デストラウが水面に落ちる。カメラアイから光が消えて、四肢は力なくだらりと垂れる。
「はぁ、はぁ……シャッフルシステム、CASの停止を確認。デストラウ、完全に沈黙しました……」
メルフィーが粋を切らしながら、額の汗を拭って言った。だが、遥は操縦桿から手を離さない。
「でも……まだ、油断は……できないよ……」
リペアの件もある。もしかすると、まだ隠し玉があるかもしれない。
「……はい!」
メルフィーもそれは承知していたようだ。
身構える。ヴィルティックはボロボロだが、まだ戦えないわけじゃない。
その時、通信が入った。
「聞こえるか、メルフィー、一条 遥」
……オルトロックからだ。
「デストラウには自爆装置が内蔵されている。搭載されている爆弾は強力だ……街ひとつ吹き飛ばせるくらいにね」
やっぱり、隠し玉があったようだ。だが、オルトロックの様子がおかしい。
「それを防ぐにはこのデストラウを跡形もなく破壊するしかない――――君達にそれができるかな? アハハハハハハハハハハ!!」
オルトロック、泣いてる……?
遥はヴィルティックを、倒れたデストラウの前まで移動させた。
「遥さん、何を……?」
「助けよう、オルトロックを」
拳を通じて感じたオルトロックの感情。その中には、喜びがあった。しかし、悲しみもあった。
彼は、暗い暗い場所から、抜け出そうとしてるんだ、抜け出す事ができるんだ。
それなら、その願いを叶えたい。それが、今の私にできる事だから。
跪ずいて、手を差し延べる。おいで、オルトロック。一緒に帰ろう。
「――――何の真似だい? まさか敵に情けをかけようっていうんじゃないよね?」
声が微かに震えている。
「オルトロック、あなたはしかるぶき場所で裁きを受けるべきです。それに……情けをかけちゃいけないっていうルールはないよ」
「甘い事を言うね、でも君達には時間がない。ほら、あと10秒――――」
「遥さん、デストラウの熱量が急激に上昇を――――爆発します、本当に!」
「くっ……!」
助けたい、でも、みんなを巻き込んじゃいけない。
本当に割り切るしかないのか、結局私の力なんてこの程度なのか――――
「……メルちゃん、右腕に全エネルギーを集中させて」
「遥さん……、わかりました」
悔しさを噛み締めながら、ヴィルティックの右腕を上げる。光の翼が広がって、今できる限界までエネルギーを集めた右腕は、巨大な光の剣になった。
「5――――」
悔しさで、唇を噛み締める。でも、割り切らなきゃ。
「4――――」
とうの昔に限界を超えていたヴィルティックの身体が悲鳴を上げた。あと少しだけ、あと少しだけ頑張って、ヴィルティック……!
「3――――」
チャージ完了。後は、振り下ろすだけ。
「2――――」
目を閉じて、祈る。
「1――――」
ごめんね――――
「はぁ、はぁ……シャッフルシステム、CASの停止を確認。デストラウ、完全に沈黙しました……」
メルフィーが粋を切らしながら、額の汗を拭って言った。だが、遥は操縦桿から手を離さない。
「でも……まだ、油断は……できないよ……」
リペアの件もある。もしかすると、まだ隠し玉があるかもしれない。
「……はい!」
メルフィーもそれは承知していたようだ。
身構える。ヴィルティックはボロボロだが、まだ戦えないわけじゃない。
その時、通信が入った。
「聞こえるか、メルフィー、一条 遥」
……オルトロックからだ。
「デストラウには自爆装置が内蔵されている。搭載されている爆弾は強力だ……街ひとつ吹き飛ばせるくらいにね」
やっぱり、隠し玉があったようだ。だが、オルトロックの様子がおかしい。
「それを防ぐにはこのデストラウを跡形もなく破壊するしかない――――君達にそれができるかな? アハハハハハハハハハハ!!」
オルトロック、泣いてる……?
遥はヴィルティックを、倒れたデストラウの前まで移動させた。
「遥さん、何を……?」
「助けよう、オルトロックを」
拳を通じて感じたオルトロックの感情。その中には、喜びがあった。しかし、悲しみもあった。
彼は、暗い暗い場所から、抜け出そうとしてるんだ、抜け出す事ができるんだ。
それなら、その願いを叶えたい。それが、今の私にできる事だから。
跪ずいて、手を差し延べる。おいで、オルトロック。一緒に帰ろう。
「――――何の真似だい? まさか敵に情けをかけようっていうんじゃないよね?」
声が微かに震えている。
「オルトロック、あなたはしかるぶき場所で裁きを受けるべきです。それに……情けをかけちゃいけないっていうルールはないよ」
「甘い事を言うね、でも君達には時間がない。ほら、あと10秒――――」
「遥さん、デストラウの熱量が急激に上昇を――――爆発します、本当に!」
「くっ……!」
助けたい、でも、みんなを巻き込んじゃいけない。
本当に割り切るしかないのか、結局私の力なんてこの程度なのか――――
「……メルちゃん、右腕に全エネルギーを集中させて」
「遥さん……、わかりました」
悔しさを噛み締めながら、ヴィルティックの右腕を上げる。光の翼が広がって、今できる限界までエネルギーを集めた右腕は、巨大な光の剣になった。
「5――――」
悔しさで、唇を噛み締める。でも、割り切らなきゃ。
「4――――」
とうの昔に限界を超えていたヴィルティックの身体が悲鳴を上げた。あと少しだけ、あと少しだけ頑張って、ヴィルティック……!
