松岡美羽 T-03
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strawberryrowa
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松岡美羽 T-03 「どうしてこんなことになっちゃうかな……?」
このフロア、レディスだけど大人ものばっかだなー……でも、1Fのキッズコーナーのは私には子供っぽいんだよなぁ。
というのがそこを訪れた小学六年生、今年で12歳になるややマセ気味でオシャレにうるさい松岡美羽の感想であった。
長くてしかし短かった夏も遥か前、今は秋深まってもう冬になろうという時期で、
3Fレディスコーナーに並んでいるのも冬用のコートやブーツ、今からでも着れるニットのセーターなどそういった物が目立つ。
長くてしかし短かった夏も遥か前、今は秋深まってもう冬になろうという時期で、
3Fレディスコーナーに並んでいるのも冬用のコートやブーツ、今からでも着れるニットのセーターなどそういった物が目立つ。
トップスにボトムス、外套に帽子、靴、アクセ、小物、鞄、その他諸々と専門店が立ち並び、
中には香水や化粧品。また貴金属を扱っている店などもあってそれぞれに目や興味を奪われる。
そして、オシャレの密林と化しているその一角に、親子を模した一組のマネキン達が並んでいた。
中には香水や化粧品。また貴金属を扱っている店などもあってそれぞれに目や興味を奪われる。
そして、オシャレの密林と化しているその一角に、親子を模した一組のマネキン達が並んでいた。
「…………………………」
一人目はお父さん。暗色で厚めのタートルネックの上に皮のジャケット。上着と同じ色の帽子を被っている。
二人目はお母さん。お父さんとは対照的にクリーム色でのコーディネート。羽織ったショールが上品な感じだ。
三人目は男の子。プリントシャツの上にファー付のジャンパー。小生意気にも下はクラッシュデニムである。
二人目はお母さん。お父さんとは対照的にクリーム色でのコーディネート。羽織ったショールが上品な感じだ。
三人目は男の子。プリントシャツの上にファー付のジャンパー。小生意気にも下はクラッシュデニムである。
「…………………………」
そして、四人目は女の子。
”I LOVE STRAWBERRY”と描かれたニットタートルに、ベルト付のチェックのプリーツスカート。
黒白ツートンのハイニーソックスに、買って貰う代わりにお小遣いを減額されたお気に入りのブーツ。
ああやっぱり可愛いな。可愛いは正義。すなわちジャスティス。未来永劫普遍の価値基準がそこに……と、
”I LOVE STRAWBERRY”と描かれたニットタートルに、ベルト付のチェックのプリーツスカート。
黒白ツートンのハイニーソックスに、買って貰う代わりにお小遣いを減額されたお気に入りのブーツ。
ああやっぱり可愛いな。可愛いは正義。すなわちジャスティス。未来永劫普遍の価値基準がそこに……と、
「………………………………――ぷはーっ!」
四人目はマネキンではなかった。
マネキンのフリをして、実際にそれが有効であったかはともかくとして自分を追ってくる者を撒こうとしていた少女だった。
短い茶髪をちょんと小さなツインテールにしているのが特徴のかわいい(自称)少女――松岡美羽であったのだ。
マネキンのフリをして、実際にそれが有効であったかはともかくとして自分を追ってくる者を撒こうとしていた少女だった。
短い茶髪をちょんと小さなツインテールにしているのが特徴のかわいい(自称)少女――松岡美羽であったのだ。
「あー……疲れたー……、てかだれもこないじゃん……」
肩を回して、んで屈伸運動――こった身体をほぐしながら美羽はそんなことを一人ごちる。
そもそも彼女はどうしてこんな所で、閉店後の……しかし営業時と同じように明かりの点いたショッピングビルの中で、
マネキンの真似をするはめになったのか?
そもそも彼女はどうしてこんな所で、閉店後の……しかし営業時と同じように明かりの点いたショッピングビルの中で、
マネキンの真似をするはめになったのか?
