運命という名の呪い

深夜の静寂をかき消すように野蛮性のある鈍い効果音は、冬木市の河川敷公園でサーヴァント二騎の戦闘を示すものだ。
片やアサシン・サロメ。
片やバーサーカー・イスカリオテのユダ
双方、共に互角。否、サロメがユダの動きを見切り、確実な一手を決めようと隙を伺う。
ユダも、己が技術の拳を振るい、悪女たるサロメを討ち滅ばさんとしていた。

サロメに関しては、ユダより前に交わした殺人鬼との戦闘も経て、着実に舞を武術に近しい技巧へと成長する。
英霊でありながらも、まだ技術を会得する。変貌し――進化しえる。
サロメの舞が、いくら隙がなくとも。ひょっとすれば武術に変換しえるとしても。
それを現実に実現させる。
思惑通りに、闘争の演武に進化するには宝具のサポートでも、練習相手と巡り合える幸運でもない。

結局、突き詰めればソレは『才能』だった。

サロメの才能の開花に成功した言葉は、一つの賭けに勝ったのだろう。
しかし……問題がない訳ではなかった。
目的である殺人鬼との戦闘じゃない。第三者――新手のサーヴァントからの介入。ユダの存在が予想外なのだ。
当然、他サーヴァントの介入を考慮せず、楽観視してはない。
実際にサロメは、ユダからの猛攻を凌げている。
連戦の効果で、更なる技の磨きが叶うチャンスだ。


戦闘が長引く欠点を除いては。


長期戦により一番に支障を来すのは、マスターの言葉である。
幾ら、サロメの技術が成長をし続けても。宝具・スキル・基礎的な実体化だけでの魔力消費だけでも、言葉には厳しい。
彼女自身、マスター適正があっても魔力が優れていない。魔術とは無縁。
それに加えてサロメ自身も魔力がさほど良くない。
キャスターや魔力の優れた逸話のある英霊と異なるから仕方ない話。


「………………………………」


言葉は念話で何も伝えない。
彼女もサロメより魔力の都合に関する情報を会得はしている。どことなく、フツフツと自身に蓄積していく感覚が
魔力消費の影響を受けたものなのだと。だが、状況が拮抗状態にある。
サロメがユダの隙をつけ、仕留められるかもしれない。
彼女には戦闘に集中し、確実に一騎。本来の目的と異なる相手だが、サーヴァントならば倒す。着実に。

ふと。言葉は顔を上げた。
ジャック・ザ・リッパーは?

周囲を見回しても、ユダに一蹴され。吹き飛ばされてから、彼女の姿は幻の如く溶けた。
ユダの存在に、仕切り直しを狙い。退散してしまったのだろうか。
とは言え。
言葉には修道服の切り裂き魔に、教会との関係性を見出している。
例え、見逃したとしても――――


一瞬。
言葉が戦闘から目を離した、刹那の間に事態は急変した。

爆音に似た衝撃音。言葉が咄嗟に様子を伺えば、先ほどサロメとユダが技と呪いを衝突し合った場所から。
砂煙が止めどなく立ちあがっていた。
ボッ、と。煙から細いサロメの肉体が吹き飛ばされてる。
言葉の視線は到底間に合わず、サロメの状態を確認する余裕はなく。
続け様に煙から飛び出したユダが、覇気の込められた声と共に竜すらも砕かんとするラッシュを繰り出した。


「グロオオオオオオオオオオオオオオオオリア!!!」



サロメの動きは打って変わって鈍い。
ユダから、一撃喰らい。瀕死に陥っているのではなく、単純に自身の肉体がコントロール出来なかったのだ。
何故?



