ビッグデュオ・炎  ◆i9ACoDztqc



「これは……想像以上か……?」
「どうなってるんです、これ……」

トレーズとトビアは、自分の目の前にある光景に絶句する。
彼らは確かにA-1に、海中、空中から軍事基地を目指していた。
目指していたが、あくまでそれは「地上にある軍事基地」だと認識していた。
だが、今彼ら二人の目の前にあるのは、間違いなく星煌めく宇宙であり、踏みしめているのは、命なき大地、月のそれ。
光のオーロラのような、色彩揺らめく壁を前にして、機体をくぐらせA-1に辿り着いた場所は月面だった。

「あ、あれ地球ですよね……」

トビアの指さす方向を、トレーズは仰ぎ見る。そこにあるのは、青い命の星、地球。

「どうなっている……?」

あの地球が、自分のいた場所なのか。だとしたら、ここまで信じがたいが空間転移により一瞬で飛ばされたのか。
それとも、月をあの光の壁で空間的に隔離し、作ったバイオフィールドから自分たちが出てきただけなのか。
どちらにしろ、途方もないほど発達した技術であることは間違いない。

「重力は?」
「えっ?」
「重力などに関してはどうなっているのか、そちらの機体で測定できるかね?」

トレーズの問いに、トビアは手もとの計測器に目を落とす。

「完全に、月の数値と一致してます……恣意的に作った環境かは分からないですけど……」
「なるほど」

そう言って、ソルグラヴィオンをおもむろに走らせるトレーズ。さらに、その勢いのまま大地を蹴り宙に飛ぶ。
そのまま勢いよく元いた場所に同じように走って戻った後、光の壁に手を突っ込んだ。

「ってええ? なにをしてるんですか!?」

追いかけるトビア。トレーズは、ソルグラヴィオンを止めると振り返り、トビアの乗るオーグ・バリューの動きを見る。

「突然何してるんですか……ちょっと待ってくださいよ。何か見つけたんですか?」
「ああ、見つけたとも。機体のプログラムが自動的に書き変わっていることを」

トレーズのその言葉に、目を見開き、その後考えても分からなかったのか眉を寄せるトビア。

「地上と月では、まったく重力が違う。そんな状況で運用しては、転んでしまう。
 それを抑えるため、我々は自動で切り替えるようなAIを組む。ここまではいいかな?」
「分かります。昔のモビルスーツは、宇宙、地上両用のものが少なくて、苦労したとか聞きましたし……」

トビアは知らないが、抹消された歴史にGP-01というモビルスーツがいる。
これはのちに改修され、GP-01フルバーニアンとして生まれ変わり、宇宙でGP-02と互角の戦いを繰り広げた。
しかし、改修前宇宙に出た結果……地上の最新鋭モビルスーツも宇宙では手も足も出ない木偶と化した。
大気圏突入、そのまま戦闘――言うのはたやすいが、それは意外と技術的には大きな問題だ。

「しかし、それが勝手に切り替わった。異なる環境に同時にアジャスト、はありえない。
 海に潜っていたのもその確認だった。結果を聞くかね?」

トビアが首を静かに動かす。

「海に入る場合、特に変化はなかった。出る時も同じだった。
 だが、この光の壁に触れた場合のみ、宙間⇔地上のOSの切り替えが行われる
 つまり……この光の壁に触れると、何かしらのトリガーが発動し、機体に変化が起こると言うことだ」

ポカンとするトビア。
それをどうしたことかと見るトレーズ。

「どうしたのかね?」
「い、いや凄いな、と……」
「そんなことはない。重力や、それに伴う環境は君の先程の説明があったからこそだ」

別段誇ることもなく、ことなげに言うトレーズに、内心トビアが感嘆したのは言うまでもない。
だが、そんなトビアを励ますように、オーグバリューの肩をソルグラヴィオンは叩いた。

「せっかくここまで来た。これだけでもそれなりの成果はあったが……まだ空手とこれでは同じだろう。
 かなり遠方までここなら見通すことが出来る。二手に分かれるとしよう」





