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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

Prologue:過ぎ行く日常の下で

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 広く薄暗い部屋、私を含めて数名の巨人が円卓を囲んでいた。
 巨人の一人が静かに口を開く。顔は確認できない。
<いい加減、我々も行動を起こすべきです>
<それはどういう事だ、ナハト>
 先程の巨人、ナハトが答える。
<セカイは疲弊しています……いや、瀕死と言っても差し支え無いレベルだ。そしてそれを理解していて、人類は何一つとして行動を起こさない、起こせない。あなたたちもそうだ、何もしようとしない。不甲斐無いんですよ、人類も、あなたたちも!>
 ナハトがパチンと指を鳴らした。同時に室内に続々と侵入してくる、武装した機械の巨人達。皆同じ顔、同じ身体だ。
<オートマタか>
 私の隣にいる黒い巨人。私の親友にして“巨人族最強の矛”ペネトレイターが呟く。
<オートマタに我々リーゼンゲシュレヒトを仕留められると思っているのなら、その考えは甘いぞ、ナハト>
 ペネトレイターの腕が輝いた。マナを収束させているのだ。どうやら戦闘準備はバッチリらしい。
 それを皮切りに、各々が武器を構えた。私も専用の武装“ツヴォルフ・ヘイリゲンシャイン”を身に纏う。
<おお、恐ろしい恐ろしい>
 わざとらしい口ぶりで、ナハト。その余裕はどこから来るんだろう。
<あの、ペネトレイター……>
<気をつけろ、シュタムファータァ。あの余裕、何か仕込んでいる。味方はいないものと思え……私以外はな>
 戦闘経験の無い私にとって、ペネトレイターの存在は心強い事この上なかった。
 しばらく睨み合いが続く。
<おや? 動かないんですか? 相手はたかだかオートマタだというのに>
<貴様の余裕……戦力がオートマタだけとは限らんじゃろう>
 巨人の内の一人、シュテルンがナハトに銃を向けた。しかしナハトは微動だにせず、むしろわざとらしい笑みを張り付けたままだ。
<正解>
 ナハトが再び指を鳴らと、シュテルンの隣にいた巨人、イェーガーがシュテルンの胸元に刃を突き付けた。それがトリガーになったのか、半数以上の巨人がナハトの側に回った。
<貴様ら……共犯であったか>
<ご名答……おっと、賢者の石を破壊されたくなかったら動くなよ。こいつが無くなったら、いくらあんたらだって戦力的にはオートマタに毛が生えた程度なんだからな>
 舌打ちをして、シュテルンが武器から手を離した。“賢者の石”はリーゼンゲシュレヒトの心臓のようなものだ。破壊されれば、万物の源たるマナの供給が停止、やがて死に至る。つまり生殺与奪の権を相手に握られている事になる。
 これって、絶体絶命……?
<貴様ら、目的は何だ>
 低い低い声で、ペネトレイターがナハトに問うた。ナハトは得意げに言う。
<人類の粛正と、セカイの再生>
<狂っているな>
 ペネトレイターが無造作に腕を振ると、私達を包囲していたオートマタがバラバラになった。マナで形成された不可視の剣だ。
<なっ……こっちには人質が>
<儂の事なら気にするでない。行け、シュタムファータァ、ペネトレイター! 残った連中は好きなだけ暴れるがいい!!>
 出口から一番近い所にいた二人は頷くと、道を塞ぐオートマタを蹴散らして部屋から脱出。残った巨人達も抵抗を始める。
<やるなァ、爺さん!>
<カッカッカ、伊達に長生きはしとらんわ!>
 イェーガーが有無を言わずにシュテルンの賢者の石を破壊した。


Prologue:過ぎ行く日常の下で

 世界が滅亡しそうとかそういうのは全く関係無く、変化の無い生活ってのは退屈だ。

 でも場違いな刺激は求めちゃいけない。

 ――――少し目を凝らせば、刺激なんていくらでも落ちてるんだから。


 ♪  ♪  ♪


「……暑い」
 俺、安田俊明は参っていた。
 何故かって?
 最初のセリフの通りだ。
 暑い。
 なんたって気温が35度を越えてる。
 俺は生物学的に気温の変化には弱いんだがな……。
 目の前ではハゲた数学の教師がよくわからん公式を黒板に書いていた。急いでそれをノートに書き写す。
 もう全てが億劫だ。煩わしい。
 肘をついて、窓の向こうを見る。
 世界はいつもと変わらない――――ように見える。
 見えるだけ……なんだけど。
 実際はこの世界は少しずつ終わりに向かってるらしい。世界が少しずつ消えているとか。
 この前も中国のどっかが消えたという話だ。それも何の前触れも無く。――――どこだったかは忘れたが。
 だから学校に来ている人数はごく少数だ。来てるのはバカか真面目なヤツくらい――――いや、こんな時にクソ真面目に勉強してるヤツもバカだな。『人類みな兄弟』ならぬ『人類みなバカばっか』ってやつ。
 なら俺もバカなわけだ。真面目にノート、とってるし。
 再び窓の向こうを見る。
「……つまんねぇなあ、オイ」
 シャーペンの尻をかじりながら、無意識のうちにそんな事をこぼしていたのだった。


