ハッターのミス


ダイテツジンは、高台を囲む森の上空を飛んでいた。
腕にはハッターをぶら下げている。
「しかし、本当に大丈夫なのか?」
「ノープロブレムだ、友よ。武器などこの手足だけで十分。」
竜馬の心配に拳を掲げて応えるハッター。
話は少し遡る。


(あのロボット…確かイッシー・ハッターといったな)
小島の北端に一体のロボットがいた。
ボディービルダーの鍛えられた筋肉のような上半身の装甲と、頭部の青いテンガロンハット。
竜馬には特徴的な外観をしたそのロボットに見覚えがあった。主催者に一言目から食って掛かった奴だ。
こいつなら仲間にできるかもしれない。そう判断し、ダイテツジンを降下させる。
「俺の名はイッシー・ハッター!貴様、何者だっ!?」
上空から飛来したロボットに対し、身構えるハッター。
「俺は流竜馬。敵意はない、話をしたい。」
「話し、だと?」
竜馬の予想通り、敵ではないと聞いてハッターは拳を下ろした。
「俺にはやらなければならない事がある。その為には、一刻も早くこのゲームから脱出しなければならない。
 それで、協力してくれる相手を探している。」
「うむ。俺も、このふざけたゲームを始めたあのユーゼスという男を成敗するために、仲間を探している。」
「あいつを成敗する?」
竜馬はハッターの全身を眺めて、声を書けることにしたもう一つの理由を言った。
「…武器も無いのにか?」
「武器ならば、このトンファーが」
持ち上げた腕を見て気づく。
本来そこに装備されているはずのドラマチック・トンファーが、無い。
「…いや、このテンガロンハットも」
はずそうとするが、溶接されたかのように頭にがっちりとくっ付いている。
そのまま帽子に手をかけたポーズで固まる。
「…」
「あいつから何か渡されなかったのか?」
ハッターは、返事をすることができなかった。


その後、一時的に行動を共にすることにした2人は、竜馬の最初の予定通り北に向かっていたのである。
(ハッターがダイテツジンにしがみ付いているのは、そのほうが海を渡るのに楽だったから)
「その、『友』というのは」
『やめてくれ』と言おうとして、竜馬は口を止めた。
ハッターも気づいたようである。
「友よ、何か見えるぞ。」
「ああ…建物、か?」
まだ遠いので良く分からないが、高台の上に建造物らしきものが見える。
「どうする?」
「…行ってみるか。何かあるかもしれん。」
竜馬はダイテツジンを高台へと向けた。



【イッシー・ハッター 搭乗機体:アファームド・ザ・ハッター
 パイロット状態:良好
 機体状況:良好 ただし武装なし(スーパーソニックテンガロンは頭に完全固定)
 現在位置:H-6の上空→G-6へ
 第一行動方針:高台の上の建物を調べる
 第二行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:ユーゼスを倒す】


【流竜馬 搭乗機体:ダイテツジン(機動戦艦ナデシコ
 ハ゜イロット状態:良好
 機体状況:良好 ハッターをぶら下げているために片腕使用不可
 現在位置:H-6の上空→G-6へ
 第一行動方針:高台の上の建物を調べる
 第二行動方針:他の参加者との接触
 第三行動方針:接触した相手が話の通じる相手ならば協力する、戦意があるようなら排除する。
 最終行動方針:ゲームより脱出して、帝王ゴールを討つ。】

【初日 14:30】

※おまけ
「…?なんですの、このコンテナは。」
「せめてこれくらいは使わせてあげようかと思ったのだが…どうやらいらないらしい。」
格納庫の片隅に奇妙なコンテナがあった。
『一時預かり品』と書かれたその中に、ハッターのトンファーは残されていた。
「使うかね?」
「…遠慮しておきますですわ。」





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第60話「巨人は空高く 流竜馬 第110話「人の造りしモノ
第33話「水面下の状景 ラミア・ラヴレス 第94話「へタレ道中記
第78話「無題 ユーゼス・ゴッツォ 第92話「第一放送午後六時


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最終更新:2008年05月30日 03:48