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eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.10C

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匿名ユーザー

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 捕われの栗毛の少女がそんな思考を巡らせていた同時刻。彼女のいるジャンクヤード「ペンタピア」を目指し遥けき彼方より来たりて、なおも猛然と駆ける1つの機影があった。
 その影は白銀。その姿は異形。されどその内にはただただ大事な人を救いたいという想いのみが渦巻く。

<……――後3分程でペンタピアの領空に到達する。>
「分かった。」

 ペンタピアの名と姿はテレビや書籍を通じて俺でもちょっとぐらいは知っている。
 この地域の経済と文化の中心地。昼も夜もネオンの光に彩られて沢山の人々が行き交い、生活する街……らしいが

(……妙だな。)

 確かに周囲を囲む巨大な外堀と外壁の向こう側からは鮮やかなで鮮烈なネオンの光が漏れ出しているが、それらを街ごとすっぽりと覆う冥く陰鬱で不快な何か――例えようの無い違和感がある。
 だが街の光景自体は普段通り。嵐の前の静けさとでも言うか……この周囲に住んでいたバリード達はこれに気付いて大移動を起こしたのだろう。
そうせざるを得ないような、明らかに危険な何かがそこにはあった。

「アリス。」
<ああ、間違いない……この世ならざる者の“臭い”だ。>

 だが、そうだからといって立ち止まる訳にはいかない……いや、だからこそ尚更立ち止まる訳には行かない。あの街にはバールやベルがいるんだ。
そんな所で何かが起きようとしているのに、俺達に尻込みしている暇は無い。

 そうこうしている内に俺達――イグザゼンはジャンクの海を抜け、ペンタピアの周囲を円形に囲う「外堀」に差し掛かった。その幅は2キロほど。
深さは底に月の光が届かないぐらい。俺達の住む「スチームヒル」の“縦穴”をずっと大きくしたようなものでペンタピアを外敵より護る要であり、
東西南北に掛けられたギガラインの路線を有する鉄橋を除いてペンタピアへ地上から進入するルートは無い。
 ただ空を自在に飛べるソートアーマーには関係無い事。一気に突っ切りここから見ても大きく見えるドルサルタワーへと殴り込み、
ベルとバールを助けるついでに事の真相を暴いてやるつもりだった――が

「……!」

 何かが、不意に揺らいだ気がした。
 ある意味御馴染みになってしまったこの感覚。原因はひとつ。



 ――Sybyd-soldier_ Materialize



<来るぞ!>
「出迎えなんぞいらんってのに!」

 世界の理を越え、事象震を伴いつつ瞬時に顕現化(マテリアライズ)。
そうして現れた10m大の2体の黒い異形。
見覚えのあるその姿――ウチを襲った黒い奴――に酷似したそれらの機体は、それぞれ大口径の機銃を抱え、それらの砲門は既に俺達を捉えていた。

「ッ!!」

 刹那、砲撃。
 紅い火線が咄嗟に回避行動を取った白銀の機体を掠める。
 更に畳み掛けてくるその砲撃を一気に降下しつつ躱していくが、奴らも執拗に追尾してくる。

「こいつらは……!」
<私も良くは知らんが、ネモのロストフェノメオン“シュバイゼン”を元に産み出されたロストフェノメオンのデッドコピーと言った所らしい。
火力はそれなりのようだが、ビルドグランデ等と比べてもイリーガルコードとしての強固さはそこまでではない。こちらの攻撃は十分通用する筈だ。>
「ならっ!」

 執拗にこちらを狙う砲撃の隙を突いて振り返り、手に顕現させたイグザダガーをシュバイゼンもどき目掛けて数本纏めて投擲する。
 交わし切れないと踏んだか青白い刃は砲身で受け止められるがそれと同時に発火、爆発。片方のシュバイゼンもどきの武装を破壊した、が


――Sybyd-lance_ Materialize


「ざまぁ見――なっ」

 爆炎の内よりこちらへ突貫する機影。
 手に携えられたのは細身の黒い突撃槍。
 寸での所で躱せたが、これは……!

「こいつも……!」
<らしいな。限定的だが顕現化を可能としているようだ。>
「くそっ!」

 片や砲撃、片や突撃。
 かえって躱しづらくなった連携攻撃を相手に徐々に追い詰められていく。

「さすがに2対1は分が悪い、な……!」

 確かにこいつらを無視して街へ乗り込む事だって出来たかもしれない。
 だが流れ弾云々で街にも被害が出ないわけが無いだろうし、そもそもこんな奴ら連れたまま殴り込む事なんて出来やしない。
 よってここで倒さなければいけないのだが……

「グランアーマーは――」
<駄目だ。負担が大きすぎる。>
「やっぱりか……」

 多少の無茶は承知の上なんてどっかの誰かさんが言ってた気がするが、ここで無茶して肝心な時にどうしようもなくなったら本末転倒。
 ただここを乗り切らないわけには尚更どうしようもないわけで……

