されど戦いは続く


「ハッター!?ハッターか!?今すぐここから離れろ!」
真下にいるハッターに対し、慌ててチーフが声をかけた。
「その声!ブラザーなのか!?テムジンはどうした!?いやそれより何をしてるんだ!」
ハッターもその通信の声を聞き、グランゾンに声を張り上げる。
「木原マサキという男に破壊された!それより急いで離れろ!
地上に降りてグラビトロンカノンで制圧できん!!」
「制圧!?ちょっと待ってくれブラザー!そのガールは俺たちのフレンドだ!」
「仲間だと言われても……!ハッター、回避行動だ!」
「でやぁぁぁあああ!!」
チーフとハッターのやり取りの間にダイモスが立ち上がり、2人に向けてファイブシューターを連続して
ばら撒いていた。2人して器用にそれをかいくぐりながら、2人は相談を続ける。
「ブラザー、さっきも行ったかがガールは俺たちのフレンドだ」
「そうは言ってもこれではな…だが!」
グランゾンはすばやくワームホールを自分の前に形成し、数本のファイブシューターをダイモスの側に
転移させ、牽制する。
「ハッター、分かっている。殺すつもりはない。
あくまでこのゲームに乗ったものを止める為制圧するだけだ。」
「それならOKだ、ブラザー。少し頭に血が上っているようだ!二人で抑えるぞ!」
そう言ってハッターが一歩踏み出した。しかしチーフはそれをいさめ、
「ハッター。ここは俺に任せろ。そちらはあちらの援護に迎え。」
グランゾンが虚空を指差す。そこには落ちていくゼオライマーとゼロがあった。
「アレは…フレンドが危ない!スマン、ブラザー、こちらは頼む!」
ハッターが走りだす。
そちらに向けダイモガンが発射されるが、グランゾンが盾となってハッターの進路を確保する。
「やらせん……!そちらの相手はこちらだ!」
ハッターの離脱とともに、2機は武器を構える。
グランゾンはグランワームソードを。ダイモスは双竜剣を構えて距離をとる。
ジリジリと円を書くように動く2機。先に動いたのはチーフだった。

「ハッターの援護のためにも急がせてもらう!」
エンジンを吹かせ、大剣が舞う。
上から振り下ろした直後に手を引き、左下から右上に突き出すように振るう。
ダイモスもそれを見て双竜剣で剣をさばいていく。
(もらったぞ!)
連続の斬撃のわずかな隙。それを見逃さず、グランゾンの剣が滑り込むが――
「なに!?」
思わずチーフから声が漏れる。完全に虚を突いたはずの斬撃が止められていた。
それどころか相手はすでにたて直し、武器をこちらに振るっている!
「おんなじ手を!二度も引っかかるわけないでしょぉぉおおお!!」
少女の声が答えを示していた。
流れた剣を引き戻し、一気にバックステップで距離を取る。しかし、
「右腕に21%の損傷…!なんだと!?」
グランゾンの右腕の装甲が落ち、内部か少し見えている。
間の前の少女の技量にチーフが戦慄する。急いでいて、先ほどとよく似た手を使ったとはいえ、
(一度で見切り、カウンターに利用しようとするとは…!)
しかし、彼に負けは許されない。
ハッターに頼まれた。プレシアにも誓った。どんなに不利だろうと、
(絶対に、引かん!)
距離をとったグランゾンに熱を帯びた竜巻が迫る。
どうやら一気に決着をつける気かどうかは知らないが、長々と戦う気もないらしい。
バリアもなく、内部に熱気が入る以上、絶対に当たることはできない。
グランゾンが空に飛び上がる。しかし、その竜巻の陰に隠れ、赤と対照的な青の光線が正確に
グランゾンの足を捕らえ、見る見るうちにグランゾンの左足が凍り付いていく。
バランスを崩し、地面へと落ちたグランゾンに向け、ダイモスが突進。その手には双竜剣が握られている。
「足場を崩した上で直接的な打撃で決めるつもりか!」
先ほどとは逆に、接近戦でグランゾンが押される形となる。なにしろ片足が凍り動かない。
重心の位置が致命的だった。
それでもチーフはダイモスの猛攻に耐えつつ、決着の手を練り続けていた。
(あの順応性、長期戦は不利だ。あと2手、いや3手で止める!)
ひたすら防戦一方で時間を稼ぐチーフ。そのときが来るまで時間を稼ぐ。そして……
双竜剣が下から伸びる。グランワームソードでそれをどうにか受け止める。
しかし、そこにあるのは双竜剣のみ。あるはずのダイモスの腕がなかった。
腕はすでに抜かれており、腰をひねるように体を横に一回転させ、
取り出した三竜棍がグランゾンの頭を捕らえた。ついにグランゾンが膝をつく。
「これで!終わりよぉぉぉぉおおおおお!!」
三竜棍を棒状にして、グランゾンに振り上げる。
しかし、

