「それで、一体君は何者だい?マスターのストーカーかな」
隼鷹と立香を背後に庇い、クロウリーが問いかける。
その姿はいつも通りの立ち方に見えるが、武の心得が有るサーヴァントならば、重心の位置や脚の開き方から、レッドライダーの返答如何では、即座に距離を詰めて拳を叩きこめる姿勢にある事を見て取れるだろう。
「お前に変質者呼ばわりされる謂われは無いぞ。『ジェームズ・ボンド』気取りが」
『ジェームズ・ボンド』をやけに強調した返し。挑発としては妙だと思った立香は驚いた。
どんな時でも泰然自若とした態度を崩さないアルターエゴが、明らかな動揺の色を浮かべていたのだ。
「君は………、本当に何者だい」
クロウリーの声は、驚愕に彩られていた。
『ジェームズ・ボンド』。元諜報部員だった作家、イアン・フレミングが創造し、名優ショーン・コネリーが演じて世界的な知名度を持つに至った、スパイの代名詞とも言うべきキャラクターだ。
だが、クロウリーにはその名は世の人々とは異なる意味を持つ。
第二次世界大戦。クロウリーは政府の要望に応じて、ドイツ第三帝国副首相ルドルフ・ヘスの思考を操り、単身渡英させて虜囚の身とするなどの様々な魔術行使を行った事がある。
この工作にクロウリーを引き出したのがイアン・フレミングだった。
例え歴史の裏側の行為であれ、戦争に関わっていれば、戦争そのものであるレッドライダーは観測する事が出来る。
つまり、レッドライダーが『ジェームズ・ボンド』という名を不自然に強調したのは、"お前の事を知っている"と暗に告げる為だった。
レッドライダーの言葉にクロウリーが驚愕したのは、生前に会った事もない男から、自分の素性を言い当てられた事に対するものだった。
「一体何の話をしているんだよ」
驚愕して固まっているクロウリーに戸惑っている立香を余所に、隼鷹は油断無くレッドライダーを見据えて、問う。
元々立香はまだしも、クロウリーに対しては胡散臭い男程度の認識しか持っていない隼鷹だ。
新たに現れたクロウリーに負けず劣らずの胡散臭さのレッドライダーから、立香を庇う様に立ち、いつでも艦載機を放てる様に構えている。
「………………?」
自分に鋭い視線を向けてくる隼鷹を、レッドライダーは胡乱な者を見る目で見返し、妙に歯切れの悪い口調で答えた。
「ああ…、つまりはだな…こういう事だ、『橿原丸』」
「んな………」
『橿原丸』。艦娘隼鷹の前身である軽空母隼鷹の本来の名前。
大平洋戦争が起きなければ、軽空母隼鷹では無く、豪華客船橿原丸として大平洋を旅していた、隼鷹の有り得た可能性。
この名で隼鷹を呼ぶという事は、隼鷹の事を熟知しているという事を意味する。
隼鷹はクロウリーが驚愕した理由を理解した。
戦争そのものであるレッドライダーは、当然の事ながら、大平洋戦争を戦った軍艦を知っているし、宝具から取り出す事も出来る。
艤装から隼鷹の名を当てるのは、そう難しい話では無かった。
人の姿をしている事についても、自分の事を鑑みればおかしくない。
ただ疑問に思うのは─────。
「身構えるな戦士(橿原丸)。私はお前と敵対する意図は無い。お前が
藤丸立香と共に在る限りはな。
それよりも一つ聞きたいのだが………………。お前は何故女の姿をしている」
レッドライダーには解せない。隼鷹の本来の名である橿原丸。隼鷹の姉の飛鷹の本来の名である出雲丸。
双方共に"丸"と着く事からも分かるように、日本に於いては、船は男として扱われる。
ならば何故隼鷹は女の姿をしているのか。男の姿をしているのが当然ではないか。
「はい!?」
予想もしていなかった質問に、頓狂な返事を返してしまう隼鷹。
気まずい雰囲気が流れ出した時。
「君の正体…何となくだが理解したよ」
クロウリーが爆弾発言を投下した。
「ほう」
レッドライダーは笑顔を崩さない。強がりでも偽りでもなく。
その笑顔は常に浮かべている笑顔より楽しそうだった。