「なんにも知りたい男の子♪ なんにも知らない男の子♪ 大人になったら分かるから……」

風を切り聞こえてくるのは、少年の姿をした何かの歌声。
ほんの少しだけあけたガラスのようなハッチから吹き込む風が、彼の濡れた服を乾かしてくれる。
彼が感じるのは、純粋に喜びだった。人が空を飛ぶために手に入れた力、その始まりをどこか思わせる機神。
彼自身、やろうと思えば空に浮かぶことはできる。
だが、こうやって人が生み出したであろう英知を持って空を飛ぶというその行為が純粋に楽しい。
羽を失った鳥が獣に、すなわち人間となった。そのころに思いを馳せ、再び空に舞い上がった人間もこんな気持ちだったのだろう。
破壊を目的として作られたものであろうとも、使い手次第で存在する目的を変えられる。
そんな機神に僅かな羨望を感じながら、彼は歌う。

「ずっとずっと探しているうちに……」

もう、もうほとんど元通り。外れそうになっていた腕は――翼は固着し、今こうやって空を羽ばたく力となっている。
そうやって彼が飛び続け、行き当たったのは再び光の壁。その向こうの風景が光の中、おぼろげに浮かんでいる。
青い輝きを、そして暗い広がりを感じさせる銀幕の向こうに、彼は興味を覚えた。

静かに、ビッグデュオが、光の壁を超える。






最初の場所で派手に爆発して見せることによって、首輪がある限り逃げられないという刷り込みを与えるための。
同時に、殺し合いを抜け出る為には首輪を外すしかないと思わせるための。
自分たちがこうも首輪をあっさりと調べることを許され、何のペナルティもない。
しかも、調べれば解除コードのようなものまであった。そんなものを用意する必要、主催者にはない。

技術的に外すことが可能、いや技術がなくともパスコードがあれば誰でも外せるかもしれない、と考えさせることによって、他の手段を放棄させる。
これこそが、首輪最大の目的ではないか。目先の餌として、同時に恐怖の象徴としてつるされた餌。
無論、首輪も外さなくては主催者であるシャドウミラーの前に立つことはできないだろう。
それだけでは決定的に足りない。首輪は外せば済むほど単純ではない。
だが、これは本当に組織全体の意向なのか、それともレモン・ブロウニングの独断なのか。
まだだ。

まだ真実を暴くにはピースが足りない。

もし、真に勝利者になろうとするのであれば。
首輪の向こう、シャドウミラーの目的から生み出される行動の真理を探すこと。
理解の先に、初めて敗者と勝者がある。そうでなければ、ただの戦死者でしかない。

「そのためには、知識がいる。多種多様な人間がいる。そして……時間はない」

そう、数多の世界より呼び出された知恵を結集させなければいけない。
多種多様なメンタリティを持つ、自分たちが持てないような発想を持つ人間がいなければならない。
彼らが、戦死者の列に加わる前に。

「トレーズさん! 南で敵につかまりました!!」

物思いにふけるトレーズの意識を、トビアの叫びが浮かび上がらせる。

「逃げることを優先したまえ。命を奪う前に、命を守ることがここでの勝利条件だ。……私もすぐに向かう」

まさしく魔法のような超技術で作られた炎の巨人が、月の空へ飛び出す。




しかし、その眼に映ったのは、巨大な火球だった。










トビアが、それに気付いたのは偶然だった。
たまたま、A-1の端ぎりぎりまで足を伸ばしていたトビアは、月面基地のあるクレーターの淵にいた。
そこから基地を展望した時、見つけたのは吹きあがる炎。

「なんだ、あれ……? まさか、誰かいるのか!?」

咄嗟に通信を入れるが、既に通信の圏外だったのかトレーズには通じなかった。
火こそあるが、もうすでに戦闘が終結しているのは傍目にも分かる。危険はとりあえずないだろうと判断し、クレーターを駆け下りた。
上がっている火は、ミストをだまくらかすに際してクルーゼが撃ったビームライフルがくすぶっていたもの。
当然、そこには誰もいるはずがない。

「おーい、誰もいないのかー!?」

だが、それでもそんな事実知る由もないトビアは生存者を捜す。
だいたい探し終え、それでも生存者がいないことを確認した時、発見したのは金色に光るモビルスーツと、謎の装置。
送られてくる、メッセージは、コウ・ウラキに贈られたものと同様。