 ♪  ♪  ♪



 こんな時に、何やってんだろ。
 学校の屋上、気付いたら私は座り込んで足をぶらぶらと振っていた。
 授業もサボって、こんなところで。
 ――――いや、どうせ無駄なんだ。
 世界は終わる。あと少しで、全部消える。
 だから勉強なんかしたって意味なんかないんだ。
 前髪をくるくると指に巻きながら下を覗き込む。
 ここで落ちたらどうなるのかな。
 不意にそんな興味が湧いてきた。
 どうせ世界は終わるんだし。
 数十メートル下を覗き込みながら考える。
 ま、いいか。


 ♪  ♪  ♪


 本当に眠くなってきた……。
 あくびを噛み殺し、再び窓の向こうに視線を移すと、隣の校舎の屋上に女子が一人、立っていた。
 ツインテールの、綺麗な顔の女子だった。
 そいつは手摺りに手をかけて、その向こう側へ。
 ――――また自殺者かよ。
 最近、自殺者の数が急増している。
 答えは単純だ。

 世界が、終わりに向かっているから。

 絶望でもしたんだろう。……呆れてため息も出ない。
 バカだろ、あいつ。
 そう考えて目を逸らそうとすると、気付いたら隣の席のバカが教室を飛び出していた。
「ったく、あいつもバカか」
 そう呟いて、俺も席を立つ。
「先生、便所行ってきていいッスか?」
 俺のそのセリフを聞いて、教師が顔を強張らせた。――――いいから早く行かせろよ、ハゲ。
「……仕方ない。いいぞ」
「……すんません」
「いいから早く行け」
 ……言われなくても行くっつの。
 と、その時。
「…あたしも行っていいですか?」
 ロングヘアーの女子が席を立つ。
「……宮部、お前もか……」
 宮部。宮部都、あのお節介焼きのアホ委員長が……。


 ♪  ♪  ♪


 ……高い。
「やっぱ落ちたら死ぬのかな……」
 体が震えてるのがわかる。
 というか、なんで私はこんなところに立っているんだろう。
 手に汗が滲む。
 このままこうしてると、そのうち落ちるんじゃないのだろうか。
 なんて事を考えた瞬間、だった。
「ばかやろー!」
「へ!?」
 下を覗き込んだままぼーっとしていると、突然顔も知らない女子生徒に手首を掴まれた。
 ――――長い髪が綺麗な人だった。
「命を粗末にするな! 考え直すんだ!」
「え!? いや、その」
「人生まだまだこれからだ! 死んだらそれで最後なんだぜ!?」
 唾、飛んでるんですけど……。
「なんで自殺なんかしようとすんだ!? テストか!? 期末の点が悪かったんか!?」
 むしろ学年二位なんですけど……。
 早口でまくし立てる彼女に向かって、私は勇気を振り絞って声を出した。
「……あの!」
「何!? 考え直した!?」
「別に私、自殺する気なんて全然……」
「マジか!?」
 彼女が露骨に驚く。
「マジです」
 その瞬間、彼女が顔を赤くして、
「……ごめん!」
 いきなり、謝った。
「や、別に謝らなくても」
「悪かった!」
 いや、なんで土下座なんですか……。
 困ったな……。

 ♪  ♪  ♪


「……おい!」
「何よ」
 後ろから手首をつかまえられて、あたしはそれを振りほどく。
「なんでお前まで来んだよ」
「関係無いじゃない。安田こそトイレ行くんでしょ。ほら、行ってきなさいよ」
 安田が眉間に皺を寄せる。
「っせーな! 大体お前、俺が本当に便所行きたいって思ってんのか?」
 ……本当に五月蝿いやつ。
「安田も行くんだ、屋上」
「ったりめーだろーが。千尋が行ったんだから」
 ぶっきらぼうに安田が答える。
「安田って本当に守屋さんの事好きだよね」
「は……っ!? それはぜってぇありえねぇ!」
 ……そこまで否定するか。
「大体あいつとはただの腐れ縁――――」
「はいはいわかったわかった」
 安田俊明ーーーーーー本当にわかりやすいやつ。
「って事は安田も屋上行くんだよね」
「おう」
「なら急いだほうがいいんじゃない? ……もうすぐ授業終わっちゃうよ」


 ♪  ♪  ♪


「千尋!!」
「え!?」
 私が途方に暮れていると、突然背後から声が上がった。……千尋っていうんだ、この人。
 ……じゃなくて。振り返ると、そこには男子が一人。
 中肉中背……いや、背はまあまあ高いほうかな? くせっ毛なのだろう、少し跳ねた髪以外にこれといった特徴はない、どこにでもいそうな男子だった。
「おわー! 土方さん!」
「指差すな指。あと俺は土方じゃねぇって何年言ってると思ひでぶ!!」
 セリフの途中で土方さんと呼ばれたその男子が前のめりに倒れた。
 そしてその後ろには腕を組んで足を前に出した体勢のロングヘアの女子が一人立っていた。
「何やってんの、志帆」
 表情ひとつ変えずに私の名前を言った彼女は――――
「み、都……」


