勝者への道 ◆h9HJmajl9Q


トビア・アロナクス。
クロスボーン・バンガードという海賊に所属し木星帝国の決戦後は
クロスボーンに残りキンケドゥ=シーブックの後を継ぎエースとして海賊活動に従事している……
(ハズなのに、なんで僕はこんな所で朝食をとってるんだ!)

それというのも目の前の人物、トビアにして見れば一目で、、
貴族主義者?と思いかねないような格好をした青年、トレーズ・クシュリナーダが原因だった。

「さあ、トビア君、君の世界の話の続きを聞かせてくれたまえ」

思えば、あのシャドウミラーのヴィンデル・マウザーという人物に殺し合いを強制され、
当然そんな話に乗れるわけもなく支給された機体で街中を散策していた時だ。
傍らにその巨大な機体を置きカフェテラスで無意味に優雅なブレックファーストを楽しむ彼を見つけたのは。
このバトルロイヤルのしかも開始直後にそんな無謀な試みをする彼を見つけ呆然とするトビアに席を勧め、
いわれるままに席についた自分もどうかと思うが目の前の人物の非常識さには負けるだろう。
そして簡単に自己紹介をしつつ朝食を済ませた後、彼の最初の一言は、

「君の世界の事を聞かせて欲しい」

との事だった。
トレーズが言うには彼はアフターコロニーという時代から来たらしい。
無論、トビアには聞き慣れない紀年である。

「なるほど、君と私は恐らく違う世界の人間だが、世界観自体は共通するようだ、
戦争があり、平和があり、MSがあり、そしてガンダムと呼ばれる機体が存在する」
「そんな……、違う世界なんてありえるんですか?にわかに信用できませんよ」
「ありえるのだろう、私達二人のどちらかが、或はふたりとも嘘をついていない限り、
私達は異なる歴史を歩んだ別の世界の人間ということになるだろう」
「でも…、どちらかが嘘をいっていない証拠はないですよ」
「無論、嘘の証明はできないだろう、しかし見たまえ、私と君の機体を」

言われて、そばに置かれた2機の機体を見る。
トビアの支給された機体、オーグバリュー。
そしてトレーズの機体、ソルグラヴィオン。
どちらも強力な機体であることは確かだがその機体仕様はMSと大きく異なる上、
そもそもこの二体にも共通項がない。

「どちらの機体も設計思想やエネルギー源等、我々の知るMSと大きく違う、
私自身、このグラヴィオンの技術など聞いたことがないものばかりだ」
「でも、それだけじゃ」
「焦る事はない、他の人間と合流すればさらに詳しく分かることもあるだろう、
差し当たっては君の知るシーブックと言う人物を探すとしようか」

そう、名簿にはシーブックの名前が書いてあった。
本来ならベラ艦長とようやく訪れた平和に、幸せに暮らしているはずの彼が、
よりによってこんな世界で再び戦いを強制される。
(そんな事は許されない!)

トビアが知るのはその他には死んだはずのカラスの名前。
その事についてもトレーズは平然と。

「では死ぬまえに連れ去られたのだろう」

と、信じられないことを言い放った。
「なぜなら私も本来死んでいるはずの人間だからだ」

との、言である。
どうやら彼の最後の記憶は自身のMSが敵モビルスーツに貫かれたところで終わっているらしい。
これもにわかに信じられない話だが、もし本当にカラスが生きているのなら信じないわけにもいかないだろう。
とりあえず機体に乗り込み、恐らく人が集まりやすそうな基地に向かいだす。

「そういえば、あなたに最初にあった人間が僕だから良かったですけど、話が通じない人だったらどうしたんですか?」

それは最初から気になった問題だ。
あの場面、相手によっては問答無用で攻撃されていただろう。
通信モニターの向こう、トレーズはあっさりと返す。

「無論戦っただろう、そしてその場合には最後の生き残りを目指しただろうね」
「え!?」

それはゲームに乗っていただろうと言う宣言だ。

「安心したまえ、最初に出会ったのが君だったからこそ、私はこのゲームには乗ることはないだろう、
トビア君、私はね、勝ちたいのだよ」
「勝ちたい…ですか?」
「そう、ここでの勝利条件と言うのはいくつかある。
最後のひとりまで生き残ること、これが一番シンプルだ、
だがそれは勝利と言えない人間もいるだろう、親しい人間がこのゲームに参加している場合だ」
「自分一人だけ生き残ることは勝利とは言えないという事ですね?」
「その通りだ、その場合は脱出か、主催者…ヴィンデル・マウザーの打倒という事になる。
つまり最終的な結論は三択だ」
「それじゃあ、トレーズさんの考える勝利というのは・・・・・・」
「君達のような人間を生きて返すこと、君達のような意志を持つ人間が、
このような場所で散るのはそれだけで害悪だ、
故に私は君達にできうる限りの力を貸そうと思う、君のような人間、
が一人でも多く生き残るなら、それが私の勝利となるだろう」

トレーズは思う、自身の死と最後の戦いによって、恐らくはACの世界では完全平和、そのきっかけは作られただろう。
ならば悪として敗者として死を望んだ自分に間違いはなかったはずだ。
そんな自分がどういうわけか此処に生きている。
ならばその理由は何か。
そして彼は試すことにした。
最初に出会った者が無差別に他者を害するものなら、そういった者達を倒しつつ最後に自身も倒されようと。
もう一度敗者として、悪として戦うと。
もし、あのガンダムのパイロット達のような意志を持つ者と出会ったのなら、今度はそちら側に立とうと。
奇しくも出会ったのは彼等と同じガンダムのパイロット。
ならば答えは出た、彼や、彼のような意志を持つ者達を助け生き残らせる。
敵として悪として向かい合うのではなく隣に立つ。
それはトレーズにとっての勝者の道だった。

「故にトビア君、私は君との、君達との生き残りを目指そう。それが私にとっての勝利となるだろう」

(彼等のような人間がこのような場所で死んではならない。他にもいるのだろうこのような意志を持つ少年達が)
(わが友五飛よ、かつて敗者を目指した私が今度は勝者を目指す、滑稽な事だ、君も死ぬなよ、
このようなくだらない場所で)

【トビア・アロナクス 搭乗機体:オーグバリュー(スーパーロボット大戦F 完結編)
パイロット状況:良好  
機体状況:不明
現在位置:B-4
第一行動方針:シーブックとの合流
第二行動方針:殺し合いに乗っていな人物と出会う
最終行動方針:主催者の打倒。
参戦時期:原作終了後
一日目 7:00】



【トレーズ・クシュリナーダ 搭乗機体:ソルグラヴィオン(超重神グラヴィオン)
パイロット状況:良好  
機体状況:良好
現在位置:B-4
第一行動方針:シーブックとの合流
第二行動方針:トビアのような強い意志を持つものを生き残らせる。
最終行動方針:主催者の打倒
参戦時期:五飛戦直後
一日目 7:10】


BACK NEXT
034:さらなる迷走 投下順 036:超変身! 俺の名前を言ってみろ!
032:意志 時系列順 028:俺たちの野生

登場キャラ NEXT
トビア・アロナクス 059:あてにならないパートナー?
トレーズ・クシュリナーダ 059:あてにならないパートナー?



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年02月21日 17:44