「伊達に『獣』を名乗っていないさ」
「成る程。私の正体に気付ける訳だ」
その時、風が吹いた─────。紅い色が着いていてもおかしくない程に、血生臭い風が。
「俺にも語って聞かせるが良い」
その風は狗と馬を従えた一人の男が放っていた。
─────────────────────────
ジャギが森に篭っていたのは正しいと言えば正しかった。
何しろ
ジャギの姿は目立つ、世紀末ですら目立つあの鉄仮面で街中を歩きまわれば、即座に警官に職質を受けるだろう。
素顔に至っては更に論外だ。暴力に首まで浸ったて生きるモヒカンですらが、一目見ただけで「ごわっ!!きゃああ~~~~~。トワッタッ!!ワヒィィ!!」
となるのだ。こんな姿の
ジャギは現代社会で活動するには不向きな事極まりないのだ。
この事実を認識する度に、ケンシロウへの憎悪を燃やして発作起こして喚いては、チンギスや四駿四狗に睨まれたりしたのはどうでも良い話。
そんな
ジャギだが、聖杯戦争が始まったからには森に篭ってばかりもいられない。
討伐令の通達にチンギスが乗ったのだ。
報酬に釣られての事では無い。無論報酬も動機の一つではある。10画の令呪は報酬として破格。こんなものをみすみす他人に渡すのは愚というものだった。
だが、チンギスが討伐令に乗った本質的な理由にはなっていない。
討伐令の出たサーヴァントの姿からチンギスが感じ取ったもの────死と勝利。
地を骸で埋め尽くし、地表を血潮で赤く染めるほどに死を撒き、その殺戮を以って勝利とし、新たな時代を築き上げる。
討伐令の対象になったのは、己の同類たるサーヴァント。己を無二のものと断じるチンギスには、到底許容できる相手ではなかった。
だが、同類なればこそ判る。このライダーはチンギスですらが勝ちを収める事が困難な敵であると。ならばどうするか?常の者ならば同盟を以って当たるだろうが、チンギスは違った。
手頃なサーヴァントを捩伏せ、マスターを屈服させて駒として使い潰す。
それは過去にモンゴル帝国が被征服者を戦奴として酷使したのと何ら変わらぬ思考だった。
「………こんな処に敵が居るのかよ」
現在
ジャギはチンギスに連れられ住宅街に居る。
無論お散歩している訳では無い。チンギスが斥候として放っておいた四駿四狗の内の一つ、スブタイが見つけた、サーヴァントの手が入った廃屋へと赴く道中だった。
連続殺人事件に続いてのわくわくざぶーん崩壊により、人気の絶えた夜道は、
ジャギが歩き回っても問題は生じない。
「俺の最も信を置く部下を疑うか」
疑問でも皮肉でも恫喝でも無い只の呟き。だがその呟きを放ったのがチンギスともなれば話は別だ。
ジャギは全身の筋肉が鉛と化したかの様に重くなったのを感じた。
だが、チンギスには
ジャギに対して重圧など与えたつもりは無いらしい。拳王様がドブネズミを見る様な眼で
ジャギを一瞥すると、それ以上
ジャギを顧みることなく歩みを進める。
スブタイ。四狗の一人であり東は華北から西は中欧までユーラシアを駆け、その生涯に経験したほぼ全ての戦を勝利で彩った百戦錬磨の武人である。
南斗の軍死………もとい軍師と比べても知略武功共に冠絶する将だった……というより比較対象にして良いものか。
そのスブタイを疑う様な発言をして、指一本たりとも無くすことのなかった
ジャギはかなりの幸運に恵まれていた…今の所は。
「ハッ、高々あばら屋に手を加えただけで我等を防げるわけも無い」
チンギスの声に応じて、チンギスの影に潜む四駿四狗が妖しく揺らめく。心なしか獣の咆哮が、夜気を圧する魔獣の戦意が、感じられた気がした。
狼と四駿四狗は、城を落とした時の暴戻を、街を降した時の暴虐を、思い出して歓喜に震えているのだ。
その鼻は倒れ臥す骸から立ち上る死臭と、地を染める紅から香る血臭を嗅ぎ。
その肌は街を焼き、人を生きたまま火葬する炎の熱を感じているのだろう。
