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始まりは突然に・No.3

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streetpoint

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始まりは突然に











 翌朝、7時ちょうどだったと思う。近所迷惑も顧みないチャイムの嵐に、軽く二日酔い気味の脳みそにクリティカルダメージを受けながら、フラフラ玄関を開けた私の目の前に、やたらと男前な人物が口を少しだけへの字に曲げて立っていた。その見覚えのある男性を記憶の中から探り出し、それが誰かを判断すると思わず間抜けな声が口からこぼれた。


「へ? あ、れ……? 御影山、社長――?」

「さっさと支度をしろ、会社に行くぞ」

「ぅえ?」


 言うが早いか、御影山社長はまだ状況が飲み込めないでいる私の横をすり抜け、勝手に私の部屋へと上がって行った。

 そしてあろうことか、人の家の、しかもうら若き乙女である私のタンスやクローゼットを勝手に物色しはじめ、私が持っている中でも一番値段の高いシャツやスカートをベッドの上に投げると、呆れた様子で口を開いた。


「さっさと着替えろ」

「え? あ、」

「まだ寝ぼけてるのか? それともその貧相な体で俺を誘っているのか? 自分で着替えないなら脱がせてやるぞ」


 本気か冗談か、社長の手が私のパジャマのボタンに伸びて来た所で一気に覚醒してベッドの上の服に飛びついた。

 ぎゃー! なにしてくれてんのっ!?


「い、い、今すぐ着替えますっ! メイクも5分で終わらせます! ですから社長は外でお待ち下さいっ!!」

「2分だ」


 有無を言わさない準備時間に混乱する脳みそすら放り投げる勢いで、私はもう半分泣きながらやけくそに返事をした。


「わかりましたっ!!!」








〜〜〜







 まさか、本当に2分で支度が出来るなんて……

 御影山社長の襲撃(?)から、私は疾風の如き早さで着替えるとメイクを済ませた。

 今は社長が乗り付けた高級車の後部シートに体を埋めて、隣で携帯に向かって仕事の指示を出している御影山社長の横顔をチラリと伺いながら、自分の置かれている状況を改めて認識している所だ。


 私、本当に美成堂に行くんだ――――


 そんな感慨とともに改めて昨日の失態を思い出した私は、今更に恥ずかしくなって慌てて両手で顔を覆った。


 てゆうかどうしよう! 私ったらお酒の勢いでどんな仕事でも結果を出せるだなんて大見栄切って、ダメだったらずっと会社をキレイにする清掃員さんなのに!? いや、別にお掃除嫌いじゃないし、どっちかっていったらむしろ向いてるかなー、なんて思わないこともないけど――じゃなくって! そうじゃなくて、私がやりたい仕事は――――


「随分と真剣なようだが、何か良いアイディアでも浮かんだのか?」


 隣から発せられた低いながらも通りの良い声に、はっとして顔を上げると厭味たらしく口の端を上げながら、御影山社長が私を見つめていた。「お前みたいな小娘にまともな仕事が出来るか」とでも言いたそうなその目つきが、私の闘争本能を揺さぶった。

 絶対私をバカにしてるんだわ。悔しい……そうよ、どんなことでも頑張って結果を出すって言ったのよ。こんな……やる前から負けててどうするの!


「絶対に結果を出してみせるんだから……」


 小さな声で、冷たく眼鏡を光らせる社長に向けてボソリと呟いた。

 負けてたまるか、絶対に良くやった。って言わせてやるんだから!!









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