その男、『冷静沈着で頭脳明晰』につき ◆PfOe5YLrtI
※この話は極端なキャラ崩壊描写があります。ご注意ください。
ティーカップに紅茶を注ぎ、ユウキ・ジェグナンは一息つく。
注がれたダージリン・ティーは紅茶のシャンパンとも呼ばれ、彼の最も好む銘柄でもあった。
ダージリン特有の香りが、荒立っていた心を平穏へと誘う。
このマスカテルフレーバーの甘い香りは、セカンドフラッシュ(夏摘み)か。
クオリティシーズンに収穫されたこれは他と比べて、特に高価で高品質なものだ。
心が安らぐ。やはり香りを重視するダージリンは、ストレートに限る。
ユウキは香りを十分に堪能してから、カップを口につけ、ゆっくりと味わった。
――旨い。
セイロンのウバ・中国のキーマンと並び、世界三大紅茶の一つに数えられるだけのことはある。
含まれた刺激のある渋みが、その味にまた深みを持たせるのだ。
「紅茶はいい……」
誰にともなく呟く。
紅茶はいい。紅茶は心を潤してくれる。人類の生み出した文化の極みだ。
元々紅茶の起源は中国に端を発し、今では世界中の人々に親しまれている。
特にヨーロッパでは多く飲まれ、紅茶と共に茶器や菓子なども発達し、その文化は洗練されていった。
ユウキの紅茶への拘りは、彼の体に紅茶好きのイギリス人の血が半分流れているせい……
と考えるのは、さすがに偏見が過ぎるだろうが。
インド人だからヨガに精通、という思考と同じくらい偏見に満ちた、安易過ぎる発想だ。
故郷に想いを馳せる。イギリスのグラン・マは元気にしているだろうか。
もし暇が出来たなら、カーラでも連れて会いに行こうか――
……そうだ。そのためにも、まずはこの場を生き延びなければならない。
ティータイムは彼にとっては至福の時だ。
だがそれも、あの主催者から与えられたものだと考えれば、素直に浸りきることはできない。
気を引き締めなければ……既に殺し合いは始まっているのだ。
* * * * * * * * * * *
冷静沈着ながらも内に熱い炎を燃やす正義漢である彼の心には、この殺し合いに対する
怒りと憤り、そして主催者への反抗心が胸の中に渦巻いていた。
それと同時に、この事態の異常性についても当然のように気付いていた。
ヴィンデル・マウザー……彼率いるシャドウミラーは、滅んだはずなのだから。
彼と共に、アクセル・アルマーの姿もあった。
あの男はアルフィミィ共々蘇り、自らの道を模索し始めたのではなかったのか。
何故今さらシャドウミラーに組する?
彼らだけではない。名簿に記された、ウォーダン・ユミルもそうだ。
さらにウェンドロ、アギーハ……倒したはずのインスペクターの名前。
何故これらの名前がここにあるのか。
自分と同じようにここに呼ばれたタスク、ヴィレッタ大尉、ギリアム少佐も、
恐らく同様の疑問を抱いているはずだ。
これは何だ?自分は一体何に巻き込まれているのだ――?
怒りの渦に不可解な疑問も混じり合って、その心は苛立ちを生み出していく。
ユウキ・ジェグナンのスタート地点は、どこかの地下施設の中だった。
機動兵器の格納庫か何かだろうか。
そこで彼が最初に見たもの。
それは、自分に支給された赤い巨大人型機動兵器の姿。
自分に与えられた支給品袋。そして……
目の前には粗末なテーブルと椅子があって。
テーブルの上には、何故か紅茶セット一式が揃えられていた。
ポット、ティーカップ……揃えられた茶器は高価な銀製のものだ。
茶葉セットと書かれた袋の中には、大量の紅茶の葉がこれでもかとばかりに詰め込まれていた。
ダージリン、アッサム、ニルギリ、ウバ、キャンディ、キーマン……
世界各地のありとあらゆる茶葉が揃っている。中には、入手自体困難な高級品もあった。
紅茶好きの彼にとっては、これ以上の贅はないだろう。だが――
「……ふざけた真似をッ!!」
ユウキは拳をテーブルに叩きつけていた。これは何の冗談だ?
