身をもって、その死の瞬間を体験している。
だからこそ、UHが行なっている事の意味を理解している。
だからこそ、そのあとに続ける言葉は無かった。
黒峰咲を救うまでの時間、お前らは死ね等ということも出来ない。
黙りこむ潤也を見てアテルラナはくすりと笑う。
「すまない。利己的に動く君からしてみればどうでもいい話だったね。けれど兄弟。そんな中途半端な覚悟で彼女の目の前にたって、彼女と戦って勝てると思っているのかい?君は理解していないんだろうけども、今や至宝を持つメタトロニウスと君のリベジオンじゃ機体性能差は歴然だ。ミジンコがティラノザウルスに挑むようなものさ、まだミジンコ程の可能性があるだけマシなんだけどね。けれど君のその覚悟ではそのミジンコ程の可能性だって生まれやしない。いいかい、0だよ0。無は何も産まない。覚悟も決意もない君があのメタトロニウスに挑んで勝てる可能性なんて皆無だ。」
アテルラナは皮肉めいた物言いを撫でるような声で続ける。
「兄弟、黒峰咲を止めるという事は黒峰咲を殺すという事と同義だ。それ以外の方法で彼女を止められると思わない方がいい。だって彼女は信じているんだろう?世界にいる人全てを蘇生する事が出来るって・・・死のない世界を作る事が出来るって、それはもう狂気の沙汰だけど、それを信じきってしまっているんだろう?そんな人間の思考を変えるというのがそもそもとして無理があるんだよ。黒峰咲と戦い殺す決意をするか?もしくは全てを忘れて逃げ出すか?君にはそのふたつの選択肢しかない。そして選択するのは今さ・・・これでも待ってやってたんだぜ?兄弟。君がこの事実を少しでも受け止められるようになるまでさ。」
潤也は心が張り裂けるような感覚と共に酷い吐き気を催す。
何故、こんな事になっているのだろう?
いきなり家族が全て死んだという事実を突きつけられ、それを行った者への復讐の一念を糧にこれまでの戦いを戦い抜いてきた。
しかし、今、この目の前にいる男から告げられた事実は潤也のこれまでの全てを否定するようなものだ。
両親を殺したのは暴走したメタトロニウスと黒峰咲であり、あれだけの災害を起こした原因を作ったのは自身の両親だという。
そして、黒峰咲は今や妄想に取り憑かれて、世界を恐怖と混乱に陥れるものと化してしまっている。
そして・・・それを止める事が出来るのは潤也とあのリベジオンだけだとこの男は言うのだ。
つまりは黒峰潤也にこの世界を守る為にUHと戦い黒峰咲を殺す道を取るか、全てを忘れて全てを見捨てて去る道を取るかという選択を迫っている。
何故、こんな事になっているのだろう?
いきなり家族が全て死んだという事実を突きつけられ、それを行った者への復讐の一念を糧にこれまでの戦いを戦い抜いてきた。
しかし、今、この目の前にいる男から告げられた事実は潤也のこれまでの全てを否定するようなものだ。
両親を殺したのは暴走したメタトロニウスと黒峰咲であり、あれだけの災害を起こした原因を作ったのは自身の両親だという。
そして、黒峰咲は今や妄想に取り憑かれて、世界を恐怖と混乱に陥れるものと化してしまっている。
そして・・・それを止める事が出来るのは潤也とあのリベジオンだけだとこの男は言うのだ。
つまりは黒峰潤也にこの世界を守る為にUHと戦い黒峰咲を殺す道を取るか、全てを忘れて全てを見捨てて去る道を取るかという選択を迫っている。
「さあ、選び給え・・・兄弟。どちらを選んでも僕は君を祝福しよう。君を讃えよう、全力で支援しよう。君が戦うのならば、僕は持てる限りの財力と情報を君に捧げよう。君がその戦いを終えるまで君の支援者であり続けよう。君がもし全てを忘れて逃げ出すというのならば、その逃げ道を用意しよう。核シェルターだって用意するよ。そこに君は後悔に苛まれながらずっと閉じこもるんだ。ふふ、どっちもイイなぁ・・・兄弟、好きな方を選び給えよ。」
「俺は・・・。」
「俺は・・・。」
既にどちらを選ぶかは決まっている。
アテルラナは選択出来ると言っているが潤也からしてみれば選択の余地はない。
けれど、果たして、それが出来るのだろうか?
