チェンジ・ザ・ワールド☆
波江10日目・No.3
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私のやんごとなき王子様
潤君は夕食後に部屋まで迎えに来てくれた。
さなぎはとっくに米倉君と出かけていなかったけど、私は何だかドキドキしっぱなしだった。隣りを歩く潤君の話し声にもどこか集中しきれなくて、何だかフワフワとした浮遊感の中にいる感じ。
そんな夢見心地の中、潤君に導かれるまま歩いていた。
「この辺りなら人も少ないですし、花火も見やすそうですね」
そう言って潤君が案内してくれたのは、皆がいる海岸沿いから少し離れた所にある小高い丘だった。
「あ、そろそろ始まりそう」
私がそう言い終わるのとほぼ同時に、近くの海面からシュルシュルと第一発目の花火が打ち上がった。
ドーーーン!!
大音響を響かせ、心臓の内側から体全体を振るわせるような振動が走り抜けた。
夜空に弾けた大きな色鮮やかな花火に、一斉に喝采が起こる。
「わあ……綺麗」
「すごい……」
私と潤君は空を見上げながら、自然に言葉を零す。
心から何かを美しいと思ったり、感動したり――この合宿は私にとって一生の思い出になるような出来事がいっぱいだ。
明日には合宿も終了し、この島を離れて学園へと戻る。そして演劇祭の本番を迎え、それで――半年もすれば私は卒業する。
「これだけ近いと凄い迫力ですね」
「うん」
隣から聞こえる潤君の感嘆の声にポツリと答える。
次々と重力に逆らって空へと投げ出されて行く花火の雨を見ていると、色々な事を忘れてしまいそうになる。ずっとこのままこうしていたい――
「潤」
ふいに聞こえたその声に、私は思わず顔を弾かれた。振り向くとそこには水原さんが立っていた。
「潤、一緒に見てもいい?」
「いや……小日向先輩いるし」
真っ直ぐに潤君を見つめながら言った水原さんの言葉に、やっぱり潤君も真っ直ぐ見つめ返しながら答える。
水原さんは私をチラリと見ると、すぐさままた潤君へと視線を戻した。
「潤、もう一度言うわ。私と付き合って」
「水原、それについては」
潤君が何かを言おうとした瞬間、再び大きな花火が上がった。
ドーーーン!!
大きな音が鼓膜を揺らす。潤君がなんて言ったのかが聞き取れなかったけど、私がここにいてはいけない事だけは分かった。
「あ、私ちょっと向こう行ってるね」
「小日向先輩も居て下さい」
私が踵を返そうとすると、水原さんがそれを制した。
「潤、私は潤の事が好きなの。付き合ってよ」
水原さんの堂々とした言葉と態度に、何故だか私の方こそ体が震えた。
聞きたくない――潤君の返事なんて聞きたくない!
「……ごめん。無理」
思わず耳を塞ぎそうになったその時、潤君の凛とした声が辺りに響いた。
「なんでよ? 私は……」
「ごめん。でも水原とは良い友達でいたい」
水原さんの瞳がサッと潤んだ。その濡れた瞳の黒い世界に幾筋もの光の花が咲いては散っていく。私は――
「そう。じゃあ」
そう言うと水原さんは宿舎の方へと駆け出した。
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