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俺様の下僕こと幼なじみが二番煎じすぎる

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筑紫澪には、あの『鳩山ユキヲ』なる男の演説がさっぱり理解できなかった。
何言ってるんだ、あの宇宙人。
あまりにも混乱することが多すぎる。
頭が痛い。途方にくれる。考えがまとまらない。

――とは言っても、熱弁の内容があまりにも常軌を逸していたせいではない。



「『そうりだいじん』って、何だっけ?」



彼女の頭に、一般常識の蓄えが少ないせいなのだった。

十歳そこそこの少女である。
ボリュームのある金髪を頭の後ろでパイナップルヘアーの形にくくり、
腋の大きく開いた黒いタイトなワンピースとかかとの高いブーツで着飾ったいでたちは、悪いお姉さんの影響を受けた不良小学生かと思われるだろう。

「つまり……だから……なんで『ちきゅうおんだんか』と超能力が関係あるの?
ほとんど意味分かんないけど、殺し合えって言われたのよね」

はて、殺し合いとな。
そんな疑問を表情に浮かべて、澪は固まった。

小首をかしげて、人差し指を口もとにあてて考え込むポーズのまま、固まった。
そのまま固まっていた。
ずいぶんと固まっていた。

時間が経過して長考が途切れるや否や、顔を真っ青にして両頬に手をあて、叫んだ。

「……それって、知り合いがいても殺せってことじゃないの!!」

この結論に至るまでに費やした時間は、約30分である。

判断力が無いわけではないのだが、いかんせん頭が残念である。
筑紫澪は、そういう子だった。


××××××


憂鬱な溜息が口からこぼれる。
状況を理解してもなお、澪はその場に留まってた。
適当な木の枝にちょこんと腰かけて、足をぶらぶらとさせていた。
地面が斜めになっているから、どっかの山の中腹にいることは分かるのだが、地図で確認しようという気にはなれなかった。
その胸中の大半を占めるのは、心細さだった。

殺し殺される恐怖に怯えてのことではない。
もちろん恐怖はあったけれど、それが動けない理由ではない。

確かに最初のパフォーマンスで披露された巨漢の首無し死体は悪趣味なものだったし、荒事経験有りとはいえ幼い少女には刺激の強すぎるものだった。
けれど、あの宇宙人のことはそこまで怖くない。
筑紫澪は、超能力者(エスパー)で、“P.A.N.D.R.A(パンドラ)”のメンバーだから。
超能力者とは、強いものなのだ。
少なくとも、澪は世界で超能力者以上に強い生き物を見たことがない。
何より、最も頼りにしている世界最強の超能力者(エスパー)を、あのリングサイドで見つけることができた。
特徴的な銀色の髪と、外見年齢に合わせた黒い学生服。
パンドラのリーダー、兵部京介少佐その人だった。
少佐はたくさんの万能じみた能力を持っている。少佐なら、きっと何とかしてくれる。
きっと今この時だって、鳩山をぶっ殺す計画を整えながら、澪たちを探してくれているはず――

――本当にそうだろうか?

ここで疑念が、澪に心細さをもたらす。

少佐には、執心している少女がいる。
特務機関『B.A.B.E.L』の超能力者、明石薫11歳。澪と同い年の少女。
何度か喧嘩したこともあるけれど、強さも頭の良さも澪よりそう優れているとは思えなかった。
だというのに、少佐はいつだって薫のことを気にかけている。
澪が任務で危ない目にあっても見に来ないのに、立場上は敵であるはずの薫には忙しいのも押して頻繁に会いに行くぐらい、薫を甘やかしている。
それは大切な『予言』で薫がいずれパンドラの“女王(クイーン)”になると決まっているかららしいのだが、ロリコンとしか思えないフシもある。

もし、薫もここに来ていたら。
いや、来ていなくても、少佐が『薫も巻き込まれているかもしれない』と考えたとしたら。
もし、澪の命と、薫の命が等しく危険にさらされたら、少佐はどちらを選ぶ?