「3――――」
チャージ完了。後は、振り下ろすだけ。
「2――――」
目を閉じて、祈る。
「1――――」
ごめんね――――
♪ ♪ ♪
「ん……んぅ」
布団の中で目を覚ました私は、寝ぼけ眼で腰を起こした。何かすごく過激な夢を見たような気が――――
「あ、遥さん起きましたよ、マチコさん」
んー? 何か聞き覚えのある声がしたぞー?
頭をぽりぽりと掻く。なんだ、夢じゃなくて現実か。
「起きたみたいね、一条 遥さん。身体の具合はどうかしら?」
知ってる……知ってるけど、何か違う。そんな声がして、振り返ると、そこには――――
「おはよう」
バスローブを着た、妙に妖艶な雰囲気の美女が、腕を組んで壁に寄り掛かって、私を見つめていた。というかこの人――――
「……木原さん、いつの間に急成長したの?」
「まだ寝ぼけてるみたいね。食事にするから着替えなさい。着替えはそこの椅子の上に置いてあるから」
「あ、そうですか、どうも」
木原さんみたいな人――――面倒だから木原さん完全体と名付けよう――――はそう言って、手をひらひらさせながらバスルームへ消えて行った。……ん? バスルーム?
「メルちゃんメルちゃん」
「はい、何ですか?」
「ここ、どこ?」
「ホテルですけど……」
「はぁ、ホテルですか……」
どうりで部屋が無駄に洒落てると思った……って、
「ホテルですか!?」
メルフィーがぎょっとした。
「ホ、ホテルです」
「ホテル……いつの間ホテルに……」
いや、そんな事よりもむしろ、ホテルホテルと言い過ぎてホテルというのが何なのか理解できなくなってる方がヤバいのかもしれない。貝だっけ……いやそれはホタテだ。
まあいい、今は考えるのをやめてとりあえず着替えよう。それにしても、気絶してる間に着替えさせてもらったんだろうかこのパジャマ。歳不相応な身体つきを見らたんだと思うと、なんだか恥ずかしい。
で、着替え終了。同じくして、木原さん完全体もバスルームから戻ってきた。ジーンズとジャケットというカジュアルな格好だ。あと木原さん完全体スタイルいい、すごくいい。少しそのスタイルを分けてもらいたい。
なんて考えてると、完全体が形のいい耳たぶを二回叩く。すると、完全体の耳を覆うくらい大きなヘッドホンがフェードイン。
<さて―――― 一条さん、聞こえる?>
<聞こえるけど……あれ? これってもしかして……木原さん完全体も未来の人なの?>
<何よ完全体って……>
<究極体はおばあちゃんなんでしょうか……>
<メルフィー、あなたちょっと変わったわね、悪い意味で>
完全体が呆れて溜め息をついた。そして右肩を二回叩く。すると完全体の姿が変わって、
<成熟期になったー!?>
<いつまでも幼年期で止まってるあなたに言われたくないのだけど>
肩を再び二度叩き、元の完全体に戻る。
<色々聞きたい事や話したい事はあるけど、とりあえずごはんにしましょうよ。何が食べたい?>
その質問に、私とメルフィーは揃って答える。買ってきたのが、まだあったはずだ。そう――――
『ワッフルで』
布団の中で目を覚ました私は、寝ぼけ眼で腰を起こした。何かすごく過激な夢を見たような気が――――
「あ、遥さん起きましたよ、マチコさん」
んー? 何か聞き覚えのある声がしたぞー?
頭をぽりぽりと掻く。なんだ、夢じゃなくて現実か。
「起きたみたいね、一条 遥さん。身体の具合はどうかしら?」
知ってる……知ってるけど、何か違う。そんな声がして、振り返ると、そこには――――
「おはよう」
バスローブを着た、妙に妖艶な雰囲気の美女が、腕を組んで壁に寄り掛かって、私を見つめていた。というかこの人――――
「……木原さん、いつの間に急成長したの?」
「まだ寝ぼけてるみたいね。食事にするから着替えなさい。着替えはそこの椅子の上に置いてあるから」
「あ、そうですか、どうも」
木原さんみたいな人――――面倒だから木原さん完全体と名付けよう――――はそう言って、手をひらひらさせながらバスルームへ消えて行った。……ん? バスルーム?