殺し合いなどと、あんな残酷な真似を行っておきながら、悪ふざけにも程がある。
それとも、これから死を迎えるかもしれない参加者への手向けのつもりだろうか?
最後の晩餐とでもいうつもりか?だとしたら、反吐が出る。
そして何より……
これを用意した者は紅茶を何一つ理解していない。
ストレート、ミルクティー、レモンティー……様々なスタイルで楽しめる紅茶。
ならば、カップやポットもそれに応じたものを用意するのは当然のこと。
にも拘らず、置いてあるのは銀器の一式のみだ。
確かに銀器は大概の紅茶に合うだろうが、こと紅茶に関してはユウキは妥協を許さない。
茶器というものは単純に高価であればいいというものではないのだ。
紅茶の香りや色彩に合った美しさを兼ね備えておかなければならない。
可能ならば、環境や時間帯に応じても拘りたいところ。
茶器だけではない。テーブルや椅子に至るまで、全てに配慮が行き届いてなければならない。
それに比べて、ここにあるものは何だ?
ただ高級な紅茶と茶器を揃えておけばそれでいいという、浅ましい考えが透けて見える。
まるで自分の趣味を侮辱されたかのようで、実に不愉快だった。
怒りと共に、ユウキは地面に思い切り叩きつける。
茶葉の入った袋……の中に紛れていた、ティーバッグの束を。
これもユウキの怒りを買った。高価な茶葉の中に適当に混ぜられた、安物のティーバッグ。
「……ティーバッグで入れた紅茶など、邪道だ」
こういう真似を許容する連中には、紅茶を語って欲しくない。
別に人の好みに口出しはしないが、これでわかったような気になられては困る。
そういう奴ほど空気も読まずガブガブ飲んで、周囲に放置されるのだ。どこの誰とは言わんが。
「くっ……!」
叩きつけられたティーバッグは袋が破れ、中身が地面に散らばる。
それを見て、沸騰していた頭が徐々に冷めてくる。……さすがに、あまりにも大人気なかった。
内に秘めた怒りと憤り、そして自身の無力さが、酷く苛立ちを促しているのがわかった。
――落ち着けユウキ。これでは奴らの思う壺だ。
この場で憤慨した所で何も始まらない。というより、こんなことで怒っている状況じゃない。
まずは気を落ち着けなければ。冷静な判断を欠けば、命を落とすことになる。
深呼吸を一つ。そして考える。自分の荒れた心を鎮める手段を。
自分を平穏に導く手段――そう。
こうして――彼は、あえてこの馬鹿げた誘いに乗り、ティータイムを取ることにした。
* * * * * * * * * * *
……というわけで、現在に至る。
断っておくが、別に彼は状況を楽観視しているわけでも、現実から逃避しているわけでもない。
この悪趣味な殺し合い、それを行う主催者への怒りは今も彼の中に渦巻いている。
だからこそだ。怒りにその目を曇らせることなく、平常心を保たねばならない。
心をニュートラルに保てばいかなる事態にも対応できる、とは彼の持論の一つでもある。
それ故のティータイムだ。
事実、憤りに震える心はかなり落ち着いた。ある程度は冷静な判断力も取り戻せただろう。
冷静沈着こそが彼の性格を最もよく現す一言であり、彼の長所でもあるのだ。
無論、彼とてただ気を落ち着けるためだけに貴重な時間を費やしたわけではない。
紅茶を飲みつつ、支給品袋の中身を確認し、今後に備える。
「……何だこれは?コスプレ衣装か?」
薄く黄緑色のかかった鎧のような、ハリボテ衣装が袋の中に入っていた。
兜のような仮面のような、胡散臭い被り物まで一緒に入っている。
少なくとも、役に立つ代物ではないことは確かだ。余計な荷物にしかならないだろう。
「何故こんなものが……邪魔にしかならないな。これは置いていったほうがいいか」
衣装一式を無造作に放り出し、続いて機体の簡易マニュアルに目を通す。
「炎の魔装機神……グランヴェール、か」
そう呟いて、ユウキは支給された赤い機体を見上げた。
魔装機神――その肩書きを持つ機体を、ユウキは一体だけ知っている。
風の魔装機神サイバスターだ。このグランヴェールは、サイバスターと同系統の機体だろうか。
そういえば、魔装機神は4体存在すると、前にマサキ・アンドーが言っていたような気がする。
彼はあまり過去を語らなかったため、詳しいことは聞いていないが……多分、間違いないだろう。
魔力、錬金術、地底世界、炎の精霊との契約……非現実的な要素を含む単語がマニュアルに並ぶ。
普段のユウキなら、この手のオカルト的要素は一蹴していたところだろうが。
さらに読み進める。操縦の際には、操縦する人間のプラーナと呼ばれるものが必要らしい。
プラーナ……人間の持つ生体エネルギーで、俗に言う気やオーラのようなもの、とのことだ。
これについても、簡単に説明が記されていた。
プラーナは人間の生気にも等しく、多量に消費しすぎると命に関わるらしい。
ちなみにその際の応急処置として最も手っ取り早いのは、キス――口移しだそうだ。
……馬鹿馬鹿しい。恋人と一緒に乗り込んで、戦いのたびにキスでもするのか?