予感がある。
無理だ、不可能だ。
黒峰潤也は誰かのために黒峰咲を殺す事は出来ない。
けれど――――――だからといって、虐殺を行うことを見過ごす事は出来るのだろうか?
思い出す。
ほんの少し前に怨念に取り込まれた自分を救い出してくれた少女の優しい怨念を・・・。
このまま全てを捨てて逃げれば、また彼女のような人間を作ってしまう。
それを見過ごす事が出来るだろうか?
ああ、不可能だ。
黒峰潤也という人間はそこまで人間が出来てはいない。
アテルラナは選択出来ると言っているが潤也からしてみれば選択の余地はない。
けれど、果たして、それが出来るのだろうか?
予感がある。
無理だ、不可能だ。
黒峰潤也は誰かのために黒峰咲を殺す事は出来ない。
けれど――――――だからといって、虐殺を行うことを見過ごす事は出来るのだろうか?
思い出す。
ほんの少し前に怨念に取り込まれた自分を救い出してくれた少女の優しい怨念を・・・。
このまま全てを捨てて逃げれば、また彼女のような人間を作ってしまう。
それを見過ごす事が出来るだろうか?
ああ、不可能だ。
黒峰潤也という人間はそこまで人間が出来てはいない。
「戦う。」
潤也は静かに、それでいて苦しそうにその言葉を吐き出す。
アテルラナはその言葉に少し驚いたような顔をした後、
アテルラナはその言葉に少し驚いたような顔をした後、
「出来るのかい?」
と問い返した。
「出来ないさ、俺が誰かの為に戦うなんて事は・・・そんな言葉で上辺を取り繕うだけじゃ、俺はリベジオンの・・・DSGCシステムの怨念に精神を食われてしまう。そして、そんな理由じゃきっと俺はあいつを・・・黒峰咲を殺すことなんて出来ない。」
DSGCシステムの怨念の激流の中で自己を保つには並ならぬ覚悟と決意が必要だ。
しかし、それを持つにはそれをするにたる理由が必要だ。
でなければ、すぐにあの怨念の激流は潤也一人の精神など簡単に飲み干してしまうだろう。
誰かの為に戦うなどという信念では、怨念たちの願いすら拾いあげその傀儡になってしまうだろう。
だからこそ、他の理由が必要だ。盲信するにたる信念が必要だ。
しかし、それを持つにはそれをするにたる理由が必要だ。
でなければ、すぐにあの怨念の激流は潤也一人の精神など簡単に飲み干してしまうだろう。
誰かの為に戦うなどという信念では、怨念たちの願いすら拾いあげその傀儡になってしまうだろう。
だからこそ、他の理由が必要だ。盲信するにたる信念が必要だ。
「だから――――」
ならば、それを可能にする理由とは何だ?