「メルちゃんメルちゃん」
「はい、何ですか?」
「ここ、どこ?」
「ホテルですけど……」
「はぁ、ホテルですか……」
どうりで部屋が無駄に洒落てると思った……って、
「ホテルですか!?」
メルフィーがぎょっとした。
「ホ、ホテルです」
「ホテル……いつの間ホテルに……」
いや、そんな事よりもむしろ、ホテルホテルと言い過ぎてホテルというのが何なのか理解できなくなってる方がヤバいのかもしれない。貝だっけ……いやそれはホタテだ。
まあいい、今は考えるのをやめてとりあえず着替えよう。それにしても、気絶してる間に着替えさせてもらったんだろうかこのパジャマ。歳不相応な身体つきを見らたんだと思うと、なんだか恥ずかしい。
で、着替え終了。同じくして、木原さん完全体もバスルームから戻ってきた。ジーンズとジャケットというカジュアルな格好だ。あと木原さん完全体スタイルいい、すごくいい。少しそのスタイルを分けてもらいたい。
なんて考えてると、完全体が形のいい耳たぶを二回叩く。すると、完全体の耳を覆うくらい大きなヘッドホンがフェードイン。
<さて―――― 一条さん、聞こえる?>
<聞こえるけど……あれ? これってもしかして……木原さん完全体も未来の人なの?>
<何よ完全体って……>
<究極体はおばあちゃんなんでしょうか……>
<メルフィー、あなたちょっと変わったわね、悪い意味で>
完全体が呆れて溜め息をついた。そして右肩を二回叩く。すると完全体の姿が変わって、
<成熟期になったー!?>
<いつまでも幼年期で止まってるあなたに言われたくないのだけど>
肩を再び二度叩き、元の完全体に戻る。
<色々聞きたい事や話したい事はあるけど、とりあえずごはんにしましょうよ。何が食べたい?>
その質問に、私とメルフィーは揃って答える。買ってきたのが、まだあったはずだ。そう――――
『ワッフルで』
♪ ♪ ♪
というわけで、私達は今、高校の生徒会室に無断で侵入している。部屋には私とメルフィー、木原さん成熟期と、ルナと、
「あれ? 大ちゃんなんでここにいるの?」
「ごめん、その、私がポカやっちゃって」
申し訳なさそうにルナが手を合わせた。
「ふーん。いいけど、大ちゃんには何もないよ?」
「ガガーン!」
大ちゃんがその場にくずおれた。大袈裟だなぁ、もう。
「いいよ……俺はお茶と偽って持ってきたスポーツドリンクちびちび飲むよ……」
「大ちゃん、そんな小学生じゃないんだから……」
別に持ってきちゃいけない、とは校則には書いてなかったはずだ。それに校内にも自販機あるし。
「とりあえずなんか脱線してるから、話を元に戻すわよ。私の本名はマチコ・パラディス・フレイリック・ローティニア・スネイル。メルフィーちゃんの先輩みたいなもので――――」
「でんでんむしむし?」
「かたつむり?」
「だまらっしゃい」
木原さん完全体改めマチコさんが、どこからか取り出したハリセンで大ちゃんと私の頭を叩いた。あまりにも鮮やかな流れにルナとメルフィーが噴き出す。
「とにかく、まずは今の状況からよ――――」
マチコさんとルナ、大ちゃんによると、学校は臨時休校で一足早い夏休みになったらしい。そして今回の件による死者はゼロなんだとか。その報告を聞いて、私達はほっと胸を撫で下ろした。
マチコさんがそして大ちゃん達に未来についてのあれやこれやを説明してから、おしるこをぐいっと煽る。
「ああ、そうそう、聞きたい事がひとつあるんだけど――――メルフィーと一条さん。あなたたち、これからどうするの?」
マチコさんの質問に、私達は一様に顔を見合わせた。幾何かのアイコンタクト。そして、異口同音に言う。
『イルミナスを、ぶっ潰す!』
「うん、まあ、その意気やよし。だけど、未来に行って生きて帰って来れる保証はないのよ? それに、未来に行く事、両親にはどう説明するの?」
か、考えなかった……どうしよう。そうだなぁ……。
「夏休みの旅行に行ってるとか?」
「それよ!」
叫びながらルナが立ち上がった。突然どうしたんだろうこの子。
「何かいい考えがあるの? 会長」
「ウチ、別荘があるのよ。親もいないし、夏休みの間だけなら何とかなるかも」
「夏休みの間だけ、ね……それなら何とかなるかもしれないわ」
マチコさんが私とメルフィーを見て、にやりと笑う。
「あなたたちの頑張り次第だけどね」
頑張り次第、か……。
私は自分の小さな手の平を見る。この手で、私はみんなを守る事ができた。でもそれは私だけの力じゃなくて、メルフィーやみんながいてくれたからだ。
未来に行っても、私にはそれができるんだろうか……。
「出発はなるべく早い方がいいんだけど……」
「じゃあ、明日で」
『えぇっ!?』
私の言葉に、みんなが目を丸くした。
「そ、そんな急でいいの?」
「だって、長くいたら未練たらったらになっちゃうかもしれないし……ねぇ?」
「いや、『ねぇ?』じゃないだろ。まあ、お前がそれでいいなら、俺は何も言わないけどさ」
大ちゃんは恥ずかしそうにそっぽを向くと、鼻の頭を人差し指で掻きながら、
「なるべく早く帰ってこいよ。お前がいないと色々つまらん」
大ちゃん……。
「大ちゃんがそう言うなら、私も何も言わないよ。絶対帰って来るって、信じてるから」
ルナ……。
「それじゃあ、今日の内に街を回って準備をしておくといいわ。私はここで待ってるから、明日また来なさい」
マチコさんの言葉に、私はゆっくり頷いた。
……あれ? そういえばルナ、いつのまに“草川くん”じゃなくて“大ちゃん”って呼ぶようになったんだろう。
……ま、いっか!