 ♪  ♪  ♪


 安田を蹴り飛ばせた事はいいとして、
「なんで志帆がこんなとこにいるのよ」
 あたしの声に志帆が竦み上がる。
 ――――そんなにキツく言ったかな……。
「わ、私は」
「あいや待たれよ!」
「……なんで守屋さんが割り込んでくるわけ」
「ここはこの守屋千尋にまかせんさい?」
 ……ていうか守屋さん……あなたを追ってきたんだけど……。
 まあ別にいいんだけど。
「……ど、どうぞ?」
 あたしがそう言った瞬間、
「私が悪かったんでごぜぇます~。この娘っ子が下を覗き込んどったのを私が勝手に勘違いしてしまっただけなんでごぜぇます~」
 「ははー」と土下座する。
「は、はぁ……」
「だからその娘っ子は許してやっておくんなまし~」
 ……意味、わからん。
「そこまで言うなら……」
「ありがとう心の友よー!」
 守屋さんが「がばっ!」と覆いかぶさるようにあたしに抱き着いた。
「ちょっと、守屋さん! 苦しい!」
 本当に苦しい……。息ができない……。
「心の友よー!!」
「おまえはジャイアンか!」
 「ばしっ!」とスリッパで頭をはたく音。……安田だ。
「よくわかったね土方さん!」
「土方じゃねぇ」
「じゃあトシさん!」
「トシさんでもねぇ」
 ……なんだか安田の眉間がぴくぴく痙攣してきているような気がする……。
 あたしは安田に少し同情すると同時に、少し守屋さんが羨ましくなった。


 ♪  ♪  ♪


「じゃあお前は一体誰なんだッ!?」
 ……指を差すな指を。
「安田俊明だ! 何年付き合ってると思ってんだアホが!」
 俺がそう言うと、千尋はいきなりその場に膝をつき、わざとらしく苦しそうな呼吸をしながら、
「安田……俊明……、それが貴様の……真の名か……ッ!」
「誰だよお前は」
 こいつの相手してると疲れる。
 ため息をつき、「やれやれ」と眉間に中指を押し当てた。
「私の名か……?」
 ……なんか嫌な予感がするのだが。っつーかお前の名前は聞いてな
「これから死ぬ者に名を名乗る必要は無いッ!!」
 次の瞬間。
 俺の脳天に、綺麗にクロスチョップが決まった。


 ♪  ♪  ♪


「何すんだ千尋!」
 俊明が頭を押さえながら叫ぶ。
「さっきの仕返し! 返しは三倍と相場が決まっているのだよ」
 そう、返しは三倍。今閃いたんだけど。
「どこの相場だっつの」
「知らぬ!」
「……胸張って言う事じゃないと思うんですけど」
 振り返るとさっきの子。名前は確か志帆……でよかったっけ。
「あ、まだいたんだ。志帆ちゃん……でよかったよね?」
「あ、はい。神崎志帆、です」
「私は守屋千尋。……じゃあ、志帆ちゃん、夜露死苦!」
 私は志帆に手を差し延べる。
 志帆は少しぎこちなく手を取って微笑んだ。
「うん、よろしくね」
 続いて俊明が前に出る。
「あ、俺は安田俊明。よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします」


 ♪  ♪  ♪


「……でさ、なんで志帆はあんなとこに立っ」
「まだいたのか委員ちょヘギョミッ!」
「死ね安田!」
 アッパーを食らって変なリアクションをとりながら安田が数歩後ずさり、コケた。……私のセリフを遮った罰だ。
「っゴホン! ……で、なんで志帆はあんなところに立ってたわけ?」
「それは……ほら、この前ここで飛び降り自殺があったじゃん」
 ――――そう、三週間前の日曜日に、ここで人が死んだ。まあ、あたし達とはまったく接点の無い人だったけど。
「ここから落ちたら本当に人って死ぬのかなー……って思ったんだ。それでぼーっとしてたら授業始まってて」
「……で、あたしが来たというわけですな!」
 ……胸を張って言うな。
「って事は神崎に自殺の意志はなかった、って事でいいんだよな」
 ……いつの間にか安田復活してるし。
「え、あ、はい」
「じゃあ万事OKだな。……そろそろ教室戻ろうぜ」
 それについてはあたしも安田に賛成。
「そうね、そろそろ戻らないと吉田先生五月蝿いだろうし。……もう手遅れか」
「俺と千尋は慣れてるけど優等生の委員長さんは初体験だな」
 ……確かにあたしが吉田先生を怒らせるのは初めてだ。いつもは見る側だけど吉田先生は怒らせると恐いというより、
「吉田ティーチャーは怒らせるとウザいからねー」
「やり口がきたねぇんだよ吉田は」
 そう、吉田先生は汚い。
 まず、難しい問題の時に当てられる回数が増える。で、その問題に答えられずに嫌味を言われる。さらに、そのせいで難しい問題をまた出される……最悪の無限コンボだ。
 志帆が小声で「がんばれー」と言うのが聞こえた。誰のせいだと思って……ま、いいか。
「……とりあえず、教室戻るわよ」


 ――――次回へ続く。

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