強さの理由 ◆i9ACoDztqc
克己――発頸。
日頃は誰もが無意識にしている呼吸。
しかし、そんなものでさえ、一定の手順をもって行えば、自らの内よりさらなる力を引き出すことが出来る。
いや、それだけではない。息を吸う、息を吐く――その瞬間全身に起こる力の微弱な変化が戦闘においてどれだけ重いものか。
裂帛の一撃を放つ時も、相手の矢継ぎ様の攻撃を捌く時も、呼吸の仕方次第で大きく変わる。
体内の疲労を押し出すように、深く、そして重く息を暗黒大将軍は吐く。
静かに剣を振り上げ――全力で打ち下ろす。全身に行き渡る剣の手ごたえ。
戦場にて常に剣をふるい続けた暗黒大将軍にとっては、剣から感じる振動が何よりも正確に疲れを教えてくれる。
「まだいける……しかし、次の戦いがこの戦(いくさ)の一区切りか」
呼吸法で疲れを軽減し、疲れを忘れることはできる。
だが、それはあくまで対処療法的なものであり、根本的な解決には程遠い。
どれだけ疲れていても引けず、戦い続けなければいけない時は確かにある。負けられない戦(いくさ)も確実に存在している。
だが、多くの猛者が闊歩するこの戦(いくさ)において、生き残るためには休息もまた必要だ。
もう一戦交えた後は、あえて放送まで休憩することも視野に入れても悪くないかもしれない。
「剣鉄也……今お前はこの空の下、どこで何をしている……?」
あの男が殺し合いに乗ることは、絶対にないだろう。
おそらく、自分のような殺し合いに乗るものを打ち倒すため、一人で動いている。
狎れ合えず、戦うことしか知らない偉大なる勇者。奴もまた、果てしない戦いで生き延びる素質を備えた男。
無論、戦場で絶対はない。どれだけ強きものも、足元をすくわれることがある。あくまで、強ければ生き延びやすいだけだ。
それでも、暗黒大将軍は信じている。剣鉄也がそうそう死ぬような男ではないと。
そう敵として、その実力を誰よりも知っているからこそ。
「再びこの世界でまみえることになると言うのなら……今度こそ全力で勝ちたいものよ」
あの時は――ミケーネの勝利のため、あえて武人としての思いを半ば捨て、策を講じた上での一騎打ちだった。
だが、この場では策を講じることなどできない。純粋な一騎打ちだ。
そうやってこそ、真に勝つ意味がある。
手に握られた剣が光を照り返し、僅かに瞬いた。
暗黒大将軍はそれを見て一度目を閉じると、剣を納める。
200mもある頑丈で巨大な機械を砕く手間を考えれば、残った体力は戦いに費やしたほうがいい。
いざゆかん、さらなる戦いの地へ。
マントを翻し、暗黒大将軍は当てもなく歩き始める。
■
カノンの気合のこもった声と同時に拳が振り切られる。
クストウェルに馴染むため機体を走らせ、必死に動かし続けるカノン。
それから少し離れた場所でロムはカノンと対照的に静かに腕を組み見守っている。
外から、ゴッドガンダムからは窺い知ることはできないが、コクピットの中でロムは顔をしかめた。
「……おかしい」
ロムは、カノンとテッカマンアックスの戦いを見つけたのち、少しだけ様子を見て状況を理解すると、即介入した。
つまり二人の戦いの一部始終を見ていたわけではない。だが、圧倒的にカノンが押されていたのは覚えている。
しかし、今のカノンの動きをみる限り、そこまで極端に押されるほどの実力ではない。
順当にいけば負けるかもしれないが、アイディアや立ち回りで十分補いきれる程度の差にしか見えない。
