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転移戦線異常有り!? 大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊がワームと戦うようです 第6話

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irisjoker

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オルトロス二型が発射した大量の針弾を6.25mm迎撃機関銃の銃口から放った6.25mm振動熱徹甲弾で正確無比に撃墜しながら、突撃兵二十人が塹壕へ戻ってくる。
間接防御兵器を除いて射撃可能な兵器を持たず、攻撃手段が振動熱斬刀しか無い突撃部隊が無事に帰還出来るよう、近接部隊の攻撃がオルトロスに降り注ぐ。
後方支援担当重歩兵が背負っている、冷蔵庫みたいな馬鹿でかい各種バックパック。機体及び武器修理用、治療用、電子戦用など様々な種類があるが、今一番役に立っているのが情報解析バックパックと高性能複合センサーバックパックだ。
400基の小型浮遊監視装置「V3ホッパー」がリアルタイムで様々な情報を、高性能複合センサーバックパックが大多数のオルトロスから徹底的に集めた情報を情報解析バックパックに送信。情報解析バックパックが解析の完了した情報を全部隊に送信、解析情報が共有される。
オルトロスとの距離が近くなり高性能複合センサーバックパックの精度が著しく向上した事で、接近してくるオルトロスの体内の急所がより明確、正確になった。例えるならば、バイオハザード4でサーモスコープを装備したライフルでリヘナラドールを狙撃するが如く。
俺達近接部隊は情け容赦無く且つ正確に、弾薬を無駄にしないよう単発射撃を連発して急所へ砲弾をブチ込む。
「おかえり、伯爵」
<ただいま、伯爵>
突撃部隊が塹壕へ無事に帰還した。そして、オルトロスの大群もすぐ目の前だ。さぁ、本気でブチ殺してやる。屍の山と血の河にしてやる。
無人小型弾薬補給車「イグルー」の触手状給弾管で消費した弾薬を補給する。6機の25mm重機関砲と装着してある50mm擲弾発射機。1機につき25mm弾200発、50mm擲弾20発。計25mm弾1200発、50mm擲弾120発を全て叩き込む。
重装甲強化服は思考制御とコンピュータの補助によって動かす。内部は寝袋を人の形にしたような単純極まりない構造で、ディスプレイや操縦桿などは全く無い。
思考制御で動かすから操縦桿などは必要無く、脳に直接情報を流せるので「見る」という間接的行為自体が不要でありディスプレイなども必要無い。
マンガやアニメだとこの手の操縦方式は性能が高い代わりに操縦者に凄まじい負荷が掛かるという設定がよくあるが、重装甲強化服に「それは無い」。
収集した莫大な情報を計算、解析したコンピュータは思考制御機能を通して、人間の脳に負担が掛からないよう極限まで簡略化した情報を、操縦者の思考を読み取り、周囲の状況を判断し、求めている又は必要不可欠である最適な質と量を流し込む。故に負担は無い。
正統日本の兵器は全て過酷な環境下での長期運用を前提に設計、開発されている。重装甲強化服を着用している重歩兵に負担など無いし、あってはならないのだ。ただし、それは「通常時」での話だ。
後先考えていられる状況ではないし、考える気も更々無い。封印を、解く。

「リミッター解除」

小声で呟いた直後、莫大な情報が脳に流れ込んできた。奥歯を噛み締め、一杯に目を開く。下手をすれば廃人になりかねない情報の大洪水が脳を埋め尽くす。全てを潰し、流し、崩す濁流に正面から挑むようなものだ。
生命の危機に危険信号が全身を駆け巡り、再びリミッターを掛けるよう命令してくる。
生命の危機? その程度、「たかがその程度」の事が「なんだ」というのだ。命なんぞ童貞と(後ろの穴の)処女に比べればカスも同然。「そんなもの」が無くなった所で「なんだ」というのだ、ふざけるな!
リミッターを掛けようとした感情が完全に消えた。ほんの少しも、塵一つも残っていない。さぁ、征こう。さぁ、殺ろう。全力で相手してやる。この俺が、大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊中隊長が!

