ジェネレータの駆動音が響くコクピットで、私とメルフィーは安堵の溜め息をついた。何とか間に合ったようで、黒いカブトムシみたいな機体――――デストラウの攻撃から、皆を守る事ができた。
発射の寸前に仰向けにブッ倒したせいで校庭に大きなクレーターを作ってしまったが、そこは仕方なかったという事で許してほしい。
<一条さん、それに乗ってるの?>
突然頭の中で響いた会長の声に私は面食らった。
<えぁっ!? か、会長!? なんでテレパシーを!?>
<メルフィーさんから教えてもらったの。あなたも厄介な事に巻き込まれたみたいね>
やれやれ、といった口調で言う。
<会長――――ううん、ルナもね>
だから私も嘲笑混じりに言ってみた。そういえば、会長の事を名前で呼んだのは初めてだ、同い年なのに。
<あ、そうだ。終わったらワッフル食べる? 買い出しの時に安いから買ったんだけど>
<ワッフル? こんな時に?>
プッ、と吹き倒すルナの声。
<あんたねぇ、何呑気な事言ってんのよ>
<だって図太くないとルナの下じゃやってけないじゃん>
<うわ、酷い。まあたまにキツい事言ったりするけどさぁ>
<たまにじゃないですよー、いつもですよー>
<そう? やっぱり私、言葉キツ過ぎるのかな……じゃなくて、遥!>
さっきまで普通の女の子だったのに、急にいつもの調子に戻る。
<そんなのに乗ってるんだから、ちゃんとアレをどうにかして、生きて帰って来なさいよ!>
<それは会長命令?>
<そう! 副会長として、私の命令をしっかり遵守しなさい。それができたら、メルフィーも副会長にしてあげる>
うーん、飴と鞭なのに、鞭の数に対して飴が小さすぎるような……。まあいいか。別に飴がなくても、今足元に埋まっているこれは始末するつもりだ。人に危害を加える存在を、そのままにしてはおけない。
<わかった。でも、ルナも皆の誘導お願いね>
<そこは任せなさい>
視界の隅で、デストラウの身体が小刻みに震えだす。どうやらまた動き始めるようだ。
「遥さん、デストラウが!」
<うん、こっちでも確認した。じゃあルナ、また後で!>
会長改めルナが放送室を出て行ったのを確認して、私はヴィルティックをデストラウへ向き直させる。禍々しいその姿、倒し甲斐がありそうだ。
両手で頬を叩いて気合いを入れると、私はモニターに向けてこう叫んだ。
「シャッフル!」
発射の寸前に仰向けにブッ倒したせいで校庭に大きなクレーターを作ってしまったが、そこは仕方なかったという事で許してほしい。
<一条さん、それに乗ってるの?>
突然頭の中で響いた会長の声に私は面食らった。
<えぁっ!? か、会長!? なんでテレパシーを!?>
<メルフィーさんから教えてもらったの。あなたも厄介な事に巻き込まれたみたいね>
やれやれ、といった口調で言う。
<会長――――ううん、ルナもね>
だから私も嘲笑混じりに言ってみた。そういえば、会長の事を名前で呼んだのは初めてだ、同い年なのに。
<あ、そうだ。終わったらワッフル食べる? 買い出しの時に安いから買ったんだけど>
<ワッフル? こんな時に?>
プッ、と吹き倒すルナの声。
<あんたねぇ、何呑気な事言ってんのよ>
<だって図太くないとルナの下じゃやってけないじゃん>
<うわ、酷い。まあたまにキツい事言ったりするけどさぁ>
<たまにじゃないですよー、いつもですよー>
<そう? やっぱり私、言葉キツ過ぎるのかな……じゃなくて、遥!>
さっきまで普通の女の子だったのに、急にいつもの調子に戻る。
<そんなのに乗ってるんだから、ちゃんとアレをどうにかして、生きて帰って来なさいよ!>
<それは会長命令?>
<そう! 副会長として、私の命令をしっかり遵守しなさい。それができたら、メルフィーも副会長にしてあげる>
うーん、飴と鞭なのに、鞭の数に対して飴が小さすぎるような……。まあいいか。別に飴がなくても、今足元に埋まっているこれは始末するつもりだ。人に危害を加える存在を、そのままにしてはおけない。
<わかった。でも、ルナも皆の誘導お願いね>
<そこは任せなさい>
視界の隅で、デストラウの身体が小刻みに震えだす。どうやらまた動き始めるようだ。
「遥さん、デストラウが!」
<うん、こっちでも確認した。じゃあルナ、また後で!>
会長改めルナが放送室を出て行ったのを確認して、私はヴィルティックをデストラウへ向き直させる。禍々しいその姿、倒し甲斐がありそうだ。
両手で頬を叩いて気合いを入れると、私はモニターに向けてこう叫んだ。
「シャッフル!」
ヴィルティック・わっふる!
Episode 03:Strike!
Episode 03:Strike!