ユダはサロメとの戦闘を埒が明かないと考え、突破口を探っていた。
そして……サロメが唯一。
ユダが咄嗟に仕掛けた奇襲攻撃で、飛来した瓦礫によってヴェールが落とされた光景が脳裏に蘇る。
成程。――ユダは、言葉が視線を逸らした際。
サロメに対し、奇襲攻撃以上の威力――渾身の威力の足蹴りを彼女へ振りかざす。


ユダの目論み通り。サロメは、ユダの攻撃に対応しようと肉体を揺らめく。
しかし、攻撃が届かない。
サロメはユダの足の長さを感覚で判断すると、舞で攻撃を受け流す必要はないと瞬時に理解する。
狙った動きか、故意による動きか。
流石のサロメも迅速な結論には至れなかった。それこそ『長年の勘』が必要である部分に当たるだろう。

サロメは、ユダが攻撃を空振りしたのだと。数歩下がる事で体勢を整え、流れを掴もうとした矢先。
空ぶった足蹴りにより、再び地面にクレーターが生じると同時に、風圧が発生。
無論、サロメは体を硬直させたが、ユダが目論んだ風圧に持ち上げられた地面の『破片』。
大小異なるものの内、手ごろな大きさの破片がサロメへ的中。

ほんの少し。
僅かな隙だったが、ユダには十分過ぎる。
破壊的な拳によってダメージに不満はあるものの、サロメの華奢な体は吹き飛んだ。
ジャック・ザ・リッパー同様。
思わぬ隙に、サロメが困惑しつつもラッシュに対応するべく、どうにか体勢を整えようとサロメは肉体を捻った。


「これは……水………?」


またもや予想外の光景。
どういう事か。サロメと、そしてユダも水面の上に体があった。
否。二人とも吹き飛んでいる最中だから、正確には水面に落ちる手前の状態だ。

戦闘に夢中でスッカリ忘れていたのだろう。ここが河川敷付近である事を。
いつの間に、ここまで戦闘場所が移動していた事にすら。


(……水の……水深は…………このままだと………)


サロメは宙で体勢を整える無謀な試みを捨て、あえて川への潜水へと方針を切り替えたのである。
深夜。墨に染められたかのような闇の広がる水面は、潜ればサロメの服も美貌も、瞬時に覆い隠す事だろう。
これも賭けだ。
なるべく潜らなければ、ユダのラッシュを受ける。

ドドドド―――水中にて爆発が巻き起こったかのような水しぶきが、幾つも立つ。
ユダは、サロメの呪いと自らの呪いが交差し合う。独特の感覚。
手合わせし続け、嫌なほど身で味わったソレが拳に伝わらなかった事から、サロメに攻撃が届いていないのに確信を得た。

攻撃が空ぶりに終えたところで、ユダの体も凍てつく水に落ちる。
水中からの奇襲を警戒するも。どうやらサロメは逃走を優先したと魔力を探り、ユダが追跡を試みる。
……しかし。

ユダは『視線』を感じた。
第三者に戦闘を目撃されている。サロメのマスター、あるいはどこかへ追いやった女性サーヴァント?
漆黒の水面より這いあがったユダは、警戒心を心がけていたが。
ハッと息を飲む。
――アレは何だ? 否、どうして自らの眼を疑うのか。
俄かに信じ難い光景にユダの強靭な肉体ですら、ワナワナと震えた。

ユダがアクションに移るより前に、ソレは遠ざかり、闇の彼方へ溶けて消えて行く。
つまり、ユダが視認したのは凶器を手にサロメを攻撃していた修道女。セイバーではない。
新手のサーヴァント。
敵対者たる存在。
……にも関わらず、である。ユダは狼狽している。


「……『天使』……?」


あの翼。遠目からでもハッキリと、正確に、闘争心の高ぶりで興奮状態だったとしても見間違えようのない!
恐怖するほど凛と輝いていた光の翼を。
ユダは記憶に焼きつく。天使だ。あの十二枚の翼!!
天使が――自分の行いを見守っていたと云うのか……!?
あの天使を召喚したマスターが『ここ』に居るというのか……!!?


