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C-7地区 フリー麻雀☆ごらくぶの大盛りカレーライス

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「(夢だと思ったんだがなぁ……)」

気がつくと、俺(井之頭五郎)は見覚えのない朝の街中に立っていた。
どうやらわけのわからないことに巻き込まれてしまったぞというのが率直な感想だ。
リングの上で宇宙人みたいなきぐるみと外人のプロレスラーがプロレスをしていて、いつの間にやら俺は殺しあいをすることになったらしい。
なんだそりゃ。

「(やっぱり夢だったんじゃないのか……?)」

とはいえ、背中のリュックがなによりの証拠だ。こんなものを背負うのはいつぶりだろう? 中学校の遠足くらいが最後だろうか。
いい年をしてこんなものを背負うのも気恥ずかしいが、片手にぶらさげていくというのも格好をつけてるみたいだ。

リュックの中には拳銃が入っていた。トカレフというロシアの拳銃だ。
日本にはよく流れていてヤクザなんかが持っているとは聞いていたが、じゃあこれもヤクザのしのぎかなにかなのだろうか。
それにしてはあまりにも馬鹿馬鹿しすぎる。今考えたことは忘れることにしよう。

「(それより腹が減った……)」

殺しあいなんてことはもうどうでもいい。俺は腹が減ってるんだ。大方これは売れないプロレス団体の興行かなんかだ。
別に律儀につきあう必要もない。ていのいいところで帰ってしまおう。仕事にも差し障る。
できれば明日の朝までには帰っていたい。ここがどこだか知らないが……いや、その前にまず腹ごしらえだ。
まだ朝ごはんを食べていない。それなのにもう知らない街を歩いて小一時間は経つ。いろんな意味で限界を迎えそうだった。

「(しかし――)」

食べる場所がない。ずっと歩いているがここらは住宅地のようでなかなか飯屋が見当たらない。
ようやく商店街を見つけたので入ってみたが、あるのはカメラ屋、眼鏡屋、歯医者、美容室とどうにも食べる店が見当たらない。
いや、あるにはあるが喫茶店や食堂なんかはどれもシャッターが下りて、今は営業していない旨が張り紙されている。
じゃあここいらに住んでいる人はどこでなにを食べているんだ? 歯医者よりも先に飯屋が潰れるなんてことがあるのだろうか。

「雀荘か」

商店街の端っこに『フリー麻雀ごらくぶ』という名前の雀荘が立っていた。俺はその前で足を止める。
なにも麻雀をしたいわけじゃない。俺は飯が食いたいだけなんだ。そしてこの雀荘の看板にある『お食事できます』の言葉に俺は注目した。

「うーん……」

背に腹は変えられない。お腹はもうぺこぺこだ。なので俺はこの雀荘『フリー麻雀☆ごらくぶ』に入ることにした。


 ■


「ふーん、思ってよりも綺麗だ」

雀荘というともっと煙草の煙が壁に染みてて薄汚いものをイメージしていたが、この雀荘はまるでオシャレなカフェといった趣だ。
これも今時だなと言うもんなんだろうか。いきなりこりらの意気込みをすかされた感はある。

「すいませーん」

声をかけてみる。

「すいませーん」

返事はない。ここまで歩いてくるうちに薄々とは思っていたが、どうやらこの街には人が誰もいないらしい。

「ますます夢じみてきたな」

とはいえこんなリアルな夢があるのか?
しかしじゃあ、こんな荒唐無稽なことを現実だと認識しなきゃいけないなんて、まるで現実は小説より奇なりだな。
さて夢か異常事態だっていうならこっちだって多少のことはセーフだ。腹が減ってる俺を誰が止められようか。

「なにがあるのかな……と」

雀卓の間を抜けて奥の厨房へと入る。
せまっこしいが清潔に使われているようだ。まさかここにきてなにもないだなんてのはよしてくれよ。
俺はコンロにのった寸胴鍋の蓋を開く。

「この鍋は……カレーか」

当たりだな。早速、火をかけて。

「とくればライスがいるぞ……どれどれ」

開いた炊飯器の中には白いご飯がこれでもかというくらいにあった。うん、これで少なくともカレーライスは成立する。
しかし、冷や飯だとそっけない。俺はごはんを大皿によそうと隣にあったレンジの中に入れた。カレーライスはカレーもライスも熱々派だ。