だが、現実においてカノンはテッカマンアックスに大敗している。
「カノン。すまないが手合わせしてくれないだろうか」
見ていて分からないのであれば、実際に向かい合うことで原因を知るべきだろう。
ロムはゴッドガンダムを滑るように動かし、カノンの前に出る。
少しカノンはまごついた後、しゃべり始めた。
「私より強いロムにいらないことかもしれないが……手加減はできないぞ」
どうにも、『力』を抑えて『相手』を抑えることに慣れていないらしい。
動きからしてそれなり以上に実戦の経験はあるのだろうが、常に相手をせん滅していたのかとロムはふと考える。
「問題ない。天空宙心拳は活人拳……相手の力を受け流し、受け止め、抑えることに重きをおいている」
組んでいた手をほどき、半身を出す。片手をまっすぐ前に。もう一方の手は胸の前に。
天空宙心拳の基本ともいえる姿勢をロムは取る。
「……いいんだな?」
「もちろんだ」
再度の確認。
そして――この世界において珍しい、殺し合い以外の戦いが始まった。
■
届かない――当たらない。
繰り出した全力の拳が、まるで虫でも払うかのような動きで逸らされる。
続いて放つ蹴りも、思念を読まれているとしか思えない反応速度で出掛りを潰される。
テッカマンアックスとやった時と同じ光景が、ロムでも再現される。
ロムとテッカマンアックスの実力は五分、いや若干ロムが上だった。
つまり、この結論になることはおかしなことではない。おかしくはないが――
「どうして当たらない……!?」
二人と自分の実力の差。その原因、根本はどこにある。
なまじ人の形をしているからこそ、その動きがフェストゥムよりも良くわからないものに思えた。
ロムはそれを体術を習得しているからと言うが、カノンも軍隊で実戦向けの暴徒鎮圧術を覚えこまされた。
自分の技術と、ロムやアックスの身体にしみついた技術は、それほどの差を生み出すものなのだろうか。
紛いなりにも日野道生に付いて、世界中でフェストゥムと戦ってきた。
自分が戦えるという思いも、自負ではないが持っていた。
それが、酷く小さなものに思えた。
「……ここまでにしよう」
結局一発も入れることが出来ず、ロムが終わりの合図を出した。
肩で息をするカノンとはまったく逆で、ロムは呼吸一つ乱していない。
埋めようがないと思える実力差。それが疲れた肩にさらに圧し掛かってくる。
よくこんな実力で島を守ると言えたものだと情けなくなる。
「なるほど、良く分かった」
無言のままカノンはロムを見る。
一体何が分かったのか。それが知りたくてしょうがなかったのが顔に出ていたのだろう。
ロムはカノンを見て表情を崩し小さく笑うと、
「俺とカノンの間に実力がそう大きくあるわけではない」
「そんなはず……」
噛まれた唇。尻すぼみに消える言葉。
ロムがお世辞を言っているとしか思えない。ただ一撃も返せない自分とロムに差がないはずがない。
ロムが何かを言おうとする。慰めの言葉なのだろうかと思い、ぼんやりとロムのほうに意識を向けていると――
「なるほど、確かに小娘の動きは悪くない。だが――決定的に欠けているものがある」
上空からの声。
荒野に立ち並ぶ高台の、一機の――いや一鬼の影。
頭部と胴体に二つの顔。荒野の乾いた風を受けてたなびくマント。
その手に握られた大剣。
全員から漏れ出る、恐ろしいまでの戦意。