裏門から学校を出て、校舎を一瞥する。
――――また後で、ね。まったくどこまでポジティブなんだか。
一条 遥はいつだってそうだ。どんなにキツい仕事を与えても、弱音ひとつ吐かずにそれをやってのける。
私もそんな遥に負けまいと努力してきたのに、あのちんちくりんはいつだって私の半歩先を行ってしまう。今だってそうだ。
だけど立場が逆ならどうだろう、彼女が私と同じ状況に立たされたら、どう考えるだろう。
「今できる事をするだけ、か……よし!」
気合いを入れて、私は放送室から引ったくってきたメガホンのスイッチをオンにした。
――――また後で、ね。まったくどこまでポジティブなんだか。
一条 遥はいつだってそうだ。どんなにキツい仕事を与えても、弱音ひとつ吐かずにそれをやってのける。
私もそんな遥に負けまいと努力してきたのに、あのちんちくりんはいつだって私の半歩先を行ってしまう。今だってそうだ。
だけど立場が逆ならどうだろう、彼女が私と同じ状況に立たされたら、どう考えるだろう。
「今できる事をするだけ、か……よし!」
気合いを入れて、私は放送室から引ったくってきたメガホンのスイッチをオンにした。
♪ ♪ ♪
「シャッフル!」
私がそう宣言すると、モニターの中でカードがくるくると回転し、やがて止まる。それらは目の前で実体を持ち、モニターの横にセットされた。
メルフィー曰く、このカードは戦闘になくてはならない物で、赤い枠は武器、青い枠は機体性能の強化、黄色い枠は敵機に対する特殊効果の発動なんだとか。
そして今の手札には、赤い枠のカードが三枚、青い枠、黄色い枠のカードがそれぞれ一枚ずつあった。
私がそう宣言すると、モニターの中でカードがくるくると回転し、やがて止まる。それらは目の前で実体を持ち、モニターの横にセットされた。
メルフィー曰く、このカードは戦闘になくてはならない物で、赤い枠は武器、青い枠は機体性能の強化、黄色い枠は敵機に対する特殊効果の発動なんだとか。
そして今の手札には、赤い枠のカードが三枚、青い枠、黄色い枠のカードがそれぞれ一枚ずつあった。
「まずはこの青いカードをスラッシュしてください」
「っと、これだよね」
翼のアイコンが描かれたそれを、カードホルダーの隣にあったリーダーに通す。
<トランスインポート・ウイング>
アナウンスと同時に、機体の背部のウイングが展開した。
「これでヴィルティックは自由な飛行が可能になりました。次は赤いカードを選んでスラッシュしてください」
言われた通り、赤い枠の中から槍のアイコンが描かれたカードをリーダーに通す。
<トランスインポート・ヴィルティックランサー>
右手の中に、槍が出現した。それを掴んでしっかりと構える。
「なかなかやるじゃないか……」
通信、デストラウからだ。やはりまだ死んではいなかったらしい。
「鍛えてますから」
「面白い事を言うね、君は。さあ……その進化を見せてくれ、ヴィルティック!」
デストラウの身体の震えが止まり、消えていた目の光が、再び赤く灯る。動き出す前に一撃を与えようと屈み込み、槍を持った腕を引く。
外見から判断するに、デストラウは装甲に重きを置いた機体のようだ。それは地面に巨大なクレーターを作るだけの攻撃を食らってもデストラウの外装が傷ひとつついていない事からも明らかである。
という事は、闇雲に攻撃を当てても効果がない可能性が高い。つまりここは――――
槍を構え、狙いを定める。狙うは装甲の僅かな隙間。
操者の思い通りに動いてくれる、このヴィルティックならやれるはずだ。
「遥さん!」
「だよね!」
一瞬のアイコンタクト。頷き合うメルフィーと私。
『装甲の、隙間ぁぁぁぁぁぁっ!』
重なった声と、放たれた刺突。瞬速のそれがデストラウに襲い掛かる。だが、デストラウは身を屈めて、
「見え透いた手を使うんだね!」
体当たり。肩部装甲でそれを逸らし、ヴィルティックを突き飛ばす。突き飛ばされたヴィルティックはウイングの出力を全開にして空中で制止した。
――――危ない、危うく街を壊す所だった。
「私は何度も未来の君と手合わせしていてね。生身ならともかく、ギアでの戦闘では私は簡単には倒せないよ」
嘲笑するオルトロック。でも、正直そう言われてもどう言い返せばいいのかよくわからないだけなんだけど。
<トランスインポート・デストライフル>
デストラウの手に黒い、ゴツゴツとしたライフルが出現した。直後にアラート、ロックされている。
ヴィルティックは静かに槍を構える。真っ向勝負だ。
「遥さん、今私達はオルトロックに人質を取られているのと同じ状態です」
メルフィーが抑えめの早口で言う。言われてみれば、校舎を破壊しようとするような男だ、何をやらかしても不思議じゃない。
「なるほど。じゃあ、どうする?」
ヴヴン……、とジェネレータが発する音が大きくなった。
「少しばかり……博打打ちをしてみようかと」
「っと、これだよね」
翼のアイコンが描かれたそれを、カードホルダーの隣にあったリーダーに通す。
<トランスインポート・ウイング>
アナウンスと同時に、機体の背部のウイングが展開した。
「これでヴィルティックは自由な飛行が可能になりました。次は赤いカードを選んでスラッシュしてください」
言われた通り、赤い枠の中から槍のアイコンが描かれたカードをリーダーに通す。
<トランスインポート・ヴィルティックランサー>
右手の中に、槍が出現した。それを掴んでしっかりと構える。
「なかなかやるじゃないか……」
通信、デストラウからだ。やはりまだ死んではいなかったらしい。
「鍛えてますから」
「面白い事を言うね、君は。さあ……その進化を見せてくれ、ヴィルティック!」
デストラウの身体の震えが止まり、消えていた目の光が、再び赤く灯る。動き出す前に一撃を与えようと屈み込み、槍を持った腕を引く。
外見から判断するに、デストラウは装甲に重きを置いた機体のようだ。それは地面に巨大なクレーターを作るだけの攻撃を食らってもデストラウの外装が傷ひとつついていない事からも明らかである。
という事は、闇雲に攻撃を当てても効果がない可能性が高い。つまりここは――――
槍を構え、狙いを定める。狙うは装甲の僅かな隙間。
操者の思い通りに動いてくれる、このヴィルティックならやれるはずだ。
「遥さん!」
「だよね!」
一瞬のアイコンタクト。頷き合うメルフィーと私。
