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OP『胎動~インディケイション~』 - (2011/05/22 (日) 10:48:19) の1つ前との変更点
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**OP『胎動~インディケイション~』
――――――――全てが紫電に染まる
この場にいた全ての人間は同じ光を目にし、そして覚醒した。
鉛色に光る金属に覆われた無機質な空間。用途の分からぬ機械がいくつも存在し、壁一面にパイプの走る部屋。
しかし、彼らの目を最もひいたのは部屋の中央に鎮座している"それ”だろう。
"それ”を最初に見た者たちはほぼ同じ感想を抱いた、『まるで金属でできた巨大な肉塊だ』と。
「アザゼル……」
青年が呟くつもりで発した声は、広い空間でやけに大きく響いた。
それを引き金に、話し声が場を満たし始める。
彼らは現状を把握出来ていないのだ。
気絶して気がつけばここにいた。ごく数名を除けばここに連れてこられてきた者たちの境遇は同じ。
このような状況で楽観的な考え方をできるものがどれだけいるのだろうか。
ある者は近くにいた仲間と推論を交わしあい。
ある者は敵の罠ではないかと警戒を深め。
またある者はパニックを起こしかけている。
「静粛に―――」
別段大きな声というわけではない、理知的で落ち着いた成人男性の声だった。
しかし、部屋にいた全ての人間が音源である男性へと顔を向ける。
今まで誰もいなかったはずの部屋の中央、青年がアザゼルと呼んだ金属塊の頂上へと。
「初めまして、私の名はキース・ブラック。
出会ってばかりで申し訳ないが、君たちは私の"プログラム”に協力してもらいたい」
長く伸びたブロンドの髪とそれと対照的な黒いスーツを身に包んだ男、ブラックが芝居がかった動作で腕を広げる。
その仕草と顔に浮かんだどことなく胡散臭さを感じさせる笑み、そして問答無用で気絶させられ連れてこられたという事実。
この場に少なからず存在していた気の短い者たちの堪忍袋の緒を引き千切るには十分すぎる要因だろう。
「ぬぅ、ブラックとやら。オレがきさまの言う事をおとなしく聞くとでも思ったか、このバカ者が!!」
「オッサンの言うとおりだぜ、何がプログラムだ固羅ァ」
集団の中から二人の男が飛び出した。
片や、筋肉の鎧を全身にまとった白人の男性。片や、僅かに赤みのかかった黒髪を無造作に跳ねさせた少年。
人種も、年齢も、信条すらも異なる二人であったが、共通するものが一つ。
それは目の前にいる鼻持ちならない野郎をぶん殴りたいという思い。
しかし、二人の望みが叶うことはなかった。
「やいやい人間、"ぷろぐらむ”だかなんだかしらんが、人にものを頼むときには礼儀ってのが必要なのを勉強しな!」
金色の獣が天へと右腕をかざす。
それと同時にブラックの頭上に稲光が煌き、次の瞬間には光の奔流が彼の体を貫く。
一瞬、ほんの一瞬であるが、不意を突かれた群衆の目が閃光によってくらみ、動きが止まった。
「なっ!?」
この場にいた者たち、ブラックを除くほぼ全ての者達が驚愕に瞳を広げる。
原因は二つ。
まず一つ目は、雷の直撃を受けたはずのブラックがスーツに焦げ跡すら残さずに立っていること。
そして二つ目。ある意味ではこちらのほうが深刻かもしれない。
ブラックへと迫る雷光に注意が移った刹那の間で自分の首に金属製の首輪が巻かれていたこと。
突如現れたそれは金属特有の冷たさを首筋に伝え、不安を煽る。
「これから協力してくれる君たちに、プログラムの内容を教えよう。
"殺し合え”それ以上でもそれ以下でもない。ここに呼んだ80人の中で最後の一人になること、それが君たちに与えられた仕事だ。
過程は問わない。真っ向から殺して回るもよし、寝首を掻くのもよし。とにかく最後まで生き残ればいい」
室内の雰囲気がガラリと変わった。
緊張で張り詰めていた空気に殺気がブレンドされ、重厚感を否応なしに与えるようになった。