「あれ? 大ちゃんなんでここにいるの?」
「ごめん、その、私がポカやっちゃって」
申し訳なさそうにルナが手を合わせた。
「ふーん。いいけど、大ちゃんには何もないよ?」
「ガガーン!」
大ちゃんがその場にくずおれた。大袈裟だなぁ、もう。
「いいよ……俺はお茶と偽って持ってきたスポーツドリンクちびちび飲むよ……」
「大ちゃん、そんな小学生じゃないんだから……」
別に持ってきちゃいけない、とは校則には書いてなかったはずだ。それに校内にも自販機あるし。
「とりあえずなんか脱線してるから、話を元に戻すわよ。私の本名はマチコ・パラディス・フレイリック・ローティニア・スネイル。メルフィーちゃんの先輩みたいなもので――――」
「でんでんむしむし?」
「かたつむり?」
「だまらっしゃい」
木原さん完全体改めマチコさんが、どこからか取り出したハリセンで大ちゃんと私の頭を叩いた。あまりにも鮮やかな流れにルナとメルフィーが噴き出す。
「とにかく、まずは今の状況からよ――――」
マチコさんとルナ、大ちゃんによると、学校は臨時休校で一足早い夏休みになったらしい。そして今回の件による死者はゼロなんだとか。その報告を聞いて、私達はほっと胸を撫で下ろした。
マチコさんがそして大ちゃん達に未来についてのあれやこれやを説明してから、おしるこをぐいっと煽る。
「ああ、そうそう、聞きたい事がひとつあるんだけど――――メルフィーと一条さん。あなたたち、これからどうするの?」
マチコさんの質問に、私達は一様に顔を見合わせた。幾何かのアイコンタクト。そして、異口同音に言う。
『イルミナスを、ぶっ潰す!』
「うん、まあ、その意気やよし。だけど、未来に行って生きて帰って来れる保証はないのよ? それに、未来に行く事、両親にはどう説明するの?」
か、考えなかった……どうしよう。そうだなぁ……。
「夏休みの旅行に行ってるとか?」
「それよ!」
叫びながらルナが立ち上がった。突然どうしたんだろうこの子。
「何かいい考えがあるの? 会長」
「ウチ、別荘があるのよ。親もいないし、夏休みの間だけなら何とかなるかも」
「夏休みの間だけ、ね……それなら何とかなるかもしれないわ」
マチコさんが私とメルフィーを見て、にやりと笑う。
「あなたたちの頑張り次第だけどね」
頑張り次第、か……。
私は自分の小さな手の平を見る。この手で、私はみんなを守る事ができた。でもそれは私だけの力じゃなくて、メルフィーやみんながいてくれたからだ。
未来に行っても、私にはそれができるんだろうか……。
「出発はなるべく早い方がいいんだけど……」
「じゃあ、明日で」
『えぇっ!?』
私の言葉に、みんなが目を丸くした。
「そ、そんな急でいいの?」
「だって、長くいたら未練たらったらになっちゃうかもしれないし……ねぇ?」
「いや、『ねぇ?』じゃないだろ。まあ、お前がそれでいいなら、俺は何も言わないけどさ」
大ちゃんは恥ずかしそうにそっぽを向くと、鼻の頭を人差し指で掻きながら、
「なるべく早く帰ってこいよ。お前がいないと色々つまらん」
大ちゃん……。
「大ちゃんがそう言うなら、私も何も言わないよ。絶対帰って来るって、信じてるから」
ルナ……。
「それじゃあ、今日の内に街を回って準備をしておくといいわ。私はここで待ってるから、明日また来なさい」
マチコさんの言葉に、私はゆっくり頷いた。
……あれ? そういえばルナ、いつのまに“草川くん”じゃなくて“大ちゃん”って呼ぶようになったんだろう。
……ま、いっか!