ここに呼ばれる前、少佐から『何があっても女王(クイーン)“だけ”は生かして帰せ』と命令されたばかりだった。
そんなの決まっている。
澪は死んでもいいけれど、薫が死ぬのはダメなのだ。

心細かった。
戦うことも、悪事をすることも怖くない。
しかし甘えたい盛りの少女にとって、慕っている人が自分を黙殺して他の子を助けに向かう想像より恐ろしいことがあるだろうか。

「薫がここにいなきゃいいのに。いないって分かったらいいのに。
その方が薫だって危ない目に遭わずに済むんだし……べ、別に心配してるわけじゃなくてね!」

ずーんと沈んだ気持ちは、しかし時間が経過すれば鬱屈に転化されかかっていた。
そもそも。なんであたしは、いるかどうかも分からないヤツのせいで落ちこまなきゃいけないんだ。
薫なんて、薫なんて。頭が悪くてバカぢから(※念動力)で、バカのくせに『バカにバカって言われたくない!』とか言ったりして。
どうして少佐は、あんなヤツのことばっかり。

むかむかとした気持ちは口をついて出そうになり――しかし、声にならなかった。

なぜなら、澪を妨害するように、別の大きな『声』が聞こえてきたのだから。

それも、高々と響き渡る、『謎のコール』が。


××××××


「ウス……(訳:殺し合いには、乗りません……)」

氷帝学園テニス部2年樺地崇弘は、心優しい少年である。
テニスの試合ならば危険な打球を撃つこともあるし、相手がパワー勝負を挑んできた時は真っ向からの流血試合になることはある。
おまけに心ない他校生から『フランケン』呼ばわりされるほど厳つい体格をしているけれど、だからといって決して喧嘩を好んだりはしない。

「ウス(訳:まずは、跡部さんを探します)」

そして樺地が想うのは、幼き頃からの付き合いであり、尊敬する主である跡部景吾のこと。
樺地とてあの多人数の中でやすやすと近づくことはできなかったが、それでも『自らに指示をくれる者がここにいる』という懐かしい感覚は肌で察知することができた。
樺地にとって跡部景吾の指示に従うと言うことは、もはや呼吸も同然に行われている所作である。
この殺し合いの場で、自分にできることは跡部の守護をおいて他にない。
それだけでなく、鳩山は好敵手や仲間たちが呼ばれている可能性をも示唆していた。
跡部景吾の他にも、仁王雅治や河村隆を始めとして、U-17合宿によってはぐくまれた繋がりはある。
彼らがいるのならば、早急に合流したいところだった。

「ウス――(訳:跡部さんと合流する為には――)」

跡部はどこにいるのだろう。何をしているのだろう。樺地はそのことを考える。
跡部景吾には人を率いるカリスマがある。努力に裏打ちされた精神力と様々な技能がある。
だから樺地は、自らの王ならばこの殺し合いにだって反逆できるのではないかとさえ思っていた。
例えばその『跡部王国(キングダム)』でもって、『能力の削減』とやらを図るシステムの内部構造を透視することに成功しているかもしれない。
例えばこの会場でも『氷帝コール』を響かせて、新たな王国民を集めているかもしれない。
否、あの王(キング)なら、自らの存在を主催者に誇示する為にも開幕早々の氷帝コールを行っている姿がありありと想像できる。

「氷帝……(訳:氷帝コール……)」

そこまで考えて、樺地は妙案を閃いた。
純粋過ぎて策略ごととは無縁である樺地には珍しく、よくできた考えだった。
跡部景吾の臣下として、殺し合いに反逆する意思を示す。
跡部景吾や仲間たちと、もっとも迅速に合流をはかる。
この二つを同時に行うことのできる、素晴らしい方法である。
樺地には跡部のように人を叫ばせるカリスマはない。
しかし鳩山から支給された道具の中には『拡声器』があった。
適度に声の響く場所を求めて、樺地は山の斜面を登り始めた。