混乱する者や、息を飲み込み震え出す者もいたが、"参加者”の大半は敵意を込めた瞳でブラックを睨む。
だが、ぶつけられたプレッシャーを意に介した様子もなくブラックは話を続ける。
「大丈夫、最後の一人に残った者の安全は私が保障しよう。だから存分に殺しあって―――『知ったことか!』」
青年の一喝が大気が震わした。
人波をかき分けて出てきたのは学ラン姿の巨躯。
ズボンのポケットに手を入れながら誰よりもアザゼルの傍へと近寄り、ブラックを見上げる。
「いきなり呼びつけといて殺し合え。大人しく従うとでも思ったか?」
「その疑問はごもっともだ、金剛晄くん。いや金剛番長。だから殺し合う理由を用意したよ」
――――ボン
小さな炸裂音が響き渡った。
それとほぼ同時に聞こえる悲鳴。
金剛番長も音源へと振り返り。
「悪矢七!」
驚愕と怒り、そして悲しみの混じった咆哮を上げる。
その視線の先にあるのは首の失われた少年の死体。しかし、すぐ傍に落ちていた頭部が彼が何者であるかを示していた。
悪矢七光。二代目金剛番長。
漢になろうと、誰よりも金剛番長に憧れた少年はあまりにもあっけなくその生命を散らした。
何が起こったかすら分からぬ表情で。
「分かってくれたかね、君たちの首に巻かれたそれには爆薬が仕込まれている。
爆発すれば君の肉体を以てしても耐えられない威力のものがね」
圧倒的優位に笑みを深めたブラック。
しかし、金剛番長は怒りを貼りつけた形相でブラックへと歩み寄る。
「ほぅ、爆弾が怖くないと?」
「それがどうした!」
ブラックの脅し文句を一蹴し、金剛番長は足を止めない。
困ったかのような動作をし、それでも余裕を崩さぬ態度でブラックは言い放つ。
「仕方ない、話を聞く気がないなら君には一足先に会場入りしてて貰おうか」
「な、どこにい―――」
腕を掴まれる感覚と共に、金剛番長はこの部屋から消え去った。
傍から見ていたものには突然人が消えたかのようにしか見えず、同じくブラックへ攻撃を仕掛けようとした者たちの動きも止まる。
「ふむ、話をするにはちょうどいい感じになったようだ。
聞き給え、何も殺し合いをさせて勝ち残ったものへの褒美が生きて帰れるだけじゃ割にあわないだろう。
だからプログラム最大の協力者として優勝者には景品を用意しよう。
富も地位も思うのままだ、望むのであれば死者の蘇生も可能だと伝えておこう。
人数の制限はない。この殺し合いで死したものを全て蘇らせろと言うのならばそれにも応じるつもりだ」
一区切りがついたブラックが話を一時止める。
部屋が完全なる静寂に包まれた。囁き声の一つすらも聞こえない。
無言を返事と捉えたか、ブラックは朗々と語りを続けていく。
「では、ルールを説明しよう。
根本的な部分はさっきも言ったとおり、周りの人間を全て殺して最後の一人になればいい。
適当な武器と数日分の食料、そして会場の地図は用意したからそれを活用してくれ。
武器は基本的にこの玉の中に入っている。出し入れは念じるだけで可能だから難しく考えることはない。
それと、これからが大切な話だ。死にたくなくばしっかりと覚えていて欲しい。
私は六時間に一度会場全域に放送を流す。
内容はその六時間で誰が死んだか君たちに伝えること、そして禁止エリアの発表だ。
ちなみに禁止エリアに入ってしまえば君たちの首輪が爆発し、そこの彼のようになる。
そうなりたくなくば放送は聞き逃さぬようにするように」
一息もつかずにここまで話しきり、再びブラックは語りを止める。
そしてハッと何かを思い出したような表情をして、一つだけ付け加えた。
「そうそう、言い忘れていた。この首輪、外そうと力を与えても爆発する。
少し触れる程度なら大丈夫からそこまで怯えることはない。
当然だが、能力を使って外すことも考えないように」
パチンとブラックが発した指なりの音が木霊す。
すると、誰もいなかったはずの空間から一人の少女が現れる。
手枷を付けられ猿轡を噛まされてはいるが、意識はあるようでブラックの手から逃れようと必死に身を捩る。