『装甲の、隙間ぁぁぁぁぁぁっ!』
重なった声と、放たれた刺突。瞬速のそれがデストラウに襲い掛かる。だが、デストラウは身を屈めて、
「見え透いた手を使うんだね!」
体当たり。肩部装甲でそれを逸らし、ヴィルティックを突き飛ばす。突き飛ばされたヴィルティックはウイングの出力を全開にして空中で制止した。
――――危ない、危うく街を壊す所だった。
「私は何度も未来の君と手合わせしていてね。生身ならともかく、ギアでの戦闘では私は簡単には倒せないよ」
嘲笑するオルトロック。でも、正直そう言われてもどう言い返せばいいのかよくわからないだけなんだけど。
<トランスインポート・デストライフル>
デストラウの手に黒い、ゴツゴツとしたライフルが出現した。直後にアラート、ロックされている。
ヴィルティックは静かに槍を構える。真っ向勝負だ。
「遥さん、今私達はオルトロックに人質を取られているのと同じ状態です」
メルフィーが抑えめの早口で言う。言われてみれば、校舎を破壊しようとするような男だ、何をやらかしても不思議じゃない。
「なるほど。じゃあ、どうする?」
ヴヴン……、とジェネレータが発する音が大きくなった。
「少しばかり……博打打ちをしてみようかと」
<トランスインポート・アクセル>
「これでヴィルティックは高速移動が可能になりました。合図と同時に懐に入って攻撃を」
「……わかった」
メルフィーがスロットルレバーを握ったのがわかった。私も神経を集中させる。
「三、二、一……」
デストラウが銃口をこちらから外し、正面のビルへと移そうとする。
「GO Ahead!」
メルフィーがスロットルレバーを思いっきり前に押し、機体が瞬時に加速する。高度を下げて地面スレスレを飛行し、ライフルを切り落として急制動。さらに、
<トランスインポート・ヴィルティックソード>
左手に剣を出現させ、それでデストラウの脇を――――
「残念」
<トランスインポート・リターン>
「しまった!」
「え?」
確実に捕らえたはずなのに、しかしデストラウの脇を切り裂くはずの刃は空を切る。遅れて衝撃、機体が転倒したようだ。おでこをしたたかぶつけて呻く。
「痛ぁ!? 何今の!?」
「リターン……カウンターです。すみません、迂闊でした」
メルフィーが、ぎり、と悔しそうに歯ぎしりする。
「オルトロックは特殊なカードを多様する戦闘スタイルです、それを失念するなんて――――」
「メルフィー、君らしくないね」
立ち上がろうとしたヴィルティックが再び地面に叩きつけられる。衝撃。いくら軽減されているといってもこれは中々堪える。三半規管が弱かったら即リバースレベルだ。
デストラウが仰向けになったヴィルティックを踏み付ける。
「……ッ! オルトロック……オルトロックさん! どうしてこんな事を!」
メルフィーが悲痛な叫びを上げた。知り合い……なんだろうか、この二人は。
「イルミナスの……いや、違うな。人類の進化のためさ」
<トランスインポート・スティール>
ヴィルティックソードがヴィルティックの手からデストラウの手へと移動する。
<トランスインポート・ストリーム>
「ターンアップ」
オルトロックがそう呟いた瞬間、デストラウの姿がぶれていき、デストラウから分離していくと、実体を成し始めた。そして私の目の前に、本体を含めて5体のデストラウが出現する。
「この私は今からこのデストラウ・シャドウ達に街を破壊するよう命令する。止められるものなら止めてみるといい、もっとも――――」
デストラウがヴィルティックソードを振り下ろす。
「この状態じゃ、何もできないけどね」
「これでヴィルティックは高速移動が可能になりました。合図と同時に懐に入って攻撃を」
「……わかった」
メルフィーがスロットルレバーを握ったのがわかった。私も神経を集中させる。
「三、二、一……」
デストラウが銃口をこちらから外し、正面のビルへと移そうとする。
「GO Ahead!」
メルフィーがスロットルレバーを思いっきり前に押し、機体が瞬時に加速する。高度を下げて地面スレスレを飛行し、ライフルを切り落として急制動。さらに、
<トランスインポート・ヴィルティックソード>
左手に剣を出現させ、それでデストラウの脇を――――
「残念」
<トランスインポート・リターン>
「しまった!」
「え?」
確実に捕らえたはずなのに、しかしデストラウの脇を切り裂くはずの刃は空を切る。遅れて衝撃、機体が転倒したようだ。おでこをしたたかぶつけて呻く。
「痛ぁ!? 何今の!?」
「リターン……カウンターです。すみません、迂闊でした」
メルフィーが、ぎり、と悔しそうに歯ぎしりする。
「オルトロックは特殊なカードを多様する戦闘スタイルです、それを失念するなんて――――」
「メルフィー、君らしくないね」
立ち上がろうとしたヴィルティックが再び地面に叩きつけられる。衝撃。いくら軽減されているといってもこれは中々堪える。三半規管が弱かったら即リバースレベルだ。
デストラウが仰向けになったヴィルティックを踏み付ける。
「……ッ! オルトロック……オルトロックさん! どうしてこんな事を!」
メルフィーが悲痛な叫びを上げた。知り合い……なんだろうか、この二人は。
「イルミナスの……いや、違うな。人類の進化のためさ」
<トランスインポート・スティール>
ヴィルティックソードがヴィルティックの手からデストラウの手へと移動する。
<トランスインポート・ストリーム>
「ターンアップ」
オルトロックがそう呟いた瞬間、デストラウの姿がぶれていき、デストラウから分離していくと、実体を成し始めた。そして私の目の前に、本体を含めて5体のデストラウが出現する。
「この私は今からこのデストラウ・シャドウ達に街を破壊するよう命令する。止められるものなら止めてみるといい、もっとも――――」
デストラウがヴィルティックソードを振り下ろす。
「この状態じゃ、何もできないけどね」
反射的に私はヴィルティックランサーでそれを防いだ。だが位置エネルギーとウェイトの差でじりじりと追い詰められていく。
眼前に迫る白い刃。嫌な汗が背筋を伝うが、そんな事よりも、
「こンの……ド外道!」
――――無関係な人を巻き込もうとする、この糞野郎が許せなかった。
「言っただろう? 悪魔にも死神にも喜んでなるってね」
デストラウ・シャドウ達の瞳に光が灯った。
「さあ、殺戮ショーの始まりだ!」