拠点に立て籠もるサーヴァントを攻略する事は困難であるというのが聖杯戦争の常識だが、ことチンギスにはそのセオリーは通じない。
回回砲を始めとする攻城兵器と、四駿四狗を駆使するチンギスにとって、籠城して動かぬ敵は最も楽な相手となる。
チンギスは騎馬の王。その戦い方は騎兵の運用に準ずる。突撃衝力と機動力に優れるが、防御力が無い騎兵の運用は、静より動、後よりも先を取る、つまりは主導権を取ることが求められる。
そして、拠点に立て籠もって動かぬ敵など最初から主導権をチンギスに献上しているに等しい。
四駿四狗で陽動し、攻城兵器を以て拠点を破壊し、内部の敵を引きずり出して''喰らう"。
既にチンギスの脳裏には、どの様に攻城兵器を配置し、どの様に四駿四狗を動かすかが、幾通りにも描かれていた。
「なんだ………?」
その時、遥か頭上を飛び去った影に気がついたのは、地の敵に意識を向けていた餓狼とその配下では無く、気もそぞろに宙を見ていた
ジャギだった。
ジャギの声に反応してチンギスも空を見上げる。
「ほう」
宙を行く機影を認めてチンギスの眼の色が変わる。見てくれは只の玩具。さりとてその実態は強力な戦闘兵器、おそらくは何者かの宝具である事を、戦争に長けたチンギスの眼は看破した。
だが、チンギスが機影に関心を持ったのはその攻撃力では無い。 上空からの監視による高い索敵能力。高速で空中を飛ぶ事による機動力。チンギスの知る軽騎兵の上位互換と呼べるその能力。
航空機が戦争に用いられてから現代に至るまで担い続ける役割の一つを、チンギスは機影を一目見ただけで理解したのだ。
「は………?この先にいる奴等は!?」
「巣の位置は把握している。何時でも"喰らえる"相手よ」
チンギスの目的は、敵が篭る拠点の蹂躙から、今後の闘争の為に必要な人材の確保へとシフトしていた。
────────────────────
「お前は………」
最初に反応したのはレッドライダー。現れた男の顔は確かに知っている。
聖杯戦争なれば在ってもおかしくは無いその姿。人類史上最大の征服者を前に、その笑みが更に深くなる。
チンギス・ハン。その名を聞いて他の三人も眼色を変える。
だが、クロウリーと他の二人では反応が異なる。
クロウリーは
[[チンギス・ハン]]という名そのものに驚いたのだが、隼鷹と立香はレッドライダーがサーヴァントの真名を看破出来る事に驚いたのだ。
「俺の真名(名)を知るか、有象無象の馬の骨とはいえ、多少は見るべきところがあるらしい」
応えたチンギスがレッドライダー以外の三人を見回すと、改めて隼鷹に目を向けた。
目線が合った刹那。隼鷹の顔から一気に血の気が引き、全身から力が失われる。
チンギスが意を込めて送るその視線の凄まじさよ。打ち倒し、奪い、犯し、殺し、喰らう。それらの意志が視線を介して直接隼鷹の精神に叩きつけられてくるのだ。
人類史に名を刻んだ偉大な王や半神半人を数多知る立香ですらが、視線を向けられていないにも関わらず、怯えて竦んでしまった程だ。歴戦の艦娘である隼鷹といえど、一瞬我を喪ったのは仕方のない事だった。
それでも立ち直り、艦載機を放てる様に構えたのは、百戦を経た艦娘故か。
「俺の視線を受けて気死せぬばかりか構えるか。気に入ったぞ女。飛行体を操るだけでなく、戦士の気質を有するか。それにマスターときては好都合。クク…中々運に恵まれている」
犯し捩伏せ屈服させる悦びの前に、打ち倒す悦びを得られると、チンギスの口元が吊り上がった。
笑みには到底見えない、屠った獲物の肉を貪ろうとする凶狼の顔を隼鷹に向けたままチンギスが二歩進んだ所で、レッドライダーが赫剣を抜き、クロウリーがその行く手を阻んだ。
「俺の前に立つか」
見事なセミ・クラウチで眼前に立つクロウリーに、チンギスが嵐の様な殺気を纏う。
「君みたいな凶悪な顔のサーヴァントを大和撫子に近づけるわけにはいかないな」