「カツミ!? ブラック、お前!」
樹の幹が割れるような音を立て、青年の右腕が変質する。
それを一言で形容するならば、悪魔の右腕。
異形の物と化した青年の右腕は急速な速度で伸長し、ブラックの体を貫く。
「なっ!?」
青年、高槻涼本人ですらこの結果には予想外であった。
ブラックは血反吐を吐き出し、全身の筋肉を弛緩させる。
殺し合いの元凶がいとも簡単に死のうとしている、その光景はあたかもおかしな夢を見ているようであった。
「……せ。……わ…………せ」
うわ言のように呟くブラックの声は誰にも届かない。
ガクガクと体を震わせ、膝が小さく落ちる。
参加者がおかしな夢だと思った光景が悪夢に変わった。
青年の右腕がガラス細工のように砕け散る。
瀕死であったはずのブラックの瞳に生気が戻る。
ブラックの髪の毛が途中から千切れ、元の半分ほどの長さに変わる。
そして、崩れかかった体勢を立て直す。
「いわゆるデモンストレーションというヤツだ。君たちに私が殺せないことは理解してくれたかね?
では、最終工程といこうか。先程の爆発を見てないものが多いだろうからな、もう一度だけ実演してみよう」
「やめろ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫び声を無視しブラックは手にしていた少女を宙へと放り、再度指を鳴らす。
先刻と同じ爆発音と共に少女の頭部が胴体とあっさり分かれ、別々に床へと叩きつけられた。
「カツミいいいいいいいいいいいいいいいいい」
涼の悲痛な声が場を支配する。
しかし、それを意に介した様子もなくブラックは言った。
「何を悲しむ必要がある? 高槻涼、君の実力ならば優勝を狙うのだって容易いだろう?
君が優勝して赤木カツミを甦れせてやればいい
さて、無駄な話に時間をとってしまったな。そろそろ君たちには移動してもらおうか。健闘を祈る」
ブラックの言葉が終わるやいなや、参加者の姿が消える。
残ったのはよく似た顔をした一組の男女のみ。
「どうしたんだいバイオレット? なにか言いたいみたいだが」
「ええ、首輪の威力のデモンストレーションで赤木カツミを殺したのはなぜかしら?
彼女は別に使い道があるからって言ってたのはあなたじゃないブラック兄さん。
これじゃあグリーンが怒るんじゃないのかしら? あの子はこの殺し合いについて何も聞いてないはずよ」
「赤木カツミを巻き込むなんて言ったらアイツは賛成するわけがないだろう? だったら最初から蚊帳の外にいてもらったほうが楽だ。
それにブラックが言っていた使い道とやらが私にとって有用だとは限らないのだよ」
「それって?」
「いや、気にしなくてもいい。さぁ、そろそろ君も会場に行きたまえバイオレット」
彼の言葉を訝しむ彼女の姿も消え、残ったのはキース・ブラック一人となる。
「機械仕掛けの神は運命の歯車を回し始めた。さぁ、プログラムの開始だ」
&color(red){【悪矢七光@金剛番長 死亡】}
&color(red){【赤木カツミ@ARMS 死亡】}
【主催者 キース・ブラック?@ARMS】
週刊少年サンデーバトルロワイアル――――開幕
*投下順で読む
[[戻る>第一放送までの本編SS(投下順)]] 次へ:[[物語の始まりはそう、為す術のない彼女が――――]]
*時系列順で読む
[[戻る>第一放送までの本編SS(時系列順)]] 次へ:[[物語の始まりはそう、為す術のない彼女が――――]]
*キャラを追って読む
|GAME START|キース・ブラック?||
|GAME START|ボー・ブランシェ|005:[[残される者]]|
|GAME START|花菱烈火||
|GAME START|金剛晄|031:[[ホームラン]]|
|GAME START|高槻涼|026:[[人間]]|
|GAME START|とら|019:[[現在位置~Where do we come from? Where are we going?~]]|
|GAME START|キース・バイオレット|~|