「さて、温めているうちに……」

他のおかずも用意しておきたい。朝からカレーライスを食おうというんだ。ここまでくればもう遠慮よりもその逆だろう。
色々と並んでいるが……、メンマにチャーシューに煮卵となるとこいつらはラーメンにのせる具材か。
こっちは、枝豆、ちーちく、冷奴にミョウガと酒のつまみだな。
遠慮することはない。どれも皿に盛ってしまおう。

「冷蔵庫の中は……、と」

驚いたことに冷蔵庫の中にはビール瓶とジョッキが並んでいた。
なるほど、こうやって冷やしておけばキンキンに冷えたビールを飲めるって算段か。
よく考えられているし、こんなものを見せられれば朝からビールの一杯もなんて気になるのもわかるが、けど俺は酒が飲めないんだよなぁ。
しかし、この冷えたジョッキを使わない手はない。ビール以外の飲み物はと…………おっ、サイダーがあるぞ。
カレーライスの時に飲むものでもないが、キンキンに冷えたジョッキで飲むところを想像してしまったらもう我慢できるはずもない。

「これも確保と」

その時、レンジがチンと音を立てた。


 ■


俺は雀荘の中でも一番奥で一番隅っこの卓に座った。
もしかすれば無銭飲食をしているという引け目が俺にこの席を選ばせたのかもしれない。
しかし、グリーンのマットの上に料理を並べてもよかったんだろうか? いや、今の俺はアウトローだ。気にすることはない。

「うーん……」

並べてはじめて気づいたが色彩が冴えないな。ほとんど茶色一色だ。辛うじて枝豆だけが緑色を主張している。
こんなことならサラダでもつければよかったかもしれない。でもまぁ今はそれどころではない。食べる。まずはカレーライスからだ。

「うん、うん……、うまい」

普通だ。普通にうまい。こういうところで食べるカレーはだいたいこんなものだ。むしろこういうものであるべきだ。
俺はカレーライスに過度の期待はしない。
辛さはほどほどで水が欲しくなるほどでもない。具はほとんどなくたまに小さな肉が言い訳程度に顔を出す。
ここでチャーシューが活きる。

「おお……」

カレーに個性がない分、チャーシューの旨みが引き立つ。
そしてこの厚切り肉の存在感。急に目の前のカレーライスがグレードアップしたかのような錯覚に陥る。いや錯覚じゃない。うまい。

「んぐんぐ………………ぷはぁ」

熱くなった口の中にキンキンに冷えたサイダーが心地よい。まるで真っ白な雪を頂く山の峰で思い切り息を吸い込んだが如しだ。
この組み合わせの妙は新しい発見だな。
そして冷え切った口の中にまたカレーを放り込むとじわぁと熱が凍った口内を溶かしていく。うん、カレーにはこんな食い方もあったんだな。
つけあわせの福神漬けもしょっぱすぎずうまい。

「(おお、これは……)」

なんとなしで皿に乗せた煮卵が格別の味だ。こんなに味の染みた煮卵は食べたことがない。
まるでただの卵ではなくひとつの料理であるような……、しかしこんな店でこんなものに出会えるとは驚きだぞ。
この煮卵を食べるためだけにここに通ってもいい。そう思わせるうまさがこの煮卵にはある。

「うーん……」

こんなことなら煮卵はもっともってくるべきだったか。まだまだ皿の上には料理がのっているがむしろ今となっては足手まといに見える。
俺は煮卵が食いたいんだ。お前らは帰れ。と言いたくなるが戻すのも行儀が悪い。
なに、煮卵は逃げたりはしない。こいつらを始末してからまたゆっくりおかわりすればいい。

「(なんならおやつがわりにいくつか持ち帰ってもいいな)」

そうして俺は残りのおかずを口に放り込んでいく。


 ■


「うわああぁぁあぁぁあぁぁあああああああああああ!」

突然の大声にスプーンを取り落としかけた。一体なんなんだ、人が食事中だっていうのに。
見ればどうやら子供が店の中に飛び込んできたみたいだ。制服を着ているから高校生……いや、あの小ささだと多分中学生か。
俺はもっと大人の女がいい。
さて、彼女も俺と同じリュックを背負っているところを見ると同じくこのイベントに巻き込まれたらしいぞ。

「………………」

中学生の女の子と同じリュックを背負っていると考えるととたんに自分が恥ずかしくなってきた。俺は一体なにをしているんだ。
うん、もう帰ろう。この飯を食ったら俺は帰る。こんな馬鹿馬鹿しいことにいい年をした大人がつきあうもんじゃない。

