チェンジ・ザ・ワールド☆
HERO.2
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「そんな、悪いよっ!」
家まで私を送り届けてくれた男の子は、なんと私を病院まで連れて行ってくれると言い出した。
自宅前で焦る私に、男の子は
「捻挫は最初の処置が大事なんだ。ちゃんとケアしないと癖になるし、自己治療じゃ悪化するかもしれない」
なんて真剣に言うもんだから、私は反論出来ずに頷いてしまった。
「う……分かった。保険証取って来るから、ちょっと待ってて」
何故か拗ね気味にそう言う私に、男の子はまた手を貸してくれた。
なによ、本当に優しいんだから!
自転車の後ろに乗せてもらって家に来る途中、引っ越して来たばかりだと伝えたからか、男の子は自分の掛かり付けだという整骨院に連れて行ってくれた。日曜日だから本当は休診日なんだけど、昔からの知り合いだから大丈夫と言ってその整骨院へと向かった。
男の子の言う通り休診日にも関わらず私の治療をしてくれた先生は、すごく体格のいい中年の先生だった。中々豪気なその先生は、顔に似合わず優しく私の足を治療してくれた。
「珍しいな、勝己が女の子を連れて来るなんて。デート中に怪我したのか?」
「違う。偶然倒れてるのを見つけた」
一瞬嫌そうな顔をしたのを、私は見逃さなかった。
失礼ね。私とデートっていうのがそんなに嫌なの? てか、カツミっていう名前なんだ……
「あ!」
「どうした?」
突然声を上げた私に、先生が驚く。
「私、大事な事を忘れてた!」
「大事な事?」
男の子も首を傾げている。
って、そうじゃなくて!
「名前! 助けてもらったのに、私、あなたの名前聞いてなかった!」
あ~もう! なんて抜けてるの!?
衝撃的な事実に私が気付くと、男の子と先生が顔を見合わせすぐに笑い出した。
「ぷ!」
「あっははは! こりゃあいいや! おい勝己! 面白い子だなあ!」
「ーーちょっと先生、そんなに笑わないでください。それと、えっと、カツミ……君?」
笑いながらも私の治療をやめない先生の職業魂はすごいけど、カツミ君までそんなに笑う事ないじゃない……でも、笑うと優しそうだな。
なんて私がカツミ君の笑った顔をぼうっと見ていると、カツミ君が私を見た。
その視線に何故だかドキッとして、私はちょっとだけ俯く。
「志波……勝己だ」
「あ、志波君……。よろしくね」
「ちなみにお前と同じ羽ヶ崎学園の一年だ」
「えっ? どうして私が羽ヶ崎学園の一年って知ってるの!?」
ちょっと、何でよ! 私、言ったっけ?
「それ」
そう言って志波君が指差したのは、バックのサイドポケットからちょっぴり顔を覗かせていた生徒手帳だった。
「あ」
なるほど、だから分かったのか。
「休みの日にまで生徒手帳持って歩いてるヤツ見たの、初めてだ」
そう言って小さく笑う志波君に、私は恥ずかしくなった。別にわざわざ持って来たくて持って来た訳じゃなくて、メモ帳が見当たらなくて代わりに机の上に置いてあったこの生徒手帳をバックに入れただけだったのだ。
だけどそれをわざわざ言うのもまた恥ずかしくて、私は黙って志波君が笑い止むのをじっと見つめた。
こうやって落ち着いて見ると、志波君って結構男前だな。
「よし、終わったぞ」
「あ、ありがとうございました!」
志波君のキリリとした目元から視線を落とすと、きっちりと包帯の巻かれた痛々しい自分の足があった。
「じゃあ帰るか」
そう言って無事に治療が終わった私を、志波君はまた自転車の後ろに乗せて家まで送ってくれたのだった。
本当に何から何までお世話になって、申し訳ない。
「色々と迷惑かけて、ごめんね。本当にありがとう」
家の前まで送ってもらい、私は深々と頭を下げた。
「いや。じゃあ」
「あ、待って!」
「ん?」
さっさと帰ろうとする志波君を、勢いで止めてしまったものの、正直何を言おうかなんて考えてなかった。
私は咄嗟に、
「あ、あのね! 今日助けてもらったお礼がしたいから、連絡先教えて!」
なんて声を張り上げてしまった。
志波君は一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに苦笑して携帯番号を教えてくれた。
「別に礼はいらないけどな」
そう低い声で言って。
私は教えてもらった番号と走って行く志波君の後ろ姿を交互に眺めては、矢鱈と締め付けて来る胸にただならぬ気配を感じていた。
「志波君って、ヒーローみたい」
戦隊ものではあまり見かけないけれど、無口でさり気なく助けてくれるヒーローがいたっていいよね。
ボソリ呟いてから、完全に志波君の姿が見えなくなった所で玄関のドアを開けた。
続く…
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