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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

R,B&G第3話

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sousakurobo

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だれでも歓迎! 編集
『ここに隠れていれば、ひとまずは安心か』
 沙漠の大岩が落とす黒々とした陰から溜め息が漏れる。精悍な気性を察せられる青年の声には、今は疲労の色
が濃い。
 そこに駐車しているのは、青色の超高性能乗用車。スタイリッシュな流線形には、地上にありながら戦闘機の
面影がある。高層ビルの立ち並ぶ大都会ならばともかく、赤褐色の砂塵舞う辺境にはどう考えてもミスマッチだ。
 さらに妙なことに、スーパーカーの運転席に人影はなかった。助手席にも後部シートにも、周囲にも。
 それもそのはず。何故ならその正体は型式HWS‐03、スプリガンの名を与えられた可変型“HW”。魔族
を駆逐するための人型の兵器、あるいは人類の叡智か。
 今は車輌の形態をしているが、本性は精神を宿すロボットなのだ。官憲の手を煩わせないために人間を乗せる
ことがあっても、運転手を必要とせずに自由意志をもって単独行動することが認められている。
(まさか善良なる一般市民から攻撃を受けるとは、私も予想だにしなかった。驚かせたこちらにも非はあるだろ
うが……)
 スプリガンはもう一度、苦々しい記録を再生する。
 数時間前。海亀に似た甲属魔族と遭遇しこれを撃破したものの、旅の同行者である天農博士と離れ離れになっ
てしまった。
 魔族の広域ジャミングによって通信機も用を為さず、止むなく近隣の集落にそれらしい男を見掛けなかったか
聞き込みを行ったのだが、運転手のいない不審車の話に耳を傾ける奇特な人はそうはいまいと考え、人型に変形
してみせた。
 後悔した。
 今思えば、別にスーパーカーフォルムのままでも、物珍しさから興味を持つ人はいたに違いないのだ。「人間
と円滑なコミュニケーションをとるなら、より人間に近い形態のほうがよいのではないか」などという御託を一
理あると採用したのが運の尽き。
 半狂乱になった村娘の悲鳴を聞いて飛び出してきた屈強な男達十数人に追い掛け回された揚句、こうして村外
れの岩場に身を潜める羽目になったのだった。
 彼らの手にしていた石つぶてだの農具だの猟銃だのが、対魔族兵器に限れば恐らく世界最強のスプリガンを傷
つけられるわけはないのだが、あの尋常ならざる恐慌と敵意を目の当たりにすれば退散するしかない。
『どうなっているのだ、この村は……』
 欧州の狂博士ルートヴィヒ・ヴァン・ヴォルゼウグの遺産を基に、延加拳の天農が完成させた超級人工知能が、
提出された幾つかの予測を検討する。……どれもあの過剰とも思える反応の説明としては弱い。ひとり会議は村
社会の閉鎖性などという的外れなところにまで及び、軌道修正を余儀なくされた。
「やあ」
 孤立無援のスプリガンに、気さくに声を掛ける青年がいた。
 見覚えのある顔だった。先の騒動で、いち早く娘を庇った男。
 半端に伸びた頭髪が、砂を吸った荒野の風に震える。赤シャツの上から羽織ったジャンパーは、乾いた土の色
だった。腰に提げるのは使いこまれた水筒。
 無精髭の浮いた口許を緩ませる人懐こい笑みは、一見して好青年然としているが、どうにも頼りなさげな印象
も拭えない。
(さっきとは雰囲気がまるで別人だ。この男はいったい……)
 スプリガンと娘の間に割り込んだ、只者とも思えぬ眼光の鋭さと身のこなしは記憶に新しい。スプリガンは彼
の動きに、師である天農にも近いものを感じたのだ。
『あなたは確か、村の……』
「ショウイチ・マーチマンだ。俺もこの村には流れ着いたばかりだけどね」
『車輌形態で失礼。私の名はスプリガン。心を持った、ロボットだ』
 HWの知名度は、世界的にはさほど高くない。まだしも分かり易い説明だろうとスプリガンは言葉を選ぶ。
(やはり“タウ”と似たような自動人形か。珍しいな)
 どこをほっつき歩いているとも知れぬ相棒“タウエルン”を脳裏に浮かべながら、ショウイチ・マーチマンは
しげしげとスプリガンを眺めた。同じく車輌への変形機構と人格を有する自動人形、共通点は多いといえなくも
ない。ただし、全く異質な機体であろうとも分析する。