「俺は、俺の為に戦う・・・そう誰かを助けようとかそういう事じゃない・・・黒峰咲は俺の両親を殺した。両親の仇だ。それが憎い。その上で両親の死を笑うあの女が憎い。あの女が許せないから、俺はあの女を殺す。それを悪びれもなく正当化して殺し続けるあの女が憎い!だから俺は戦う!!!」
「君は・・・本気でそれを言っているのかい?」
「君は・・・本気でそれを言っているのかい?」
アテルラナは少しの考えるようにした後、心底驚いたようにして問いかける。
潤也は一呼吸を置いたあと、
潤也は一呼吸を置いたあと、
「当然だ。」
と辺りも凍るような冷たい声でそう言った。
少しの静寂が辺りを支配した後、くつくつとアテルラナが笑い出す。
それはこれまでの人を嘲るような笑い声ではなく心底おかしくて笑いを堪えきれなくなってだしたような笑い声だった。
少しの静寂が辺りを支配した後、くつくつとアテルラナが笑い出す。
それはこれまでの人を嘲るような笑い声ではなく心底おかしくて笑いを堪えきれなくなってだしたような笑い声だった。
「君、もしかして馬鹿なのか?アホなのか?アヒャヒャヒャヒャ、こ、こんなめちゃくちゃな理由、矛盾だらけにも程がある理由初めて聞いたよ。あひゃひゃひゃ――――ぶわ!!!!」
潤也がアテルラナを殴り飛ばす。
アテルラナはその身を叩きつけられる。
しかし、アテルラナは笑いを止めない。
潤也は倒れながら笑い続けるアテルラナの胸ぐらをつかみ持ち上げる。
アテルラナはその身を叩きつけられる。
しかし、アテルラナは笑いを止めない。
潤也は倒れながら笑い続けるアテルラナの胸ぐらをつかみ持ち上げる。
「黙れ、アテルラナ。俺はお前も殺したくて仕方ない。仕方ないんだ?わかるな?」
「あぁ、そうさ、君からしてみれば僕は原因みたいなところもあるからかい?あひゃひゃ!!」
「違うな。お前のせいだ!そうだ俺はお前も許せない、お前も殺してやりたい。そんな衝動をさっきからずっと抑えている。何故だかわかるか?」
「あぁ、そうさ、君からしてみれば僕は原因みたいなところもあるからかい?あひゃひゃ!!」
「違うな。お前のせいだ!そうだ俺はお前も許せない、お前も殺してやりたい。そんな衝動をさっきからずっと抑えている。何故だかわかるか?」
アテルラナは少し考えるようにした後、嬉しそうに
「はーい、きっと僕にはまだ兄弟にとって利用価値があるからでーす!!」
潤也はアテルラナのみぞおちに向けて拳を叩き込んだ。
アテルラナは声にならない声をあげて嘔吐する。
その後、潤也は咳き込むアテルラナの胸ぐらを再び掴む。
アテルラナは声にならない声をあげて嘔吐する。
その後、潤也は咳き込むアテルラナの胸ぐらを再び掴む。
「アテルラナ、次ふざけた事抜かしたら次は五体満足でいられないと思えよ。」
「はは、ごめん、ごめん。じゃあさ、こんなのはどうだい?」
「はは、ごめん、ごめん。じゃあさ、こんなのはどうだい?」
そういってアテルラナは胸元のポケットから1枚のデータチップを取り出す。
「なんだこれは?」
「ふふ、これにある場所の座標が書いてある。リベジオンで読み取れるから機体に戻ったら見てみるといい。」
「座標?そこに何がある?」
「至宝さ。」
「至宝・・・だと?」
「ふふ、これにある場所の座標が書いてある。リベジオンで読み取れるから機体に戻ったら見てみるといい。」
「座標?そこに何がある?」
「至宝さ。」
「至宝・・・だと?」
咲が潤也の前で見せた超常的な力を持つ道具『至宝』。
「なんで、そんなものの場所のありかをお前が知っている?」
「偶然だよ、偶然見つけたんだ。それで僕は琴峰機関にこれを提供した。ほら君の親父もレポートで言ってただろう?至宝を提供したって・・・。」
「それは咲が今持っているものでは?」