心の底から楽しそうに、オルトロックが告げた。
眼前に迫る白い刃。嫌な汗が背筋を伝うが、そんな事よりも、
「こンの……ド外道!」
――――無関係な人を巻き込もうとする、この糞野郎が許せなかった。
「言っただろう? 悪魔にも死神にも喜んでなるってね」
デストラウ・シャドウ達の瞳に光が灯った。
「さあ、殺戮ショーの始まりだ!」
心の底から楽しそうに、オルトロックが告げた。
♪ ♪ ♪
半数近くの住人の避難が完了した裏山は人でごった返していた。凄惨な状況は免れたものの、目を背けたくなるような悲鳴や怒号で、混乱が少なからずが起こっていた。
そんな中、いち早く避難を終えた鈴木ヶ原高校の生徒会員や教職員、有志の生徒達によって避難する人々の誘導が行われていた。生徒会長の氷室ルナも、もちろんそのひとりだ。
「お、おかあさん、どこいっちゃったか、わかんなくてぇ……っ」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんが一緒に探してあげるからね」
迷子になってしゃくりあげる女の子をあやし、手を引いて歩き始める。
「すみません、この子のお母さんを知りませんか!」
大きな声で叫ぶけど、それは悲鳴に掻き消されてしまう。くじけそうになるけれど、遥とメルフィーの顔を思い出して乗り切った。もう一度大きな声で叫ぶ。
「この子のお母さん、いたら返事をお願いします!」
すると人込みを掻き分けて、ひとりの女性がこちらへ駆け寄ってきた。
「琴音! 琴音! どこにいたのよ……心配したんだから!」
「おかあさん! このおねえちゃんがね、ことねのことてつだってくれたの!」
女の子――――琴音ちゃんの顔に笑顔が戻る。
「そうですか……本当にありがとうございます!」
「い、いえ……私はできる事をしただけですから……」
つい気恥ずかしくなって、顔を伏せてしまう。多分今私、顔真っ赤だ。
「ねえ、おねえちゃん」
琴音ちゃんが不安げな顔で私のスカートを引っ張った。
「なあに? 琴音ちゃん」
「おうち、だいじょうぶかなぁ……」
私はにっ、と笑って琴音ちゃんの頭を撫でる。
「大丈夫、黒い悪いロボットは、白い正義のロボットがやっつけちゃうから。だから応援してあげて、ね?」
ぱっと明るくなった少女の前に小指を差し出す。
「よし、お姉ちゃんとの約束ね」
「うん!」
ゆーびきーりげーんまーん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!
「会長! 会長!」
お互いえへへ、とはにかんでいると、遠くからよく聞いた事のある声――――生徒会書記の芳田くんだ。
「何かあったの?」
「一条さんと転入生の子がいないって、草川先輩が飛び出して行っちゃって!」
「はぁ!?」
そんな中、いち早く避難を終えた鈴木ヶ原高校の生徒会員や教職員、有志の生徒達によって避難する人々の誘導が行われていた。生徒会長の氷室ルナも、もちろんそのひとりだ。
「お、おかあさん、どこいっちゃったか、わかんなくてぇ……っ」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんが一緒に探してあげるからね」
迷子になってしゃくりあげる女の子をあやし、手を引いて歩き始める。
「すみません、この子のお母さんを知りませんか!」
大きな声で叫ぶけど、それは悲鳴に掻き消されてしまう。くじけそうになるけれど、遥とメルフィーの顔を思い出して乗り切った。もう一度大きな声で叫ぶ。
「この子のお母さん、いたら返事をお願いします!」
すると人込みを掻き分けて、ひとりの女性がこちらへ駆け寄ってきた。
「琴音! 琴音! どこにいたのよ……心配したんだから!」
「おかあさん! このおねえちゃんがね、ことねのことてつだってくれたの!」
女の子――――琴音ちゃんの顔に笑顔が戻る。
「そうですか……本当にありがとうございます!」
「い、いえ……私はできる事をしただけですから……」
つい気恥ずかしくなって、顔を伏せてしまう。多分今私、顔真っ赤だ。
「ねえ、おねえちゃん」
琴音ちゃんが不安げな顔で私のスカートを引っ張った。
「なあに? 琴音ちゃん」
「おうち、だいじょうぶかなぁ……」
私はにっ、と笑って琴音ちゃんの頭を撫でる。
「大丈夫、黒い悪いロボットは、白い正義のロボットがやっつけちゃうから。だから応援してあげて、ね?」
ぱっと明るくなった少女の前に小指を差し出す。
「よし、お姉ちゃんとの約束ね」
「うん!」
ゆーびきーりげーんまーん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!
「会長! 会長!」
お互いえへへ、とはにかんでいると、遠くからよく聞いた事のある声――――生徒会書記の芳田くんだ。
「何かあったの?」
「一条さんと転入生の子がいないって、草川先輩が飛び出して行っちゃって!」
「はぁ!?」
今にも泣きそうな顔をする芳田くん。私は頭を抱えてから、
「あのバカについては私がなんとかするから、芳田くん達はそのまま続行して、笑顔で!」
「え、笑顔で!?」
「じゃないとみんな不安になっちゃうでしょ! ほら、笑え!」
「は、はい!」
無理矢理歪んだ笑顔を作る芳田くん。その顔があまりにもおかしくて笑ってしまうのを堪えながら手鏡を取り出し、芳田くんの顔を写す。
「ぷっ……な、なんだこの顔! ……あ」
案の定芳田くんは噴き出した。
「ほら、笑えた。じゃあ私は行くから、後はお願いね!」
「はい、会長!」
避難しようと山を登る人の波に逆らって走る。草川のバカ、こんな時に男を見せなくてもいいのに……!
「あンの……クソ川めぇっ!」
「あのバカについては私がなんとかするから、芳田くん達はそのまま続行して、笑顔で!」
「え、笑顔で!?」
「じゃないとみんな不安になっちゃうでしょ! ほら、笑え!」
「は、はい!」
無理矢理歪んだ笑顔を作る芳田くん。その顔があまりにもおかしくて笑ってしまうのを堪えながら手鏡を取り出し、芳田くんの顔を写す。
「ぷっ……な、なんだこの顔! ……あ」
案の定芳田くんは噴き出した。
「ほら、笑えた。じゃあ私は行くから、後はお願いね!」
「はい、会長!」
避難しようと山を登る人の波に逆らって走る。草川のバカ、こんな時に男を見せなくてもいいのに……!