「おい、またんか。話をば聞かせい!」

今度は若者だ。赤いジャケットのロックシンガーみたいなのが入ってきた。

「ぎゃー! よるな! くるな! 変態! 馬鹿!」
「ええい、静まらんか! 俺(おい)の話を聞け。さもなくば取って――喰うぞッ!」

ううん、寸劇が始まったぞ。

「わ、私なんか食べてもおいしくないし……!」
「だったら俺の話を聞け。"ここ”はどこじゃ。"これ”はなんじゃ?」

どっちも同感だなぁ。

「し、知るわけないじゃないッ! 私だって意味わかんないわよちくしょー!」
「なんじゃ、俺と同じか……」

ロックシンガーががっかりとした顔をする。俺もがっかりだ。

「しかたなか。じゃあ得物を構えい。俺とお前(ぬし)で首の取り合いじゃ」
「はぁ~……?」

まったく意味がわからない。

「俺は帰りたい。
 あげなわけわからんもんの言うことに従うんは癪だが、ここはもう戦場言うんじゃしかたなか。全員の首ば召し上げて即刻帰るしかなかろうが。
 いずくんばあの妖怪みたいなのが嘘を言うておるんならそん時はあれも斬ってしまえばええ」

妙に時代がかった喋りだ。

「そいでだ。もうこうなったらお前が女子供じゃ言うことも関係なか。こともう始まった戦場じゃ誰もそげんこと鑑みてはくれん。
 だから死にとうなかったら獲物を構えませい。死するとて恥と悔いを残したくなくば構えませい」
「わけがわからないよぅ……」
「民草の子には酷かもしれんが、戦場では生きるも死するも己で選び取るもんじゃ。でなければ悔いを残すぞ。
 安心せい、お前が民草の子だというのに酌量して俺はお前の覚悟が決まるのを待ってやる。正々堂々の決闘でお前を送っちゃる」
「そ、それ……! 私が死ぬってもう決まってんじゃん!」

うーん、要約すると女の子とロックシンガーがこの殺しあいの中で決闘をするということか。
芝居にしても荒唐無稽でおもしろくないな。なにより妙に緊迫していて食事が進まないじゃないか。
それに煮卵が置かれている厨房は彼らの向こうだ。そろそろおかわりをと思ってたのにあんなところにおられては出るに出られない。

「あのー……」

声をかけようとして出てきた声が思いのほか細くて情けなくなる。なにを遠慮しているんだ俺は。先にここに入ったのは俺だぞ。
今度こそ強く声をかけてやる。と思ったらなんだいつの間にかにもうひとり増えているじゃないか。
半裸のマッチョマンが。

「お前は何者だ? “どこから入ってきた”?」

扉は開いていない。じゃあ一体どこから入ってきたんだろうか。ひょっとすると俺が店に入るよりも先にいたのかもしれない。
俺がうきうきとカレーを大盛りにしていたのも見られていたというわけか? だとすればとんだ失敗をしてしまったなぁ。

「貴様、現代の人間の闘士というわけか。その目は悪くない――が、命を無駄にする目だな」
「俺は名前を聞いたぞ」
「俺の名はワムウ
「よか。俺の名前は島津豊久」

ワムウ? どこの国の名前だろう。輸入雑貨の仕入れやなんかで外国に行くこともままあるがそんな名前は聞いたことがない。

「おい、お前も名乗れ。名はなんという」
「大室……櫻子……です」
「ほう。よか名前をもらっておるの」
「褒められてもうれしくないし!」
「しかし大室とはどこかで聞いたことがあるような気がするのう……」

大室といえば武田家の下で信濃の霞城を任せられた家の名前じゃないか。もっとも今じゃそう珍しくない苗字だが。

「まぁええ。じゃあ殺しあいじゃ。“わむう”とやら少し待っとけ。俺はまずこいつと決着をつけねばならん」
「フン」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私殺しあいなんかしたくないって言ってるじゃん! したいなら二人ですればいいじゃない!」
「俺はもうお前と決闘すると決めた。順番じゃ」
「私まだ死にたくないし!」
「俺も死にたくはなか」
「あーん、わけわかんないよう! なんでそこで笑うの!?」

なんだかさっきから堂々巡りだな。ひょっとして彼ら俺が何か言い出すまでずっと目の前でこれを繰り返すのか?
だったら早々に無関係だと言ってこの店を出たいが、しかしそうなるともうあの煮卵は食べられないぞ。……うーん、どうしたものか。