「ハッ、雌(女)の前でイキがるか。相手を選ぶのだな塵(ゴミ)」
言葉と共にチンギスが踏み込み拳を振るう。
直撃すれば歴戦の武人の英霊すらが只では済まぬと見ただけで判る剛拳。
武技など一切無い単純な暴力とは思えぬ拳撃、その拳はいつの間にか純白の手甲に覆われている。
「言って─────」
唸りを立てて顔目掛けて放たれたチンギスの剛拳を。
「くれるね!」
クロウリーは僅かに顔を傾けて回避すると、踏み込んで強烈無比なアッパーを顎を狙って放つ。
「がっ!?」
アッパーを受けて大きくチンギスがよろめき、数歩後退する。
世界に名だたる覇者とはいえ、肉体を直接用いた近接戦闘はやはり一流とはいえぬ。そう判断したクロウリーは、迎撃に出た狗と馬をエセルドレーダに押さえさせ、地を滑るような動きで追撃する。
今の一撃。己を蝕む’獣’の齎すモノ─────欲望・破壊・捕食衝動を魔力放出として上のせしたもの。
会心の当たりならば耐久に秀でたトップサーヴァントといえでも戦闘続行に支障をきたすほどの深刻なダメージを受ける。
つまり、チンギスが未だに立って戦闘を続行する事が出来る道理がない。
例えインパクトの瞬間に顎を引き、後ろに飛んでいたとしてもだ。
だが、クロウリーは理解(わか)っていた。
チンギスの持つ気質が己を蝕む獣ときわめて近しいものであり、通常の英霊なれば防ぎ得ぬ己の魔力を大きく減衰させてしまった事を。
凡そ人の持ち得て良い気質では無い。正しく世界を喰らい尽くそうとした餓狼の本質。
現世に在るには余りにも危険な英霊。いまここで打ち倒し、座に返さねばならぬ存在だった。
制止するレッドライダーの声を無視し、百分の一秒にも満たぬ速度で距離を詰め、呵責ない右ストレートで顎を撃ち抜く。
この時クロウリーは見た。チンギスがまるで鏡に写したかの様に、先刻のクロウリーの構えを取っている事を。
クロウリーの右ストレートを身体を僅かに右に傾けて回避、そのまま一歩を踏み出し、クロウリーの右腕に被せる様に放たれる左掌打。
掌打がクロウリーの顔面を捉えたと同時に、クロウリーの顔面を鷲掴み、頭部が埋まる勢いで、クロウリーの後頭部を地面に叩きつけた。
レッドライダーには理解(わか)っていた。チンギスの後退はモンゴル騎馬軍団の基本戦術。釣り出しの為の偽退。
釣られて前に出れば逆撃を受け、各個に分断されて撃破されるという事を。
更に相手がチンギスであり、狗と馬を繰り出して来るという事は、この獣達の名は四駿四狗。つまりは後六頭居る残りの獣を警戒しなければならなかった。
レッドライダーがクロウリーに追随して動かなかったのは、滾る殺意を抑え、牙に蹄に力を漲らせ何処かに潜む獣を警戒してのことだった。
宝具である赤剣を手に、チンギスと立香及び隼鷹の間にレッドライダーが立つのと、レッドライダーに二頭の馬が襲い掛かるのは同時。
「クビライ、ムカリ。征くぞ」
更にその後ろに狗(スブタイ)と馬(ムカリ)を従えたチンギスが続く。その間隔は正に絶妙。先触れの獣を撃ち払っても、その際に生じた隙をチンギスに突かれる事になる。この二段構えの攻勢は単騎で防ぐ事は極めて至難。
チンギスを追うべく立ち上がったクロウリーは、チンギスが最初に率いていた二頭が動きを封じる。
「流石─────」
思わず賞賛の言葉を呟くレッドライダー。
率いる覇軍が無くとも、戦ともなればチンギスはやはり強い。二騎の優れたサーヴァントを相手取って、当然の様に瞬時に優位に立つ。
この窮地を覆すにはやはり─────。
「約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)!!」
魔力の消費が惜しいが、宝具を使わざるを得まい。
それになによりも─────
藤丸立香の前で良いところを見せたい!!
つまりは、ここで宝具を用いない理由は存在しないッッ!