「あンの……クソ川めぇっ!」
♪ ♪ ♪
デストラウ・シャドウがそれぞれ動きだそうと、背面の三ッ首の竜のようなスラスターを稼動させる。同時にデストラウが出力を上げた。さらに迫るヴィルティック・ソード。
「さあ、早くしないと死んじゃうよ。君達も、街の人々も!」
オルトロックが嗤う。しかし私はどうする事もできない。このまま負けて死ぬ? そんなのは御免だ。
だから私は――――最後まで足掻く!
「シャッフル!」
モニタの横にカードが収まる。何か使えるカードはないか、それらを素早く吟味した。
「これは……ヴァースト!」
後部座席のメルフィーが叫ぶ。
「遥さん、ひょっとすると……いけるかもしれません!」
<トランスインポート・ヴァースト!>
ヴィルティックが発した膨張する赤い光が、デストラウ達を吹き飛ばした。光の中でヴィルティックが浮き上がり、全身の青い光を放つラインが赤く変色し、モニタの下にはゲージが表示された。
「な、何?」
「ヴァースト……制限時間いっぱいヴィルティックの能力を強化するカードです」
発動の衝撃でデストラウの手から離れ、空中を回転していたヴィルティック・ソードを掴む。
「時間は長くありません、早急に殲滅を!」
私は無言で頷くと、ヴィルティックを一機のデストラウ・シャドウに向けてカッ飛ばした。シャドウは空を飛んで逃げようとするが、速度の差は歴然だ。あっという間に追い付かれる。
「まずは……」
腰部のジョイントに白い刃を滑り込ませ、火花を上げて横一閃。真っ二つになったシャドウが煙になって消える。
「ひとつっ!」
剣を振るってオイルを飛ばすと、左右から挟撃。
「私に任せてください!」
<トランスインポート・ミラージュ>
接触の寸前、ヴィルティックの姿が白い残像を残して消えた。目標を失ったシャドウ二機が正面衝突。怯んだところを上空からの兜割りで一機が消滅し、
「ふたつっ!」
続いて左手のヴィルティック・ソードがもう一機の首を撥ねる。
「みっつっ!」
「さあ、早くしないと死んじゃうよ。君達も、街の人々も!」
オルトロックが嗤う。しかし私はどうする事もできない。このまま負けて死ぬ? そんなのは御免だ。
だから私は――――最後まで足掻く!
「シャッフル!」
モニタの横にカードが収まる。何か使えるカードはないか、それらを素早く吟味した。
「これは……ヴァースト!」
後部座席のメルフィーが叫ぶ。
「遥さん、ひょっとすると……いけるかもしれません!」
<トランスインポート・ヴァースト!>
ヴィルティックが発した膨張する赤い光が、デストラウ達を吹き飛ばした。光の中でヴィルティックが浮き上がり、全身の青い光を放つラインが赤く変色し、モニタの下にはゲージが表示された。
「な、何?」
「ヴァースト……制限時間いっぱいヴィルティックの能力を強化するカードです」
発動の衝撃でデストラウの手から離れ、空中を回転していたヴィルティック・ソードを掴む。
「時間は長くありません、早急に殲滅を!」
私は無言で頷くと、ヴィルティックを一機のデストラウ・シャドウに向けてカッ飛ばした。シャドウは空を飛んで逃げようとするが、速度の差は歴然だ。あっという間に追い付かれる。
「まずは……」
腰部のジョイントに白い刃を滑り込ませ、火花を上げて横一閃。真っ二つになったシャドウが煙になって消える。
「ひとつっ!」
剣を振るってオイルを飛ばすと、左右から挟撃。
「私に任せてください!」
<トランスインポート・ミラージュ>
接触の寸前、ヴィルティックの姿が白い残像を残して消えた。目標を失ったシャドウ二機が正面衝突。怯んだところを上空からの兜割りで一機が消滅し、
「ふたつっ!」
続いて左手のヴィルティック・ソードがもう一機の首を撥ねる。
「みっつっ!」
そしてそのまま地面へ降下。着地の衝撃を受け流しつつ、ビルを薙ぎ払おうとしていたシャドウにヴィルティック・ランサーを投げて磔にすると、デストラウ本体へ低く跳躍する。
残敵は一機。ヴァーストの制限時間――――残り、2分30秒。
残敵は一機。ヴァーストの制限時間――――残り、2分30秒。
♪ ♪ ♪
「ちくしょう、どこ行っちまったんだよ、一条も……!」
まだ避難をしていない人々に避難を促しながら、小さなクラスメイトと大きな転入生を探して街をうろつく。何の大きさかはあえて触れない。
視界の向こうでは黒い大きなロボットと白い小柄なロボットが戦っている。白いロボットはさっきまで青かった体中のラインが赤く染まっていて、圧倒的な戦闘力で分身した黒いロボット達を葬っていた。
糞ッ! 何なのかわかんねーけど、こんな所で戦う事はないだろうが……!
