暴走少女~全ては愛しき彼の為に~


「くっ…中々思った通りには動いてくれませんね…」
多分に自分の操縦技術の低さもあるのだろうが、出力の調整も難しい。
初めこの機体を支給されたときは未知のエネルギーに触れることが出来ると目を輝かせたものだが、
実際にはそんなことばかり言ってられない。
何せ、だだっ広い草原のど真ん中に自分は居るのだ。いつ何時敵に襲撃されるやもしれない。
そうなってしまっては相手にもよるが、操縦技術の未熟なこちらが圧倒的に不利だろう。
まずは何処か安全なところへ向かおう。そう決意したのはよかった。

彼は実際慎重だった。搭載されているレーダー類にはこまめに目をやっていたし、
不慣れなりに索敵行動を行っていた。
その姿勢は、本来戦場ならば当然取るべき行動、「正解」の行動だったのだから。
ただ、唯一彼が不幸だったのは、



襲撃者が、レーダーに映らない機体だったことだった。



ヒュッケバインMk-III・L。
彼やマオ社の皆が開発に取り組んでいた機体を少しでも傷つけるのは忍びなかったが、仕方がなかった。
(だって…そうじゃないと、リョウト君の敵になっちゃうかもしれないもの)
それでもやはり爆散させたくはなかったから、コックピットに突き刺すようにビーム刃を突き立てるに留めた。
そうすれば機体を操縦することは出来ないが、パーツを再利用することは出来る。
そして、この機体には…自分の記憶通りならば、「あれ」が積んである筈だ。
自機の消耗を避けるために、解体作業は動かなくなったMk-IIIの武装を使うことにした。
左腕に取り付けられているファング・スラッシャーを取り外し、展開。
類稀なる硬度と切れ味を誇るゾルオルハルコニウム製の刃が飛び出す。
目当てのものを傷つけないように、慎重に装甲を切り開いていく。
「…あった」
腹部を切り開いていくこと数分、エンジンブロックまで到達した。
そう。彼女が求めていたものはEOTの産物、「トロニウム・エンジン」だった。
L5戦役の終戦間近、「オペレーションSRX」の際には
SRXに搭載されているトロニウム・エンジンを暴走させホワイトスターを内部から破壊する作戦も立案されていた。
綿密な分析の末だされた数値は、確かに破壊するに十分な破壊力を秘めていた。
それに比べて若干小型ではあるが、それでも威力はお墨付きである。
これを上手く使えば、「リョウト君の敵」を一掃できる。
万が一仕留め損なったら、その時は直接切り刻めばいい。
なんならカートリッジ内のエネルギーが丸々残っているであろうグラビトン・ライフルで狙撃を試みてもいい。
結果自分の命が危険に晒され、最悪死に至る可能性もある。しかし、それが何だというのだ。
どの道一人しか生き残れない。そして、あの場には自分の愛する人の姿があった。ならば、とるべき道は一つではないか。
(リョウト君…あなたのためなら、私はなんだってできるもの)
何処か虚ろな瞳を正面のモニターに向ける。まるでそこに愛しい彼の姿があるかのように。
愛ゆえに壊れてしまった事を、果たして人はそれを不幸と呼ぶのだろうか。
「リョウト君…絶対にあなたを、生きて此処から脱出させるわ…」
死神を駆る少女…リオ・メイロンはそう呟いた。



【リオ=メイロン 搭乗機体:ガンダムデスサイズヘルカスタム(新機動戦記ガンダムW Endless Waltz)
 パイロット状況:肉体的には良好、精神的には崩壊気味
 機体状況:良好
 現在位置:H-1
 第一行動方針:リョウトの敵を全て殺す
 最終行動方針:他の参加者を全員殺してリョウトをゲームの勝者にする
 特機事項:Mk-IIIの残骸からトロニウム・エンジン及び
 グラビトン・ライフル(弾数全て残っている)を回収】

【ラージ=モントーヤ 搭乗機体:ヒュッケバインMk-III・L(スーパーロボット大戦OG2)
 パイロット状況:ビームシザースで蒸発(当然死亡)
 機体状況:コックピット破損、エンジンが取り除かれている。
 他に目立った損傷はないが当然動かすことは不可能
 死亡位置:H-1】




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ラージ・モントーヤ


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最終更新:2008年05月29日 02:45