「嗚呼……■■■よ………」


ユダがしばしの間、その場を動けず仕舞いだったのは説明するまでもなかった。






修道服のセイバー、ジャック・ザ・リッパーにとって重要なのは殺人による快楽。でない。
殺人衝動の解消だったら、女性じゃなくたって構わない。
ジャック自身の『性癖』に値する女性を惨たらしく、残虐に、穢す。一種の人間三大欲求に匹敵するルーチン。

趣味趣向に関する拘りは『どのようなものであれ』(例え殺人であったとしても)人それぞれだ。
創作活動を行うのに、必要な道具。常に取る行動。
もしくは、独特なタッチ。手癖。あえて不利益を付け加える等。

少なくとも、ジャックは殺害現場に第三者の眼は必要としなかった。
勿論。犯行を目撃されるから、が理由に含まれてる。推測する犯罪心理学者はごまんと居るだろうが。
性行為をじろじろ眺められるような、見せ物にする類も世界に存在するとしても。
ジャックは見られたくない性格だった。気が散って集中力が途切れる。

反面。
女性を殺した後は別にどうだって良いのである。
死体に芸術性を求めてはいない。他人に見せびらかせたい訳でもない。
むしろ。ジャックは、警察と関係者が自分の後始末をやってくれているものと考えていた。
彼女が求めているのは、好みの女性を殺害する行為『のみ』。


「……そろそろ終わらないかしら」


サーヴァントらしくない言葉を漏らすジャック。
それこそ、ユダがサロメを殺してしまえば宜しくはないのだが、かといってジャックはユダを殺したくは無い。
ユダの返り血を浴びようものなら、スグ教会に戻って風呂に直行する以前に。
『戦わない』選択肢を躊躇せず選ぶ。
何故なら――ジャックは聖杯を求めていないからだ。この一点が、聖杯戦争において重要思考なのだ。

彼女はただ殺戮を、好みの女性を殺害したいが為。
他の英霊やマスターとは違って、願望機を求めるほど何か困ったものは一つもない。
無理なら無理で妥協する。ジャックは存外サバサバした性格だった。
ユダとサロメが離れれば単独になる言葉を殺害できれば良いか。密かな殺意を巡らせていたジャックは顔を上げる。

遠くからサイレン音。
つまりパトカーなのだが、どうやらこちら側に接近しているように思える。
あっ、と。ジャックは察した。
恐らく、ユダのやらかした騒音で誰かが通報した事に。
言葉が機転を利かせて行った筈はない。他のマスターが行った訳でも。冬木市内に居る住人の誰かだ。
誰だって良い。

事実としてユダとサロメの戦闘被害は大胆なもので。
サーヴァントの犯行でなければ、爆弾でも仕掛けられたと勘違いするレベルの器物損害だ。
殺人鬼にも関わらず、ジャックは呆れ、踵を返した。


「ったく! 後先考えないで馬鹿やるからよ。これだから男ってイヤだわー……
 ま、こんな状況じゃ。おじゃんになってドッチも退くでしょ」


ツカツカと早足で、ベラベラと卑屈な表情を浮かべながら語るジャック。
しかし、彼女の前にパトカー特有の赤色の発光とは異なる。正常な光が現れる。
当然。
『他サーヴァントが出現する可能性』は否定出来ない、聖杯戦争の舞台下なのだが………
確かにジャックは清楚な修道服を着ていたものの。
中身は殺人鬼おろかレズビアンだ。正当な宗教には縁遠い思想人種にも関わらず。

どこからどう見ても、背にある美しき翼は人ならざる――そして『天使』たる象徴を掲げた美男子が登場したのである。
ロックコートとスラックスを纏う紳士たる雰囲気を漂わす彼の美貌を、果たして無視する人間は居るだろうか?

