決意
「まずは死亡者発表だ。果たして諸君の知っている名前は呼ばれるかな?」
…司馬宙
「あっ…あ…あ……」
司馬遷次郎は声にならない声を上げると急に叫び始めた。
「うあぁぁぁぁ!!!そんなバカな…」
「どうしたんですか?司馬先生?」
その叫びに驚いたフォッカーが遷次郎に声を掛ける。
「無敵の鋼鉄ジーグ…いや不死身の宙がなぜこんなことに…」
遷次郎は怒りを拳に込めて地面を叩くがそのホログラフィックの拳は虚しく空を切るだけだった。
「司馬先生落ち着いて下さい!」
「彼は…彼はまだ生きるべき子だったんだ…それなのに私が彼の青春を奪い、そして命までも奪ってしまったんだ…」
このときフォッカーは感じ取った、この人もまたこの戦いで自分と同じように大事な仲間を失ったということを…
しばらく遷次郎はしゃがんで黙りこんだままだった…その状態のまま何時間たっただろうか…
このままでは話が進まないなと思いフォッカーが喋った。
「司馬先生…気持ちはわかります…しかし今は…」
フォッカーが喋り終わる前に遷次郎がまた叫んだ!
「気持ちがわかる…?何も失ってない君が何を言っているんだい?彼は私の息子なん…」
フォッカーの拳がホログラフィックの遷次郎の頬を貫いた!
「ああ!!『今の』先生の気持ちなんて全く分かりませんよ!!腐っていたいならそこで腐ってろ!」
フォッカーは遷次郎のことを尊敬していた…その尊敬していた人が見せた弱さにフォッカーも叫ぶしかなかった。
「仲間の一人が殺されたなら仇討ちをしてやろう…とか思わないんですか?
あなたはそうやって腐っていれば気が済むのかもしれません…だけど私なら仇を討ちます!!
あなたの体がもしホログラフィックでなければ、私はあなたの腐った性根が直るまで拳を振るっただろうな…」
その時アルテリオンのレーダーに反応があった。
フォッカーが操縦席に飛び乗りながら遷次郎に声を掛けた。
「あなたはいくら腐っていても『切り札』を持っている…
もしかしたら首輪の解除の方法を知っているのは、あなただけかもしれません…」
無言で押し黙る遷次郎を見つめながらフォッカーが声を張り上げる。
「あなたは生きなくてはいけない人なんですよ!
私は向こうから来る機体の囮になります…その間に…どうか逃げて下さい…」
そう言うと漆黒の機体の方に飛び立っていった。
「貴様かァ!!ハマーン様を殺したのは!!」
漆黒の機体を駆るマシュマー・セロが叫ぶ。
「だったらどうする?」
「貴様を殺す!!」
フォッカーの問い掛けに即答すると共に漆黒の機体ディスアストラナガンが猛進する。
「やる気マンマンってわけか…」
そう言うとアルテリオンはクルクルと回転しながら空を翔け、
一瞬だけ変形し足のスラスターを噴射してディスアストラナガンの背後へ回り込みミサイルを放つ。
それに対しディスアストラナガンは漆黒の翼を広げガンスレイブを射出しながら一気に高度を下げて、
追ってくるミサイルの方を向き地面スレスレの所を飛び、ミサイルに向けライフルを放つ。
「なかなかやるな!その漆黒の機体は伊達じゃないということか…おっと」
遥か上空にいるアルテリオンをガンスレイブが襲う。
アルテリオンはガンスレイブに向かってバルカンを撒き散らしながらディスアストラナガンに追撃しようとするが、
ディスアストラナガンはアルテリオンに向けてライフルを二発撃ち、
アルテリオンが回転して避けた先めがけてパンチを叩き込もうとする。
それに対して限りなく接近した所でミサイルを放ち爆風の衝撃に乗り離脱するアルテリオン。
それを逃がさんとばかリにディスアストラナガンのライフルとガンスレイブが襲う。
「全く…引き離したと思ったら、すぐについてきやがる…まさに命を賭けた鬼ごっこだな…
それよりも司馬先生はどうなったんだ…」
その頃、遷次郎はダイナアンAのコックピットと中で考えていた。
すぐ上の空では戦いが繰り広げられている…
「(宙…私はどうすればいいんだ…お前は私の事を恨んでいるのか…?私は死んだ方がマシな人間なのか?)」
その時、ダイナアンAの横を砂煙をあげながらアルテリオンとディスアストラナガンが駆け抜けた!