#right(){&link_up(▲)}
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**OP『胎動~インディケイション~』
――――――――全てが紫電に染まる
この場にいた全ての人間は同じ光を目にし、そして覚醒した。
鉛色に光る金属に覆われた無機質な空間。用途の分からぬ機械がいくつも存在し、壁一面にパイプの走る部屋。
しかし、彼らの目を最もひいたのは部屋の中央に鎮座している"それ”だろう。
"それ”を最初に見た者たちはほぼ同じ感想を抱いた、『まるで金属でできた巨大な肉塊だ』と。
「アザゼル……」
青年が呟くつもりで発した声は、広い空間でやけに大きく響いた。
それを引き金に、話し声が場を満たし始める。
彼らは現状を把握出来ていないのだ。
気絶して気がつけばここにいた。ごく数名を除けばここに連れてこられてきた者たちの境遇は同じ。
このような状況で楽観的な考え方をできるものがどれだけいるのだろうか。
ある者は近くにいた仲間と推論を交わしあい。
ある者は敵の罠ではないかと警戒を深め。
またある者はパニックを起こしかけている。
「静粛に―――」
別段大きな声というわけではない、理知的で落ち着いた成人男性の声だった。
しかし、部屋にいた全ての人間が音源である男性へと顔を向ける。
今まで誰もいなかったはずの部屋の中央、青年がアザゼルと呼んだ金属塊の頂上へと。
「初めまして、私の名はキース・ブラック。
出会ってばかりで申し訳ないが、君たちは私の"プログラム”に協力してもらいたい」
長く伸びたブロンドの髪とそれと対照的な黒いスーツを身に包んだ男、ブラックが芝居がかった動作で腕を広げる。
その仕草と顔に浮かんだどことなく胡散臭さを感じさせる笑み、そして問答無用で気絶させられ連れてこられたという事実。
この場に少なからず存在していた気の短い者たちの堪忍袋の緒を引き千切るには十分すぎる要因だろう。
「ぬぅ、ブラックとやら。オレがきさまの言う事をおとなしく聞くとでも思ったか、このバカ者が!!」
「オッサンの言うとおりだぜ、何がプログラムだ固羅ァ」
集団の中から二人の男が飛び出した。
片や、筋肉の鎧を全身にまとった白人の男性。片や、僅かに赤みのかかった黒髪を無造作に跳ねさせた少年。
人種も、年齢も、信条すらも異なる二人であったが、共通するものが一つ。
それは目の前にいる鼻持ちならない野郎をぶん殴りたいという思い。
しかし、二人の望みが叶うことはなかった。
「やいやい人間、"ぷろぐらむ”だかなんだかしらんが、人にものを頼むときには礼儀ってのが必要なのを勉強しな!」
金色の獣が天へと右腕をかざす。
それと同時にブラックの頭上に稲光が煌き、次の瞬間には光の奔流が彼の体を貫く。
一瞬、ほんの一瞬であるが、不意を突かれた群衆の目が閃光によってくらみ、動きが止まった。
「なっ!?」
この場にいた者たち、ブラックを除くほぼ全ての者達が驚愕に瞳を広げる。
原因は二つ。
まず一つ目は、雷の直撃を受けたはずのブラックがスーツに焦げ跡すら残さずに立っていること。
そして二つ目。ある意味ではこちらのほうが深刻かもしれない。
ブラックへと迫る雷光に注意が移った刹那の間で自分の首に金属製の首輪が巻かれていたこと。
突如現れたそれは金属特有の冷たさを首筋に伝え、不安を煽る。
「これから協力してくれる君たちに、プログラムの内容を教えよう。
"殺し合え”それ以上でもそれ以下でもない。ここに呼んだ80人の中で最後の一人になること、それが君たちに与えられた仕事だ。
過程は問わない。真っ向から殺して回るもよし、寝首を掻くのもよし。とにかく最後まで生き残ればいい」
室内の雰囲気がガラリと変わった。
緊張で張り詰めていた空気に殺気がブレンドされ、重厚感を否応なしに与えるようになった。
混乱する者や、息を飲み込み震え出す者もいたが、"参加者”の大半は敵意を込めた瞳でブラックを睨む。
だが、ぶつけられたプレッシャーを意に介した様子もなくブラックは話を続ける。
