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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

capter1 MAIN 後編(下)

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匿名ユーザー

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これが最後の攻防だ。
空中にて相対する二体の鋼。
狗とリベジオンの決戦。
双方が携えるのは必殺の一撃。
狗が行う事は単純だ。己の背に背負う10門の空圧砲でリベジオンを自らの熱線の射線軸から逃さず捉え、熱線を当てる。
ただ、それだけの事だ。空圧砲は決定打にはならないが牽制の兵装としてはこれ以上無いものだと言えた。
故に確実に当てる為にその気を捉える事だけに全ての神経を扱っている。
それに対してリベジオンもやる事は単純である。
速度、火力、装甲それら全てが狗のそれを遥かに凌駕したスペックで狗など赤子を捻るが如く破壊すればいいだけだ。
だが、今のリベジオンにそれは出来ない話になってしまっている。
今、リベジオンは3つの爆弾を抱えている。
1つめはOS。
鋼機部隊と戦い凍結されたものを削除し、藍のバックアップから復元したものであったが一応の復旧が完了しただけであり、完全な状態へと復旧するにはまだ時間がかかる。
その為、現在のリベジオンには様々な制限が付いてしまっている。また、何かのシステムを起動した際、なんらかのエラーが起こるというアクシデントも想像に難くない。
時間をかければ、それは回復できる見込みのモノであったが、それをこの戦闘中に行うのは不可能な話であった。
2つ目はリベジオンはその最大の武器たる黒槍を失っているという事である。
それはリベジオンの真価を発揮させる為のデバイスの一つであり、一つの遠中近全ての距離に対応した万能兵装であった。
至宝と称され『最果てより来るモノ』の残した神の作りたもうた概念すら超越する力を持つとされるモノの一つ。
だが、それは先の戦いで焔凰との戦いで鋼機部隊を勝利させる為に貸し与えた事により焔凰の爆発の余波に巻き込まれ消滅してしまった。
今、リベジオンが行使できる武装はエネルギーへと変換した怨嗟を腕に纏わせ、そのエネルギーを使い相手を殴りつける呪魂手甲(ソウル・アミュレット)のみであり、射程が腕の届く範囲のみという近距離戦しか許されない状況になってしまっている。
100m近く離れ対峙している現状では、その攻撃を当てるのは相当の苦難な状況であると言えた。
3つ目はリベジオンの操縦者である黒峰潤也の体調。
既に3度のDSGCシステムの稼働、そして2度目の稼働はただでさえかかる精神への負担が数十倍に引き上げられた事もあり、心身共に限界を既に超えており、今まともに思考し、戦うためにリベジオン動かせているのが奇跡とでもいうべき事柄であった。
これが最後の攻防であるもう一つの理由はこれから行われる攻防で狗を仕留められなかった場合、黒峰潤也は確実に戦闘不能の状態に陥り、自滅という末路を送ってしまうだろう、故にもはや悠長な戦いなどリベジオンには許されないのだ。
これらの要素を鑑みた場合天地の差ほどあったリベジオンの優位性は大きく損なわれてしまっており、もはや不利であるとすら言える状況に陥っているのが現状であった。
それを飲み込んだ上で黒峰潤也は行動を開始する。
「設計図のロードを完了、該当因子の検索を開始。」
リベジオンは右の掌を大きく開き、紅光を纏わせる。呪魂手甲の起動。
だがこれは敵を倒す為の発動では無い。
「該当因子の検索を完了――因子収束。」
藍が淡々と機械的に読み上げる。
リベジオンの右腕に纏わりついていた紅光が暴れるようにその腕を回り始めた。
「収束完了――第一段階を終了――第二段階への移行――骨子の構築開始。」
リベジオンの右腕で暴れ回っていた光が今度は一つの形を作っていく。
それは、大きな長い線であった。
「骨子の構築完了―最終段階へ移行――肉付けを開始。」
その線に高速で形が付け加えられていく。
「―――石突きの構築――完了――――柄の構築―――完了――――頭の構築―――完了――潤也、コードを!」
その存在を確定する為のコード。所有者の証である事を証明する為のコード。
それを黒峰潤也は唱える。