「ちょっと気になってさ、追い掛けてきた。それで、スプリガン。君はどうしてあの村に?」
 村民に拒絶される彼の姿に、自分達の境遇を重ねて同情したことも否定できない。事情を聴いて、できれば力
を貸してやりたかった。
『私は、はぐれてしまった旅の連れを探しているだけだ』
 スプリガンは心なしか、ばつの悪そうな口調で答えた。手ひどい歓迎を受けたことが未だに尾を引いているも
のらしい。
『奇妙な遮光器で目許を覆った白衣の男で、天農と名乗っているはずだ。見覚えはないだろうか』
「ない、な。そんな風変わりなよそ者が現れたら、間違いなく村で噂になってるよ」
『もっともだ』
 ショウイチの即答に、スプリガンは少しおかしげに声を発した。
「俺も探している仲間が待っているんだが、緑色のトラクターを見なかったか?」
「緑のトラクター。いいや」
 記録には該当なし。村落に辿り着くまでの道のりを彩っていたのは、変化に乏しい赤と青ばかりだ。
 奇しくも天農とタウエルン、二人の探し人もまた、そこからそう遠くない地点で巡り会っていたのだが、それ
はまた別の物語である。
『もうひとつ、尋ねてもよいだろうか』
 ひと呼吸を置いて、スプリガンは村人達の反応について疑問をぶつけた。何故、変形しただけで蜂の巣をつつ
いたような大騒ぎになったのか。
「ああ、さっきは災難だったな。だけど覚えておいたほうがいい。このあたりの人は、みんな自動人形を怖がる
んだ。実際に、所有者には悪人が多いしね」
 そう説いて、ショウイチはどこか自嘲するように目を伏せる。
『そうか。……彼らには悪いことをした』
「ん?」
 殊勝に呟くスプリガンに、ショウイチは首を捻った。
「天農という人は、教えてくれなかったのか? 無闇に変形するなとか」
『師匠はいい加減だからな……』
 心を有するほどの自動人形にしては、不可解なほどに杜撰な管理だ。この無法の荒野では無用に人々を脅かす
ことになるし、最悪の場合トラブルにも巻き込まれるだろう。平和惚けか、でなければわざと危険を呼び寄せよ
うとでもしない限りは、まずやらない愚行だった。
 機会があれば天農という人物に釘を刺しておいたほうがいいかもしれないなどと考えながら、ショウイチは踵
を返した。
「さて。そろそろ休憩が終わりそうだ。俺は一旦村に戻るよ。また何か分かったら伝えに来るから」
 振り返った顔の微笑みは、やけに頼もしげだった。
『……感謝する、ショウイチ』
 スプリガンは一にも二にもなく、青年の申し出を受けることにした。鮮烈な青のスーパーカーはとかく目立つ。
既に自動人形であるという噂は広まっているだろうし、単独での情報収集は絶望的かもしれない。
『私も周辺でトラクターを探してみよう』
「助かる。トラクターは君と同じく心のある自動人形で、名前はタウエルンだ」
 謎の青年ショウイチ・マーチマンと対魔族兵器スプリガンは、ここに一度、袂を分かった。しかし、彼らの再
会は、思いのほか早く訪れることになる。
 寂れた村落に魔手を伸ばす、恐るべき悪の影によって――!!



 つづく

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