意志 ◆UcWYLVG7BA


「…………っ……何なんだ……これは……」

幼かった頃に全てを奪われた。
そしてただ、死に場所を求めて戦った。
だけど、得ようとしていたのは本当に温かい場所だった。

その少女の名前はカノン・メンフィス。
彼女が目覚めたのはちっぽけなコクピットの中で。
あの温かな島の中では決してなかった。
混乱する頭で必死に状況を把握しようとする。


「殺し合い……なのか?」

くしゃりと自分の赤みがかった髪を抑える。
彼女はそっと呟き、そしてその言葉の冷たさに少し驚いた。
戦いなんて慣れていたはずなのに、殺し合いと変わらないのに何故か驚いた自分に驚いて。
自分が変わったのだろうかと思ってしまう。

「…………皆」

ふと広げた名簿に書かれた名前。
それは竜宮島で知り合い仲良くしてきた仲間達。
死んだと聞いた名前もあり疑問にも思ったが、今はそれを考える余裕もないしする事はしない。
何故ならここには大切な仲間達がいる。
それが今のカノンには重要で。
皆の為にカノンはその不器用な心で、育ち始めた想いで。


「……帰る! 皆で!」

あの温かい島に帰ろうとそう、決めた。
昔なら死ぬ為に戦おうと思ったかもしれない。
だけど、今は違う。
殺し合いに乗らず仲間と一緒に皆であの島に帰ろう。
そう思ったから、そう……思えたから。

だから、カノンは前を見る。
あの温かい島に帰る為に。

「この機体は……近距離特化か」

カノンが乗りし機体はクストウェル・ブラキウム。
フェーリーの技術が詰まったこの機体は近距離戦闘に特化しておりカノンにもあっていた。
軽く機体になれる為にも練習でもしようかと考えた先の事だった。


「…………ほう、早速一人目か」

そう、呟いた声が聞こえたのは。
カノンは聞こえてきた方向に見えるのは蒼い機体。
コンタクトを取ろうかと思った矢先。


「……っ!? 早い!」

その蒼い機体――ソウルゲインが突撃したのは。
そして直ぐに戦いは始まりを告げる。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「甘いぞ!」
「……っ!?」

遊ばれている、そうカノンが気付いたのは何回か打ち合った頃だった。
蒼い機体を操る男は武装も使わず、拳を振るうのみ。
だけどカノンはそれを避けるのに精一杯だった。
こちらも攻撃を振るおうとするが当たる気配がしない。
機体差は見た所感じられない。
なら、単純な事。

「っあ!?」

純粋に実力が開いているという事だった。
思いっきり蹴飛ばされてカノンは躓いてしまう。
見上げる先にいる機体は傷一つ着いてはいなかった。

「さて、終わりだ」

そう言い蒼い機体は拳を振り上げる。
カノンはそれを見続け

(……終わる……死ぬ……?)

走馬灯の様に浮かんでいく思い出。
それは何故かあの島の事ばかりで。
浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
自分を大切にしてくれた人。
温かさをくれた仲間達。
そして、最後に思い浮かぶのはあの少年。
自分を生かしたあの少年。
あの少年を思い出して

そしてカノンは――――

「まだ…………まだ死ねない!」


生き続ける意志を籠めて起死回生の一撃を蒼い機体に振るう。
まだ、死ねなかった。
皆であの島に帰らなけばならない。
その為にも、拳に意志を籠めて、生きなければならなかった。