××××××


「コレミツ……?」

まずその男を見て連想したのは、自らの後見人であるヤマダ・コレミツのことだった。
身長190cmはあろうかという巨漢と、無口でのっぺりとした印象が似ていたのだ。
しかし直後に、それよりももっと鮮烈な印象がその既視感を上書きする。

『氷帝! 氷帝!』

男は、叫んでいたのだ。野太い、大きな和太鼓を鳴らすような声で。
澪が座っていた場所から少し山をくだったあたりの、ちょっとだけ木々がまばらで景色の開けた斜面で。

『氷帝! 氷帝!』

一心不乱に叫んでいた。
『ヒョウテイ』という謎の言葉を叫んでいた。
意味不明だった。奇行だった。不審人物だった。関わらない方がいいかと思った。

『氷帝! 氷帝!』

しかし男は、真剣そのものだった。
動物のカバか象に似た小さな小さな両の瞳が、必死そうに目つきを鋭くしていた。
腹の底から最大声量を吐き出しているらしく、早くも首筋には汗がにじんでいた。
まるで、『ヒョウテイ』と叫ぶことが、男にとって思い入れのある、大事な行為であるかのように。
『ヒョウテイ』とさえ叫んでいれば、自分は大丈夫なのだと鼓舞するかのように。

『氷帝! 氷帝!』

聞くにつれて毒気の抜けて行くような、気持ちのいい声の張り上げっぷりだった。
澪はさっきまで、色々なことを考えてごちゃごちゃのウジウジだったのに。
何の悩みもなさそうに、ただ懸命に声を張り上げる男が羨ましかった。
色々と考えていたことが、馬鹿みたいだった。

『勝つのは氷帝……です』

締めの言葉と共にコールが終わった時、澪はつい身をひそめていた場所から飛び出していた。
足はトコトコと自然に動き、男の傍へと歩み寄っていた。

「ねぇ。その拡声器を、貸しなさい」
「ウス……?」

いきなり現れて命令してきた少女に驚いたが、樺地は温厚な性格である。
そのまま拡声器を渡してしまった。
別に、真似をしてコールしたくなったわけではない。
ただ、叫ぶという行為に惹かれたのだ。
元より考えて悩んで、色々と溜まっていたのである。
そこはFー5だった。拡声器を口もとにあて景色と向かい合えば、きれいな小川とか池とかが見えた。
清々しくもあり、妙に憎らしくもあった。
『あー、あー』とマイクテストをまねて発声練習。
そして、鬱憤をひと息で吐き出した。


『薫の、バカァァ―――――z_____ッ!!
兵部少佐のっ、ロリコ―――z____ンッ!!』


木々もざわざわと震えるほどの、女子力も加わった恋する少女の絶叫だった。


「ふう、すっきりしたわ」
「ウス……」

心なしか、ややおののいたようにも見える男に拡声器を返却する。
恐怖が完全に消えたわけではない。
それでも、いくらか気持ちは楽になっていた。


××××××


筑紫澪は、常識に疎い少女だったから思い至らなかった。
樺地崇弘は、純粋無垢な少年であるがゆえに思い至らなかった。

誰が殺意を持って近づくとも知れない場所で、拡声器を使うことがどんな行為なのかを。



【F-5/山の中/一日目-朝】

【筑紫澪@絶対可憐チルドレン】
[参戦時期]:原作14巻ファントム・メナス編直前
[状態]:健康、不安
[装備]:なし
[道具]:基本支給品*1、不明支給品(1~3)
[スタンス]:不明
[思考]
基本:???
1:で、こいつどうしよう…。

【樺地崇弘@新テニスの王子様】
[参戦時期]:新テニスの王子様9巻、合宿退去直後
[状態]:健康
[装備]:拡声器@現実
[道具]:基本支給品*1、不明支給品(0~2)
[スタンス]:対主催
[思考]
基本:跡部を探し、仕える。
1:ウス……。
2:知り合いとの合流(跡部優先)




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