そう、それは暗黒大将軍。
■
戦場の空気を暗黒大将軍は肺腑一杯に吸い込む。
それだけで戦意が高揚し、頭の片隅に疲れや迷いが押し込まれ、そして霧散していく。
目の前の男の技量は、少し見ただけで明らかに達人と見て取れる腕前。
相手にとって、不足なし。
「カノン、下がっていてくれ」
「だが……」
「頼む。今のカノンではあれに勝つことはできない。そして、俺も庇う余裕もない……!」
高台から飛び降りる。着地と同時に地面が割れ、砂埃が舞い上がる。
睨みつけるは、ただ一人。ややあって男から小娘が距離を取った。
「いい判断だ。逃げる者を狩るのは最後の仕事よ。戦う者と剣を交えることこそ、今俺が成すべきこと」
「その殺意……いや戦意、ただものではあるまい……!」
「だが、それを知る必要はないだろう、お前もここで俺の剣の露と消えるのだ!」
男が構えると同時に、暗黒大将軍が剣を振り上げ、一気に切り掛かる。
大きく踏み出された足が、大地に突き刺さらんばかりに落ちるのと同時に、全体重を乗せた一撃が放たれる。
目の前の機体など、当たれば一瞬で紙きれのように引き裂くだけの威力を込められた剣技。
しかし、それを前にした男は。
臆することなく前に飛び出していた。
「ぬぅ!」
相手と自分の身長差は約二倍以上。
さらに暗黒大将軍の使用する大剣という条件を加えれば、そのリーチは一拍で到底逃げ切れるものではない。
それを正確に見越して、男は暗黒大将軍の懐へ飛び込んだのだ。
力が最大を迎える前に削ぐ。言うはたやすいが、やるのは絶妙のタイミングとなにより勇気がいる。
「はああああああああ!!」
「だが、まだまだよ!」
男の機体の手に滑り出された光の剣が、まっすぐに突き出される。
暗黒大将軍は勢いのまま振り下ろされたはずの剣を、腕力に任せV字の軌道で引き寄せ、弾き飛ばす。
剣を弾かれ、体勢を崩す男の機体――否。
流水の動きで後ろに倒れる勢いを使い、後方へ宙返りを披露し、四肢をもって着地。
超下段から伸びあがるような軌跡で放たれる光の剣。
剣の二度返しを行い、これ以上剣で防ぐことはできない。
なら、どうするか。
「甘いわ! 俺の剣は二本ある!」
腰に握られた自分の愛剣を暗黒大将軍は引き抜く。
剣のエネルギーと実体剣が打ち合わされ、凄絶な音を立てた。
相手も一息に踏み込める限界だったのだろう、視線を切ることなく、後方に跳躍すると、音もなく着地した。
「ふふふ……こうも早くこの剣を抜くことになるとはな……!」
剣鉄也のような真の強者と戦う時まで抜くことはないと思っていた、二刀目。
それを一度の攻防で『抜かされた』事実。紛うことなき、最高峰の戦士。
血がたぎる音が暗黒大将軍の耳朶を叩く。
「強い……これほどの剣の使い手がいるとは……!」
「見くびるな! 俺の剣はまだこれで終わりではないぞ!」
さらにぶつかり合う三本の剣。
暗黒大将軍の剣を疾風怒濤と表現するのであれば、目の前の男の剣は、疾風迅雷。
二刀をもっての怒涛の攻めを掻い潜り、なお暗黒大将軍の倍近い剣の軌跡を光らせるその技量、速度。
剣鉄也とはまた違う。剣鉄也が鈍い光を放つ斬馬刀だとすれば、この男は鋭く輝く日本刀。
「お前は名をなんと言う!」
「貴様のような男に名乗る名前はない!」
「良く言った、気にいったぞ! 意地でもその口を割らしてみたくなったわ!」
雷光を纏い放たれた剣が、暗黒大将軍の肩をかすめる。