「違うよぉ、君の可愛い妹が持ってるのは、この一帯にあった至宝さ。正確には設計図だけどね。僕も驚きだったんだよ。ここに設計図があるだなんて。黒峰咲とメタトロニウスがこの惨状を作り上げた結果、至宝が浮かび上がって彼女はそれを手に入れたんだ。」
「じゃあ、これは?」
「さてね、僕もあるものを受け取っただけだから詳しくは知らないさ。だけど言えるのはこれは確かに至宝であるというだけ・・・。もしこれから君がUHと黒峰咲と戦うのならば必要な力だろう?」
「偶然だよ、偶然見つけたんだ。それで僕は琴峰機関にこれを提供した。ほら君の親父もレポートで言ってただろう?至宝を提供したって・・・。」
「それは咲が今持っているものでは?」
「違うよぉ、君の可愛い妹が持ってるのは、この一帯にあった至宝さ。正確には設計図だけどね。僕も驚きだったんだよ。ここに設計図があるだなんて。黒峰咲とメタトロニウスがこの惨状を作り上げた結果、至宝が浮かび上がって彼女はそれを手に入れたんだ。」
「じゃあ、これは?」
「さてね、僕もあるものを受け取っただけだから詳しくは知らないさ。だけど言えるのはこれは確かに至宝であるというだけ・・・。もしこれから君がUHと黒峰咲と戦うのならば必要な力だろう?」
そういって差し出すアテルラナのチップを潤也は乱暴に取り上げた。
「まあ、まずそこにいって、至宝を手に入れてくる事だね。それで兄弟、君はスタートラインに立つことが出来る。まあ、そこで君がどんな顔をするのか楽しみだけ――――――」
そう言いかけた後、アテルラナの悲鳴じみた声があがる。
その後、アテルラナは涙を流しながら通常曲がらない方向に折れ曲がった自身の右小指を見る。
その後、アテルラナは涙を流しながら通常曲がらない方向に折れ曲がった自身の右小指を見る。
「アテルラナ、ふざけるなと言っただろう?俺はお前を痛めつける事になんの容赦もないんだ・・・。」
泣き叫ぶアテルラナを心底侮蔑するように潤也は言う。
「く、くは、だ、だ・・・からって普通人の小指を折るか・・・くはは、酷い、酷いなぁ・・・兄弟。」
「それでそこは何で、至宝とはどういうものなんだ?」
「そ、れは教えられないさ、何をしたって口を割らない。ぼ、僕の楽しみだからね、ただ強いていうならば、そこはここと同じ琴峰機関の研究施設だよ。そこの最下層に君の求めるものがある。」
「それでそこは何で、至宝とはどういうものなんだ?」
「そ、れは教えられないさ、何をしたって口を割らない。ぼ、僕の楽しみだからね、ただ強いていうならば、そこはここと同じ琴峰機関の研究施設だよ。そこの最下層に君の求めるものがある。」
そういうアテルラナの中指に今度は潤也は手をかける。
「だから言わないって・・・行けばわかるんだから、これ以上聞くだけ野暮だよ・・・あひゃひゃひゃ。」
汗を垂れ流し涙を浮かべ笑いながらそう言うアテルラナを見て、潤也は中指にかけた手を話す。
哀れんだからではない、これ以上この男を傷つけるという良心の呵責に苛まされた訳でもない。
ただ、単純にこれ以上は無駄だと思えたからだ。
哀れんだからではない、これ以上この男を傷つけるという良心の呵責に苛まされた訳でもない。
ただ、単純にこれ以上は無駄だと思えたからだ。
「最後に1つ聞きたい。アテルラナ・・・なんでお前は俺に協力する?」
「そりゃ、贖罪に決まってるじゃないか・・・こう見えてもぼ、僕は君たちには悪いことをしたと――――」
「そりゃ、贖罪に決まってるじゃないか・・・こう見えてもぼ、僕は君たちには悪いことをしたと――――」
潤也はアテルラナの顔面を殴りつけた。
アテルラナは壁に頭をぶつけ気を失う。
アテルラナは壁に頭をぶつけ気を失う。
「法螺吹きが・・・。」
そう言って、潤也はのびているアテルラナをほおって研究所を後にした。
研究所の外には今まで潤也と共に戦ってきたリベジオンが片膝を立てて座っている。
その紅い瞳は、この世の全てを憎んでいるとでも言わんばかりの禍々しい双眸だった。