『空間転移装置使用者へ。空間転移装置は、宇宙と地上の特定の位置同士をつなぐ装置である。
 時間にラグなどは起こらないかわり、行先は初期設定された場所にしか飛べない。
 宇宙の任意の場所に移動したのであれば、別ブロックに存在するシャトルを利用すること』

だが、そんなメッセージを横にトビアはすぐに大破したアカツキに駆けよると、通信を試みる。
そして、通信がないのを確認し、機体をゆする。それでも反応がないのを確認し、降りて主導でコクピットを開いた。
誰もいないコクピット。血の跡もない。シートに触るが、ぬくもりもない。
ここでは誰も死ななかった――だが、機体は大破した。なら、中にいた人はどこに行ったのか。

「だれかに連れていかれたのか……それとも、どこかに隠れてるのか……」

そこで改めて空間転移装置を見る。
第三の選択として、これで、コロニーへ移動したのか。
どれにしろ、これ以上は一度トレーズと合流し、情報を整理すべきだろう。
再び、オーグバリューに乗り込んだトビアが、宇宙に登る。

その時だった。

「やあ」

背後から、声がかけられた。
オーグバリューを振り向かせ、向き合った先にいたのは――深紅の大型機。
どこか、旧世紀のプロペラ飛行機を思わせるデザインに、無骨でマッシヴな上半身と両腕。
到底、宙間戦闘が出来そうなデザインではなかったが、それをものともせず空から静かに下りてくる。

なんとなく、感じる嫌な気配。
ドゥガチのクローンを相手にした時ともまた違う、なにかぬめるような感覚に、トビアは警戒を強める。
口を開くことさえはばかられる、そんな何か。
そんなトビアの考えなど我知らない様子で目の前の少年は口を開く。


「星が暗いね」

空を見上げ、世間話でもするようにつぶやいた言葉に、トビアは困惑する。
ふとつられてトビアも空を見上げ、確かに星が暗いとは思った。
だが、それだけだ。ことさら、殺し合いの場と言う極限状態でわざわざ初対面の相手に向けて口にすべきこととは思えない。
この極限状態で、まるで道ですれ違うような緩んだ状況であることが、逆に異質さを加速させる。

「閉じた宇宙、偽りの月……まるで舞台の上だよ」
「何を言ってるんだ、お前……?」
「感じないのかい? この世界がどれだけ嘘しかないか」

トビアには分からない。確かに、宇宙に出て戦ったときに比べて、酷くこの宇宙に違和感はある。
この世界が偽りだとか、舞台の上だとか、そんなことを断言できるはずがない。
何故そんなことが分かる。トビアはちょっと勘が鋭い程度のただの人間だ。
だが、目の前にいるのは、人間じゃない。
そんな確信がじんわりと胸の中で広がっていく。

オーグバリューのロングレーザーソードを無意識にトビアは引き抜いていた。

「……駄目かな。僕が僕である限り、完全に分かり合うことなんてできない。
 僕か、人か、どちらかしか残らないならそれが必然ってことだね」

抽象的すぎて、わけがわからないが、言葉から敵意を持っていることは分かる。
大型機、ビッグデュオの腕が持ちあげられ、オーグバリューを捕えるより早く、光が走る。
振られたロングレーザーソードは、ビッグデュオの腕を切り落とす――はずだった。


ギィィン!!


音を立てて発生するのは、八角形を何重にも重ねたような幾何学的な何か。
それにぶつかり、レーザーソードはけたたましい音こそ立てたが、まったく相手に届かない。

「バリアー……!?」
「バリア……障壁とは違うもの。これはフィールドさ。誰もが持っている、心の領域」

その言葉とともに、振りかざされるビッグデュオの鉄腕。
大きさなら、オーグバリューの1,5倍はあるその腕をかいくぐってトビアはかわすと、肩のユニットを展開する。
そこから緑色の光が収束し、内部にある弾丸を粒子的に加速。

――放たれるドライバーキャノン。

着弾の閃光。


だが、無傷。




眩むような光から伸びる腕をかわせたのは、一重にトビアのカンの良さからか。
回避しながらも、手首に仕込まれた兵装を開放、内部のビームライフル代わりとなる銃身の機能を起こす。