ジャックは無視した。
サロメの場合は、女性だったから。
この『天使』の場合は、男性だったから。
単純かつ決定的な差で区別している。天使の登場に「はあ?」と溜息混じりの困惑を漏らす。
一方の天使は、ジャックに何ら警戒をする愚か。不思議なほど落ち着いた姿勢で言う。


「貴方に一つ、尋ねます」


「………」


ジャックの心情は苛立っていた。今も尚、パトカーがこちらに向かっているのに。
サーヴァントなのだから、霊体化すれば問題ないにしろ。殺人鬼の身の上、どうしても警察には敏感な性分で。
派手にやらかす殺人でも証拠らしい証拠は、残さないほどの気配りをジャックは行っていた。
対して、天使は気にも留めず。


「その『服』はどこで手に入れた物ですか」


「……あ?」


「私の記憶が確かならば、冬木の教会にあったものです」

どうやら『ジャックが修道女ではない』事は察していたらしい。
故に、修道服を着ていたからこそ声をかけたのか。ジャックは少し気が楽になって、返事をしてやった。


「あたしの悪趣味なマスターが着ろってうるさいのよ! 女の子殺したら返り血浴びるし、服を消費しまくるからって。
 ホント、動きずらいし。修道服ほどつまんないセンスの塊はないわよ。
 はーあ! よくよく考えれば、さっき殺せなかったの服のせいだわ」


修道服は無論『戦闘する前提の代物ではない』。
スカートの丈等、動きにくさがある。本来激しい動きを必要とする身分の女性が、着るものではないから。
仕方ないで終わる問題だ。
思い返せば、確かに修道服でなければジャックの戦闘スタイルは格段に機敏だったろう。

対して天使は不可思議なほど微動だにしなかった。
ジャックの背徳塗れな人間性を把握しているのかも怪しい位に平静さを保つ。
顔色一つ変えない天使に、ジャックは言う。


「そうだわ。アナタ、強面神父知ってるんでしょ? アイツ、頭おかしいから説教垂れるなりやっても良いわよ」


「何故でしょう」


「察し悪いわねー! 天使でも、やっぱ男は男だわ」


顔面を代無しにするような呆れを浮かべるジャックに対し、首傾げる天使は答えた。


「いいえ。彼が貴方のマスターである事は理解しました。しかし、彼の不利益に成りえる情報を私に与えるのは理に反するのでは」


「天使サマに説教された方がいいのよ。アイツはさ。だってアタシの事を『天使』呼びすんのよ?」


天使の微笑に僅かな曇りがかかる。
ジャックの行為は、天使の指摘通り。彼女のマスターに不利益な情報だ。
だが、彼女が不満をぶちまける内容もまた真実である。
神父という立場上、あれやこれやと厳格な部分を口にし、されどイカレた歪んだ思想を併せ持つ。
兎に角面倒な性格のマスターが、少しばかり大人しくなってくれればいい。
嫌がらせ程度の感覚で、天使に打ち明けたのだ。


「厳ついツラ構えのクセして神サマになりたいとか、中学生か! ってーの。
 あーいう拗れてる男の願い叶えるのは駄目なの、アタシでも分かるわ」


「…………」

殺人鬼の癖してマトモな通りを語る。
否、殺人鬼だからこそ経験や勘まがいな感覚で掴んでいるのか。
「成程」と呟いた天使の様子に父性を彷彿させる神聖に、混沌が含まれた情が含まれた。
ただしそれは決して、血に穢れた殺人鬼に向けられた個人的な類ではなかった。
声色の印象をかき消すよう。天使は微笑を浮かべた。


「然るべき情報を私に与えた礼として、貴方を見逃しましょう」


「は―――」


天使は「すぐにでも殺してやれる」と脅迫しているかのような、回りくどい殺気を忍ばせていた。
眉を潜めるジャックだったが、彼女が言語の意図を汲まないほど無能じゃない。
逆に。
殺人鬼を見逃すなど、コイツこそ天使にしちゃ堕ちたものだ。と嘲笑を内心吹っ掛けていた。
だから彼女は、腹立たしさも。苛立ちもなく。
不敵に天使を笑いかけて「あっそ」と素っ気ない態度で天使の脇を通り抜けようとする。
天使は去り際に「ですが」と一言加えた。