「ていうか私悪くないじゃん!」
落ち込んでいた姿勢から一転、宙に向かい美羽は吼え……そしてその迂闊さを悟りそそくさと物陰へと身を潜める。
そう、彼女は逃げていたのだ。彼女よりもはるかに立派なツインテールを持ったなんかツンデレっぽい印象の女から。
そう、彼女は逃げていたのだ。彼女よりもはるかに立派なツインテールを持ったなんかツンデレっぽい印象の女から。
「……うぐぅ、服に埃がついちゃうよー。せっかくの一張羅だってのにー」
ハンガーに掛けられたダッフルコートの下を匍匐前進で潜り、美羽はレディスコーナーをゆっくり移動して行く。
そもそもここには伸恵ねーちゃん――隣の伊藤家の長女であり親友のパっと見地味系で実質的にもそうな千佳の姉で
客観的に見ると色んなところが駄目人間でえこひいきばっかするけどやっぱり大好き――とデートしに来たのだ。
そもそもここには伸恵ねーちゃん――隣の伊藤家の長女であり親友のパっと見地味系で実質的にもそうな千佳の姉で
客観的に見ると色んなところが駄目人間でえこひいきばっかするけどやっぱり大好き――とデートしに来たのだ。
嘘だが。……実際には伊藤姉妹と貧弱眼鏡と馬鹿外人と映画を見に来たのだ。ついでに冬用の洋服も買うつもりだった。
あんまりにひどいので言い直すと、貧弱眼鏡は桜木茉莉ちゃんで、馬鹿外人はアナ・コッポラちゃん。共に一年下の友達である。
付け加えると、伊藤千佳は同級生で、伊藤伸恵おねーちゃんは16歳の高校一年生。
あんまりにひどいので言い直すと、貧弱眼鏡は桜木茉莉ちゃんで、馬鹿外人はアナ・コッポラちゃん。共に一年下の友達である。
付け加えると、伊藤千佳は同級生で、伊藤伸恵おねーちゃんは16歳の高校一年生。
「どうしてこんなことになっちゃうかなー……」
見る予定だった映画のタイトルは『どえらいハード part9』というもので、
内容は非番中の警官の旦那がワイフへの結婚記念の贈り物を買いにショッピングビルに入ったらテロリストが以下略で、
ハリウッド映画のお約束を忠実に守りながら黒人キャストにもそれなりの出番を与えて孤軍奮闘するというそんなのである。
世間一般からすれば見飽きた類のもので実際に評価も芳しくない。
わがままを言ってここまで足を運んだのも、もうここでしか上映していないからという理由だ。
なんでそこまでして見にきたかというと、それはあまのじゃくな意地っ張りでしかなかった。
内容は非番中の警官の旦那がワイフへの結婚記念の贈り物を買いにショッピングビルに入ったらテロリストが以下略で、
ハリウッド映画のお約束を忠実に守りながら黒人キャストにもそれなりの出番を与えて孤軍奮闘するというそんなのである。
世間一般からすれば見飽きた類のもので実際に評価も芳しくない。
わがままを言ってここまで足を運んだのも、もうここでしか上映していないからという理由だ。
なんでそこまでして見にきたかというと、それはあまのじゃくな意地っ張りでしかなかった。
『面白そう』『そうかなー?』『面白いよ! 馬鹿にすんな!』『誰をだよ……』
そんなやりとりを経て引っ込みがつかなくなり今に至る。
美羽自身も改めて考えれば面白くなさそーだと思ったが、遠出と買い物の口実になったからそれを通したままにした。
――で、美羽は今まさに映画の内容と同じ様な境遇へと陥っていたのだ。
美羽自身も改めて考えれば面白くなさそーだと思ったが、遠出と買い物の口実になったからそれを通したままにした。
――で、美羽は今まさに映画の内容と同じ様な境遇へと陥っていたのだ。
「あー……、この前見た流れ星に”教室をテロリストが占拠しますように”ってお願いしたのが悪かったのかなー」
今、彼女達は――そう、美羽の他の者達、知っている人もいれば知らない人も混ざった計30人は
このビルを支配する何者かに”殺し合い”を強要されているのだ。
このビルを支配する何者かに”殺し合い”を強要されているのだ。
荒唐無稽にも程がある。100回こんなことがあれば99回はドッキリだろう。しかし今回は残った本物の1回だった。
美羽はすでに人が死ぬというのを目の前で見てしまっている。
そして自分を殺そうとしていた人間(例のツンデレっぽい雰囲気の女)に追いかけられもした。
考えるほどに鬱な状況で、思い返すたびに溜息が漏れる。
美羽はすでに人が死ぬというのを目の前で見てしまっている。
そして自分を殺そうとしていた人間(例のツンデレっぽい雰囲気の女)に追いかけられもした。
考えるほどに鬱な状況で、思い返すたびに溜息が漏れる。
「とにかく伸恵ねーちゃんと合流しないと……」
静よりも動。何時いかなる場合においても美羽のスタンスはそれだ。
映画の中の主人公と同じにできるとは考えないが、心持ちはそれと同じくし彼女は今も動く。
ツルツルの通路を転がって横切り、背の高い商品棚に身を寄せゲームの中の潜入工作員のように売り場を進む。
姿見に自分が映るのを避け、ショーアップされたマネキン達をカモフラージュに、時には箱を被り進んでゆく。
慎重かつ大胆に、シャープかつスピーディに……とイメージしながら目的の場所へとただただ邁進する。
そして――
映画の中の主人公と同じにできるとは考えないが、心持ちはそれと同じくし彼女は今も動く。
ツルツルの通路を転がって横切り、背の高い商品棚に身を寄せゲームの中の潜入工作員のように売り場を進む。
姿見に自分が映るのを避け、ショーアップされたマネキン達をカモフラージュに、時には箱を被り進んでゆく。
慎重かつ大胆に、シャープかつスピーディに……とイメージしながら目的の場所へとただただ邁進する。
そして――
「緊張したら、おしっこしたくなったよ」
――目的地であった化粧室(トイレ)と到着し、その中へとまたスパイのようにこそこそと入っていった。
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