――連続で繰り出されるギガブラスター。

着弾の閃光。


だが、無傷。


何度も、何度も、何度も、何度も、これが繰り返される。

ビッグデュオの動きは遅く、ゾウォークの誇るエースパイロットゼブのために組み上げられたオーグバリューを捕えることはない。
だが、オーグバリューの攻撃もまた、ビッグデュオに届くことはない。
これは、オーグバリューの性質上、どうしようもない相性の悪さから来ている。
オーグバリューは単機でも異常な戦果を叩きだすが、真価はゼイドラム、ビュードリファーと三機一組での運用が肝になっている。

接近戦、一撃必殺のパニッシュゲイザーを武器に持つゼイドラム。
高速戦闘による戦局のかく乱、イリュージョンソーサーで敵を引き裂き、相手を刈り取るビュードリファー。
彼らとトリオを組む上で、オーグバリューに求められたのは、要撃。どこでもどんな相手でも戦える汎用性。
事実、曲者と言われ、奇抜な発想を駆使して戦うゼブの場合、攻撃の幅の広さ、手数の多さは最大の武器となっていた。

だが、逆を言えば一つ一つの武器の平均的な破壊力は高水準でも、ここぞでの一撃がない。
『一定以上の強烈な攻撃』以外を例外なくシャットしてしまうATフィールドを貫通できる武器がないのだ。

「駄目だ……! このままじゃきりがない!」

攻撃するたびに距離を取って後退しているが、弾薬を消耗しすぎれば後が厳しい。
トレーズとの通信できるラインまでは、あと少し。相手の目から放たれたレーザーが、地面を焼く。

「どこに行こうとしているのかな?」
「悪いけど、殺し合いをするつもりはないんだ! 殺し合いなんて、もうまっぴらだ!」

トビアの叫びとともに、再びオーグバリューのギガブラスターが放たれる。
やはり、ATフィールドでいとも簡単にはじかれる。
行動を妨げることもできず、一気に下がる時間もないままだが、着実にじりじりと下がってはいる。

「けど、戦わなければ生き残れない。それは、ここでも元の世界でも同じことじゃないかい?」
「そんな勝手な思い込みに!」

ドライバーキャノンと同時に、その根元にある肩のウェポンラックが展開。
発生するATフィールド。まったく意味をなさないドライバーキャノン。
だが、同時に開かれた武器が、網のように広がり、ビッグデュオの頭上へ飛ぶ。
展開する、それの名前は――プラズマリーダー。
もちろん、ほとんどダメージはない。だが、相手に絡みつき、動きを一時的にも拘束する。
その隙に一気にトビアは距離を取るとトレーズへ通信を飛ばす。

「トレーズさん! 南で敵につかまりました!!」

その声に、すぐさまトレーズが答える。

「逃げることを優先したまえ。命を奪う前に、命を守ることがここでの勝利条件だ。……私もすぐに向かう」

トビアは無言頷くと、背後に感じた寒気を信じ、機体を横へ走らせる。
一瞬後には、ばらばらになった網の隙間から放たれた熱戦が元いた場所へ炸裂した。
それは、オーグバリューの右足を焼く。

「しまった……!」
「悪いけど、仲間が来るまで時間はあげられない」

そう言って、ビッグデュオは進撃する。
機動力は落ちたが、それだけだ。ビームの威力ではとどめを刺せないことを理解し、接近戦で蹴りをつけるつもりなのだろう。

――こうなれば、逃げるには、相手にダメージを与えるしかない。
プラズマリーダーの不意打ちが二度も通じるとは思えない。となれば、どうするか。
相手が攻撃するときは、腕はこちらに届く。ということは、あのフィールドは常時展開しているものではないはずだ。

相手が攻撃を繰り出した瞬間に、接近戦でカウンターを叩きこむ。

これしかない。

「やってやる……人間かは知らないが、乗ってるのは機械なんだ……壊せない理由なんてない!」

ゆっくりとした足取りで迫るビッグデュオ。
それに対し、全身の武器にエネルギーを行き渡らせ、オーグバリューが相手を待つ。
月面に響くのは、エネルギーが収束する低周波音と、ビッグデュオの足音だけ。
通信機越しに見える相手の顔は、こっちの策を理解しているのかわからないが、なお微笑が浮かんでいた。