潤也はそれを見て思う。
俺もああならなければならないと・・・。
そう憎まなければならない。
父と母を奪った妹を・・・。
その上で、さらに父と母の命を愚弄しようとする妹を・・・。
お前に必要なのは憎しみだ。
千も万も億も超える怨念の激流に飲み込まれても消えない憎悪の炎だ。
憎まなければならない。
潤也の脳裏をかすめるのは黒峰咲が生まれた時の記憶。
産声をあげる妹を抱きかかえて母は潤也にこう言った。
「これからは潤也がお兄ちゃんなんだから、この子を守ってあげてね。」と・・・。
潤也はそれを振り切るようにして咲への憎悪を思う。
記憶にある黒峰咲を全て憎悪で塗りつぶす。
笑っている咲を、泣いている咲を、自分を頼ってきた咲を、自分を助けてくれた咲を・・・。
そうだ、憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
あれは両親を殺した仇だ。
あれは両親を殺した事を必要な事だと笑う悪魔だ。
もはやあれは肉親などではない。憎悪を持って殺害すべき対象なのだ。
憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!!!!!
研究所の外には今まで潤也と共に戦ってきたリベジオンが片膝を立てて座っている。
その紅い瞳は、この世の全てを憎んでいるとでも言わんばかりの禍々しい双眸だった。
潤也はそれを見て思う。
俺もああならなければならないと・・・。
そう憎まなければならない。
父と母を奪った妹を・・・。
その上で、さらに父と母の命を愚弄しようとする妹を・・・。
お前に必要なのは憎しみだ。
千も万も億も超える怨念の激流に飲み込まれても消えない憎悪の炎だ。
憎まなければならない。
潤也の脳裏をかすめるのは黒峰咲が生まれた時の記憶。
産声をあげる妹を抱きかかえて母は潤也にこう言った。
「これからは潤也がお兄ちゃんなんだから、この子を守ってあげてね。」と・・・。
潤也はそれを振り切るようにして咲への憎悪を思う。
記憶にある黒峰咲を全て憎悪で塗りつぶす。
笑っている咲を、泣いている咲を、自分を頼ってきた咲を、自分を助けてくれた咲を・・・。
そうだ、憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
あれは両親を殺した仇だ。
あれは両親を殺した事を必要な事だと笑う悪魔だ。
もはやあれは肉親などではない。憎悪を持って殺害すべき対象なのだ。
憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!!!!!
憎まなければ――――――
その日、一人の魔王が嗚咽の中に生まれた。
その魔王はその日から憎悪の思いを抱えて歩み出す。
たとえその思いの何もかもが矛盾だらけだったとしても・・・。
その魔王はその日から憎悪の思いを抱えて歩み出す。
たとえその思いの何もかもが矛盾だらけだったとしても・・・。
走馬灯は終わる。
そして、物語は過去から現代へと戻る。
始まりはこのように・・・。
そして、物語は過去から現代へと戻る。
始まりはこのように・・・。
―現代― 琴峰藍の自害から8時間後、イーグル本部司令室
「そんな、馬鹿な・・・。」
第七機関直属組織イーグル、その司令室で目を疑いたくなる現状に驚きの声をあげたのは司令である秋常貞夫だった。
モニターに映るのは今、この本部へとゆっくりと接近しつつあるアンノウン。
全長1000km程の巨躯を誇る巨大な機械仕掛けの亀。
そんなものが今、このイーグルへと進路を取り時速300kmで迫ってきている。
予測では40分後にはこのビルを踏み潰すと予測されている。
貞夫は夢でも見ているのかと思い、ポケットからタバコを取り出す。
3日も続けてきた禁煙生活、そろそろ限界だと思っていたのだ・・・夢ならば、吸ってもいいだろう。