真名を解放と共に無数の戦車(チャリオット)かレッドライダー・隼鷹・立香の周囲を囲み、防壁となってチンギスを阻む。
「騎兵の時代はとうに終わったと知れ!騎馬の王ッッ!」
防壁だけでは終わらない。騎兵という兵科に終止符を打った組み合わせ。強力な火力を装備した堅牢な陣地を見るが良い。
視線をチンギスに向けつつ、全神経を集中させた背中で立香の反応を感じ取りながら、レッドライダーは攻撃の為の宝具を取り出す。
「三千世界に屍を晒せ!天魔轟臨ッッ!三千世界(さんだんうち)ッッ!」
戦車(チャリオット)の城塞を突破する方法を考えていたチンギスが驚愕に目を見開く。
レッドライダーの周囲に出現した火縄銃か、それぞれ六十ずつの銃口を、チンギスと四駿四狗に向けている。
「ジェルメ!クビライ!俺の周りに寄れ!!」
レッドライダーの宝具を見るなり、その危険性に気付いて対処するチンギスに、改めて賞賛の念を抱きつつ、レッドライダーは火縄銃を召喚。間髪入れずに一斉に火を噴いた。
放たれた火線が殺到するまでの間に、三頭の馬が一つに組み合わさり巨大な防壁を形成。チンギスと二頭の狗を覆い隠す。
耳をつんざく銃声と、銃弾が防壁に当たる音が間断無く響き、立香が耳を抑えた。
「戦士(橿原丸)!艦載機で攻撃しろッッ!」
弾雨を見舞いながらレッドライダーが叫ぶ。
元より隼鷹の攻撃でチンギスがどうにかなるとは思っていない。
だが、生前に見た事の無い航空攻撃だ。きっと隙を晒す。その時こそ三千世界(さんだんうち)で仕留める好機だった。未だ見えぬ四狗の半分とマスターが気掛かりだが、約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)を突破できるとは思えない。
三千世界(さんだんうち)でチンギス共々動きを封じられたクロウリーが何もできなかったのと違い、己はチンギスを撃破、少なくとも追い払う所を見せられる。
藤丸立香に人理修復の旅で絆を結んだサーヴァント達にも負けないとPR出来るッッ!
レッドライダーの脳裏には薔薇色の未来が描かれていた。
─────結論から言うと、レッドライダーの思惑は完全に外れる事となる。
「よーし、攻撃隊!発艦しちゃってー!」
レッドライダーに応えて隼鷹が艦載機を放つ。チンギスの防壁が金剛不壊であったとしても、天蓋は無い為上空からの攻撃には脆弱。
放たれた艦載機は必ずや戦果を挙げるだろう。
そう信じて最初の一機を放つ直前。地を揺るがして隼鷹の前に舞い降りる鉄仮面!!
驚愕に固まった隼鷹の腹に鉄仮面の右拳が吸い込まれる。
「グハッ!ガァッッ!」
胃の内容物を吐き出しそうになるのを何とか堪え、距離を取ろうとする隼鷹の首筋を鉄仮面の手刀が撃ち。隼鷹の意識を断った。
「やけに頑丈なオンナだ」
言いながら隼鷹を担ぎ上げた鉄仮面は、チンギスのマスターである
ジャギだった。
ジャギの唐突な出現には当然の様にタネが有る、
至極単純なタネであり、この場に居ない四狗のジェベとスブタイが合体して作成した回回砲を用いて
ジャギを飛ばしたのだ。
元よりチンギスの動きそれ自体は陽動。本命は
ジャギによる、飛行体を操るサーヴァントのマスターの拉致である。
結局飛行体を操っていたのはマスターである隼鷹だったが。
複数のサーヴァントを確認したチンギスは、自身がサーヴァントを引きつけている間に、
ジャギが強襲して拉致する作戦を立てたのだ。
チンギスが
ジャギを伴ったのは、マスター相手ならば充分すぎる能力を有する為だったが、まさか初戦でこうも役に立つとは思っていなかった。
ジャギが居なければレッドライダーとクロウリーという優れた二騎のサーヴァントを相手にかなり梃子摺ることになっただろう。
ジャギをマスターの前に運べばその時点で狙いは達成できる。そして百戦錬磨という言葉すら及ばなぬ戦歴を持つスブタイが、
ジャギを飛ばすタイミングを誤る訳が無く。
サーヴァントとして聖杯戦争に召喚されれば、アーチャーのクラスで現界するであろうジェベが、
ジャギを飛ばす距離と方向を誤る訳が無い。
当然の様に、最高のタイミングで現れた
ジャギは、瞬く間に隼鷹を制圧した。
「チィッ!」
立香の前で良い所を見せられると思ってすっかり忘れていたが、チンギスの狙いは最初から隼鷹だったのだ。
ここで隼鷹を連れ去られると立香に良い所を見せるどころか無様を晒す羽目に陥る。
急ぎ
ジャギを抑えようとしたレッドライダーは、クロウリーの声に振り返った。そしてその先にあるモノを見たレッドライダーの目が見開かれる。
振り返ったレッドライダーの視界に映るのは、二頭の馬と戦うクロウリーと、二頭の馬を従えて己を真っ直ぐ睨みつけるチンギス。