お互いの身体に触れることのなかった剣の嵐、届かなかった剣の結界が広がっていく。
しかし、それは暗黒大将軍の側のみ。
気付けば、男もまた二本の剣をその手に握っている。
「二刀の剣を使えるのはお前だけだと思うな!」
「だが、二刀の剣は一つに込める力を落とすものよ! 貴様の大きさで二刀を使い、俺の剣を受け止められるか!?」
「天空真剣の極意も天空宙心拳と同じ! いかな暴風であろうと受け流すのみ!」
「ならば、受け流してみよ!」
弾かれたように後退する両者。
大きく横へ剣を引き、薙ぎ払うように力を振り絞る。
放たれるは、黒い暗黒の竜巻。
対して、男のやったことも似ていた。
二刀を繋ぎ、超高速回転。瞬く間に男の姿が隠れ、竜巻が立ち上る。
それが、男が剣を最後に向ければ、前に進み出す。
「受けよ! 暗黒竜巻衝!」
「天空真剣、真空竜巻!」
両者の剣より放たれた竜巻はちょうど両者の中心地点にてぶつかり、お互いを打ち消し合い、なくなっていく。
二つの竜巻がぶつかり合い、猛烈な突風を起こした後に流れるのは、そよ風のみ。
「他でもない武道でここまで戦えるものと会えるとは……久しくなかったぞ!」
たぎり続ける血が燃える。全身が沸騰する。
疲れという異物を感じる隙間など、あるはずがない。
グレートマジンガーも確かに強敵だった。だが、あれは戦闘においての強敵、好敵手。
武道という分野において、暗黒大将軍は強すぎた。ミケーネ帝国の将軍を束ねる、唯一の実力者、暗黒大将軍。
何か一強であろうとも武道と言うものにおいて彼を超えるものはいなかった。
その自分と、ここまで戦うことのできる男がいる。
「もう一度聞こう、お前の名は何だ!?」
「俺の名はロム・ストール! お前の名は!?」
「名などアレス国が滅んだときに捨てた! 今の俺はミケーネ帝国の暗黒大将軍!」
「なら聞こう、暗黒大将軍、何故お前は戦う!」
暗黒大将軍は迷わず答えた。
暗黒大将軍が戦う理由。それは、ミケーネ帝国のために他ならない。
戦いの中に愉悦を見出すことはあっても、あくまで戦う理由とは別に存在している。
「知れたこと、ミケーネ帝国のためよ。俺に従う七将軍、その配下のミケーネ軍団……
多くのミケーネの民。それが地上を再び取り戻すため地上を俺は制圧する!」
「それをシャドウミラーの力で叶えようと言うのか…… 違うだろう!」
「その通りだとも、あのシャドウミラーとか言う人間どもも敵だ。
しかし、お前たちも敵であることは変わりない。敵の敵は味方……などと言うつもりもないわ!」
「それも元の世界の理屈。この世界ならば協力できるだろう! お前の拳からは邪心は感じん!」
ロム・ストールと名乗った男の言葉を暗黒大将軍は笑い飛ばす。
「甘いわ! 生き残るための戦いに正義も悪もない。
勝ったものが正しい、故に俺は、ただ俺の信じるもののため戦うのみよ!」
その一言を叫んだ瞬間、空気が変わる。
「ならば、俺も信じたもののために戦おう。暗黒大将軍、お前の理屈は間違っている!」
「それでどうした、俺を踏み越えて証明してみせい!」
ロム・ストールが一度静かに目を閉じる。
そして、その眼を開くと同時にロム・ストールが叫ぶ。
「 断 る ッ ッ ッ ! ! ! 」
「なっ……」
その気迫に、流石の暗黒大将軍も一歩下がらざるを得なかった。
それほどの何かが込められた叫びだった。
「俺は拳法家として、そして剣士としてお前を倒そう!