「……じゃあ、ルールは私が決めていい?」
「るーる?」
「決闘のルール!」
「ふん? ようわからんが構わん。そちらの覚悟が決まるのを待つと言ったのは俺じゃ。なんとでもせえばええ」
「じゃあ、これで勝負しよう。負けたほうが勝ったほうの言うこと聞くってルールで」
「………………ん?」

へぇ、麻雀で勝負か。そういえば麻雀をしなくなったのはいつ以来だろうな。やっぱりこういう一人身の商売だとそう機会はないものな。

「なんだこれは? 将棋かなんかか?」
「麻雀だけど知らない? 知らないんだったら――」
「いや、構わん」
「ええ!?」
「なんでもええと言うたんは俺じゃ。しかしほうか、なるほどのう……この駒に命を欠けるんか」
「ああ、やっぱり勝ったら私を殺すんだ……」

ああ、見ているうちにカレーが冷めてしまった。これはガーンだな。冷めたカレーを食べてるとなんか取り残されてるって気になるんだよなぁ。

「で、どうするんじゃこれ。やり方は」
「え? わかんない」
「はあああああああああああああああ!?」
「あいやいやいや……やり方は知ってるっていうか、知ってるけど詳しくはないっていうか、ゲームでしかやったことないっていうか……」
「ほんなら話にならんが」
「でも大丈夫。あの人が知ってるから」

うーん、この炭酸の抜けきったサイダーも今の俺の気分を表しているかのようだ。

「なんじゃ、いつからおったんじゃ」
「最初からいたよ?」
「そいで、なんであいつならやり方を知ってると言える?」
「だってサラリーマンだし。それにやり方知ってるからここにいるんでしょ?」
「ほう、それもそうじゃ」

ああ、なんだか冷たいカレーライスを食べ終わったらもうおかわりしようって気持ちは失せてしまった。
あれだけ魅惑的だった煮卵ももうどうでもいい感じだ。だからやっぱり食事はもっと静かで、自分の世界の中で食べないといけないんだなぁ。

「それと、あとね」
「なんじゃ?」
「麻雀って4人でするの」
「じゃあここに四人おるからちょうどええ。わむうとやら、お前もこれで殺しあいをせんか?」
「人間がこのワムウに盤上の遊戯で決闘を挑むか……ッ」
「豊久じゃ。それに将棋も戦場の様相を写し取ったもの。命を賭けるというのなら“何も変わりはせん”」
「…………フン。闘士としての挑戦であるならばこのワムウ、貴様との勝負にのることにしよう。だが今の言葉を忘れるなよ“トヨヒサ”ッ!」
「よかよか。じゃあ後一人じゃ」
「ねー、そこのカレー食べてるおじさーん」

そういえばポケットの中に煙草がない。まいったな。食後の後は一服するって決めているのに。この店の中に煙草の自販機はあっただろうか?
うーんと、あれなんだ。いつの間にあの3人は雀卓に座っていたんだ? それに3人ともこちらを向いて。

「いっしょに入って、麻雀のやり方教えて?」

えー……。なんなんだこの展開。俺はただ飯を喰いにこの店に入っただけなのに。

「まいったなぁ……」

思わず口に出したけど、これはほんとにまいったなぁ……。



どうやらとんでもないことに巻き込まれたらしいぞ。






【C-7/雀荘(フリー麻雀☆ごらくぶ)/一日目-朝】

【ワムウ@ジョジョの奇妙な冒険】
[参戦時期]:不明
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品x1、不明支給品(1~3)
[スタンス]:不明
[思考]
 基本:不明
 1:麻雀をする。

【島津豊久@ドリフターズ】
[参戦時期]:不明
[状態]:健康
[装備]:なし なんか刀
[道具]:基本支給品x1、不明支給品(1~3)
[スタンス]:不明
[思考]
 基本:元の世界に帰る。※元の世界がどこを指すかは不明。
 1:麻雀をする。

【大室櫻子@ゆるゆり】
[参戦時期]:不明
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品x1、不明支給品(1~3)
[スタンス]:不明
[思考]
 基本:帰りたい。
 1:麻雀をする。

【井之頭五郎@孤独のグルメ】
[参戦時期]:不明
[状態]:健康、満腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品x1、トカレフ(8/8)@現実、トカレフ弾x40発、不明支給品(0~2)
[スタンス]:不明
[思考]
 基本:帰りたい。
 1:まいったなぁ……。




俺様の下僕こと幼なじみが二番煎じすぎる 投下順 信長「これくれ ちょっと一揆衆滅ぼしてくる」
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GAME START 大室櫻子 孤独の勝利
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