「大丈夫、最後の一人に残った者の安全は私が保障しよう。だから存分に殺しあって―――『知ったことか!』」
青年の一喝が大気が震わした。
人波をかき分けて出てきたのは学ラン姿の巨躯。
ズボンのポケットに手を入れながら誰よりもアザゼルの傍へと近寄り、ブラックを見上げる。
「いきなり呼びつけといて殺し合え。大人しく従うとでも思ったか?」
「その疑問はごもっともだ、金剛晄くん。いや金剛番長。だから殺し合う理由を用意したよ」
――――ボン
小さな炸裂音が響き渡った。
それとほぼ同時に聞こえる悲鳴。
金剛番長も音源へと振り返り。
「悪矢七!」
驚愕と怒り、そして悲しみの混じった咆哮を上げる。
その視線の先にあるのは首の失われた少年の死体。しかし、すぐ傍に落ちていた頭部が彼が何者であるかを示していた。
悪矢七光。二代目金剛番長。
漢になろうと、誰よりも金剛番長に憧れた少年はあまりにもあっけなくその生命を散らした。
何が起こったかすら分からぬ表情で。
「分かってくれたかね、君たちの首に巻かれたそれには爆薬が仕込まれている。
爆発すれば君の肉体を以てしても耐えられない威力のものがね」
圧倒的優位に笑みを深めたブラック。
しかし、金剛番長は怒りを貼りつけた形相でブラックへと歩み寄る。
「ほぅ、爆弾が怖くないと?」
「それがどうした!」
ブラックの脅し文句を一蹴し、金剛番長は足を止めない。
困ったかのような動作をし、それでも余裕を崩さぬ態度でブラックは言い放つ。
「仕方ない、話を聞く気がないなら君には一足先に会場入りしてて貰おうか」
「な、どこにい―――」
腕を掴まれる感覚と共に、金剛番長はこの部屋から消え去った。
傍から見ていたものには突然人が消えたかのようにしか見えず、同じくブラックへ攻撃を仕掛けようとした者たちの動きも止まる。
「ふむ、話をするにはちょうどいい感じになったようだ。
聞き給え、何も殺し合いをさせて勝ち残ったものへの褒美が生きて帰れるだけじゃ割にあわないだろう。
だからプログラム最大の協力者として優勝者には景品を用意しよう。
富も地位も思うのままだ、望むのであれば死者の蘇生も可能だと伝えておこう。
人数の制限はない。この殺し合いで死したものを全て蘇らせろと言うのならばそれにも応じるつもりだ」
一区切りがついたブラックが話を一時止める。
部屋が完全なる静寂に包まれた。囁き声の一つすらも聞こえない。
無言を返事と捉えたか、ブラックは朗々と語りを続けていく。
「では、ルールを説明しよう。
根本的な部分はさっきも言ったとおり、周りの人間を全て殺して最後の一人になればいい。
適当な武器と数日分の食料、そして会場の地図は用意したからそれを活用してくれ。
武器は基本的にこの玉の中に入っている。出し入れは念じるだけで可能だから難しく考えることはない。
それと、これからが大切な話だ。死にたくなくばしっかりと覚えていて欲しい。
私は六時間に一度会場全域に放送を流す。
内容はその六時間で誰が死んだか君たちに伝えること、そして禁止エリアの発表だ。
ちなみに禁止エリアに入ってしまえば君たちの首輪が爆発し、そこの彼のようになる。
そうなりたくなくば放送は聞き逃さぬようにするように」
一息もつかずにここまで話しきり、再びブラックは語りを止める。
そしてハッと何かを思い出したような表情をして、一つだけ付け加えた。
「そうそう、言い忘れていた。この首輪、外そうと力を与えても爆発する。
少し触れる程度なら大丈夫からそこまで怯えることはない。
当然だが、能力を使って外すことも考えないように」
パチンとブラックが発した指なりの音が木霊す。
すると、誰もいなかったはずの空間から一人の少女が現れる。
手枷を付けられ猿轡を噛まされてはいるが、意識はあるようでブラックの手から逃れようと必死に身を捩る。
「カツミ!? ブラック、お前!」
樹の幹が割れるような音を立て、青年の右腕が変質する。
それを一言で形容するならば、悪魔の右腕。
異形の物と化した青年の右腕は急速な速度で伸長し、ブラックの体を貫く。