♪ ♪ ♪
こっそり教室から出て、こっそり土間に行って、こっそり靴を履いて、こっそりグラウンドに出る。
グラウンドには、私が作った巨大なクレーター。ヴィルティックに乗ってるときはちょっと大きいくらいかと思ったけど、こうしてヴィルティックから下りて見ると、予想よりもそれは大きかった。
「こりゃしばらく体育は中だな」
大ちゃんが快活に笑う。
「でもこんな穴開けてよかったんでしょうか……」
メルフィーがしゅんとした声で呟いた。こんな大きな穴と、そこに広がる暗闇を見れば、そうなるのも無理はない。
「ねえ、メルフィー。あの時あなたが助けた人数、どれくらいかわかる?」
「え……?」
「1257人よ」
戸惑うメルフィーに対して、ルナがさらりと言ってみせる。流石は生徒会長、全校生徒と教職員の人数もばっちり覚えてるみたいだ。
「あなたはそれだけの人の命を救ったの。1000人以上の人間が死ぬ事に比べたら、こんな穴ぼこなんてこともないわ」
ふっ、とルナが笑ってみせた。ルナ、なんだか変わったなぁ……前はいつもピリピリしてたのに。
「はい……ありがとうございます」
メルフィーがぽろぽろと涙を零し始める。
「すみません、嬉しくて、つい……。そうですよね、なんだか頑張れそうな気がしてきました」
にこりと笑う。
「やっぱ女の子は笑顔のほうがうわらば!」
突然大ちゃんがルナにどつかれた。ルナの顔は真っ赤だ。
「は、恥ずかしい事を口走るんじゃありません!」
……二人の間に何があったんだろう? やっぱり気になる。気になるけど、やっぱり詮索は止した方がいいよね、うん。自制心、自制心だ。
「と、とりあえず、今日はゆっくり街を回ろうぜ!」
大ちゃんの提案に頷いて、私達は校門を潜る。
ここは戦いが始まって、一番最初に戦場になった所だ。コンクリートの道路には巨大な足跡が刻まれ、いくつかの建物にはガラスの代わりに段ボールや木製の板をガムテープで張り付けていた。倒壊した家屋はゼロだ。
「よくもまあ、これだけの被害で済んだわね」
ルナが感嘆の溜め息をついた。
「ふっふっふ、まあその辺には細心の注意を払いましたから!」
私は誇らしくなって、鼻の下を擦った。
正直私自身も驚いている。人間やればできるもんだ。
「流石、我が校の生徒会副会長達は有能ね」
あ、そっか。しっかり約束守ったから、メルフィーも副会長になったんだ。でもメルフィーはなんだか浮かない顔をしていて。
「どうしたの?」
「いえ、せっかく副会長になったのに、もうお別れなんだと思うと悲しくて……」
そういえば、そうか。言われて初めて気がついた。私は未来に“行く”だけど、メルフィーは未来に“帰る”んだ。
「じゃあ思い出作りも兼ねて、鈴木市巡りといこうぜ!」
大ちゃんがメルフィーとルナの肩を抱き寄せた。明らかに鼻の下が伸びまくっている。そして頬を赤らめながら振りほどくルナ。一方のメルフィーは特に抵抗をしようとせずにはにかんでいる。
そっか、そういえば大ちゃんとルナってメルフィーの――――メルフィーの……何だっけ? 何か大事な事を忘れてるような……えぇい、考えるな考えるな。考えたら気になっちゃうじゃないか。
頭をぶんぶんと振って、疑問を吹き飛ばす。まだ若干尾を引いているが、思考停止思考停止。
それから私達は街じゅうを歩いて回った。戦いの爪痕は少なからず、はっきりと残っていたけど、みんなそれぞれいつも通りの生活に戻っていた。人間というのは、意外と逞しいものだ。
みんなと別れて、ひとりぼっちの帰り道。最後の攻防があった、川のほとりを無言で眺める。他の場所と同じ――――いや、損害がない分それ以上に――――何事もなかったように静かで、ひっそりとしていた。それがなんだか嬉しくもあり、虚しくもあり。
水面が夕日を反射して、キラキラとオレンジに輝く。この景色は、私達が守ったんだ。
――――でも、オルトロックを救う事は、できなかった。
溢れてきた涙を拭う。ばか、なんで泣くんだよ、私。
「おねえちゃん、どうしたの? どこか痛いの?」
目元を腕で隠している私に、小さな女の子が心配そうに声を掛けた。正直あんまり他人に弱みは見せたくない。だから私はおちゃらけて、
「うん、ちょっとね、ハートがね……」
「こころがいたいんだ」
「うん、そうなの」
河川敷に知らない女の子と、二人で座る。だけどこの女の子、どこかで会った事があるような……。
「じゃあ、わたしがおうえんしてあげる!」
おうえん、応援……あれ? もしかして、この子、あの時の――――
「がんばれ!」
そうだ、この子は一番最初に私を応援してくれた子だ。何かの縁なんだろうか。
それにしても……なんだか心があったかくなってきた。
立ち上がる。涙はもう乾いた。笑顔の女の子に、私も笑顔で返す。
もう泣かない。私は勝った、勝ってみんなを守ったんだ、それでいいじゃないか。普段大口叩いておいて、こんなんじゃカッコがつかない。
「うおっ……しゃぁっ!」
頬をぴしゃりと叩いて、気合い注入。私はもう、大丈夫!