「The fate of the traitor of God is not happy(神に反逆するモノに幸福無し)」
音声による認証。
そうして、今右腕に収束していた光の塊はその存在は確定し一つの姿を取った。
それは何度もリベジオンと共に見られ、象徴ともいえるほどの印象を与えた兵装だ。
鋭利かつ獰猛で醜悪で、それでいて、美しさを兼ね備えたリベジオンの全長すら超える黒槍。
特に特徴的なのが長大な槍頭で、そこにつけられている刃はもはや薙刀の刃と言っても違和感は無いだろう。
しかし、槍頭に刀の刀身を付けたような薙刀と違い、それは二等辺三角形を模した槍の矛先であり、それは異質ではあるが分類するのならば確かに槍であると言えた。
そしてこの槍こそが怨嗟の魔王、リベジオンの最強の兵装。
「ブリューナク――再創造完了。」
ブリューナク、『ルーの槍』とも呼ばれる至宝の一つにして、『絶対』を歪める黒槍である。
「落ちるよ、潤也!」
藍が声を大きくして潤也に警告する。
それと同時にリベジオンは瞳から光を失い、空中から落下を始めた。
失われたブリューナクの再構築を行った際に先ほどDSGC回収して全てのエネルギーを用いて行ったものだ。
つまりは、今、リベジオンの中にはエネルギーなど微塵も残らず、すっからかんの状態であった。
このような状態で飛行に必要なエネルギー等、確保できるわけもなく、リベジオンは宙に留まる事が出来ず落下する。
それに対して狗はついに己のチャージを終え、牽制に空圧砲を撃ちながら自らの熱線の射線に捕えようとする。
既に飛行する能力すら失ったリベジオンはもはや格好の的だった。
「潤也、本当に良いんだよね?」
空圧砲の衝撃を受けながら揺れる機体の中で藍が潤也に聞く。
「愚問するなよ、部品。それに今この状況まで段階を進めて取れる手段がほかに何がある、やらなければ、最悪の結末しか待っていない。
これは選択ですらない。やらなければ負ける。後の事など後で起こってから考えるものだ。」
「うん、わかってる。でも一つお願いをして良い?」
「なんだ?」
「潤也は潤也のままでいてね。お願いだから…私には潤也しかいないんだよ。
たぶん潤也はそれを非常に迷惑だと感じると思うし、部品が心など持つなと非難するかもしれないけれど、私にとって潤也は唯一の光だから…
あの時、あの場所で潤也に会わなかったらきっと、私はあのまま何も知らず終わりを迎えていたんだと思う。
でも潤也はそこから私を救いだしてくれた。きっと、偶然そうなってしまったんだろうけれど、それでも私にとっては潤也は私を救いに来てくれた神様みたいな人だった。
そして、藍という名前をくれた時は本当に嬉しかった。だから、お願いだよ、潤也。私の事をずっとそうやって嫌悪し続けてもいいから潤也は潤也のままでいてね。別の人になっちゃうのは嫌だよ…。」
それはこれから行う事を危険性を考慮した上での藍の悲痛な願いだった。
彼女には黒峰潤也の行う事を止める事は出来ない、彼女は黒峰潤也に従う以外を許されてはいない。
だから、せめて願ったのだ。
黒峰潤也が無事である事を…自分を保っている事を…。
それに対し潤也は溜息交じりに言葉を返す。
「藍、一つだけ言っておく、この世界には神様なんてものはいない。
いても俺みたいなどうしようもない奴じゃないだろうさ。
もしあの時、お前が救われたというのならば、お前が勝手に自分で助かったんだろうよ。
俺はそれに偶然居合わせただけだ。今、俺がやろうとしている事と何も変わらない。
だからお前の願いなども聞いてやれない。」
「うん、うん。」
涙声で藍は答える。
その声を聞いて潤也の脳裏に藍と同じ顔と声を持つ女性の顔がよぎる。
「だがな、俺は残念なことにここで終われない人間だ。終わってはならない人間だ。終わる事を許されていない人間だ。
だから、俺としても最悪に嫌な事ではあるが、これが今生の別れになる事は無いさ。」
既に狗は熱線の放射態勢に入っていた。
確実に当てられるという確信を得たのだろう。
もはやリベジオンの終わりは秒読み段階まで進んでいた。
「戯言は終わりだ、部品。始めろ。あと、俺が良いというまで止めるなよ。」
藍は少し息を飲んで己の主の声に応えた。
「了解――DSGCシステム、起動。」
落下するリベジオンに向けて紅の光が刺すように向かってくる。
それは人が死に瀕した時に発する怨念であり、絶望であり願いである。
既に限界を超えた潤也は再び、その思念の中に心を晒した。