そんなおめでたいロボットと世界観がどこにあるというのだ。
続いて記された機体の武装一覧に目を通す。
近接戦用に炎の剣フレイムカッター。牽制用のパルスレーザー。中~遠距離用の射撃武器として
中性子レーザー。射程軸線上に火柱を発生させるMAPW、メギドフレイム。
他に、ハイファミリアという武器がある。サイバスターの同名の武装と同じものだろうか。
だがユウキにはシロやクロのような使い魔は持ち合わせていない。
このファミリアに関しては、使用できないと考えたほうがいいだろう。
そして必殺のカロリックスマッシュ――
接近戦から遠距離戦まで万遍なくこなせる上、MAPWによる殲滅戦にも対応している。
決戦兵器も完備と、至れり尽くせりの豊富な武装だ。ファミリアが使えれば、さらに柔軟な対応が可能だろう。
華奢なボディに似合わず、その火力はどれもが自分達の世界の水準以上。
総合的にはサイバスターをも上回り、特機クラスに達すると言っていい。
一方で、弱点もある。高火力の犠牲となっている防御性能だ。
装甲は薄く、機動性もサイバスターほど優れているわけではない。操縦者の腕が問われる機体といえる。
そのアンバランスさは、ある種ダイゼンガーやアルトアイゼンに通じるものがあるかもしれない。
(望むところだ……使いこなして見せる)
そしてマニュアルの最後に、後から付け加えられたかのような追記がなされていた。
(何だ?もしやこの機体、強化パーツも装着されているのか?)
聞いたことのないCPU名が表記されていた――『高性能電子頭脳』の類のようだ。
詳細は明記されていないが、もし強化パーツのことを示しているというなら、
これは最高クラスの性能だろう。グランヴェールとの相性も抜群だ。
機体も含めて、どうやら相当な当たりを引き当てたらしい。
マニュアルを閉じる。機体の概要、その武装は把握できた。後は搭乗し、直接動かしてみるしかない。
これから自分がどう行動するにしても、機体に慣れておかなければ生き延びることもままならない。
カップに残った紅茶を飲み干す。ティータイムも程々に、そろそろ行動に移らなければ。
このグランヴェールを、無益な殺し合いなどに使ってやるつもりはユウキには毛頭ない。
そもそもこのふざけた殺人ゲーム自体、彼の内に秘めた正義が許せるものではないのだ。
かと言って、今の自分の無力さも痛感している。
最低でもこの首輪をどうにかしない限り、反撃すらままならないことは確かだ。
そのためにも少しでも多くの仲間を集め、目処を立たせなければならない。
知り合いは、タスク、ヴィレッタ大尉、そしてギリアム少佐。まずは彼らの捜索に当たろう。
皆信頼できる仲間であり、加えて状況を冷静に分析できる人間だ。
殺し合いに乗る可能性はありえないと断言できる。
特にギリアム少佐――システムXNを開発した過去を持つ彼ならば、首輪の解除方法についても
何らかの目処を立てることができるかもしれない。
彼の存在は反撃の要となりえる。ならば自分は微力ながらも、少佐の力となろう。
シャドウミラーやインスペクター復活の真相を考察するのは後でも出来る。
今は生き延びるためにも、今は自分にできる限りの行動に移るしかない。
方針は決まった。
立ち上がり荷物をまとめると(紅茶セット含む)、ユウキはグランヴェールへと急ぐ。
そしていざ乗り込もうと、コックピットの前に立った時――
「……ッ!?」
一瞬、頭の中に電流が走るような感覚が過ぎる。
その身に秘められた念動力が、彼自身に警告を与えたのだ。
「ちっ……非常識な」
毒づきながらも、警戒を強める。漠然とながら察知した危険に。
その危険とは何か?この機体に罠があるのか?あるいは、殺し合いに乗った者が潜んでいるのか?
