(空)回る運命


「なぜ私がこんなことを…」
マシュマー・セロは湖底を探索しながらそう呟かざるをえなかった。

サスガ・ミオなる少女と協力することになったのは良いのだが、いざ出発と言う時になって、
「ちょっと待って、マシュマーさんの機体って海底探査用っぽいんだよね?」
と聞いて来たのが始まりだった。
「うむ、はっきりそうだと言い切れるわけではないが、9割9分間違いはあるまい」
「それじゃあちょっと、そこの湖を調べてみない?」
「何故そんなことをせねばならんのだ?今は一刻も早くハマーン様を見つけねばならんというのに」
「わざわざそんな機体を渡すってコトは、海底探査の機能が役立つ状況があるってことじゃない?
 あの変な仮面の…こんな事をやろうって言うんだから変な、じゃなくて変態か、とにかくあの変態仮面
 『ゲーム』って言ったよね?って事はやり様によっては私達みたいなダメダメっぽい機体でも、
 使い方によっては何とかなるようにしてあるんじゃない?
 もしかして、湖の底にスゴイ武器とか、なにか役に立つものが隠されてるとか。
 マシュマーさんもそう思わない?思うよね!よし、それじゃあ行ってみよう!」

一気にまくし立てられ、つい探査を引き受けてしまった。
「くっ、あんな小娘の言う事を聞いてしまったばっかりに!」
結局何も見つからなかったのだが、一理あると思っている事も否定できない。
でなければ勢いに押し切られる形とはいえ、こうしてわざわざ1時間も掛けて探査などしない。
「他にも湖はあったな…」
とりあえずは湖を目標にして行動するのも悪くないかもしれない。

「お帰りマシュマーさん!ご飯にする?お風呂にする?それともア・タ…」
「何を分けの分からん事を言って…ん、どうした?」
水面から出たネッサーを見るなり駆け寄ってきたボスボロットが固まっている。
「もしかして何も見つけてこなかったからショックを受けているのか?」
ああ見えて意外と繊細(?)なのかもしれない。
「いや、その、大漁なんじゃないかな?」
「それはねぎらいの言葉か?それとも皮肉か?」
「…本当に気付いてない?」
「何をだ?」
「シムラ!後ろ後ろ!」
「私の名前はマシュマー・セロだと言ったではないか!というか、さっきちゃんと呼んでなかったか?」
「いいから後ろ!」
後ろが何だというのだ!
はっきりしない物言いに、少し不快になりながら後ろを振り返る。
そしてそこにあるものを見て、ボスボロットと同じようにマシュマーは固まった。

ボスボロットはおろか、ネッサーすら遥かに上回る大きさを持った、東洋の龍のよう外観の機体が
湖から姿を表していた。湖から出ている分だけで優に100メートルは超えているだろうか?
そしてその外見は戦闘用としか思えなかった。

「逃げるぞサスガ・ミオ!」
「らじゃー!」
叫びながら全速力で逃げ出す、しかしその巨体に似合わぬすばやい動作で、二人の機体の前に間単に回り込む。
このままではいかん!
どう考えてもネッサーとボスボロットでは勝てそうに無い、さらに逃げようにも機動性はあちらのほうが
圧倒的に上回っているようだ。
私にはハマーン様をお守りするという使命が!いっそこの小娘を囮に…

(何を考えているのだ私は!そのような事、断じてネオジオンの騎士たる者がすることではない!)
己の考えに驚愕するマシュマー、しかしその考えはハマーンへの忠誠心を強化した故の発想である事、
そしてそれを否定した事の意味を、マシュマー自信は気付いてはいなかった。

「サスガ・ミオ!ここは私に任せて逃げるのだ!」
決意と共にマシュマーは叫んだ。
「ちょっ!マシュマーさん、なに言ってるのよ!ハマーンって人を守るんじゃなかったの!」
そのとおりだ、ボスボロットの逃げる時間を稼げば、間違いなくネッサーは撃墜されるだろう、
「貴様に任せる!仲間を集め、そしてハマーン様をお守りするのだ!」
「何カッコつけてるのよ、それにいきなり諦めてどうすんの!」
マシュマー自身、我ながらどうかと思わないでもないが、
「二人で闘っても負けることに変わりは無い、ならばバリアがついていて空も飛べる私の方が適任だ。
 それに私は諦めたわけではない、ボスボロットが残るより生き延びる可能性は高いはずだ!」