そんな淡い思いをして取り出したタバコの箱を彼の副官が奪っていく。
モニターに映るのは今、この本部へとゆっくりと接近しつつあるアンノウン。
全長1000km程の巨躯を誇る巨大な機械仕掛けの亀。
そんなものが今、このイーグルへと進路を取り時速300kmで迫ってきている。
予測では40分後にはこのビルを踏み潰すと予測されている。
貞夫は夢でも見ているのかと思い、ポケットからタバコを取り出す。
3日も続けてきた禁煙生活、そろそろ限界だと思っていたのだ・・・夢ならば、吸ってもいいだろう。
そんな淡い思いをして取り出したタバコの箱を彼の副官が奪っていく。
「司令、残念ながら現実のようです。本当に残念ながら・・・ですので禁煙は継続中ですよ。」
「こ~と~み~ねく~ん・・・頼むから私を現実に引き戻さないでくれ。」
「仮にも司令は、このイーグルの司令なんですから・・・もっとしゃきっとしてください。だからあなたは色々な所から侮られるんでしょう?」
「こ~と~み~ねく~ん・・・頼むから私を現実に引き戻さないでくれ。」
「仮にも司令は、このイーグルの司令なんですから・・・もっとしゃきっとしてください。だからあなたは色々な所から侮られるんでしょう?」
副官である琴峰雫にそう言われ、押し黙る貞夫。
それに呆れたようにため息を吐きながら、雫は貞夫がそう思うのも仕方ないとも思う。
まずなんであれ動いてるんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そもそも何処に今まで隠れていたんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そしてなんでこっちに向かってきてるんだ?と突っ込みたくなる絶望。
イーグルは鋼獣の襲撃を受けつつあり、創設以降最大の危機にあった。
それに呆れたようにため息を吐きながら、雫は貞夫がそう思うのも仕方ないとも思う。
まずなんであれ動いてるんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そもそも何処に今まで隠れていたんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そしてなんでこっちに向かってきてるんだ?と突っ込みたくなる絶望。
イーグルは鋼獣の襲撃を受けつつあり、創設以降最大の危機にあった。
「各機関の要人もいる、今すぐに退避してもらう必要があるなぁ・・・。」
とほほと貞夫は現状を目の当たりにして考える。
「雫くん本部にどれぐらい戦力が残っている?」
「はい、通常のアインツヴァインが2機ですね。この間のブラックファントムとの戦いで失った戦力が痛すぎました。」
「そうか・・・迎撃要因として・・・いや、あのでかさじゃ無理だわなぁ・・・。」
「そうですね、水鉄砲程度の戦果しか期待できないかと・・・。あとは時峰副司令のアインツヴァイン雪花があります。ですが、あれは理論実証機なので、まだ調整不足でとても戦闘に出せるような状態ではありません。それにあれはシャーリー・時峰への贈り物でしょうし、副司令も乗りたがらないでしょう・・・。」
「はい、通常のアインツヴァインが2機ですね。この間のブラックファントムとの戦いで失った戦力が痛すぎました。」
「そうか・・・迎撃要因として・・・いや、あのでかさじゃ無理だわなぁ・・・。」
「そうですね、水鉄砲程度の戦果しか期待できないかと・・・。あとは時峰副司令のアインツヴァイン雪花があります。ですが、あれは理論実証機なので、まだ調整不足でとても戦闘に出せるような状態ではありません。それにあれはシャーリー・時峰への贈り物でしょうし、副司令も乗りたがらないでしょう・・・。」
貞夫はシャーリー・時峰の現状を慮ってため息を吐く。