「うおおおおおーーーーーッ」
塹壕に入った状態だと両肩と両手のみで、腰の2機の25mm重機関砲が使えない。躊躇いも迷いも無く塹壕から飛び出す。迫り来るタコの怪物の津波の真正面に立つ。
大多数のオルトロス二型が発射した針弾の集中砲火を受ける。仲間の発射した迎撃針弾、6.25mm振動熱徹甲弾、10mm小型高機動迎撃ミサイル、本来なら攻撃用の25mm重機関砲をも間接防御兵器として使い、全弾を俺に直撃する前に撃破する。
有り難い連中だ。見ていろ、これが俺の全力、これが俺の全てだ。
<あれは!?>
<どうした?>
<見ろ、隊長が両手に持っている25mm重機関砲の先端が天馬星座(ペガサス)の十三の星の軌跡を描いている>
<ま、まさか!?>
「極限まで燃え上がれ、俺の厨二病(コスモ)! 奇跡を起こせ!!」
両手、両肩、両腰。計6機の25mm重機関砲+50mm擲弾発射機を構え叫ぶ。
「ペガサス流星拳ーーーーーーーーーーッ」
正統日本の兵器は基本的に旧時代の火薬ではなく電力で発射する。一発撃つ毎に出力と発射時間を調整し、本来の操作に加え反動を利用した微細な照準修正を行う事で高い発射速度を維持しながらも狙撃並の精度で連射が可能。ただ弾をブッ放すのとは次元が違う。
リミッターを解除した最大の性能を発揮出来る状態で、廃人になりかねない危険を抱えながら行う最大最強の攻撃。6機の25mm重機関砲と50mm擲弾発射機全てを合わせて一秒に平均100発で25mm弾と50mm擲弾をオルトロスに振舞う。
後方支援担当重歩兵から得た情報を基礎として攻撃範囲に存在するオルトロスを効率良く「始末」していく。25mm振動熱徹甲榴弾1200発全弾が寸分違わず急所を貫いた後、最大のダメージを与えられる最高のタイミングで破裂。
120発の50mm振動熱榴弾全部が殺せないまでも数体を確実に重傷あるいはダメージで戦闘力を低下させられる絶妙な範囲で爆裂し、強力な振動熱を伴った破片を周囲へばら撒く。
攻撃を与えて地面に横たわったオルトロスを生きている者も死んでいる者も等しく踏み潰しながら、後続の更に多くのオルトロスが迫ってくる。
25mm重機関砲と50mm擲弾発射機から触手状給弾管が離れる。25mm弾1200発、50mm擲弾120発。既に補給は完了、当方に迎撃の用意有り。倍の敵が来るなら倍の敵をブチ殺せばいいじゃない。パンが無ければケーキを食べるより簡単な事だ。
「倍返しだぁぁぁぁぁーーーーーッ」
シローの声真似をしながら究極奥義「ペガサス流星拳」を再度放つ。ハイマットフルバースト? それは一体なんだね。
今度は25mm重機関砲、50mm擲弾発射機だけでなく、頭部両側の迎撃針弾発射機から迎撃針弾を、5連装6.25mm迎撃機関銃2機計10門から6.25mm振動熱徹甲弾を全弾撃ち尽くす勢いで全力射撃。
主力である25mm重機関砲の砲身から発生した熱の一部は複合自然発電によって電力に変換され、残りは砲全体に平均的に広がり効率良く放熱される。
正統日本の兵器は過酷な環境下での長期運用を前提にしている。特に25mm重機関砲は大威力、長射程、高い発射速度と弾数から間接防御兵器としても頻繁に使用される。「この程度」の短時間での連続射撃は想定の範囲内。伊達や酔狂でデカくて重い箱型をしているのではない。
オルトロス一型と二型に25mm弾、三型と四型に50mm擲弾を直撃させ、二型の放つ針弾と四型の生体ロケット弾を迎撃針弾と6.25mm弾、場合によっては25mm弾も使い、確実に撃墜する。
大多数のオルトロスを葬り、射撃、砲撃を粉砕し、全ての弾薬を撃ち尽くした後、解除していたリミッターが自動的に掛かる。同時に数人の仲間が伸縮可変鋼線を俺の重装甲強化服に絡めて全力で牽引して塹壕へ引き込んだ。その直後、俺の立っていた場所を二型の針弾が空を貫く。