再び、小宇宙。

怨嗟が潤也の精神を苛む。
己の死を見せ、己の無念を訴え、己の願いを託そうとする。
だが、潤也はそれを受け入れる事はない。
受け入れる事は出来ないのだ。
受け入れられるのならばどれほど楽であろうか、この思念に身を任せられたらどれほど楽であろうか、だが黒峰潤也にはそれが出来ない。
故に幾千、幾万もの思念に一人で立ち向かい己を失わないように守り続ける。
潤也の中で硝子が割れるような音が響く、既に限界を超えた黒峰潤也という強大な堤防が荒れ狂う激流を止める事が出来なくなり始めた事を示す音だ。
先ほどまで耐えていた堤防の許容をついにそれは新たな必然を紡ぎだす。
それは終わりという必然だ。
そうして、黒峰潤也という存在の破片が散らばっていく。
失われていく。
濁流に流されるように失われていく…。
そうして黒峰潤也という個体は霧散し最後を迎え、賭けは失敗に終わった。


再び、現実へと戻る。



狗の熱戦が天高くから地上に向かって落ちていくリベジオンに向けて放射される。
その膨大な熱量は鋼機など容易に蒸発させてしまう程の力を持っている。
操縦者を失ったリベジオンにその攻撃をよける術は無い。
つまりはこれにて終幕。
それが『絶対』に定められた結末であり、変えられぬ条理。
だが、リベジオンがその全てのエネルギーを吐きだして再構築した黒槍、それはなんであったか?
「ク、クヒ、ハハハ、クハハハ、アーハッハハ!!!!」
リベジオンの中から笑い声が響く。
無邪気な餓鬼のように腹を抱えて笑う。
そうしてリベジオンはその発射された熱線の射線に向けて黒槍を向けた。
黒槍の先端が割れ、刃が展開する。
リベジオンの体の各部が展開し、そこからエネルギーへと変換された怨念が槍の石突きから矛先まで浸透する。
―ブリューナクの起動を確認―
そうして、リベジオンの二つ眼に赤い光が灯る。
その眼が見つめるのは自らに熱線を放射した狗のみ。
敵意には敵意を、悪意には悪意を…そう自動的にリベジオンは反応した。
リベジオンは自動的に最適を選択する。
それはつまり、避ける術が無ければそれに打ち勝つ力をぶつければ良い。
そして、ブリューナクは自らに蓄えられた、紅の光を吐きだした。
熱線に向かい打つように発射された紅の光線はその射線上で相打つ。
原子力発電所が6日間発生させるエネルギーに相当する熱線がリベジオンの槍から放たれた光線と交わり反発しあいせめぎ合う。
これは誰にでもわかりやすく単純な勝負だ。
威力の高い方が勝つ。
ただ、それだけの勝負。
決着は早期につく、せめぎ合いは終わり、紅の光線は狗の放った熱線を浸食する。
狗は自身の力の負けを認め、すぐさま回避行動に入る。
この判断は英断だと言えた。
その行動があと1秒でも遅れていたならば、全身が光線に貪り尽されていただろう。
結果、光線は狗の翼をかすめていく程度の損害で済む。
飛行能力に支障を来たした狗は地上に堕ちつつも逃走の道を取ろうとする。
だが、リベジオンは、怨嗟の魔王はそんな事を許しはしない。
さらなる怨念が、怨嗟が、絶望が、希望がリベジオンに紅の光となって注がれ始める。
リベジオンの周囲を徘徊するように纏わりついていた線上の紅の光はもはや線とは言えぬものになり、リベジオンの周囲を包みこんだ。
漆黒の機体に何も言わせぬ威圧感を感じさせ威風堂々としていたその姿はなりを潜め、理性を感じさせないなんとも暴力的な光の魔獣へとその身を堕とす。
紅の光を纏ったというよりは光となったと形容する方が正しいだろう。
そして、魔獣となったリベジオンは閃光のような速さで駆け、一瞬で狗の元に辿りつき、狗を殴り飛ばした。
「クヒャヒャヒャヒャ!!!!」
地上に向けて急速で墜落していく狗を奇天烈な笑い声をあげて魔獣は追う。
だが、それで終わる狗では無かった、他の同胞の装甲を取り込み得た故に、一撃で堕ちる程脆い機体では無かったのだ。
自身に向かってくるリベジオンに向けて、背の十門の空圧砲を撃ち放つ。
一発一発が多大な衝撃を与え、相手からまともな航空能力を奪う算段なのだろう。
だが、その目論見は魔獣のあまりの常軌を逸した能力の前に無視された。