「(な…何ぃ…!!まだ司馬先生は逃げてなかったのか!!…マズイ…!!)」
そうフォッカーが考えてる間にディスアストラナガンのメスアッシャーの照準とチャージは既に完了していた。
「まずは一人…」
表情一つ変えずにメスアッシャーを放つマシュマー、そして爆発して粉々になるダイナアンA。
「せェェんせェェェいィィィーーー!!」
フォッカーの叫びは虚しく、地面には本来の形が分からないぐらい粉々のダイナアンAが転がっていた。
「貴様ァァー!!」
ディスアストラナガンに向けてミサイルを出しながら突進しようとしたが、
マシュマー・セロは一人殺すと満足したのか、ディスアストラナガンの姿はそこには既に無かった…
「まずは一人…どうやらこの機体は自己回復の能力を持っているらしい…確実に…そう確実に殺すために回復を待つとしよう…
ああ…待っていてください…ハマーン様…あと少しで貴女の所に参ります…」
マシュマーは冷たい笑みを浮かべながら次の獲物を狩るための休息に入った。
「クソッ!!クソォッ!!チクショォォォォ!!」
フォッカーがコックピットの中で拳を振るう。
「まただ…また、目の前にいる仲間を守れなかった…柿崎ィィ…先生……俺は…俺は…」
フォッカーは自分の力の無さを恨んだ、
『仇を討つ』ということに集中しすぎて身近な人すら守れない自分の甘さに叫ぶしかなかった。
遷次郎に「仇を討て」と言ったばかりなのに揺らぎそうになっている自分が許せなかった…
その時、フォッカーに通信が入った。
「フォッカー君…フォッカー君!!」
「えっ!!その声は…」
フォッカーが驚くのも無理は無かった、その声の主はさっき爆発したはずの遷次郎のものだったからだ。
「せ、先生!!なぜ!?」
「それは私の乗っていたダイナアンAは本体とバイク型のコックピットとで分離できたことを、
粉々になる寸前のところで思い出して、寸前の所で分離をしたんだ…心配をかけて…すまない…」
ホログラフィックの遷次郎がペコリと頭を下げる。
「あなたが生きる道を選んだということは…戦う決意をしたんですか?」
フォッカーが問い掛けると遷次郎が答えた。
「ああ!!だが仇討ちでは無い!!」
「???」
首をかしげているフォッカーに遷次郎が答える。
「もちろん息子を殺した奴のことを恨んでないと言ったら嘘になってしまうが、
しかし!!息子のことを殺した者もこのゲームの犠牲者だ…
もしかしたらこのゲームがなければ平和な世界で平和に暮らしていたのかもしれない…
そう…私はその犠牲者達を救うために、あの忌々しい仮面の男と戦う!!」
そう言うと遷次郎はギラギラとした眼で空に浮かぶ戦艦を睨んでいた。
「先生…やっぱりあなたはカッコイイですよ…だけど突然考えが変わったけど、どうしてですか?」
「…君の言葉に心を打たれたからかな…それに何より君の『拳』が効いた…フォッカー君…私と共に来てくれるか…」
遷次郎が空を見上げながら答えるとフォッカーが言った。
「『拳』がですか!?ハッハッハッ…いいですとも!どこまでも着いていきましょう!」
フォッカーが笑いながら答えると恥ずかしそうに遷次郎が答える。
「なにが可笑しいんだい?」
「いえいえ…何も可笑しくありませんよ!
私の『拳』でこの戦いを終わらせるために戦いましょう!!」
握手できるはずの無い手の遷次郎とフォッカーが固く握手をした。
彼らの戦いはたった今…始まったばかりだった…
【ロイ・フォッカー 搭乗機体:アルテリオン(第二次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:疲れている
機体状況:弾数残りわずか
現在位置:D-4
第一行動方針:遷次郎を護衛しつつG-6基地へ向かう
第二行動方針:ユーゼス打倒のため仲間を集める
最終行動方針:柿崎の敵を討つ、ゲームを終わらせる】
【司馬遷次郎(マシンファーザー) 搭乗機体:ダイアナンA(マジンガーZ)→スカーレットモビル(マジンガーZ)
パイロット状態:良好。B・Dの首輪を入手。首輪解析済み(六割程度)
機体状態:本体は粉々、スカーレットモビルは無事
現在位置:D-4
第一行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析及び解除を行う
第二行動方針:ユーゼス打倒のために仲間を集める
最終行動方針:ゲームを終わらせる】
備考:首輪の解析はマシンファーザーのボディでは六割が限度。
マシンファーザーの解析結果が正しいかどうかは不明(フェイクの可能性あり)。
だが、解析結果は正しいと信じている。
【マシュマー・セロ 搭乗機体:ディス・アストラナガン(第3次スーパーロボット大戦α)
機体状況:Z・Oサイズ紛失 少し損傷
パイロット状態:激しい憎悪。強化による精神不安定さ再発
現在位置:D-4
第一行動方針:ハマーンの仇討ちのため、皆殺し(ミオ、ブンタを除く)
最終行動方針:主催者を殺し、自ら命を絶つ】
【二日目 7:00】
最終更新:2008年05月30日 16:06