チェンジ・ザ・ワールド☆
追憶.2
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追憶
「キャアアァァーーーー!!」
突然辺りに響いた悲鳴に、操は弾かれるように顔を上げた。
職場である真選組屯所に向かう道中、地面を見て歩いていた操の耳に、突然大きな声が届いたのだ。少し先に人垣が出来ていて、その人垣に向かって走り出す。
「ちょっとすみません、通して下さい」
かき分けたその先には、見るからに柄の悪い浪人が4名いて、刀を光らせながら周囲の人を威嚇していた。
その浪人達の足もとには、顔から血を流し泣きわめく幼い少女と髪の毛を鷲掴みにされている男性、そしてその2人の前で尻餅をついている女性の姿。女性は今にも浪人に刀で切られそうな勢いだ。
「やめなさい!」
操は反射的に飛び出し、あっという間に女性に刀を突きつけている浪人の腕を掴んだ。
「来たな……」
浪人の一人が呟いた。
「あんたが吉田操先生だな?」
「だったらなに? 今すぐその手を離しなさい」
操は普段見せないような怖い顔で浪人達を睨み、掴んでいる浪人の手首をひねり上げた。
「いてっ! いてててて!!」
それにひるんだ浪人を突き飛ばし、男性の髪を掴んでいる浪人の手首を素早く手刀で叩く。
「うわっ!?」
女とは思えないほどの力で殴られ、痛みと衝撃で刀を落とした。
「おっと、そこまでだ」
「!?」
振り向くと、人垣の向こう側から新たな浪人が現れた。その浪人は若い女性の首を腕で締め、鋭い刃物をそののど元に突きつけている。
「いやあっ!」
「この女が死んでもいいのか?」
「医者が人の命なんてどうでもいいなんて、まさか言わねえよなぁ?」
先ほど操に突き飛ばされた男が、嫌らしい笑顔で刀を拾う。そして操の背中に刀を当てた。
「大人しく着いてくれば、女は離してやる」
「……あなた達、誰の差し金なの? 攘夷浪士?」
「黙って着いて来い。関係無い連中がたくさん殺されてもいいのか?」
「ああ、そう言えばあんたが以前勤めていた診療所、あそこは今頃血の海かもなぁ」
「ははは! あっちに行った連中は俺達ほど紳士じゃねえからなぁ!」
浪人達の言葉に操は目を見開く。
「あなた達! 診療所の人たちを傷付けたの!?」
「うるせぇ!」
バシン!!
「っ!」
横を歩いていた浪人が、操の頬を思い切り殴った。
「いいからてめぇは着いてくればいいんだっつってんだろ!? あんたの大事な連中が、もっと酷い目に遭わされてもいいのか!? ああっ!?」
ぐっと歯を食いしばり、操は黙って浪人達に後ろ手に縛られた。口の中に広がる血の味に顔をしかめ、地面にその血をふっと吐き出す。そして突き飛ばされながら、操達の様子を遠巻きに見ていた野次馬に言った。
「誰か、怪我をしている子を早く病院に連れて行ってください!」
「しゃべるな!」
「うっ!」
次ぎに操の後頭部に鈍い痛みが走り、そこで操は気を失ってしまった。
「何だって!?」
真選組に緊張が走った。
市内を見回りに出ていた山崎からの報告で、今朝、操らしい女性が浪人達に拉致されたというのだ。近藤始めその場にいた全員が刀を持って立ち上がる。沖田はバズーカを肩に担いだ。
「てめーらちょっと落ち着け!」
一人冷静にあぐらをかいていた土方が声を上げる。
「落ち着けって副長! 今日まだ操先生屯所に来てないし、目撃者もたくさんいるんですよ!」
「絶対攘夷浪士達の仕業です!」
「くっそー。やつら絶対許さねえ!」
「だから落ち着けって言ってんだろ! 俺達が派手に動き回れば目立つ。狙いが俺達真選組なのか、もしかしたら万事屋かも分からねえ」
怒りをあらわにする隊員達をなだめ、土方が言うと近藤が口を開いた。
「だがトシ、操先生がさらわれたのはまず間違いないんだ。確かに全員で動くのは得策ではないが、その浪士達の事は早く探した方がいい。もしかしたら操先生自身が狙いかもしれん!」
「操先生は人に恨まれるような人じゃありませんよ、局長!」
「もし操先生が狙いなら、もっと質が悪いじゃないですか! 俺達先生がいなかったら安心して仕事出来ません!」
「そうですぜぃ近藤さん。でもまあ、確かに大勢でうろうろするのは具合が悪い。仕方ねえから、取りあえずオレがちょっと行って探ってきやすよ」
そう言って沖田はバズーカを置き、刀を腰に差して部屋を出て行った。
「よし、取りあえず総悟と一緒に何人か行け。トシも何人か連れて操先生がさらわれた場所で聞き込みだ。俺はとっつぁんの所で最近怪しい動きをしている組織がないか調べて来る。他の奴らは通常通りの仕事だ。何かあってもすぐ動けるように、連絡はみつにしろ! 解散!!」
「「「はいっ!!!」」」
続く…
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