戦友の帰還を待ちながら


 ――そういえば、と思い出す。
 このゲームが開始された直後、自分に襲い掛かって来た機体を仕留めた場所。あれは、この近くではなかったか。

「エルマ、機体の修理だけど、どんな具合だ?」
『あまり、順調とは言えません。フェアリオンとノルスは元々、壊れ掛けの状態でした。
 ですから、使える部品が少なく……』
「そうか……」
『せめてもう一機、パーツ回収に使える機体があれば……』
「エルマ」
 リュウセイやイキマの手伝いを受けながら、メガデウスの修理に取り掛かるエルマ。
 周囲に対する警戒は解かず、セレーナは自らの相棒に話し掛ける。
『はい、なんでしょうか、セレーナさん?』
「パーツ回収に使える機体の心当たりなら、無くもないわ」
『えぇっ! ほ、本当ですか!?』
「ほら、憶えてない? このゲームで最初に戦った、怪しい喋り方の外人さん。
 あの機体が襲い掛かって来たのって、このすぐ近くだったはずでしょ?」
『あ……!』
 そうだった。今まですっかり忘れていたが、あの機体と交戦した場所は、今居る場所から非常に近い。
 機体を使えば十数分で辿り着けるだろう距離だ。
「それくらいの距離を移動するくらいだったら、あの二人が無事戻って来たとしても、私達を見失う事は無いはずだわ」
「メガデウスの巨体が目印になって、俺達の居場所を教えてくれるって寸法か」
「そういう事ね」
 セレーナがウォーカー・ギャリアを撃破した際、彼女は操縦席を直接潰す方法で勝利を得た。
 ならば、機体の間接部や駆動系等に殆ど損傷は無いはずである。機体を回収しに行く価値は、十分にあると言えるだろう。
『メガデウスの状態はお世辞にも万全とは言えませんが、歩く程度なら全く問題はありません。
 もちろん、あの機体を倒した場所に行く事も可能です』
「……決まり、だな」
 エルマの報告に頷きながら、イキマはノルス・レイの残骸を見上げる。
 セレーナにはアーバレストが、そしてリュウセイには復活したメガデウスがある。
 しかし、イキマのノルスは機能停止状態だ。戦うどころか、乗って移動する事も出来ない。
「アーバレストの手なら空いてるわよ?」
 そんなイキマの状況を見越して、セレーナは苦笑しながら言った。




 ――そして、十数分後。
 アルのナビゲートに従って辿り着いた場所には、コクピットを破壊された緑の機体が転がっていた。

『あった! ありましたよ、セレーナさん!』
「はいはい、見れば分かるわよ」
 コクピット部分を除いて殆ど無傷に近い機体。それを見付けてはしゃぐエルマに、セレーナは素っ気無い声で返す。
「よしっ……これで、メガデウスの修理も……!」
『ええ、なんとか形にする事が出来そうです!』
 ギャリアの状態を確認しながら、弾んだ声で言うエルマ。
 だが――
 ふと、リュウセイは気が付いた。
「なあ……エルマ。この機体、操縦席が二つ無いか?」
 ウォーカー・ギャリアは、ホバー戦闘機である“ギャリィホバー”が上半身に、
 三輪マシン“ギャリィウィル”が下半身となって完成する、合体機構を持ったメカである。
 セレーナが破壊したコクピットは、メインの操縦席である上半身側の片方だけ。
 残った下半身の操縦席は、無傷の状態で残されていたのだ。

「……つまりメインの操縦席を破壊した以上、合体状態の機体を動かす事は難しいが、
 下半身側の機体を分離させた上で運用する事は可能、と言う事か?」
『はい、そうなります』
 イキマからの問い掛けに、エルマは肯定の答えを返す。
『パーツの回収ですが、上半身の部分からだけでも何とか間に合わせる事は出来そうです。
 もちろん、下半身側の部品もあった方が、ずっと状況は良くなるんでしょうが……』
「それよりだったら、現在機体が無い人を乗せた方が良いでしょうね」
「ああ、そうだな」
 リュウセイ、セレーナ、そしてエルマ。
 三者の視線が、イキマに向いた。



【リュウセイ・ダテ 搭乗機体:メガデウス(ビッグオー)(登場作品 THE BIG・O)
 パイロット状態:健康
 機体状態:再起動、装甲に無数の傷。左腕装甲を損傷、反応がやや鈍っている。
      額から頬にかけて右目を横断する傷。右目からのアーク・ライン発射不可。
      頭頂部クリスタル破損。クロム・バスター使用不可。
      砲身欠損。ファイナルステージ使用不可。
      コクピット部装甲破損。ミサイル残弾僅か。
      サドン・インパクトは一発限り(腕が吹っ飛ぶ)
 現在位置:E-2
 第一行動方針:クォヴレーとトウマの帰りを待つ
 第二行動方針:戦闘している人間を探し、止める
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:無益な争いを止める(可能な限り犠牲は少なく)

 備考1:ブライスターがブライガーに変形出来ること(ブライシンクロン・マキシム)を知らない
 備考2:フェアリオン・S、ノルス・レイの部品を使って修復中
 備考3:主に作業をするのはエルマ
 備考4:サドン・インパクトに名前を付けたがっている】


【イキマ 搭乗機体:ギャリィウィル(戦闘メカ ザブングル)
 パイロット状況:戦闘でのダメージあり、応急手当済み
 機体状況:良好
 現在位置:E-2
 第一行動方針:クォヴレーとトウマの帰りを待つ
 第二行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
 第三行動方針:ユーゼスの空間操作を無効化させる手段を探す
 最終行動方針:仲間と共に主催者を打倒する

 備考1:空間操作装置の存在を認識
 備考2:ブライスターがブライガーに変形出来ること(ブライシンクロン・マキシム)を知らない】


【セレーナ・レシタール 搭乗機体:ARX-7アーバレスト(フルメタル・パニック)
 パイロット状況:健康
 機体状況:活動に支障が無い程度のダメージ
 現在位置:E-2
 第一行動方針:クォヴレーとトウマの帰りを待つ
 第二行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析をしているフォッカー、遷次郎と接触する
 第三行動方針:ヘルモーズのバリアを無効化する手段を探す
 最終行動方針:ゲームを破壊して、ユーゼスからチーム・ジェルバの仇の情報を聞き出す

 備考1:トロニウムエンジンを所持。グレネード残弾3、投げナイフ残弾2
 備考2:ブライスターがブライガーに変形出来ること(ブライシンクロン・マキシム)を知らない
 備考3:エルマは現在ビッグオーの修理中】


【二日目 20:45】





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第218話「キョウキ、コロシアイ、そしてシ 投下順 第220話「希望という名の泥沼
第216話「憎しみは正義のために 時系列順 第212話「ある野望の遺産

前回 登場人物追跡 次回
第215話「精霊の導き リュウセイ・ダテ 第220話「希望という名の泥沼
第215話「精霊の導き イキマ 第220話「希望という名の泥沼
第215話「精霊の導き セレーナ・レシタール 第220話「希望という名の泥沼


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最終更新:2025年02月12日 02:01