そしてチンギスの視線を形にしたかの様な、巨大な弩砲と据え付けられた巨大な矢だった。
レッドライダーが弩砲を認識するのと、矢が放たれるのが同時。
矢はレッドライダーが咄嗟に自身の身体と弩砲の間に並べた五輌の戦車戦車を撃砕し、レッドライダーのかざした赤剣に激突。レッドライダーを大きくよろめかせた。
「この女は貰っていくぞ!!」
立て直したレッドライダーが見たものは、それぞれ馬に乗って走り去るチンギスと
ジャギ。そしてチンギスの脇に抱えられた隼鷹。
追撃するクロウリーとエセルドレーダを交互に牽制しながらチンギスに続く二頭の馬と狗だった。
【B-2 郊外の住宅街/1日目 午前0時20分】
【
藤丸立香(女)@Fate/GrandOrder】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[虚影の塵]無
[星座のカード]有
[装備]魔術礼装・カルデア(それを隠すロングコートを着用)
[道具]
[所持金]年相応の所持金
[思考・状況]
基本行動方針:カルデアへの帰還
1. まずはレッドライダーの対処から
2. この冬木市が特異点であるとして調査
3. 隼鷹から事情を聞きたい
4.隼鷹を助けないと
[備考]
レッドライダーおよび
チンギス・ハンの存在を認識しました。
【アルターエゴ(
アレイスター・クロウリー)@史実(20世紀・イギリス)】
[状態]実体化 ・ダメージ(軽微)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:全人類の根源接続を願う――最優先はマスターを幸せにする事
1. 何故マスターの名前を気安く呼ぶんだ? ストーカーって奴かい?
2.さて、どうしようか
[備考]
レッドライダーの正体に勘付きました。
ライダー(
チンギス・ハン)の存在を認識しました。真名は知りません
【隼鷹@艦隊これくしょん】
[状態]気絶中・疲れ(小)
[令呪]残り3画
[虚影の塵]有
[星座のカード]有
[装備]艦載機の装備
[道具]
[所持金]普通に暮らしていける程度
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1.
藤丸立香を信用する?
2.
カルキの捜索と討伐
[備考]
※新都から深山町に至るまで軽く偵察を行いましたが、ライダー(
カルキ)を発見できませんでした。
※
藤丸立香(女)の主従を確認しました。
※ライダー(
カルキ)が虚影の塵などを利用し、擬似的な浄化を試みるのではと推測しています。
※気絶してチンギスにより運ばれている最中です。
レッドライダーに対して胡散臭を感じています。
チンギス・ハンの存在を認識しました。
【ライダー(戦争)@世界中全ての戦争の記録/黙示録?】
[状態]魔力消費(中)
[装備]
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:マスターである菜々芽の護衛
1.
藤丸立香に菜々芽と会って貰いたい
2.
藤丸立香の味方であり、
藤丸立香の敵でありたい。
3. 願わくば『
藤丸立香』が対峙しあう戦争を起こしたい。
[備考]
※『
藤丸立香』が二人いる事を観測しました。異常ではないかと疑念を抱いてはおらず。
むしろ夢みたいな状況で割とどうでも良く思っています。
アルターエゴ(
アレイスター・クロウリー)の存在を認識しました。
ライダー(
チンギス・ハン)の存在を認識しました。
【
ジャギ@北斗の拳】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[虚影の塵]無
[星座のカード]有
[装備]
[道具]
[所持金]あまり無い
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1. 取り敢えず拠点に戻る。
【ライダー@
チンギス・ハン(11世紀モンゴル)】
[状態]魔力消費(小)
[装備] 四駿四狗
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針
1.拠点に戻る
2.隼鷹を己の傘下に加える。
3.サーヴァントを傘下に加えて戦力とする。
[備考]
※隼鷹を抱えて移動中です。
※ライダー(レッドライダー)の存在を認識しました。 真名は知りません。
※アルターエゴ(
アレイスター・クロウリー)の存在を認識しました。真名は知りません。
※
藤丸立香(女)の存在を認識しました。
※討伐令を認識しました。
※エーデルフェルトの双子館(西)を拠点にしている主従の存在に気付きました。
最終更新:2018年06月18日 10:11