「くそ……」

 後方はペンタピアの赤黒く塗装された外壁。
 前方は2機のシュバイゼンもどき。気が付けばわりと絶体絶命なシチュエーションである。更に

<っ!>

 背後よりあの震動。
 瞬く間に実世界へと顕現化した3体目のシュバイゼンもどきが槍を担いで顕現化しながら突っ込んできた。
 さすがにこれは不味――

「……?」

 そんな時、頭のすぐ上を猛烈な速度で突っ切る何かが過ぎった。
 それが何なのか。考えるまでも無く答えは形となって現れた。

――ギ、ギギ……

 背後にあったのは頭部を寸分違わずごっそり吹き飛ばされ、火花を散らす3体目のシュバイゼンもどき。
 「それ」を食らった反動で大きく仰け反りつつ、槍を手放し力無く底無しの闇へと落下していった。
 それと同時に残りの2機の視線が砲撃元へと集中する。この一瞬の隙を逃すわけが無い。

「隙ありぃぃぃ!!」

 一気に飛び込みつつイグザブレイドを顕現。
 銃を持っている方の背後より背中を一突きに貫き、頭部へかけて一気に切り裂く。
 槍を持っている方が慌ててこちらを見定めるがもう遅い。
 数本のダガーを牽制目当てで投擲しつつ接近。相手が怯んでる間に懐へと潜り込み、頭部を唐竹割りにぶった切る。

「ふぃー……」

 制御を失い火花を、爆炎を上げながら墜落していく2機。
 とりあえず危機を脱したのを確認した後、俺はさっきの砲撃元を眺めてみた。

「!……あれって」

 赤い鉄橋の上に陣取った年代物の車両の上より伸びる見覚えのある無骨な砲身。
 その上でこれまた見覚えのある誰かさんがこちらに向かって手を振ってる。

「……こんな事ってあんだな。」
<ああ……>

 間違いない。スチームヒルからアクアリングへのギガラインでの迷走列車の件で助けてもらったペーネばあさんとその車両だ。何故か客車がないようだが今はどうだっていい。
 しかしまぁ、どんな縁があるか分かったもんじゃないなと感謝しつつこちらも手を振り返そうとした、そんな時



それは、起こった。



 揺らぎ。
 ただの揺らぎではない。世界構造を根底から揺るがす大震動。
 ソートギガンティックが顕現化した際の事象震と同程度かそれ以上か。それ程の猛烈な震動が辺り一面をこれでもかと揺さぶる。

「アリスッ!!」
<この事象震の規模……不味い!機体の空間制御式が掻き消されるぞ!!>
「んだとぉ!?」

 ソートアーマーは飛行機のように飛んでいるわけじゃない。
 原理は俺も良く分からんが周りの空間に干渉して飛んでいる事は確かだ。つまりそれが無くなると言う事は……!

「――!!」

 なんて考えている内にもっと酷い事が起こった。
 猛烈な震動に揺さぶられ、鉄橋を支えていた鉄骨が歪み、破砕し、鈍い不協和音を立てながら上に載った列車ごと“外堀”の底へと落下し始めたのだ。

「~~~~~~~~~~ッッ!!」

 だが、助けられない。見えているというのに、手を伸ばしても届かない。
 式の力を失い、翼をもがれたイグザゼンも、その列車やペーネばあさん達の後を追うのみだから。

「くっそぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」

 俺達は――少なくとも俺は、自分の無力を嘆きながら、そのまま闇の底へと吸い込まれていった……


「――――!?」

 何よりも先に、唐突に、視界が白く染まった。
 それまでの思考を強制終了させ、停止させるのには十分な代物。
 勿論何故起きたのかなんて分からない。ただ1つ理解出来た事と言えば、街の方からとんでもなく眩しい光の柱が立ち昇った事だけ。
 部屋の一面を覆うガラスの向こう側より差し込む、地より伸び、夜の街と空を白昼よりも尚眩く、だが形容し難い恐怖をもって染め上げる光の巨柱。
 その内に、薄らと小さな何かが見えたのは気のせい――?


「始まった、か。」

 冥い闇の内に捕われていてもそれは分かる。
 この地に眠っていた大いなる“O(オー)”の僕、あるいは片鱗の目覚め。
 世界の怨敵であるその圧倒的な邪悪は、己の独善の、妄執の為にこの世の明日をどす黒い黒に、昨日を何も映さぬ白で塗り潰すだろう。

「…………」

 だが、今この世界……セカイにはそれに抗う力がある。
 因果をも打ち砕く“破壊”の力。理不尽を上回る大理不尽。神ならざる神の力――イグザゼン。

「お前達なら、きっと……」

                                                          Act.10_end

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