「貴方の行いをしかと『監視』します。貴方が仮にその手を血に染めるのならば、この限りではありません」


「……え? なに? キモイ」


監視ってなんだよ。
素でドン引きするジャックの様子に、天使に対する優越感の欠片は一つもなかった。
奇天烈なものを目撃し、無関係を装うかの如く。
天使を翼の先端からつま先までジロジロと幾度も眺めながら、ジャックは渋々とその場を後にした。






天使――アザゼルが主とする事は、己のマスターであるクラリスの護衛。彼女を元あるべき世界へ帰還させる事。
聖杯戦争の勢力図が明確でない現状、まず行うべきは他主従の捕捉。
何も無暗に接触する必要は皆無なのである。アザゼルに関しては。
通常、交渉や戦闘が不可欠な状況下とさせる戦況の序盤。
方針として、聖杯獲得を主に置かないと――それを基本にするとクラリスに誓ったアザゼルだからこそ。
まずは、彼女が拠点に置く自宅周辺に近い位置で、戦闘が行われている場所へ向かった。
警戒を巻いていたからこそ、即座に反応する。

しかし、アザゼルはただ戦闘を行っていたサロメとユダ。マスターの言葉を視認しただけで終える魂胆でいた。
彼の宝具『天より俯瞰せし人の業』。
監視を本質とした対人宝具は、まさに監視の一点では脅威。
僅かの間だが、就寝中のクラリスから離れ『られた』のも宝具により現在彼女を監視『し続けている』からこそ。

そして――……
アザゼルは幸運にも更に一騎のサーヴァントを捕捉した。
噂に聞く、連続殺人鬼のジャック・ザ・リッパー。
彼女の恰好が、クラリスと共に訪れた教会にあった修道服のソレだったのを、アザゼルは注目し、あえて接触したのである。
きっと。
クラリスが気休めで教会に足を運び、職務の手伝いをしなければ気付かなかっただろう。

堕天使の称号を得たアザゼルですら、彼のジャックは酷く珍しい部類の『人間』と感じられた。
彼女は人殺しだが、鬼でも獣でも、悪魔ですらない。
精神と性癖は大分歪んで特殊だったが、それでも『人間』の枠組みからはみ出さずにいる者。
ジャック・ザ・リッパーは『あらゆる側面』『あらゆる可能性』のある英霊。
中でも『セイバー』のジャック・ザ・リッパーは『正当かつ全うな猟奇殺人鬼』としての側面である。

彼女の話をしかと信用するかは、普通の人間は宜しくないと判断する。
一方で、アザゼルは悪い意味で彼女を信用した。

ジャックは本心から、マスターがどうかしている人間だと陰口を叩き。
修道服なんて悪趣味だしつまらないと一蹴する。
堕天使や悪魔が知恵を授けずとも、自ら化粧やお洒落に勤しみそうな女性だとアザゼルは理解した。


彼女がマスターだと主張する神父……幸か不幸か。アザゼルは既に彼を視認している。
もし、仮にジャックの情報通りの人間であれば当然、無視してはおけない。
神父に聖杯を得る意志があるか否かの前に、神父の深層心理が重要だ。
宇宙の果てまで『監視』出来たとしても『心』は見通せないのだから――……






サイレン音を聞き流し、言葉は早足で河川敷より距離を取る様に移動し続けていた。
彼女一人だけに見えるが、傍らには霊体化しているサロメが実在している。
念話でサロメは、壊れたオルゴールみたいに途切れ途切れに話す。


『ああ……成果も………肝心の殺人鬼ですら……見逃してしまいました………』


声色だけでもサロメの申し訳なさがヒシヒシと伝わる。
対して、言葉は酷く冷静で。淀んだ、死んだ瞳に光を宿すこと無く、淡々と答えた。


『大丈夫ですよ。あの乱入者は想定外でしたし、彼から無事逃れられた事を考慮すれば十分な結果だと思います』


言葉としては、あれからユダの追跡も。ましてやジャックからの追跡すらも、途絶えている事に違和感を覚えるものの。
自身の魔力やサロメのダメージ。一般市民からの通報により駆けつけた警察など。
一刻も早く現場から立ち去るのを優先しなければならなかった。
疑問は、二の次に回す他ない。