やり場のない怒りを電柱にぶつけて、人もまばらな街を奔走する。さっきまで青かった空は灰色の雲に覆われていて、まるで平和な日常の終末を暗示しているようだった。
「まだ逃げてない人! 早く避難しろ! 巻き込まれるぞ!」
戦いは続いている。白い機体は確実に敵を減らしていくが、黒い機体に消耗している様子は見られない。いや、むしろ嘲笑っているようにも見える。
白い機体の袈裟斬りを、黒い機体がショルダーアーマーで防ぐ。少しよろめくが、それだけだ。
反撃に黒い機体が貫手を喰らわせる。白い機体がとっさに横っ跳びで回避するが、鎖骨の装甲が吹き飛び、赤く発光するフレームが剥き出しになった。
吹き飛んだ装甲が近くにあった電柱にぶつかって、電柱を曲げた。
なんだよ……なんなんだよ……。
「なんだってこんな所で戦うんだよ! バカヤロ――――ッ!」
「うっさいクソ川ぁ!」
スパァン! 雄叫びを上げた俺の頭を何かが強打した。この声は――――
「か、会長!?」
よくよく見知った銀髪ツリ目、ツインテールの氷室ルナ。
「何が『か、会長!?』よ、あなた勝手な行動して許されると思ってるの!?」
突然現れた生徒会長にぶっ叩かれて怒られた。わけが……わからない。
「じゃあ一条とメルフィーちゃんはどうするんだよ! 見殺しにすんのかよ!? ふざっけんな! そんなんで……そんなんで生徒会長とか名乗れんのかよ!」
次の瞬間、俺の頬に痛みが走った。しばらくしてから、ぶたれたんだと認識する。
「生徒会長だから言ってるんでしょう!? 心配ないわけないじゃない! 私だって今すぐにでも二人を助けに行きたいわよ! でも駄目なの! 無理なの! わかるでしょ!? わかってよ! 私の気持ち、わかってよぉ!」
大粒の涙をぽたぽたと流しながら、会長が俺の襟首を掴んだ。いつもの凜とした顔が、くしゃくしゃに歪む。
「氷室……」
「っぐ、ひぐっ、うぇぇぇん」
「ごめんな、言い過ぎた……」
子供みたいに泣き出した会長をそっと抱き寄せて、背中を撫でる。
「わかったよ、会長。だから……裏山に戻ろうぜ」
「っぐ、う……ん」
泣きじゃくる会長の手を掴んで走り出す。その直後、背後で爆発音がした。
振り返ると、そこにはボロボロになった白いロボットが、跪ずいていた。背後に迫る、黒い甲冑。
それを見て、会長が叫び声を上げる。
「遥っ! メルフィーっ!」
……え?
まだ避難をしていない人々に避難を促しながら、小さなクラスメイトと大きな転入生を探して街をうろつく。何の大きさかはあえて触れない。
視界の向こうでは黒い大きなロボットと白い小柄なロボットが戦っている。白いロボットはさっきまで青かった体中のラインが赤く染まっていて、圧倒的な戦闘力で分身した黒いロボット達を葬っていた。
糞ッ! 何なのかわかんねーけど、こんな所で戦う事はないだろうが……!
やり場のない怒りを電柱にぶつけて、人もまばらな街を奔走する。さっきまで青かった空は灰色の雲に覆われていて、まるで平和な日常の終末を暗示しているようだった。
「まだ逃げてない人! 早く避難しろ! 巻き込まれるぞ!」
戦いは続いている。白い機体は確実に敵を減らしていくが、黒い機体に消耗している様子は見られない。いや、むしろ嘲笑っているようにも見える。
白い機体の袈裟斬りを、黒い機体がショルダーアーマーで防ぐ。少しよろめくが、それだけだ。
反撃に黒い機体が貫手を喰らわせる。白い機体がとっさに横っ跳びで回避するが、鎖骨の装甲が吹き飛び、赤く発光するフレームが剥き出しになった。
吹き飛んだ装甲が近くにあった電柱にぶつかって、電柱を曲げた。
なんだよ……なんなんだよ……。
「なんだってこんな所で戦うんだよ! バカヤロ――――ッ!」
「うっさいクソ川ぁ!」
スパァン! 雄叫びを上げた俺の頭を何かが強打した。この声は――――
「か、会長!?」
よくよく見知った銀髪ツリ目、ツインテールの氷室ルナ。
「何が『か、会長!?』よ、あなた勝手な行動して許されると思ってるの!?」
突然現れた生徒会長にぶっ叩かれて怒られた。わけが……わからない。
「じゃあ一条とメルフィーちゃんはどうするんだよ! 見殺しにすんのかよ!? ふざっけんな! そんなんで……そんなんで生徒会長とか名乗れんのかよ!」
次の瞬間、俺の頬に痛みが走った。しばらくしてから、ぶたれたんだと認識する。
「生徒会長だから言ってるんでしょう!? 心配ないわけないじゃない! 私だって今すぐにでも二人を助けに行きたいわよ! でも駄目なの! 無理なの! わかるでしょ!? わかってよ! 私の気持ち、わかってよぉ!」
大粒の涙をぽたぽたと流しながら、会長が俺の襟首を掴んだ。いつもの凜とした顔が、くしゃくしゃに歪む。
「氷室……」
「っぐ、ひぐっ、うぇぇぇん」
「ごめんな、言い過ぎた……」
子供みたいに泣き出した会長をそっと抱き寄せて、背中を撫でる。
「わかったよ、会長。だから……裏山に戻ろうぜ」
「っぐ、う……ん」
泣きじゃくる会長の手を掴んで走り出す。その直後、背後で爆発音がした。
振り返ると、そこにはボロボロになった白いロボットが、跪ずいていた。背後に迫る、黒い甲冑。
それを見て、会長が叫び声を上げる。
「遥っ! メルフィーっ!」
……え?
♪ ♪ ♪
デストラウに向かって跳躍し、袈裟懸けに剣を振り下ろすも、デストラウは最小限の動きでそれを防ぐ。やはり肩アーマーは硬い、肩だけに。
……なんてふざけている場合ではなかった。デストラウが腰を落として貫手を繰り出した。反応が遅れて鎖骨の装甲が吹き飛ばされる。
「しまった!」
「やっと互角かと思ったのに……がっかりだよ」
続けて手刀を振り下ろす。ヴィルティックの頭部が半壊し、機体が地面に墜落した。
「っぐ!」
「アストライル・ギア初代操者もこの程度か……いや、そうか。まだ本気じゃないんだな」
モニター越しにオルトロックの口角が引き攣ったのがよくわかった。
「なら、本気を出してもらえるようにしなきゃいけないな」
デストラウが飛び上がる。
「ここまでおいで、ヴィルティック。時間いっぱい遊んであげるよ」
「ああ、そう……じゃあ付き合ってもらおうかな!」
ブースト全開で飛び上がり、デストラウを真下から縦一文字に切り裂こうとヴィルティック・ソードを構え、斬る。
だが、しかし、
<トランスインポート・グランファー>
瞬間、デストラウの手中に現れた巨大な剣がそれを防いだ。
「遥さん、ヴィルティックソードの耐久力がレッドゾーンに!」
「ヴァーストの時間も残り少ないね……!」
鍔ぜり合い、剣は折れる寸前、ヴァーストの制限時間も残り僅か。明らかにこちらが不利だ。だけど諦めるわけにはいかない。ここで諦めたら、みんなが死ぬ。
「ほう、怯まないのか……度胸だけは大した物だね。だけど、これならどうかな」
デストラウから映像が送信されてきた。そこには胸に風穴を空けられてなお立ち上がるシャドウと、シャドウに襲われる……彼方……!?