神経を張り巡らせ――彼は意を決し、コックピットへと進入する。
そのコックピットの中で、彼が見たものは。
「ハロ!ハロ!ゲンキ!」「ココアツイナア、アケテクダサイヨー」「バカバッカ、バカバッカ、バカバッカ」
「ソンナコトハナイ!ワタシハ砂漠ノ虎ト戦ッテイタノダゾ!!」「デモ根本的ナ解決ニナッテマセンヨネ?」
「ソレモ私ダ」「イヤアアアア!!!ダレカ、ダレカアアアアアアア!!!!」「黙レ!ソシテ聞ケ!!!」
「台詞削除イベント削除」「ゆっくりしていってね!!!」「シ・カ・モ・ノーギャラ!!」
…………。
……………………。
………………………………。
無言のまま、ユウキは再び外に出た。
……………………。
今何か、見てはいけないものを見てしまった気がする。
寒気が全身に走り、足は震え、額や背中に嫌な汗が流れる。
今のは何だ?何が乗っていたんだ?俺は一体何を見たんだ?
『大小さまざまな丸い物体が、コックピットの中に溢れ返り、くつろいでいた』
何を言っているのかわからないだろうが、俺も何を目撃したのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった……アインストだとかそれも私だとかそんなチャチなものでは断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を見た気分だ。少なくとも人間じゃないことは間違いない。
異星人か?新種の生命体か?いやいや、冷静になれユウキ・ジェグナン。
そんなものをおいそれと信じられるものか。その手の類は信用しないと決めている。
省みろ、今まで地球を襲ってきた異星人が、どれだけ嘘臭い連中ばかりだったことか。
エアロゲイダーも結局は地球人の洗脳軍団だった。インスペクターも実際どれほど人間と違いがある?
彼らが人間とどれほども変わらない事実、偶然の一致とは思えん。あの修羅達とて同じことだ。
アインストやダークブレインという未知の存在もあるが、あれは絶対にその類ではない。
そうだ、そんな存在など断じて認めるものか。ただの人間以外には興味はない。
宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら俺の所に来い。論理的にお前達を否定してやる。
……いや、落ち着け。動揺のあまり、話があらぬ方向に逸れている気がする。
取り乱すな。クールだ、KOOLになれユウキ・ジェグナン!
おばあちゃんが言っていた、心をニュートラルにすればどんな事態にも対応できると!
もう一度よく思い返せ。あれは何だったのか?
別の参加者であるとは思えない。最初に説明を受けた場所で、あんなのは絶対存在していなかった。
もしやファミリア……だろうか。グランヴェール操縦に当たって、俺に用意された使い魔なのか?
マサキの言葉を思い出す。使い魔は本人の無意識を切り取って作られるものらしい。
……NOだ。あれはファミリアではない。あんなものが俺の無意識であってたまるか。絶対にだ。
もっとよく考えろ。少なくともあれは人工物だ。人工物……人によって作られた機械か何かだ。
ならばあれは……『高性能電子頭脳』か?あのマニュアルには『ハロ』と書かれていたが。
あれか?あれがそうなのか?あの丸い機械がハロだというならば、確かに説明はつくが……
あんなものでどうやって機体の性能が上昇する?どう考えても強化パーツの類には見えない。
それどころか狭いコックピットであの数、操縦の邪魔にしかならない気がするのだが。
そもそもどうしてあれだけの数が置いてあるんだ。しかも喋っていたぞ?あれ全部に自我でもあるのか?