「ありがと、えーと……」
「わたし、ことねっていうの!」
そう言って、少女はかわいらしいポシェットの名札を指差した。そこには確かに、ことねの三文字。
「そっか、ことねちゃんっていうんだ。……ありがと、ことねちゃん」
グラウンドには、私が作った巨大なクレーター。ヴィルティックに乗ってるときはちょっと大きいくらいかと思ったけど、こうしてヴィルティックから下りて見ると、予想よりもそれは大きかった。
「こりゃしばらく体育は中だな」
大ちゃんが快活に笑う。
「でもこんな穴開けてよかったんでしょうか……」
メルフィーがしゅんとした声で呟いた。こんな大きな穴と、そこに広がる暗闇を見れば、そうなるのも無理はない。
「ねえ、メルフィー。あの時あなたが助けた人数、どれくらいかわかる?」
「え……?」
「1257人よ」
戸惑うメルフィーに対して、ルナがさらりと言ってみせる。流石は生徒会長、全校生徒と教職員の人数もばっちり覚えてるみたいだ。
「あなたはそれだけの人の命を救ったの。1000人以上の人間が死ぬ事に比べたら、こんな穴ぼこなんてこともないわ」
ふっ、とルナが笑ってみせた。ルナ、なんだか変わったなぁ……前はいつもピリピリしてたのに。
「はい……ありがとうございます」
メルフィーがぽろぽろと涙を零し始める。
「すみません、嬉しくて、つい……。そうですよね、なんだか頑張れそうな気がしてきました」
にこりと笑う。
「やっぱ女の子は笑顔のほうがうわらば!」
突然大ちゃんがルナにどつかれた。ルナの顔は真っ赤だ。
「は、恥ずかしい事を口走るんじゃありません!」
……二人の間に何があったんだろう? やっぱり気になる。気になるけど、やっぱり詮索は止した方がいいよね、うん。自制心、自制心だ。
「と、とりあえず、今日はゆっくり街を回ろうぜ!」
大ちゃんの提案に頷いて、私達は校門を潜る。
ここは戦いが始まって、一番最初に戦場になった所だ。コンクリートの道路には巨大な足跡が刻まれ、いくつかの建物にはガラスの代わりに段ボールや木製の板をガムテープで張り付けていた。倒壊した家屋はゼロだ。
「よくもまあ、これだけの被害で済んだわね」
ルナが感嘆の溜め息をついた。
「ふっふっふ、まあその辺には細心の注意を払いましたから!」
私は誇らしくなって、鼻の下を擦った。
正直私自身も驚いている。人間やればできるもんだ。
「流石、我が校の生徒会副会長達は有能ね」
あ、そっか。しっかり約束守ったから、メルフィーも副会長になったんだ。でもメルフィーはなんだか浮かない顔をしていて。
「どうしたの?」
「いえ、せっかく副会長になったのに、もうお別れなんだと思うと悲しくて……」
そういえば、そうか。言われて初めて気がついた。私は未来に“行く”だけど、メルフィーは未来に“帰る”んだ。
「じゃあ思い出作りも兼ねて、鈴木市巡りといこうぜ!」
大ちゃんがメルフィーとルナの肩を抱き寄せた。明らかに鼻の下が伸びまくっている。そして頬を赤らめながら振りほどくルナ。一方のメルフィーは特に抵抗をしようとせずにはにかんでいる。
そっか、そういえば大ちゃんとルナってメルフィーの――――メルフィーの……何だっけ? 何か大事な事を忘れてるような……えぇい、考えるな考えるな。考えたら気になっちゃうじゃないか。
頭をぶんぶんと振って、疑問を吹き飛ばす。まだ若干尾を引いているが、思考停止思考停止。
それから私達は街じゅうを歩いて回った。戦いの爪痕は少なからず、はっきりと残っていたけど、みんなそれぞれいつも通りの生活に戻っていた。人間というのは、意外と逞しいものだ。
みんなと別れて、ひとりぼっちの帰り道。最後の攻防があった、川のほとりを無言で眺める。他の場所と同じ――――いや、損害がない分それ以上に――――何事もなかったように静かで、ひっそりとしていた。それがなんだか嬉しくもあり、虚しくもあり。
水面が夕日を反射して、キラキラとオレンジに輝く。この景色は、私達が守ったんだ。
――――でも、オルトロックを救う事は、できなかった。
溢れてきた涙を拭う。ばか、なんで泣くんだよ、私。
「おねえちゃん、どうしたの? どこか痛いの?」
目元を腕で隠している私に、小さな女の子が心配そうに声を掛けた。正直あんまり他人に弱みは見せたくない。だから私はおちゃらけて、
「うん、ちょっとね、ハートがね……」
「こころがいたいんだ」
「うん、そうなの」
河川敷に知らない女の子と、二人で座る。だけどこの女の子、どこかで会った事があるような……。
「じゃあ、わたしがおうえんしてあげる!」
おうえん、応援……あれ? もしかして、この子、あの時の――――
「がんばれ!」
そうだ、この子は一番最初に私を応援してくれた子だ。何かの縁なんだろうか。
それにしても……なんだか心があったかくなってきた。
立ち上がる。涙はもう乾いた。笑顔の女の子に、私も笑顔で返す。
もう泣かない。私は勝った、勝ってみんなを守ったんだ、それでいいじゃないか。普段大口叩いておいて、こんなんじゃカッコがつかない。
「うおっ……しゃぁっ!」
頬をぴしゃりと叩いて、気合い注入。私はもう、大丈夫!