「さあ、早くしないと妹さんがミンチになっちゃうよ」
<トランスインポート・エシュトリームクラッシュ>
シャドウの風穴を塞ぐように砲筒がセットされた。学校を攻撃しようとした、あの武器だ。
ぷつん。
遥の中で何かが切れた。
……なんてふざけている場合ではなかった。デストラウが腰を落として貫手を繰り出した。反応が遅れて鎖骨の装甲が吹き飛ばされる。
「しまった!」
「やっと互角かと思ったのに……がっかりだよ」
続けて手刀を振り下ろす。ヴィルティックの頭部が半壊し、機体が地面に墜落した。
「っぐ!」
「アストライル・ギア初代操者もこの程度か……いや、そうか。まだ本気じゃないんだな」
モニター越しにオルトロックの口角が引き攣ったのがよくわかった。
「なら、本気を出してもらえるようにしなきゃいけないな」
デストラウが飛び上がる。
「ここまでおいで、ヴィルティック。時間いっぱい遊んであげるよ」
「ああ、そう……じゃあ付き合ってもらおうかな!」
ブースト全開で飛び上がり、デストラウを真下から縦一文字に切り裂こうとヴィルティック・ソードを構え、斬る。
だが、しかし、
<トランスインポート・グランファー>
瞬間、デストラウの手中に現れた巨大な剣がそれを防いだ。
「遥さん、ヴィルティックソードの耐久力がレッドゾーンに!」
「ヴァーストの時間も残り少ないね……!」
鍔ぜり合い、剣は折れる寸前、ヴァーストの制限時間も残り僅か。明らかにこちらが不利だ。だけど諦めるわけにはいかない。ここで諦めたら、みんなが死ぬ。
「ほう、怯まないのか……度胸だけは大した物だね。だけど、これならどうかな」
デストラウから映像が送信されてきた。そこには胸に風穴を空けられてなお立ち上がるシャドウと、シャドウに襲われる……彼方……!?
「さあ、早くしないと妹さんがミンチになっちゃうよ」
<トランスインポート・エシュトリームクラッシュ>
シャドウの風穴を塞ぐように砲筒がセットされた。学校を攻撃しようとした、あの武器だ。
ぷつん。
遥の中で何かが切れた。
♪ ♪ ♪
遥とオルトロック――――ヴィルティックとデストラウの激闘を、彼女は遥ノ市より幾分離れた、高層ビルの屋上の一角から眺めていた。
「楽しかった学園生活も、今日で終わりかぁ。まぁ……」
緊張感のない声でそう言いながら、少女は眼鏡を胸ポケットにしまい、制服の内ポケットから真紅のカードを取り出した。
「あっちの世界での暮らしも、刺激的だから退屈しないけどね」
少女は笑みを浮かべているものの、激闘を映す目には笑みが見られず、戦況を見極めようとする静謐さが伺えた。
「怒らせたら怖いってよく知ってるはずなのに、冒険が好きね、オルトロックも」
そう言って彼女はため息をつくと、赤いカードを大きな拳銃へと変化させた。無機質的なメルフィーとオルトロックの拳銃に比べて、派手なデザインだ。
銃身に金色のラインが複数入っており、銃口周りに不死鳥を思わせる模様が細かく施されている。
「楽しかった学園生活も、今日で終わりかぁ。まぁ……」
緊張感のない声でそう言いながら、少女は眼鏡を胸ポケットにしまい、制服の内ポケットから真紅のカードを取り出した。
「あっちの世界での暮らしも、刺激的だから退屈しないけどね」
少女は笑みを浮かべているものの、激闘を映す目には笑みが見られず、戦況を見極めようとする静謐さが伺えた。
「怒らせたら怖いってよく知ってるはずなのに、冒険が好きね、オルトロックも」
そう言って彼女はため息をつくと、赤いカードを大きな拳銃へと変化させた。無機質的なメルフィーとオルトロックの拳銃に比べて、派手なデザインだ。
銃身に金色のラインが複数入っており、銃口周りに不死鳥を思わせる模様が細かく施されている。
「久しぶりね、ルヴァイアル」
銃――――ルヴァイアルその何かに向かって彼女は微笑みを浮かべた。
再び、ヴィルティックとデストラウに目を向ける。
「助太刀する必要はなさそうだけど、もしもの時には動くわよ」
彼女はその場に腰掛け呟いた。
「――――早くおしるこ、飲みたいしね」
銃――――ルヴァイアルその何かに向かって彼女は微笑みを浮かべた。
再び、ヴィルティックとデストラウに目を向ける。
「助太刀する必要はなさそうだけど、もしもの時には動くわよ」
彼女はその場に腰掛け呟いた。
「――――早くおしるこ、飲みたいしね」
♪ ♪ ♪
「いや、ミンチよりも酷いか。とりあえずこれを最大出力でぶっ放す事にする。撃たれたくなかったら――――」
10秒以内にそいつらを倒して私を止めてくれ、そう言おうとした時だった。
<トランスインポート・ディフェンス>
衝撃がオルトロックを揺さぶったのは。
ヴィルティックは攻撃回避をするのではなく、ディフェンスでグランファーを防いで一撃を浴びせたのだ。その証拠に、ヴィルティックが赤いオーラを纏っている。
「考えたね、でも――――」
再び衝撃。モニターが消え、サブカメラからの映像に切り替わる。頭部をもぎ取られたのだ。
続いて腹部に貫手が侵入する。それはコックピットごとオルトロックを刔り、貫いた。デストラウが墜落していく。
それを確認するが早いか、遥はヴィルティックを転進させ、シャドウの元へと急いだ。残り5秒。
私は帰ってカナと仲直りしなきゃいけないんだ。だから、間に合え、間に合え、間に合え――――
「間に合え、こんちくしよぉぉぉぉ!!」
シャドウの胸部から閃光が放たれる。同時にヴィルティックがアスファルトを粉砕しながら着地。エシュトリームクラッシュがヴィルティックの背部に直撃した。
10秒以内にそいつらを倒して私を止めてくれ、そう言おうとした時だった。
<トランスインポート・ディフェンス>
