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風名4日目・No.3

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私のやんごとなき王子様












「やっと終わった……」


 風名君や亜里沙様たちとの話が終わり、やっと落ち着いて自動販売機でジュースを買うと私はほっと一息吐いた。

 何だかもう通し稽古みたいに途中からなっちゃって、プロのすごさを目の当たりにしたって感じ。

 台本持って立った瞬間スイッチが入って、風名玲や桜亜里沙ではなく、ジークフリート王子とオデット姫になるんだもん。

 私はそんな本物の俳優のすごさを見せられて、圧倒させられるばかりで全く何も出来なかった。

 悔しいけどこれが現実。一般人とプロの差なのだ。


「はあ……」


 一息がため息に変わってしまった。


「小日向さん」

「―――あ、利根君」


 甲板のベンチに座っていた私に、利根華月君が声を掛けて来た。


「何だか疲れた顔してるけど、どうしたの?」


 隣りに腰掛けながら尋ねられ、私は先ほどの出来事を話して聞かせた。








「くすっ、なるほど、玲や桜さん達の演技を見て、圧倒されたって訳なんだ」

「そう。何で出演者を選んだんだろって、今更後悔しちゃった。だって次元が違いすぎるんだもん」


 利根君のお誘いを断って演劇担当を選んだくせに利根君に愚痴ってるなんて、私ってば最低だ。

 それでも利根君は相変わらず優しく微笑んで、優しい言葉を掛けてくれる。


「上手に出来なきゃどうしてダメなの?」

「どうしてって……やっぱり皆の足を引っ張りたくないし」


 特に亜里沙様は厳しいから、ちょっとした間とか言い回しに何度も駄目出しされたんだよな。

 昨日台本をもらって配役が決まってから、何度も何度もほんのちょっぴりの自分の台詞を繰り返し練習した。

 時間が短い分、本気にならなきゃって思った。だけど……。


「完璧に何でも出来る人間なんて、この世にはいないよ」

「そうかも知れないけど、でも……オデット姫の友人役だから台詞なんてちょこっとなのに、それすら上手く言えないんだもん。情けないよ」


 マイナス思考を次々と吐き出し、私は先ほど買ったジュースを一気に飲み干した。


「小日向」


 そこで声を掛けられ顔を戻すと、風名君が心配そうにこちらへやって来た。


「あ、風名君、どうしたの?」

「いや、気付いたら部屋からいなくなってたから、心配して……華月も一緒だったのか?」

「やあ、玲。小日向さんをあんまりいじめないでくれよ」

「失礼なヤツだな、俺はいじめてないよ」


 そう言って風名君も私の隣りに座った。

 ―――あれ? ちょっと待って。右手に利根君、左手に風名君、これってもしかして両手に花!? 学園のナンバー1、2を従えてるなんて夢のようだけど、ファンの子に見られたらどうしよう!

 しかしこの二人が揃うとさすがに迫力だな。確か幼なじみって聞いたことがあるけど、こんな美形が幼なじみってなんか意味無くすごいと思っちゃう。

 焦る気持ちと滅多に訪れないシチュエーションに嬉しい気持ちが混ざり合って、なんとも浮ついた状態になってしまった。


「あ、玲。袖のボタン取れかけてる」

「ん? あ、本当だ」


 ふいに言った利根君の言葉に、私と風名君は同時にシャツのボタンに視線を移した。

 利根君の静かなトーンの声に私の興奮もすうっと引いた。


「ちょっとシャツ脱いで、すぐ縫うから」

「ああ」


 えっ!? 利根君裁縫道具持ってるの? ……って、ポケットから小さい裁縫セットが出てきた! すごい!


「頼むよ」


 風名君が私の目の前でシャツを脱いでTシャツ一枚になった。なんだか制服の下に着てるTシャツもお洒落だな。

 シャツを受け取ると、利根君は慣れた手つきで針に糸を通しボタンを縫い付けて行く。

 うわ~。もしかしてすっごい貴重な場面を見てるんじゃない? ――しかし利根君上手だなあ……。















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