勝てば正義と言うのであれば、俺が勝ったならば俺たちに協力してもらう!」
その言葉の意味を暗黒大将軍は理解し、暗黒大将軍の怒りが一気に吹きあがる。
「命を奪う覚悟もなく俺を倒すと言うのか……! 俺を愚弄するのは許さんぞ!」
「違う……お前ほどの力の持ち主ならば違う使い道があるはずだと言っている!」
両者の力が爆発的に高まる。
結着の一撃が、今炸裂の瞬間を前に体内で練り込まれていく。
「そこまで言うなら覚悟を示してみせい!」
「天空宇宙心拳は活人拳! 生かしてこその拳法だ!」
己の剣を納め、両の腕をもって正眼に構え、セレブレイダーを保持する。
それだけ全力を持って剣を、己が身体を支えなければ撃つことの出来ぬ今の暗黒大将軍が使える最大最強の一撃。
湧き上がる力が黒い闘志となって全身を覆い尽くし、それが剣へと流れていく。
同時に、剣そのもののエンジンが唸りを上げ、回転数を上げていく。
正邪合一、神魔両断。断てぬものなど何もなし。
ロムもまた、奇しくも同じ姿勢。正眼に構え、一刀を両手で掴む。
しかし、暗黒大将軍が剣を「立て」ているのに対し、ロムはまっすぐに「突く」かのように暗黒大将軍へ剣を向ける。
天よ地よ、火よ水よ。そして我が身に眠る全ての力よ。今ここに姿を顕したまえ。
殺さず、生かす。人の命を絶つことなく、正しき道に導くために。
機体が金色に輝き、背中に六枚の羽根が開く。背負うは名のまま神の後光。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! 死断殺(デスストラッシュ)!!!」
「天空真剣奥義! 爆裂! 空天!」
暗黒大将軍から放たれる黒い極光の竜巻。
ゴッドガンダムから放たれる、白き極光の八岐大蛇。
爆発。
炸裂。
そして――空白。
■
目も開けていられないほどの光が、カノンを照らす。
両者の超状の一撃がぶつかり合い、何も見えない。ロムは、勝つことが出来たのか。
加勢することが出来なかった自分に悔しさを覚えながら、カノンは白い光の中目を凝らした。
自分がまったく手を出すことが出来ないほどの、一瞬の交錯、攻撃の刺し合い。
それは、カノンが体験したことのない戦闘の形態だった。
カノンが、ロムやテッカマンアックスに大敗した理由――それはここにあった。
フェストゥムは、ワームスフィア―というものて空間そのものをえぐり取る。
それ以外には腕などを伸ばし刺すといった攻撃がメインとなっていた。
人間ではない、人間とかけ離れた生命体であるからこそできる戦闘方法。
カノンは、確かに戦い続けた。しかし、それは全てと言っていいくらいにほとんどフェストゥムが相手だった。
当然だ、人類同士がいがみ合っている場合ではないほど、フェストゥムは脅威だったのだから。
それに対して、アックスやロム、そして目の前にいる暗黒大将軍。
彼らは、自分の心技体の全てを使い、自分の闘志を前面に押し出して戦っている。
接近戦でのその動きは、急に加速することはあってもおおむね緩慢なフェストゥムとは比べものにならない。
技量、という意味でも同じだ。
死を恐れず戦闘の純粋な技術を学ばないフェストゥムには通用しても、
死を遠ざけるためあらゆる技を使い相手の攻撃をいなそうとする三人に通用するはずがない。
ある意味で、カノンの戦い方は機械やそれに類するもの相手だった。
だからこそ、彼らのような『戦士』に対して戦うことが出来なかった。
息をのみ、暗黒大将軍とロムの戦いを見ることで、初めてカノンはそのことを自覚した。
光が収まり、場が見えてくる。
まだ眩んでいる目をこすり、見えてきた光景は。
「ロム……!?」
あれほど距離を取っていたはずなのに、いつの間にか両者の間はなくなっていた。
あの光の中、それでもなお一撃を加えんと両者が剣を構え相手に立ち向かったからだった。
そして――倒れているのはロム・ストールの乗るゴッドガンダム。
暗黒大将軍は、剣を持ったままゴッドガンダムを見下ろしている。
この後、暗黒大将軍が何をするつもりか、カノンにも即座に分かった。
仲間を失いたくない――誰にも死んでほしくない。カノンは、その一念で暗黒大将軍へ一気に距離を詰める。
「はぁああああああああああ!!」
勝てないかもしれない――けれど、一撃を当ててロムを回収し逃げることはできるかもしれない。
どれだけ難しくてもやって見せる。そんなカノンの思いを乗せた一蹴りは――