カノンの拳は青い機体の顔面を捉えようとして。

「…………ほう、中々骨のあるお嬢さんだ」

拳を難なく受け止められていた。
その動作に淀みも無く対して驚いてない様子で、カノンは驚き

「あぁ……」

そして、絶望に染まっていく。
このまま死んでしまうのだろうか。
そう、思うと何処か哀しかった。

「名は……?」
「……カノン」
「……俺の名はテッカマンアックス……そして、死ぬがいい」

テッカマンアックスと名乗った男は拳をあげ、

今、まさにカノンを殺そうとした時


「待ていッ!」


戦場に響く声。


驚き、振り向くアックス。

そこには腕を組み戦場を見下ろす男。


「己が信念を貫こうとする者、迷いを振り切り、ただ前を向き、我武者羅に進もうとする事……
 人、それを『意志』と言う……!」


力強く、カノンとアックスに言う言葉。
それは正しく意志の篭った言葉であり、戦場にただ響いていく。


「貴様……何者だ!」

堪らず、アックスはその男に向かって叫ぶ。


「貴様に名乗る名前はない!」


だが、男はそう切り返し口を白いマスクで覆った。


そして、


「出ろぉぉぉぉぉぉ! ガンダァァァァァァァァァァァァム!」


男の呼ぶ声に呼応して現れる白い機体。

それはある王者が操る機体。
日輪を背負い、なみいる敵を叩き潰してきた機体。

神の名を背負いしガンダム。

そう、その名は―――ゴッドガンダム。
「思い出したぞ、お前は最初の……ふふっ……骨のある奴と戦えそうだ」

アックスは男の正体を思い出し、ゴッドガンダムの下へ転進する。

そう、ゴッドガンダムを操りし者。

邪悪を憎み、正義を貫く者。


クロノス族の生き残り。


――――天空宙心拳継承者、ロム・ストール




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「はぁ!」
「ふんっ!」

カノンはロムとアックスの戦いをただ、眺めるしかなかった。
二人の戦いはまさに凄まじいというしかないもの代物で。
カノンが到底介入できるものではなかった。

ロムが拳を振るうならば、アックスはそれを右手で弾き。
アックスが拳を振るうならば、ロムはそれを左手で捌き。
ロムが蹴りを見舞うなれば、アックスはそれを後退し避け。
アックスが蹴りを見舞うならば、ロムはそれを腕で打ち落とすのだった。

互いに隙も無い一進一退の攻防で。

どちらかが勝つかなどカノンには想像もつかなかった。

「きぇぇい!」
「てぇやぁ!」

そして、ロムが振るった蹴りとアックスが振るった蹴りが交差しぶつかる。
それを合図に思ったが、二人は距離をとる。
暫く見つめあい、隙を狙っていた二人だったが、やがて


「ふふっ……タカヤ坊以外にも力がある者がいるとはな……次が楽しみだ」

アックスは振りを悟ったか、後退をし始める。
ロムは追おうとするが、カノンを置いておく訳にもいかない。
その一瞬の判断の遅れ故にアックスとはもう、追いつく距離ではなくなってしまった。

「憶えておこう……ロム・ストール、そしてカノン・メンフィス」
「待てっ!」
「俺の名前はテッカマンアックス……人類を滅ぼす……ラダムだ!」

そのアックスの言葉を最後に、彼は見えなくなった。
ロムはその姿を見送り、カノンの方に向かう。

「大丈夫かい?……君の名は?」
「カノン……カノン・メンフィス」
「そうか……俺の名前はロム・ストール。悪を挫き弱きを助ける者だ」

そういった、ロムの姿は。

カノンにとって正義の味方に見えて、ふっと笑ったのだった。


【ロム・ストール 搭乗機体:ゴッドガンダム】
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:G-4 草原地帯
 第1行動方針:カノンと接触する。
 第2行動方針:悪を挫き弱きを助ける
 最終行動方針:シャドウミラーに正義の鉄槌を与える】

【カノン・メンフィス 搭乗機体:クストウェル・ブラキウム(スーパーロボット大戦J)】
 パイロット状況:良好。
 機体状況:良好
 現在位置:g-4 草原地帯
 第1行動方針:ロムと接触する
 第2行動方針:仲間と合流したい
 最終行動方針:仲間と一緒に竜宮島に帰還する】



【テッカマンアックス 搭乗機体:ソウルゲイン(スーパーロボット大戦OGシリーズ)】
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:g-4 草原地帯
 第一行動方針:殺し合いに乗り優勝する
 最終行動方針:殺し合いに乗り優勝する】

【一日目 07:00】


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ロム・ストール 054:理由~ねがい
カノン・メンフィス 054:理由~ねがい
テッカマンアックス 036:超変身! 俺の名前を言ってみろ!



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最終更新:2010年02月21日 17:41