ユウキの灰色の脳細胞がフル稼働し、猛烈な勢いであらゆる可能性を検討する。
どう見てもただパニックに陥って迷走しているだけにしか見えないが、外見はそうは見えない。
何故なら彼は、『冷静沈着で頭脳明晰』という性格だからだ。
頻発する超常現象の数々に内心でパニックを起こしていたりするが、それを表に出さないのが彼である。
そして。
自らの混乱を治めることができるだけの理性も、彼は持ち合わせている。
「……フッ」
しばらくして、ユウキは落ち着きを取り戻し、不敵に笑いを浮かべた。
クールでニヒルな人間にのみ許される、そうでない人間にはギャグにしかならない笑い方だ。
もう一度、乗り込もう。グランヴェールに乗らないことには、話が始まらない。
このまま、この得体の知れない現実から目を背けるべきではないし、それ以前にそんな余裕もない。
元々『茶を濁す』という行為は彼の嫌う行動だった。
だが、あれは本当に自分の味方なのか?そうでなければ?
もしあの丸い連中が牙を剥き、自分に襲い掛かってきたら?
あの数だ。手持ちの武器がない以上、満足な反撃の手段がない。
何か手はないか。せめて、何か威嚇できる手段があれば。
威嚇できる手段――
* * * * * * * * * * *
……こうして。
彼は謎の丸い物体への対抗手段を整え、再びグランヴェールのコックピットの前に立つ。
その身に纏うは、薄い黄緑色の鎧と、視界の悪い仮面。
それはある世界における、一人の勇者の姿だった。
そう、彼は先程捨てたコスプレ衣装――
『ソルダートJなりきり変身セット(仮名)』を装着したのだ。
(……こんなもので本当に威嚇になるんだろうか……自分で着ておいて何だが……)
仮面の下の彼の顔が赤くなる。正直この格好は恥ずかしいと言わざるを得ない。
というか、何故こんな意味不明のアイテムが支給されているのだろうか。
本当に他の連中にもこういうものが支給されているのか?そんな疑問が消えない。
だが、これで少しでもあの丸い連中への威嚇なり牽制にでもなれば、それでよし。
この際、手段を選んでいられる状態ではない。どうせここにいるのは彼だけである。
「……よし!」
そして、彼は再び突入する。
自らの
支給機体であるはずの、危険なコックピットの中へと。
そこには。
高性能電子頭脳と称した丸い悪魔達が蠢いていた。
相変わらず好き勝手に騒いでいるが、先程までとは明らかに違う点が一つ。
彼ら全てが、コックピットに入ってきたユウキを注目していたことだ。
それはあまりにも不気味で、異質すぎる光景で。
一斉に、悪魔達の――ハロ達の目が赤く光る。
その瞬間、ユウキは感じ取ってしまった。
普段の彼ならば、機械を相手にそんな感覚は非現実的だと一蹴したことだろう。
あるいは、動揺に支配された彼の、単なる思い過ごしに過ぎなかったのかもしれない。
だが、今の彼は確かに、それを感じ取ってしまった。
あれは、『狩る者』の目だ――
ユウキの悲鳴が、コックピット……いや、地下施設内に響き渡った。
【ユウキ・ジェグナン 搭乗機体:グランヴェール(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)withハロ軍団
パイロット状態:パニック。ソルダートJのコスプレ
機体状態:損傷なし、ただしコクピット内がハロで埋め尽くされている
現在位置:G-2 地下格納庫
第一行動方針:とりあえず、座れる場所を確保する
第二行動方針:仲間を集め(タスク、ヴィレッタ、ギリアム優先)、脱出方法を模索
最終行動方針:打倒主催
備考:グランヴェールはハイ・ファミリア使用不可能。
紅茶セット一式を所持】
【一日目 07:00】
| 登場キャラ |
NEXT |
| ユウキ・ジェグナン |
034:さらなる迷走 |
最終更新:2010年02月21日 17:25