魔獣は回避しようとすらしない、一発、一発は確かに命中している。
例え、威力が弱くとも、これだけ数が蓄積したものとなればただでは済まない、その筈なのに――あの魔獣はまるでそれが何でも無いかのように狗の元に向かってくるのだ。
なんというズルだ。なんという理不尽だ。
これでは戦い自体が成り立っていないでは無いか!!
魔獣はその右腕に黒槍を構え、狗の脳天目がけてつき放つ。
狗はそれを身を横にずらして頭に刺される事を回避した。
だが、その一撃をかわしきれる訳も無く、その槍頭は右前足に突き刺さる。
狗は吠える。
神経接続によって走った痛みが搭乗者にも帰っているのだろう。
だが、狗はそこからでも諦めなかった。
そのまま、右前足を切り捨て逃げようとする。
だが、駄目なのだ。
この黒槍はブリューナク。
至宝にして、『絶対』を歪める槍。
『絶対』とはすなわちこの世に絶対則として定められた法の一つ『因果』。
ありとあらゆるモノに始まりと終わりがある。
それが因果の示す事であり、ブリューナクはその因果を歪める力を持つ至宝なのだ。
そして、その力はその刃で貫いたものの因果を強制的に終りまで進める。
―因果終焉―
形あるものには必ず終りがある。
それは何時、何処で、どんな時に訪れるかは誰も与り知らないところではあるが、それだけは絶対に決められている事である。
それをブリューナクはそこにたどりつくまでの過程を省略して対象を強制的に終焉に辿りつかせてしまう。
故に一刺しされただけでも致命打。
先の戦いで鋼機部隊の隊長は鋼獣の装甲を貫ける武器としてこれを用いたが、その際にはこの黒槍の真価の1%すらも発揮しておらず、この因果に干渉し歪めるこの力こそがブリューナクの真価といえた。
本来必要なコマンドを無視して強引に施行されたそれはにより、槍から光が発せられ、毒のように狗の全身を駆け巡る。
そうして、その狗という鋼獣がそこにいたという事実を終わらせていく。
「シネ、シネ、シネ、シね、しネ、シネ、シネ、シネ、シネ、シね、しネ、シネ、4ネ、シネ、シネ、シね、しネ、シネ!」
それは潤也の口から発せられた言葉であったが、黒峰潤也が発した言葉では無い。
既に黒峰潤也という存在はそこには存在はおらず、ただ怨念達が黒峰潤也という肉体を傀儡とし己が思うままに振舞っている。
発せられるのは呪いの言葉だ。
そしてその言葉を向けられた狗はブリューナクの毒が機体の全てに回りきり、この世から消滅した。
結果から見れば、それは蟻が象に挑むような話であり、リベジオンの、怨嗟の魔王の圧勝であった。
「――タリナイ。」
怨念たちが呟く。
「シガタリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ!タリナイ!タリナイ!!」
それは底に沈んでずっと溜まっていた怨念達である。
その怨念がたかだか1人殺した程度で満足する筈も無かった。
魔獣の瞳が生きているモノを探そうとする。
そしてその瞳が、四肢を破壊された一つの鋼機を見つけた。
「だ、駄目!その人を殺したら、潤也がここまでして戦った意味が無くなっちゃう!だから駄目!!!」
藍が悲鳴じみた声を上げた。
魔獣はゆっくりと鋼機に向けて歩を進める。
例え、それが本来の意思を伴っていなくとも藍はそれに逆らう事は出来ない。
だから藍は黒峰潤也に呼びかけて、なんとかしてそうなったモノを元に戻るように願って声をかける。
「潤也、駄目だよ、ねぇ、その人は殺しちゃ駄目なんでしょ?潤也は強いよね?そんな思念が幾千、幾万、幾兆、来ようとも絶対に自分でいられる。それにこんな所では終われないんでしょ!終わるわけにはいかないんでしょ!!だから、負けないで、潤也!!」
涙声で訴えるそれを無視するように魔獣と化したリベジオンは鋼機の前に立つ。
そうして槍を鋼機に向ける。
四肢を奪われ満身創痍な鋼機にはそれを避けようとする術すら無い。
「潤也の馬鹿!!約束守ってよ!!私には潤也が全部なんだから!!全部、全部なんだから!だから潤也が潤也でなくなっちゃうのは嫌だよ!!!大好きなんだ、大好きなんだよ、潤也ぁ!!」
そうして魔獣はその黒槍を振りおろした。