「ありがと、えーと……」
「わたし、ことねっていうの!」
そう言って、少女はかわいらしいポシェットの名札を指差した。そこには確かに、ことねの三文字。
「そっか、ことねちゃんっていうんだ。……ありがと、ことねちゃん」
♪ ♪ ♪
街の真ん中、だけど静かな場所に我が家はあった。電気はついてるし、お父さんとお母さん、彼方の声もする。
深く深く深呼吸。何しろ無断で一日帰らなかったのは初めだったから、凄く緊張する。
ぐずぐずしてる暇はない。私は意を決してインターホンのボタンを押した。直後にぱたぱたと足音が近付いてきて、ドアが開く。
出てきたお母さんが、目を丸くして口元を押さえた。ポニーテールにした三つ編みが揺れる。
「は、ハルちゃん……」
しばらくの静寂。固まっていたお母さんが、突然踵を返して大声を上げた。
「カナちゃん、あなた! ハルちゃんが、ハルちゃんが帰ってきましたよ! ほら、早く来て!」
「なんだって!?」
「本当!?」
彼方が、お父さんが、家族みんなが笑顔で駆け寄って、私を取り囲む。
「え、えーと……一条 遥、ただいま帰りました」
「よく無事だったなぁ、遥!」
お父さんが軽々と私を抱き上げて、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「お父さん、次私!」
今度は彼方がお父さんから私をひったくって頬擦り。私はぬいぐるみか何かなんだろうか……今はベタベタされるよりベタベタしたいなぁ。
「ちょっと巨人さん達、ハルちゃんはお人形さんじゃありませんよ!」
おっきい二人組から、ちんまいお母さんが同じくちんまい私を奪って抱きしめる。
「じゃあハルちゃん、お母さんと一緒にお風呂入りましょうねー」
いや、あのね、お母さん、ベタベタしたいとは思ったけれど、そこまでのレベルじゃ……。
「お母さん、それってある意味お人形さんより扱い酷いと思うんだけど」
「え? そうなの?」
深く深く深呼吸。何しろ無断で一日帰らなかったのは初めだったから、凄く緊張する。
ぐずぐずしてる暇はない。私は意を決してインターホンのボタンを押した。直後にぱたぱたと足音が近付いてきて、ドアが開く。
出てきたお母さんが、目を丸くして口元を押さえた。ポニーテールにした三つ編みが揺れる。
「は、ハルちゃん……」
しばらくの静寂。固まっていたお母さんが、突然踵を返して大声を上げた。
「カナちゃん、あなた! ハルちゃんが、ハルちゃんが帰ってきましたよ! ほら、早く来て!」
「なんだって!?」
「本当!?」
彼方が、お父さんが、家族みんなが笑顔で駆け寄って、私を取り囲む。
「え、えーと……一条 遥、ただいま帰りました」
「よく無事だったなぁ、遥!」
お父さんが軽々と私を抱き上げて、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「お父さん、次私!」
今度は彼方がお父さんから私をひったくって頬擦り。私はぬいぐるみか何かなんだろうか……今はベタベタされるよりベタベタしたいなぁ。
「ちょっと巨人さん達、ハルちゃんはお人形さんじゃありませんよ!」
おっきい二人組から、ちんまいお母さんが同じくちんまい私を奪って抱きしめる。
「じゃあハルちゃん、お母さんと一緒にお風呂入りましょうねー」
いや、あのね、お母さん、ベタベタしたいとは思ったけれど、そこまでのレベルじゃ……。
「お母さん、それってある意味お人形さんより扱い酷いと思うんだけど」
「え? そうなの?」
♪ ♪ ♪
もうすっかり陽は落ちて、家族総出での盛大な歓迎に疲れ果てた私は、ベランダに座り込んで麦茶を飲んでいた。
ちなみに夏休みのお泊りについては「いつも頑張ってるから」という理由であっさり快諾してくれた。みんなを騙すのはちょっぴり心が痛むけど、人助けのためだ。
「なおの事無茶できないなぁ」
――――まあ、なんだかんだで結局無理はするんだろうけど。
「無茶って何の事かなー?」
「わぁっ!?」
突然、誰かに後ろから寄り掛かられた。この声は――――
「もう、カナ! いきなり何すんの!」
「大好きなお姉ちゃんに一ヶ月会えなくなるから、今の内に一ヶ月分甘えておこうと思いまして」
にっしっし、子供みたいな笑顔を浮かべる。顔にかかる黒髪からシャンプーのいい匂い。
「まったく、世話のかかる妹だなぁ」
麦茶の入ったコップを置いて、カナの水気を含んだ髪を手櫛でとかす。
「……ねえ、ハル姉ぇ」
「なに、カナ?」
「あのさ……」
カナが何かを言おうとして言葉を詰まらせた。そして私から離れると立ち上がり、
「えーっと、その……昨日は、ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「こちらこそ、言い過ぎちゃってごめんなさい」
だから私も同じようにする。これで、二人の問題は解決だ。頭を上げてお互い笑顔でハイタッチ。
「あ、そうだ。ハル姉ぇ、もう寝る?」
「うん、寝るよ」
「じゃあ、さ、その……良かったら、一緒に、寝ない?」
と、突然何を言い出すんだこの子は……やっぱりちょっと甘やかし過ぎただろうか。でも――――
「まったく、しょうがない子だなぁ……」
一ヶ月はお預けなんだし、まあいっか!