「ぐ……がぁあああぁああッ!?」
リミッターを解除した反動がやって来る。もう、まともに立ってもいられなかった。狭い塹壕の中で倒れたまま、両手の25mm重機関砲を手放して自分の意思とは無関係に暴れ回る。
<隊長!>
<大丈夫か、隊長!?>
腕を押さえてうずくまる俺に、オルトロスへ攻撃中の近接部隊を除く数人が駆け寄ってくる。
<衛生兵、来てくれ!>
<治せるか? 肉体ならどうにでもなるが、脳だぞ>
<何もしないよりはマシだ、早くしろ!>
治療用大型バックパックを背負った後方支援部隊の一人が急行してくる。ちとやり過ぎたか。
「っは・・・し、静まれ・・・俺の腕よ・・・怒りを静めろ!!」
<……隊長?>
「っふ・・・・邪気眼(自分で作った設定で俺の持ってる第三の目)を持たぬ物にはわからんだろう・・・」
<……冗談を言える余裕があるなら心配は要らんな>
ようやく察したようだ。
リミッター解除の反動は地獄の苦しみで今も続いているが、それだけだ。廃人になるには程遠い。
だが、ヤバい状況である事に変わりは無い。もう自分の分の弾薬は全て使い果たしてしまった。現在攻撃中の近接部隊の弾薬が尽きるまで時間は掛からないだろう。そうなれば、後は残り少ない電力で振動熱斬刀を手に戦うしかない。
いらなくなった武器を全て取り外し、大腿部外側に取り付けられている二つの鞘から60cm振動熱斬刀二本を取り出し、それぞれ両手に持つ。
絶望的だ。俺達の生存、オルトロスの殲滅はどうあっても望めない。一筋の光明も見えないというのに、自然と笑ってしまった。自棄になったのでもなければ自虐でもない。ただただ純粋に楽しかった。心が躍る。
生と死の狭間を行き来する。そうか、これが実戦か。そうだ、これが実戦だ。楽しいじゃあないか、最高に。
俺達は死に恐怖するような玉無しの糞餓鬼じゃない。軍人だ、正統日本陸軍重歩兵だ。「それ」を心底自覚し実感出来る。これ程の幸福は無い。
「面白くなってきたな」
<言われるまでもないさ、隊長。そんな当たり前の事は>
そろそろ舞台も終盤だ。精一杯楽しめるだけ楽しもうじゃないか、兄弟。命知らずの糞野郎共、命要らずの馬鹿野郎共。
<所で、「あれ」はどうするんだ、隊長>
「あれ」とは牽引式輸送車に積んでいる一番大切な荷物の事だ。俺達は死んでも構わんが、確かに「あれ」だけは唯一の心残りだな。
「地中深く埋めとけばオルトロスも手は出せんだろう、多分。穴は掘ってあるんだろう?」
<正確には現在進行形で掘ってる最中だがな。それより隊長、自分も戦わせろと言ってるぞ。座して死を待つのは嫌なんだと。どうするんだ>
「……気持ちは分からんでもないが、そんな危険な事はさせられん。却下」
<だな。俺も同意見だ>
「出来るなら「あれ」だけは兵庫に戻してあげたいんだがな」
<それは言わない約束だ、隊長。中隊全員、同じ想いだ>
「そうだな」
俺達はどうなろうが構わんが、「あれ」に危害が及ぶのは、な。どうにかしてやりたいが、どうにもならん。それだけが悔しく腹立たしい。
まぁ、いい。「あれ」の為にも、俺達の為にも、結果がどうなろうが全力で戦い抜くだけだ。終わりは近い。

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