「チャージ完了。広域兵器2型セット。アンチグラビトロンカノンセットアップ。」
チーフが完了の言葉を継げる。そう、決着の言葉を。
「ビッグバンウェーブ!」
グランゾンのコアか極彩色の粒子の波が吐き出される。それはダイモスを吹き飛ばし、空に舞い上げた。
ダイモスから少女の悲鳴が聞こえる。しかしそれはすぐ怒気の声へと変わり、空へ吹き飛んだ体を立て直し
地上のグランゾンヘ蹴りの姿勢を作った。
重力と推力の力で加速するダイモス。
「やはりそう来るだろうと思っていた。」
グランゾンの姿が消え、ダイモスが何もない大地を蹴った。
「誤差20m。ブラックホールクラスター発射。」
転移すると同時に、黒球を胸から吐き出す。
ダイモスの横に正確に着弾し、超重力がダイモスを引き込んでゆく。
チーフの策の全貌はこう、だ。
まずビッグバンウェーブとクラスターのためのエネルギーをチャージするため時間を稼ぐ。
そしてビッグバンウェーブを打ち込み、舞い上げる。アレほど攻撃本能旺盛な相手だ。
そこから反撃に出だろう。当然それは地上のグランゾンにむけてのものだ。あとはそれを転移でかわし、
隙があるうちにクラスターを側に打ち込む。
直接ぶつけては完全に破壊する恐れもあるが、
間接的に当てれば超重力の拘束と、弱まった後に中心に吸い込まれれば、適度なダメージが期待できる。
自分の策が実ったことにチーフは胸をなでおろす。だが、
「ぁぁぁああああ!!」
重力下の中で立ち上がり、ダイモスがグランゾンを見つめる。
正直、チーフはぞっとした。何がいったいこの少女を駆り立てるのか?
ダイモスのかかとから膝にかけてワームホールを通じ現れたワームソードが貫く。
ダイモスは怨嗟の声をあげながら飲み込まれていった。
こんどこそ、終わった。チーフは確認のため、穿かれた穴を覗き込む。
「なんだ、これは…?」
そこにはダイモスの姿はない。妙に開けた空間と、蒼い、澄んだ水のような渦があるだけだった。
それに指をつけようとしたそのとき、
「む!?」
一発のミサイルが側に落下した。後ろを振り向けば、鬼のような機体と、腕を持たない機体が戦っていた。
「いかん、急いで援護にむかわねば…!」
渦に背を向け、グランゾンは次なる戦場に走り出した。



【流竜馬 搭乗機体:ダイテツジン(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状態:健康
 機体状況:パンチで飛ばした両腕なし 現状態不明
 現在位置:C-1
 第一行動方針: 鉄也をどうするか悩んでいる
 第二行動方針:他の参加者との接触
 最終行動方針:ゲームより脱出して帝王ゴールを倒す】

【剣鉄也 搭乗機体:ガイキング後期型(大空魔竜ガイキング)
 パイロット状態:マーダー化
 機体状態: 胸部に大きな破損があるが、武器の使用には問題なし。右腕切断。ダイターンザンバー所持。現状態不明
 現在位置:C-1
 第一行動方針:他の参加者の発見および殺害
 最終行動方針:ゲームで勝つ】

【イッシー・ハッター 搭乗機体:アファームド・ザ・ハッター(電脳戦記バーチャロン)
 パイロット状態:良好
 機体状況:装甲損傷軽微(支障なし)、SSテンガロンハットは使用不可、トンファーなし 現状態は不明
 現在位置:C-1
 第一行動方針:援護に向かったようだが…?
 第二行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:ユーゼスを倒す
 備考:ロボット整備用のチェーンブロック、高硬度H鋼2本(くの字に曲がった鉄骨)を所持】

【チーフ 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
 パイロット状況:全身に打撲、やや疲れ
 機体状況:外傷はなし、内部機器類、(レーダーやバリアなど)に異常、 右腕に損傷、左足の動きが悪い
 現在位置:C-1
 第一行動方針:ハッター達の援護に向かう
 第二行動方針:マサキを倒す
 第三行動方針:助けられる人は助ける
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【惣流・アスカ・ラングレー 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス) 
 パイロット状態:気絶 、昏睡
 機体状況:全体的にかなりの破損。右足は戦闘機動をおこなえば砕ける可能性あり
        後頭部タイヤ破損、左腕損傷、三竜棍と双竜剣を失った。
 現在位置:不明 どこかに飛ばされた模様
 第一行動方針:碇シンジの捜索
 第二行動指針:邪魔する者の排除
 最終行動方針:碇シンジを嬲り殺す
 備考:全てが自分を嘲笑っているように錯覚している。戦闘に関する判断力は冷静(?)】

【二日目 15:20】





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第170話「遭遇、狂気、破滅。そして… 時系列順 第179話「ゲッター線

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第170話「遭遇、狂気、破滅。そして… 流竜馬 第179話「ゲッター線
第170話「遭遇、狂気、破滅。そして… 剣鉄也 第179話「ゲッター線
第168話「再開 イッシー・ハッター 第179話「ゲッター線
第168話「再開 チーフ 第179話「ゲッター線
第168話「再開 惣流・アスカ・ラングレー 第177話「集う者たち~宴の準備~


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最終更新:2008年05月31日 18:52