「なっ!?」
青年、高槻涼本人ですらこの結果には予想外であった。
ブラックは血反吐を吐き出し、全身の筋肉を弛緩させる。
殺し合いの元凶がいとも簡単に死のうとしている、その光景はあたかもおかしな夢を見ているようであった。
「……せ。……わ…………せ」
うわ言のように呟くブラックの声は誰にも届かない。
ガクガクと体を震わせ、膝が小さく落ちる。
参加者がおかしな夢だと思った光景が悪夢に変わった。
青年の右腕がガラス細工のように砕け散る。
瀕死であったはずのブラックの瞳に生気が戻る。
ブラックの髪の毛が途中から千切れ、元の半分ほどの長さに変わる。
そして、崩れかかった体勢を立て直す。
「いわゆるデモンストレーションというヤツだ。君たちに私が殺せないことは理解してくれたかね?
では、最終工程といこうか。先程の爆発を見てないものが多いだろうからな、もう一度だけ実演してみよう」
「やめろ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫び声を無視しブラックは手にしていた少女を宙へと放り、再度指を鳴らす。
先刻と同じ爆発音と共に少女の頭部が胴体とあっさり分かれ、別々に床へと叩きつけられた。
「カツミいいいいいいいいいいいいいいいいい」
涼の悲痛な声が場を支配する。
しかし、それを意に介した様子もなくブラックは言った。
「何を悲しむ必要がある? 高槻涼、君の実力ならば優勝を狙うのだって容易いだろう?
君が優勝して赤木カツミを甦れせてやればいい
さて、無駄な話に時間をとってしまったな。そろそろ君たちには移動してもらおうか。健闘を祈る」
ブラックの言葉が終わるやいなや、参加者の姿が消える。
残ったのはよく似た顔をした一組の男女のみ。
「どうしたんだいバイオレット? なにか言いたいみたいだが」
「ええ、首輪の威力のデモンストレーションで赤木カツミを殺したのはなぜかしら?
彼女は別に使い道があるからって言ってたのはあなたじゃないブラック兄さん。
これじゃあグリーンが怒るんじゃないのかしら? あの子はこの殺し合いについて何も聞いてないはずよ」
「赤木カツミを巻き込むなんて言ったらアイツは賛成するわけがないだろう? だったら最初から蚊帳の外にいてもらったほうが楽だ。
それにブラックが言っていた使い道とやらが私にとって有用だとは限らないのだよ」
「それって?」
「いや、気にしなくてもいい。さぁ、そろそろ君も会場に行きたまえバイオレット」
彼の言葉を訝しむ彼女の姿も消え、残ったのはキース・ブラック一人となる。
「機械仕掛けの神は運命の歯車を回し始めた。さぁ、プログラムの開始だ」
&color(red){【悪矢七光@金剛番長 死亡】}
&color(red){【赤木カツミ@ARMS 死亡】}
【主催者 キース・ブラック?@ARMS】
週刊少年サンデーバトルロワイアル――――開幕
*投下順で読む
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*時系列順で読む
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*キャラを追って読む
|GAME START|キース・ブラック?||
|GAME START|ボー・ブランシェ|005:[[残される者]]|
|GAME START|花菱烈火|038:[[レッツゴーレッカマン]]|
|GAME START|金剛晄|031:[[ホームラン]]|
|GAME START|高槻涼|026:[[人間]]|
|GAME START|とら|019:[[現在位置~Where do we come from? Where are we going?~]]|
|GAME START|キース・バイオレット|~|
#right(){&link_up(▲)}
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