「よい考えは浮かんだかい?」
「……さあね」
「じゃあ、こっちからいくよ」


涼しげな声ともに、振り上げられた鉄腕が落下。
それが、結着をつける最後の交錯の始まり。
落ちる腕を、足を引きずりながらも紙一重で回避。
腕から放たれたギガブラスター。
遮断するATフィールド。
もう引かず、あえてその場にとどまり続ける。
反対の腕が、振り落される。
前に出るオーグバリュー。
相手の目が僅かに見開かれる。
浮かぶ表情は驚き。
「ここだ!」
しかし、空中でロングレーザーソードが止まる。
発生したATフィールドが、空中に縫いとめる。
「残念だったね」
勝ちを確信した声。
同時に、目が輝く。
収束するビッグデュオのエネルギー。
しかし、――炸裂せず。

「!? フィールドが!?」



オーグバリューの肩から伸びたアーマーが輝く。
ドライバーキャノン、ではない。
ドライバーキャノンをさらに円環を使い加速し、威力を最大まで高める。
オーグバリュー最強の兵装、ゲインシューター―――!
飛びだしたリングが、ATフィールドと反応し合う。
本来なら、なお貫通には足りない。
事実、ゲインシューターもATフィールドを砕くだけ。
だが。
既にロングレーザーソードが、懐に飛び込んでいる。
ATフィールドを再度張るよりも早く、ロングレーザーソードはビッグデュオへ。
飛びあがるビッグデュオ。
しかし、ロングレーザーソードは止まらない。
空へビッグデュオが消えるより早く、刃が到達。
胴体には至らずとも一撃がビッグデュオの右足を捕える。
超高出力のそれは、丸太のようなビッグデュオの足すら容易に切り裂く。
深く深く突き刺さり、それはバターのように切り裂かれた。














――――その瞬間、

                     世界は核の如き炎に包まれた。







「……驚いたよ。こんなものを持ってたんだね、君は」

月面の空を舞うビッグデュオ。その右足は、太ももより下は消え去っていた。

そう、ビッグデュオの足には、メガトンミサイルと言う一発でドームを天井まで破壊するような兵器が搭載されている。
足の内部の8割以上はそれが占めており、事実上、足と言うよりミサイル収納庫としての役目しか持たない。
それが、レーザーブレードのエネルギーで反応した結果起こったのが、足内部のミサイルの炸裂だ。
爆発を確認する直前にギリギリでATフィールドの再展開が間にあった。
全包囲に広がる大規模攻撃に非常に強く、N2爆雷すら無効化する性質を持つATフィールドだからこそやり過ごせた。
一点突破系の攻撃だったら、おそらくビッグデュオは轟沈していただろう。


――足元に転がる機体のように。


メガトンミサイルを、至近距離から防御もなしに受け止めたオーグバリューは、もはや原形を残していなかった。


【トビア・アロナクス 死亡】


「……無理をさせたかな」

そう言って、全身傷だらけのビッグデュオを見る。
さしものATフィールドでも、完全に無効化できたわけではない。
その装甲に広がるダメージは、無視できるものでは到底なかった。

「すぐに治るだろうけど……もうすぐ放送だからね」

ビッグデュオが、空を飛ぶ。
再び、海の底で身体を休める為に。



【トレーズ・クシュリナーダ 搭乗機体:ソルグラヴィオン(超重神グラヴィオン)
パイロット状況:良好  
機体状況:良好
現在位置:A-1
第一行動方針:火球の正体を突き止める、首輪だけでない勝利条件を調べる(会場からの脱出など)
第二行動方針:シーブックとの合流
第三行動方針:トビアのような強い意志を持つものを生き残らせる
最終行動方針:主催者の打倒
備考1:トビアによる首輪の調査結果を聞きました】

【渚カヲル 搭乗機体:ビッグデュオ(THE BIG・O)
 パイロット状態:良好
 機体状態:マシンセル寄生 損傷修復中  装甲にダメージ(大)右足消失
 現在位置:B-1 
 第一行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす
 最終行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす】

【一日目 1:50】



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059:あてにならないパートナー? トレーズ・クシュリナーダ 102:The Garden of Everything
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最終更新:2010年05月08日 04:37