大切な人


「ハァ…ハァ……」
アラドとリョウトはテンザンの襲撃から逃れ、なんとか岩場に隠れていた。
『どこだぁ!!どこいきやがったぁ!!』
後方では片腕を失ったヴァルシオン改に乗ったテンザンがあたりを見回していた。
『このあたりにいるのはわかってんだ!
隠れていそうなところを片っ端からぶっ壊してやる!!ヒャハハハハッ!』
そう言うとヴァルシオン改からクロスマッシャーが放たれる。
ドォーーンッ!!
リョウト達が隠れている場所から少し離れた岩場が
砂煙をあげながら跡形もなく崩れる。
『違ったか!!なら、こっちかぁ!?』
ドォーーーンッ!!
ドゴォーーンッ!!
激しい光が爆発音と共に次々と岩場が破壊していく。
(マズいぞ…、このままじゃ、二人ともこの岩場ごと吹き飛ばされるのは時間の問題だ…。)
リョウトは額に大量の汗をかきながら、
どうすればこの場を切り抜けることができるかを考えていた。
(一か八か勝負をかけるしかないか…、二人ならなんとか…。それにいざとなれば差し違えてでも!!)
そう思った瞬間、エピオンに乗ったアラドから接触回線が開かれた。
「リョウトさん、オレが囮になります、その間にもっと遠くに逃げてくださいっ!!」

「そんなっ!その機体じゃ…」
リョウトがそう言おうとするとアラドがつづけて話した
「大丈夫ッスよ!!オレ、こう見えても悪運だけは強いんっスから!
それに、オレはこんな所で死ぬつもりなんてありません!
アイツとの約束を守るためにも必ず生き抜いてみせます…!」
「アイツ……?」
「えっと…、なんて言うかガキのころからの腐れ縁みたいなもんで、
ガサツだし、口うるさいし、頭は固いし胸ばっか大きくなって色気は無いけど…
、オレにとっちゃ大切な人なんスよ。だからあんなヤツさっさと倒してそいつを早く見つけて、
この馬鹿なゲームから逃げ出さすためにもこんな所で死ぬわけにはいかないんス!!」
そう言うアラドの目は、ついさっき会ったときの怯えた目とは違って、決意に満ちていた。
(大切な人か…、リオ…。)
「アラドくん、キミはまだその機体に慣れてない、囮になるのは僕だ!
僕がアイツと戦っているキミが隙に少しでも遠くに逃げるんだっ!」
リョウトはそう言うとウイングゼロが立ち上がる。
「そんな…!一人じゃ無理っスよ!せめて二人で!!」
アラドがそう言うと
「大丈夫だよ、僕もキミと同じでこんな所で死ぬつもりは無い。
それにその機体の損傷じゃ無理だ!こ


ングゼロを狙ったが、リョウトはそれを紙一重でかわす。
(正直、どこまでやれるかわからない!でもリオに会うまでは何があっても死ぬわけにはいかない!!)
ウイングゼロのバスターライフルがヴァルシオン改に命中し、その巨体を大きく揺らした。
『ぐぬぬぅ…!!あったまきた!もう絶対ぶっ殺してやるっ!!突撃だっての!!!』
なんとか体制を持ち直したヴァルシオン改がリョウトのウイングゼロに向かって突っ込んでくる。

ゴォンッ!!
「うゎぁぁ…!!」
多少の衝撃はシールドで殺したものの、細身のウイングゼロでは衝撃は完全には防ぎきれず、ゼロは勢い良く吹っ飛ばされた。
『ハァッハハァ!!簡単には楽にしてやるかっての!!』
倒れこんだウイングゼロに向かって出力を抑えたヴァルシオン改のクロスマッシャーが容赦なく降り注ぐ。
ドォーン!ドォーン!!
致命傷には至らないものの、次々と放たれるヴァルシオン改の攻撃に
リョウトの乗るウイングゼロは激しく揺れる。
リョウトの脳裏に死がよぎる。だがそれと同時にアラドの言葉を思い出す。
『大切な人に会うまでは死なない』
(くそぉ……、僕は!僕はこんな所で………。)
「死ぬわけにはいかないんだぁ!!」
その瞬間、コックピットの中央にある円形のモニターが青く光る。
【システム起動】

『そろそろトドメをさしてやるっての!!』
テンザンはそう言うと、砂煙が消えるのを待つ。
しかし、そこにはつい先ほどまでいたウイングゼロの姿は無かった。
『なんだなんだぁ!?どこに逃げやがったぁ!?』
その瞬間、腕を失って死覚となった右側からウイングゼロが低空を猛スピードで接近し、
ヴァルシオン改の右足をビームサーベルで破壊した。
『うわぁ!!!』
バランスを失い、そのまま後方へ倒れこむヴァルシオン改。
『あんにゃろ~!!なんてスピードだぁ!!裏ワザでも使いやがったなぁ!
ちくしょう…!!絶対、絶対、絶~っ対!!ぶっ殺してやる!!!!』
テンザンはそう叫ぶと仰向けに倒れたまま空を見上げる。
『んっ…!!』
そこには今さっきまでそこにいたはずのウイングゼロがツインバスターライフルをこちらに構えていた。
「目標補足…、ツインバスターライフルフルパワー。破壊する…!!」
『ちょっ…、ちょっと待て……!!ウギャァァーー!!!!』
激しい閃光と轟音が鳴り響く中、テンザン=ナカジマののるヴァルシオン改が爆発と共に跡形もなく吹き飛ぶ。
「ターゲット破壊完了…」
リョウトがそう言うと、彼を乗せたウイングガンダムゼロはゆっくりと地面に向かって降下していった…


【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ウイングガンダムゼロ(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状態:かなり疲労
 機体状態: 小破
 現在位置:B-8
 第1行動方針:リオの発見
 最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出】

【テンザン・ナカジマ 搭乗機体:ヴァルシオン改(スパロボOG)
 パイロット状態:死亡
 機体状態:跡形もなく吹き飛ぶ
 現在位置:B―8】


【アラド・バランガ 搭乗機体:ガンダムエピオン(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状態:疲労
 機体状態: 中破
 現在位置:B-8から移動中
 第1行動方針:後方を気にしながらも移動
 最終行動方針:ゼオラや仲間を集めてゲームから脱出】





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第51話「無題 時系列順 第56話「鬼に追われて・・・

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第11話「二人のACE ATTACKER アラド・バランガ 第79話「生きる意志
第11話「二人のACE ATTACKER テンザン・ナカジマ



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最終更新:2008年05月29日 03:35