ちなみに夏休みのお泊りについては「いつも頑張ってるから」という理由であっさり快諾してくれた。みんなを騙すのはちょっぴり心が痛むけど、人助けのためだ。
「なおの事無茶できないなぁ」
――――まあ、なんだかんだで結局無理はするんだろうけど。
「無茶って何の事かなー?」
「わぁっ!?」
突然、誰かに後ろから寄り掛かられた。この声は――――
「もう、カナ! いきなり何すんの!」
「大好きなお姉ちゃんに一ヶ月会えなくなるから、今の内に一ヶ月分甘えておこうと思いまして」
にっしっし、子供みたいな笑顔を浮かべる。顔にかかる黒髪からシャンプーのいい匂い。
「まったく、世話のかかる妹だなぁ」
麦茶の入ったコップを置いて、カナの水気を含んだ髪を手櫛でとかす。
「……ねえ、ハル姉ぇ」
「なに、カナ?」
「あのさ……」
カナが何かを言おうとして言葉を詰まらせた。そして私から離れると立ち上がり、
「えーっと、その……昨日は、ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「こちらこそ、言い過ぎちゃってごめんなさい」
だから私も同じようにする。これで、二人の問題は解決だ。頭を上げてお互い笑顔でハイタッチ。
「あ、そうだ。ハル姉ぇ、もう寝る?」
「うん、寝るよ」
「じゃあ、さ、その……良かったら、一緒に、寝ない?」
と、突然何を言い出すんだこの子は……やっぱりちょっと甘やかし過ぎただろうか。でも――――
「まったく、しょうがない子だなぁ……」
一ヶ月はお預けなんだし、まあいっか!
♪ ♪ ♪
未来の英雄達と別れてホテルに戻ったマチコは、椅子に座って一息ついている所だった。ふかふかの椅子に身体が沈んでいく感覚が気持ちいい。そしておしるこを一口煽る。
「やっぱりひと仕事終えた後の一杯は格別だわー」
<君は何もしていないじゃないか>
頭の中に、男の声が響く。
「あら、大事な事をしたじゃない。あの方の言う通り、あなたを止めたわ」
<確かに、それは感謝している。だが、いっそ殺してくれた方が――――>
おしるこを飲み干すて、二つ目の缶のプルタブを空ける。
「ああ、そうそう。あの方からのメッセージがあるわよ」
<メッセージ……?>
「『逃げるな、ばか』ですって」
「やっぱりひと仕事終えた後の一杯は格別だわー」
<君は何もしていないじゃないか>
頭の中に、男の声が響く。
「あら、大事な事をしたじゃない。あの方の言う通り、あなたを止めたわ」
<確かに、それは感謝している。だが、いっそ殺してくれた方が――――>
おしるこを飲み干すて、二つ目の缶のプルタブを空ける。
「ああ、そうそう。あの方からのメッセージがあるわよ」
<メッセージ……?>
「『逃げるな、ばか』ですって」
♪ ♪ ♪
旅立ちの朝、荷物まとめて学校へ。
朝日が照らすグラウンドには、見知った顔と二体の巨人。
「さあ、一条さん……覚悟はいいわね?」
木原さんの問いに、私は眼下で手を振る大ちゃんとルナを一瞥して、はっきりこう答えた。
「いいですとも」
モニターで木原さんがにこりと笑う。
「よろしい。じゃあ、行くわよ」
<トランスインポート・タイムゲート>
校庭のクレーターに、時空の歪みが出現した。ここに飛び込めば未来に行けるらしい。
木原さんの真紅のギア“ルヴァイアル”が先に飛び込んだ。私もヴィルティックを歪みに向かわせる。
さあ、世界一刺激的な、ひと夏の大冒険へ――――
「いってきます!」
朝日が照らすグラウンドには、見知った顔と二体の巨人。
「さあ、一条さん……覚悟はいいわね?」
木原さんの問いに、私は眼下で手を振る大ちゃんとルナを一瞥して、はっきりこう答えた。
「いいですとも」
モニターで木原さんがにこりと笑う。
「よろしい。じゃあ、行くわよ」
<トランスインポート・タイムゲート>
校庭のクレーターに、時空の歪みが出現した。ここに飛び込めば未来に行けるらしい。
木原さんの真紅のギア“ルヴァイアル”が先に飛び込んだ。私もヴィルティックを歪みに向かわせる。
さあ、世界一刺激的な、ひと夏の大冒険へ――――
「いってきます!」
ヴィルティック・わっふる!
Epilogue:Are you ready?
Epilogue:Are you ready?
To be continued...■
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