対なす少女
湖の廃墟。その一角で、リオ・メイロンは休息をとっていた。
先程の、不思議な女性との邂逅から数時間。
リオは草原地帯から、水中を通って廃墟地帯へと移動していた。
そして、周囲を探索している最中に・・・彼女は、頭上から響く男の声を聞いたのだった。
「私・・・」
死亡者12名・・・幸いにも、彼女が愛する少年の名は無かった・・・
が、名も知らぬ12名が死んだという事実。
そして、その中の一人の命を奪ったのは、自分であるという事実に、
リオは押しつぶされそうになっていた・・・
「私の・・・覚悟・・・」
女性が言った言葉。覚悟。
(私にはあるの?・・・あの人がいう、覚悟が・・・)
道中、考えていた問いかけを繰り返す・・・
女性と去ってから続けられている、自問自答。
まだ、答えは出ていないが・・・ただわかる事が一つだけあった。
「会わなきゃ、
リョウト君に・・・」
(彼に会いたい。彼の為にと言いながら、誰かを殺した私を、彼は軽蔑するかもしれない
それでも・・・会いたいと思うから・・・だから・・・)
リョウトを探す。決意の元に、少女は機体を動かしはじめた。
数分後・・・リオは廃墟地帯の東端に、黒い機体を止めていた。
(ここは行き止まりね・・・次は、南に行ってみようかしら?)
目の前に広がる湖を見て、リオは考える。
(リョウト君が、ここに居るとは限らないけど・・・)
だが、もしかしたら、すれ違ってしまうかもしれない・・・
そんなことを考えていると・・・
「・・・レーダに反応!? 乗ってる人間、じゃなきゃいいんだけど・・・」
自嘲気味に呟きながら、リオは凄い勢いで近づく機体に通信を試みる・・・
…迷った挙句、ジャマ―は起動させておくことにした。
「そこの貴方、止まって頂戴・・・聞きたいことがあるの」
突如、通信機に入った声に、ゼオラは白銀色の自機を湖上で停止させた。
「・・・だ、誰?・・・どこにいるの?」
ゼオラの言葉に、通信の声は申し訳なさそうに言う。
「安心して・・・今のところ、貴方を攻撃するつもりは無いの。
ちょっと、人を探してて・・・」
「人、探し?」
「ええ、リョウト君・・・リョウト・ヒカワって言うんだけど・・・」
「それって・・・あなたの恋人?」
そう聞き返しながら、ゼオラはレーダーによる索敵を繰り返していた。
「え・・・あの・・・」
「恋人を探してるんでしょう?そうなんでしょう?アラドは死んでしまったのに・・・」
その言葉に、相手が息を飲んだ・・・ような気がした。
(間違いない、こいつが、アラドを殺したんだ・・・)
「そうやって隠れて、無防備に近づいてきたアラドを殺したんだ!」
通信機を通した少女の叫びに、リオは体を震わせる。
自分が殺したパイロットが、誰だったのか・・・彼女にはわからない。
もしかすると・・・彼女が言う、『アラド』という人物だったのかもしれない・・・
リオは、何度目になるかもわからない後悔に、全身を震わせて涙した。
「許さない・・・絶対に許さない・・・隠れてたって、無駄なんだから・・・」
通信機を通して、少女の声が聞こえる。
「わ、わたし、は・・・」
嗚咽を堪えて顔を上げたリオの目に、両手を胸の前に掲げた白銀の機体が映った。
そして・・・爆発的な光が、その機体から発せられ・・・
次の瞬間、リオの乗る機体は激しい衝撃に襲われた。
光が収まり・・・ゼオラの目前には湖と、少し遠くなった湖岸が広がっていた。
「・・・死んだの?」
問い掛けに、通信機は何も答えない。
「そう、死んだんだ・・・じゃあ、寂しくないように、あなたの恋人もそっちに送るからね・・・」
少女ははそう呟くと、機体を南方へ向けて飛び去った。
元の湖岸から、少し奥まった位置で・・・黒い機体が瓦礫に覆われている。
(・・・ごめん、なさい・・・)
その中で、少女が一人、謝罪の言葉を呟き続けていた。
【リオ=メイロン 搭乗機体:ガンダムデスサイズヘルカスタム(新機動戦記ガンダムW Endless Waltz)
パイロット状況:気絶中。後悔と謝罪の念。
機体状況:全体的に破損、武器消失。瓦礫に覆われている。
現在位置:E-1廃墟地帯(内陸寄り)
最終行動方針:リョウトを探す】
【ゼオラ・シュバイツァー 搭乗機体:ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状況:精神崩壊 (ラトとタシロ、リオは死んだと思っている)
機体状況:左腕損傷大、次元連結システムは問題無し
現在位置:D-1湖上から南へ
最終行動方針:リョウトを殺す】
【初日 19:25】
最終更新:2008年05月30日 04:51