「はぁ・・・となると戦力として期待できそうなのは・・・。」
「『彼』という事になるのでしょうか?」
「『彼』の容態は?」
「安定の方向に向かっているようです、時期に目を覚ますのではないかと・・・。」
「どうするかね・・・彼が目を覚ましたとたら、口説き文句を考えておかなければならない訳か・・・気が滅入るよ。」
「心中察します。しかし―――――」
「『彼』という事になるのでしょうか?」
「『彼』の容態は?」
「安定の方向に向かっているようです、時期に目を覚ますのではないかと・・・。」
「どうするかね・・・彼が目を覚ましたとたら、口説き文句を考えておかなければならない訳か・・・気が滅入るよ。」
「心中察します。しかし―――――」
雫は再びモニターを見る。
その姿は圧巻だった。
まるで山がそのまま歩いてこちらに向かってきているかのような巨躯。
それが通った後に出来る潰された木々にめり込んだ大地。
この本部のビルなどすぐにそれには押しつぶされてしまうだろう。
その姿は圧巻だった。
まるで山がそのまま歩いてこちらに向かってきているかのような巨躯。
それが通った後に出来る潰された木々にめり込んだ大地。
この本部のビルなどすぐにそれには押しつぶされてしまうだろう。
「『彼』とあのブラックファントムと言えどもあれに勝てるかどうか・・・。」
―イーグル本部医療施設―
黒峰潤也はまどろみの中から目を覚ました。
「ここは・・・。」
潤也はまだピントが合わずぼやける視界を振り切るようにして頭を振った後、辺りを見渡す。
そこは見慣れない景色だった。
白い天井にカーテンのかけられた部屋。
首から下に布のような物を被せられ自分は寝ている体制になっている。
横に見える床に段差があった事から、自分がベットに寝ているのだという事を理解した。
潤也は、起き上がろうと床に手をつく。
その時、じゃらりと金属の音がした。
潤也はその音がした腕の方を見る。
そこには手錠がかけられていた。
誰かが潤也をこのベットに縛り付けておくためにつけていたものだろうか?
誰が・・・何の為に?
記憶を遡る。
思い出すのは犬型の鋼獣との戦い。
限界を超えるDSGCシステムの駆動をさせた後の事は覚えていない。
覚えていないという事はおそらくはあのまま自分は怨念に飲まれてしまったと考えるのが妥当だろうか・・・。
その後、システムの緊急停止装置が起動して気絶し、誰かに捕まってここにいるといった所か?
そう思案にふけっていた時、潤也の左から
そこは見慣れない景色だった。
白い天井にカーテンのかけられた部屋。
首から下に布のような物を被せられ自分は寝ている体制になっている。
横に見える床に段差があった事から、自分がベットに寝ているのだという事を理解した。
潤也は、起き上がろうと床に手をつく。
その時、じゃらりと金属の音がした。
潤也はその音がした腕の方を見る。
そこには手錠がかけられていた。
誰かが潤也をこのベットに縛り付けておくためにつけていたものだろうか?
誰が・・・何の為に?
記憶を遡る。
思い出すのは犬型の鋼獣との戦い。
限界を超えるDSGCシステムの駆動をさせた後の事は覚えていない。
覚えていないという事はおそらくはあのまま自分は怨念に飲まれてしまったと考えるのが妥当だろうか・・・。
その後、システムの緊急停止装置が起動して気絶し、誰かに捕まってここにいるといった所か?
そう思案にふけっていた時、潤也の左から
「はぁ、やっと悪夢からお目覚めかい?」
と女性の声が聞こえた。
潤也はその声のした方を向く。
そこには老婆が一人、本を片手に折りたたみ椅子に座っていた。
老婆は皺だらけの顔で優しげに微笑んで言う。
潤也はその声のした方を向く。
そこには老婆が一人、本を片手に折りたたみ椅子に座っていた。
老婆は皺だらけの顔で優しげに微笑んで言う。
「それとも現実(こちら)の方がお前さんにとって悪夢だったかな?」