「たわけがっ!! 拾った命を捨てるか!」
剣の一撃でいとも簡単に跳ね返された。
地に叩きつけられるクストウェル。即座に身を起こし、さらに拳を握り、暗黒大将軍へ放つ。
しかし、それも剣すら使われず、何も握っていない暗黒大将軍の掌で受け止められた。
次の瞬間、大地が逆転した――力任せに投げられたのだと分かった。
それでも、カノンは飛びかかろうとして――
――暗黒大将軍の一喝。
「もういい、ここまでだ!」
その言葉に、カノンも動きを止める。
「この男は、最後の切り合いで、わざと俺の顔を避けた。そのまま突けば勝てたにも関わらずだ。
あの極限の状態で、なお自分の言った言葉を守ろうとした。この男もまた、勇者。その心意気に免じ、ここは見逃そう。
暗黒大将軍が目を向き、カノンの背後のロムへまっすぐに剣を向ける。
「だが、このままでは俺の気もおさまらん! 8時間くれてやろう、その後俺はD-4に行く! 結着はその時だ、伝えておけ!」
剣を納める暗黒大将軍。
さらに、暗黒大将軍はカノンを見据えて言い放った。
「闘志は認めてやろう、だが戦い方がなってないわ。そんなものでは俺と戦う資格もない」
カノンとロムに背中を向ける暗黒大将軍。
「欠けていたものはわかったか!?」
「……わかった、つもりだ」
「なら俺とロム・ストールの戦いを思い出し、学ぶがいい! 俺と勝負がしたいのならばな!」
暗黒大将軍が再び歩き出す。
カノンは、その背中を見えなくなるまで眺めていた。
【一日目 11:00】
【暗黒大将軍
支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON)
パイロット状況:全身に大きなダメージ、激しい怒り、疲労(極大)
機体状況:良好、ENほぼ空、セレブレイドに変形中
現在位置:G-4
第一行動方針:ひとまず休息する。補給も行う。
第二行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する 、剣鉄也を倒す
第三行動方針:ダイヤが現れたのなら決着を着ける
第四行動方針:余裕ができたらガンバスターを破壊する
最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する
備考1:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになってます
無論、搭乗者が普通に機体を使う事も可能です】
■
■
「……そうか、まだ俺も修練が足らないか……」
目覚まし、カノンに説明を受けたロムは静かに呟いた。
どうにか、きっかけを作ることはできた。今はそれでよしとすべきかもしれない。
だが、もう少しだけ力があれば。その悔いは、いかのロムとは言え拭いがたかった。
あれほどの戦士が仲間になれば、それは大きな助けとなるはずだ。
「8時間後……再び奴は現れる。ならば、その時まで俺ももっと強くならなければ……」
「そのことで話があるんだが……」
どこか躊躇した様子でカノンが言いだした。
しかし、その眼には先程の焦燥と違い、僅かに明るい色が混じっている。
そのことに小さく首をかしげながらも、ロムはその先を促した。
意を決した様子で、カノンが切り出した言葉は―――
「私に、戦い方を教えて欲しい……!」
【一日目 12:00】
【ロム・ストール 搭乗機体:ゴッドガンダム】
パイロット状況:良好
機体状況:エネルギー50%消費、 装甲表面に多少ダメージがありますがその程度です。
現在位置:G-4 荒野
第1行動方針:カノンと行動する
第2行動方針:悪を挫き弱きを助ける
第3行動方針:真壁一騎、皆城総士、遠見真矢、春日井甲洋の保護
第3行動方針:19時の暗黒大将軍との再戦に備える(上と同じくらいの重要度なので3を並べてます)
最終行動方針:シャドウミラーに正義の鉄槌を与える】
※羽佐間翔子は同姓同名の別人だと考えています。
【カノン・メンフィス 搭乗機体:クストウェル・ブラキウム(スーパーロボット大戦J)】
パイロット状況:良好。
機体状況:装甲がへこんでいる以外良好
現在位置:G-4 荒野
第1行動方針:ロムと行動を共にし、強くなる。
第2行動方針:竜宮島の仲間と合流する
最終行動方針:仲間と一緒に竜宮島に帰還する】
※羽佐間翔子は同姓同名の別人だと考えています。
最終更新:2010年04月02日 23:08