嘘だ、先ほど会ったばかりとはいえ、マシュマーに生き延びる気など無い事ぐらいすぐに分かる。
そして何を言っても、その決意が変わる事は無いことも。
「いいから早く行け!」
「マシュマーさん!」
「さあ来い、己の肉が骨からこそげ落ちようとも、此処から先には一歩たりとも進ません!
 うおおおおおお!ネッサーバリアァァァァァァァ!!!」
「いきなり防御なの!?」
悲壮な雰囲気に似合わぬツッコミが炸裂した瞬間、目前の機体が声を掛けてきた。
「あの…もりあがっているところ悪いのですが、こちらに戦う気は有りません」
「それを早く言え!!」×2

「まあ、なんだかんだあったけど、いきなり頼りになる仲間が見つかってよかったじゃない!」
「まだ一緒に行動できるか決まったわけではない!」
結局あの機体、ドッゴーラに乗っていたハヤミ・ブンタという男も自分達と同じく、脱出の為に仲間を
探していたのだった。
とはいえあの巨体では目立つ事この上ない、しかたなくしばらく水中に潜みながら情報収集をしている最中、
湖を探査していたネッサー見つけたという事だった。
目的が同じなら共に行動を、という流れになったのだが、やはりその巨体が問題となった。
例えドッゴーラそのものは戦闘に耐えられても、ネッサーとボスボロットが巻き込まれて無事に済むという保障も無し。
結局水中にいてもらうのが一番と判断、一緒に行動するには現在地A-4地点から南方の、A-5地点の川に
ドッゴーラが隠れながら進むのが一番という結論になった。
現在、その川がドッゴーラが隠れられるほどの深さと幅があるか、二人で確認に行く最中である。

「それにしても、あんな大きいのに良く気付かなかったね」
「ぐっ!」
痛いところを突かれた
「わ、私は水中探査などしたことがなかったのだ!水底を探るのに手一杯だったのはしかたあるまい!」
「ふ~ん…マシュマーさん」
「何だ!」
思えば油断していたのだろう、
「さっき、カッコよかったよ」
「な!」
普段ならここぞとばかりに得意になっているところだが、完全に不意を突かれてしまった、結果
「あ~、マシュマーさん赤くなってる。かわいいんだ~」
「赤くなどなっていない!ええい、そんなことはどうでもいい!早く行くぞ!」
完全に遊ばれている、だがなんだか悪くない気持ちがするのが、不思議でならないマシュマーだった。



【マシュマー・セロ 支給機体:ネッサー(大空魔竜ガイキング)
 機体状況:良好
 パイロット状態:良好(強化による不安定さは無くなった?)
 現在位置:A-5(北から川に向って移動中)
 第一行動方針:川にドッゴーラが潜めるかどうかの確認
 第二行動方針:可能ならブンタと共に川を下りながら、ハマーンと仲間を探す
 最終行動方針:ハマーンを守り、主催者を打倒する】

【ミオ・サスガ 支給機体:ボスボロット(マジンガーZ)
 機体状況:良好
 パイロット状態:良好
 現在位置:A-5(北から川に向って移動中)
 第一行動方針:川にドッゴーラが潜めるかどうかの確認
 第二行動方針:可能ならブンタと共に川を下りながら、仲間を探す
 最終行動方針:主催者を打倒する】

【ハヤミ・ブンタ 支給機体:ドッゴーラ(Vガンダム)
 機体状況:良好
 パイロット状態:良好
 現在位置:A-4:水中
 第一行動方針:とりあえずマシュマーとミオの帰りを待つ
 第二行動方針:可能ならマシュマー、ミオと共に川を下りながら、仲間を探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【初日 16:00】





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第79話「生きる意志 時系列順 第75話「明日はこっちか?

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第23話「正調・じょんがら節(デュエットver.) マシュマー・セロ 第84話「近くて遠くて 異文化コミニュケーション
第23話「正調・じょんがら節(デュエットver.) ミオ・サスガ 第84話「近くて遠くて 異文化コミニュケーション
第45話「空と水の龍 ハヤミ・ブンタ 第84話「近くて遠くて 異文化コミニュケーション


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最終更新:2008年05月29日 04:19