小宇宙。
そこは既に怨嗟が支配する世界であった。
黒峰潤也は決して希望を望む怨念の手を取らなかったが故にそこは死を望む怨嗟に満ち溢れた宇宙となっていた。
もし、例えどちらであろうとその怨念達の代弁者となる事を黒峰潤也が受け入れられたのならば、黒峰潤也は己という人格を失わずにいる事が出来ただろう。
だが、黒峰潤也は決してそれを望まなかった。
否、自らが行おうとしている事をそのような事にしてはならないと思ったのだ。
自分が行おうとしている事は余りに醜い事だ。
己の復讐の為に、妹を殺す。
そんなどうしようもない事を大義名分で行うわけにはいかなかった。
あくまで自分の意思で、自分だけの意思でやらなければならない、そう潤也は決意していた。
だから、怨念達が託そうとした希望も絶望も潤也は拒絶して一人で戦った。
受け入れればどれほど自分が楽を出来るか知りつつも、受け入れる事を良しとせず戦った。
結果、怨念達は潤也の精神を喰らいつくし、黒峰潤也という心の終わりを迎えさせてしまった。
これは当然の結果とも言える。
たった一人で幾千幾万もの意志と渡り合えるはずも無いのだ。
だから、黒峰潤也という存在はここで終わったのだ。
―その人を殺したら、潤也がここまでして戦った意味が無くなっちゃう!だから駄目!!!―
宇宙に声が響く。
それは意味のない声だ。
怨念達は死に飢えている。
自らが死んでいるのに、他の者が死んでいないのを妬んで、自らと同じ域まで堕としたがっている。
だから、その声は無意味だ。
そこにその声を聞き届けるものはいない。
―潤也は強いんだ、そんな思念が幾千、幾万、幾兆、来ようとも絶対に自分でいられる―
虚しく声が響く。
無理だった。
所詮、それは一人の人間に過ぎず、どれほどの強靭な精神力があったとしても、結果、砕かれてしまった。
どんなに拒絶しようとも押し寄せてくる波には耐えられなかった。
―それにこんな所では終われないんでしょ!終わるわけにはいかないんでしょ!!―
怨嗟達は構わない。
何に終われないというのだろうか?
既にもはやこの小さな宇宙の宿主は粉々砕かれてしまっているというのに…。
終われない何をする為に終われないのか、それを終わらせる事は絶対に必要なことなのか…。
―潤也の馬鹿!約束守ってよ!!―
…約束。
約束とはなんだろうか?
この宇宙に響いているのと同じ声が約束という言葉を反芻する。
『そ、これがお兄ちゃんとあたしの約束。』
それは小さな断片だった。砕けた硝子のように小さな記憶の断片だ。
その断片が強く反応する。
『いつか、あたしとお兄ちゃんのどちらかが何か危い目にあったら、必ずどちらかが助ける。そーいう、約束。ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった……破っちゃ嫌だからね。』
声が、木霊する。
虚空に怨嗟の嘆きが充満する中に澄み切った声が木霊する。
その声に、その宇宙の果てから果てに存在する小さな欠片達は聞き入っていた。
―大好きなんだ、大好きなんだよ、潤也ぁ!!―
虚空に声が響く。
欠片達がよく知っている声がそこには響いている。
だが、それは紛い物の声だ。
一つの欠片はそれを疎ましく思った。
一つの欠片はそれを愛おしく思った。
一つの欠片はそれを悲しく思った。
一つの欠片はそれを嬉しく思った。
欠片達はその声に様々な感情を抱く。
そして欠片達はそれら全てがそう思った。
ならばその感情を抱く自分は何者なのだろうと…。
断片的な記憶を持ち、それに何かをしなくてはならないという漠然とした衝動だけを持っている欠片。
それは怨嗟の海に流され、それでも海に溶け込む事もできずそこにただ存るだけの存在だった。
その時、急に怨念達がその嘆きを止める。
さきほどまであれほど暴れていた怨念が宇宙から姿を消し、そこには欠片達だけが残された。
欠片達は元に戻ろうと少しづつ歩み寄る。
自分という存在がなんであったのかを知るために…。
そして欠片達は一つ一つパズルのピースをあてはめるように歩み寄っていった。