衝撃がオルトロックを揺さぶったのは。
ヴィルティックは攻撃回避をするのではなく、ディフェンスでグランファーを防いで一撃を浴びせたのだ。その証拠に、ヴィルティックが赤いオーラを纏っている。
「考えたね、でも――――」
再び衝撃。モニターが消え、サブカメラからの映像に切り替わる。頭部をもぎ取られたのだ。
続いて腹部に貫手が侵入する。それはコックピットごとオルトロックを刔り、貫いた。デストラウが墜落していく。
それを確認するが早いか、遥はヴィルティックを転進させ、シャドウの元へと急いだ。残り5秒。
私は帰ってカナと仲直りしなきゃいけないんだ。だから、間に合え、間に合え、間に合え――――
「間に合え、こんちくしよぉぉぉぉ!!」
シャドウの胸部から閃光が放たれる。同時にヴィルティックがアスファルトを粉砕しながら着地。エシュトリームクラッシュがヴィルティックの背部に直撃した。
♪ ♪ ♪
家に帰ろうとしたら、巨人に襲われた。何が起こったのかわからなかったけど、とにかく怖くて怖くて、動けなかった。
ああ、私死ぬんだ――――そう思った。そしたら、白い巨人が私を助けてくれて――――
恐る恐る、私は目を開ける。全身が焼け焦がしてボロボロになった白い巨人が、私を覗き込んでいた。
巨人のその目が、私には「よかった」って笑っているように感じた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
白い巨人は、私を助けてくれた。でも、代わりに白い巨人はボロボロになってしまった。
泣きじゃくる私に、白い巨人は震えながらサムズアップして、裏山を指差した。
「あっちに、逃げればいいの……?」
巨人が頷く。
「わかった。……ありがとう、巨人さん」
私は振り返らずに駆け出した。
なんでだろう、私はあの巨人の中に――――いつも頼れる、姉の姿を見たような気がする。
ああ、私死ぬんだ――――そう思った。そしたら、白い巨人が私を助けてくれて――――
恐る恐る、私は目を開ける。全身が焼け焦がしてボロボロになった白い巨人が、私を覗き込んでいた。
巨人のその目が、私には「よかった」って笑っているように感じた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
白い巨人は、私を助けてくれた。でも、代わりに白い巨人はボロボロになってしまった。
泣きじゃくる私に、白い巨人は震えながらサムズアップして、裏山を指差した。
「あっちに、逃げればいいの……?」
巨人が頷く。
「わかった。……ありがとう、巨人さん」
私は振り返らずに駆け出した。
なんでだろう、私はあの巨人の中に――――いつも頼れる、姉の姿を見たような気がする。
♪ ♪ ♪
シャドウがエネルギーを使い果たして倒れて消える。
彼方が避難したのを確認して、私は安堵の溜息をついた。
「エネルギー残量ゼロ、ヴァースト解除、各機能低下。ヴィルティックは限界ですね、でも――――」
メルフィーの声が明るくなる。
彼方が避難したのを確認して、私は安堵の溜息をついた。
「エネルギー残量ゼロ、ヴァースト解除、各機能低下。ヴィルティックは限界ですね、でも――――」
メルフィーの声が明るくなる。
「――――デストラウの全滅、確認しました!」
「やったね、やったね、メルフィー!」
「はい!」
コックピット内で、二人で抱き合う。
「それにしても、凄かったです、あの時の遥さん」
「本当だよ、まるでバーサーカーだね……やっぱり君は危険だ、即刻排除するべきだと核心したよ」
感動に水を差すようにアラートが鳴り、死んだはずの男の声がコックピット内に響く。
「オルトロック、なんで……! なんで生きてるの……!?」
「これだよ」
<トランスインポート・リペア>
みるみる内にデストラウの損傷が回復していく。オルトロックの怪我も……いや、これは怪我じゃない、これは――――
「私はもう、人間じゃないからね。それもこれも君達のおかげさ」
デストラウがグランファーを構えてこちらに歩いてくる。
「――――さあ、最終ラウンドを始めようじゃないか」
「やったね、やったね、メルフィー!」
「はい!」
コックピット内で、二人で抱き合う。
「それにしても、凄かったです、あの時の遥さん」
「本当だよ、まるでバーサーカーだね……やっぱり君は危険だ、即刻排除するべきだと核心したよ」
感動に水を差すようにアラートが鳴り、死んだはずの男の声がコックピット内に響く。
「オルトロック、なんで……! なんで生きてるの……!?」
「これだよ」
<トランスインポート・リペア>
みるみる内にデストラウの損傷が回復していく。オルトロックの怪我も……いや、これは怪我じゃない、これは――――
「私はもう、人間じゃないからね。それもこれも君達のおかげさ」
デストラウがグランファーを構えてこちらに歩いてくる。
「――――さあ、最終ラウンドを始めようじゃないか」
■予告
全ての力を振り絞って戦ったヴィルティックを嘲笑うかのように復活したデストラウ。
絶望に打ち拉がれそうになった二人を再び突き動かしたものとは。
今、ヴィルティックの真の姿が明らかになる――――
全ての力を振り絞って戦ったヴィルティックを嘲笑うかのように復活したデストラウ。
絶望に打ち拉がれそうになった二人を再び突き動かしたものとは。
今、ヴィルティックの真の姿が明らかになる――――
次回 THE LAST EPISODE
『Vi・Vid!』
『Vi・Vid!』
その声が、眠れる意思を呼び覚ます。
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