けれども。
言葉の目論み通り、サロメにそれ相応の戦闘経験を積ませられた結果は、最良である。
十分な休息を取ってから、ジャックに関係があるかもしれない教会へ足運ぶのは悪くない。


『サロメさん。あのサーヴァントに記憶はないのでしょうか?』


ふと、改めて言葉は問いかける。
どうやら。奇襲を仕掛け、戦闘に割り込んだ彼のサーヴァントには決定的な『私怨』が明確だった。
様子を鑑みるに、本来。戦闘目的で現れた訳でもなさそうな。
そもそもユダはマスターを引きつれていない事が、言葉には少し気がかりだった。

サロメは「いいえ」と答えながらも、こう返答する。


『彼の体技……私の記憶に………しかと刻まれている、あの方の「舞」でした………間違える事など、出来るでしょうか……』


サロメが理解したのは、ユダの体術こそヨカナーンの舞。
牢獄でヨカナーンが怠らなかった演武。彼と出会った場所。そこで恋した彼女が、忘れるはずもない。
ヨカナーンの動作。彼の表情。切り取られた絵画の如く、サロメの中では鮮明な思い出(記憶)だった。


【C-6/河川敷公園1日目 午前1時】

桂言葉@School Days(アニメ版)】
[状態]魔力消費(中)
[令呪]残り3画
[虚影の塵]有(一つ)
[星座のカード]有
[装備]
[道具]
[所持金]不明。境遇が元いた世界と同じなら、結構なお金持ちなので、活動資金を得られるかもしれない。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得。
1.サロメに実戦経験を積ませたい。
2.休息を取ってから、教会を探りに向かう。
[備考]
※討伐例は未確認です
※セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しました。真名をジャック・ザ・リッパーと推測しています
※バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました。
※セイバー(ジャック・ザ・リッパー)の格好から、マスターが教会にいるのでは?と考えています


【アサシン(サロメ)@新約聖書及びオスカー・ワイルドの戯曲】
[状態]霊体化、ダメージ(中)、魔力消費(小)
[装備]七つのヴェール
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1.実戦経験を積む。
[備考]
※顔を覆うヴェールを外しています。
※セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しました。
※バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました。



【バーサーカー(イスカリオテのユダ)@新約聖書&関連書籍】
[状態]ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]
[道具]
[所持金]マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の破壊
0.■■■よ………
1.マスターへの栄養(人間)確保
2.サロメの殺害
[備考]
※サロメの真名を知っています。
※サロメのマスター(桂言葉)の姿を確認しました。
※一応、セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しましたが、戦闘中僅かな視認だった為、曖昧です。
※遠目でアーチャー(アザゼル)の姿……正確には『翼』を確認しました。
 一瞬の事だったので本物の天使と勘違いしております。



【セイバー(ジャック・ザ・リッパー)@史実(19世紀 ロンドン)】
[状態]ダメージ(中)、魔力消費(小)
[装備]修道服
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:好みの女性を汚(バラ)し、穢(バラ)し、陵辱(バラ)し─────。
1.幻想種(ヤマトナデシコ)の殺害
2.やっぱり服を着替える
3.アイツ(アザゼル)新手のストーカー????
[備考]
※現在、桂言葉にターゲットを絞っています。
※バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました。
※アサシン(サロメ)を確認しました。
※アーチャー(アザゼル)を確認しました。印象のせいもあり彼に対し若干、引き気味です。



【アーチャー(アザゼル)@新約聖書&関連書籍】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:クラリスの護衛
1.グレイの思考を見極める。
[備考]
※セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しました。また、彼女のマスターがグレイであることも把握しました。
※バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました。
※桂言葉&サロメの主従を確認しました。

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最終更新:2018年06月17日 16:09