「システムのフリーズ!?」
藍は驚きの声を上げる。
それは可能性としてはあり得ないことでは無かった。
何せ今使っているOSを含む全てのシステムは急場で再構築した代物だ。
不備が出る可能性はむしろ高いというぐらいだ。
そしてそれが今、このタイミングでDSGCシステムを停止させた。
既に制御不能になっていたDSGCシステムが緊急停止したのは想定外の幸運と言えた。
だが、しかし、もはやリベジオンはその右腕を振り上げ、その槍を振りおろそうとしている。
黒峰潤也を縛っていた怨念達はもうそこにはいないが、自身を失っている潤也にはその一挙一動を止めることはできない。
「潤也、駄目ぇ!!!」
藍が最後の願いを込めて嘆願する、今なら、届くかもしれない。
限りなく可能性の低い話であったが止められるかもしれない、そう思い藍は叫んだ。
それは、その振り下ろされる対象を思ったからでは無い、それによって黒峰潤也がまた傷つく事を恐れたのだ。
そして、槍が振り下ろされた。
その瞬間、潤也の右腕がレバーを握り直す。
鋼機の装甲まで残り一寸の所で黒槍ブリューナクは止められた。
リベジオンはその槍で鋼機を貫かなかったのだ。
最初、藍にはそれが何が起こったのかわからなかった。
それは確かに願っていたものだが、信じられなかったのだ。
そして自らの見ている光景をまた見直し、少し考え、納得した後、優しく語りかけるように言う。
「おかえり、潤也。」




CR ―Code Revegeon― capter1  「Beelzebub of grudge」

          THE END


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