チェンジ・ザ・ワールド☆
不完全燃焼、恋愛模様.14
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不完全燃焼、恋愛模様
「千里? どうしたん?」
反対側のフェンスにいる白石と汐屋をじっと見つめたまま反応を返さない千歳に、少女が腕を引っ張る。
そこで漸く我に返った千歳は、取り繕った笑いを浮かべる。
「ああ、すまん。今試合しよるんが中学ん時の友達やけん、昔ん事とか思い出しよった」
「そうなん? へえ~。千里は中学の時もモテたんやろうなあ」
「別に、そげんことなか」
「またまたあ! ん? あっちなんか騒がしいなあ……なあなあ、あれ」
少女が指差す方には、汐屋と白石がいる。
ズキンと千歳の胸は痛んだ。
「あそこにおんの、白石君やない? 隣りは……あ、白石君と同じクラスのなんたらさんや。九州から引っ越してきた子。二年の時千里と同じクラスやった」
「そうやね」
「もしかして付き合うてる、とか……? まさかそんなことあらへんよね? 白石君モテんねんから、もっと可愛い子選ぶはずやもんな」
同意を求められて、千歳は困ったように笑った。
そのたいして可愛くない女の子の事が、自分は好きなのだ。
千歳の返事を待たず、少女はその後も一人でしゃべり続けた。
はあ……
ため息もつきたくなる。
告白されてから、少女とは友達として付き合うようになった。
白石と話す機会はあったのだが、何故かタイミングが悪くて手紙の事は聞けず、汐屋との事も分からないまま時間だけが過ぎた。
そして今日、テニスの地区大会が行なわれているのだが、千歳は目の前で見せつけられた現実に大きなショックを受けていた。
前に忍足がこの試合を見に来るように汐屋を誘っていたのは見ていたから知っていた。だからおそらく汐屋が来ているだろうとは思っていたが、まさか自分に何も告げずに白石が汐屋と行動を共にしているとは思いもしなかったのだ。
「千里、千里ってば」
「ーーーあ」
また一人で遠くに行っていた千歳は、袖を引っ張る少女を見下ろして抑揚の無い声で言った。
「次の試合のためにウォーミングアップばするけん、あっちに行ってくる」
「うちも行く!」
いたたまれなかった。
あれ以上、白石と汐屋が楽しそうに話している姿を見てなどいられない。
自然と歩くスピードが早まる。
「ちょっと千里、歩くの速すぎ!」
一人になりたかったがそう上手くいかず、千歳は後ろから小走りで着いて来る少女を振り返って足を止めた。
「ーーーごめん、一人で練習したかけん、どっかで時間つぶしてきてくれんね」
「えっ? ちょっと嘘? うちほったらかしにする気なん!?」
「ほんとごめん」
「なんやねん! 何も邪魔してへんやん!」
文句を言う少女の声が少しずつ遠くなり、千歳は漸くほっとした。
正直、あんな子だとは思わなかった。
あまり人の好き嫌いがない千歳は、誰に対しても苦々しく思ったりする事は無い。
だが、仲良くなるに従って、少女の内面がどんどんと露にされて行った。
学校ではクラスも別々だからそんなに話す事はなかったが、部活で疲れて帰った千歳に毎日のようにメールや電話を掛けてきては、誰かの悪口を言い続ける。
それが自分の友人でも、何か気に食わないことがあれば延々と文句を言うのだ。
かと思えば翌日学校でその友人と楽しげに過ごしている。
汐屋とはまた違う影を持った少女だった。
そして、告白してきた時に言った約束を破っていた事が判明した。
少女は自分が千歳と付き合っていると吹聴して回っていたのだ。
違うと否定しても噂というのは尾ひれがついて広がって行く。もう否定することすら面倒になっていた。
一番心配だったのは、その噂が汐屋の耳に届いていのではないか、ということ。
もし、汐屋が勘違いをしていたら……
千歳は後悔していた。
汐屋と白石の事で落ち込んでいたとはいえ、よく考えもせずに少女の申し出を受けてしまった事を。
しかし、もし自分が誰かと付き合ったとしても、汐屋は別に何とも思わないだろう。
だって汐屋は白石の事が好きなのだからーーー
「ふっ!」
壁に向かってサーブを放つ。
強烈な音を響かせてボールが戻って来る。
そしてまたそれを打ち返す。
キュッキュとクレーコートをシューズが鳴らす音とボールの打撃音。
周囲からは人々のざわめきが聞こえていて、妙に落ち着く。
しばらく無心でボールを打っていると、横から別のボールが飛んできた。
「っ!?」
驚く千歳。
「ボール2個あったほうが、おもろいやろ?」
「……白石」
器用に2個のボールを使って壁打ちをする白石。
千歳も負けじと白石が返しにくそうな場所にボールを打つ。
負けたくなか……
意地があった。
自分の好きな女を取った男に、テニスでだけは負けたくなかった。
「くっ!」
ウォーミングアップのつもりが、気付けばギャラリーが出来るほどヒートアップしていた。
「これでどうやっ!」
「まだまだっ!」
「こおらあっっ!!!!! 部長! 千歳っ!!」
お互いスマッシュのフォームに入った所で、辺りに怒号が響き渡った。
ボトボトと2個のボールが地面に落ちる。
「ええ加減にせえっ! 試合前に疲れるような事すんなや、このだアホっ!」
声の主はチームメートで、すっかり本気になっている2人を見つけ、慌てて止めに入ったのだ。
怒鳴られた2人は顔を見合わせ吹き出した。
「ぷっ、あははは。すまん、ちょっと気合い入りすぎたわ」
「俺も……なんか知らんけど、楽しかったたい」
「楽しいことあるかっ!? 試合前の練習でスタミナ消耗して負けました~なんて言うてみいっ! 監督にしばき倒されるどっ!」
「あ~そら怖いわ。千歳、そろそろ行くか?」
「そうやね」
背中をどつかれながら歩く千歳は、隣りで爽やかに笑う白石を見やって自分も微かに笑った。
こげん男前なら、負けてもしょんなかたい……
色んな事にけじめをつけよう。
そう、決意した。
「白石」
「何や?」
「試合が終わったら、話しのあるけん」
「……分かった」
続く…
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。
一体どうするんでしょうか、千歳君は。。
一体どうするんでしょうか、千歳君は。。
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