大人目線  ◆f/BUilcOlo



「脱帽ね」

 誰に向けてでもない、イネス・フレサンジュの呟き。
 鉄色の巨大戦艦クロガネは一時間の地中潜行可能時間を使いきっていた。
 今は地上で待機中。船体は一種の重力制御装置とも言えるテスラ・ドライブで浮遊している。
 巨大な物体が移動もせずただ浮いている様は異様に目立つが、それが狙いだった。
 あえて注目を集めることで、誰かが接触してくるのを待つ。下手に探し回るよりよほど効率が良い。
 艦橋のスクリーンに映し出される、長大な馬上槍を思わせるライフルを構える遠見真矢の操るヴァイスリッターの姿。
 接触を待つ間何もせずにいるのも難なので、警戒を兼ねて損壊したヴァイスリッターの扱いに慣れておく、と真矢は言った。
 左腕部を失ったにもかかわらず、器用に右腕と胴体でライフルを固定。狙いを定め、発射。
 標的は遥か遠方、数十キロメートル先の岩塊。放たれたエネルギー弾は狙い過たず岩塊へ命中。
 試し撃ちはこの時点で七発目を数えた。最初の三発は外した。四発目は左を掠めた。五、六、七発目が次々と岩塊を抉った。
 八発目。エネルギー弾が岩塊の中心を正確に射抜いた。
 驚嘆と称賛と畏怖のこもった瞳を向ける。
 曰く、標的を見ていると、どのように撃てば当たるのか「なんとなく分かる」。
 それはつまり風圧・温度・湿度など弾道に変化を与えるものの存在を極めて正確に「なんとなく」把握しているということなのか。
 異常とも言えるほど発達した観察力。物事を分類し、関連付ける能力。それが真矢の狙撃能力の支え。
 九発目。およそ本人以外には理解し得ない脳内処理を経てこれまた正確に岩塊の中心を射抜く。
 この異常な観察能力は狙撃だけでなく、交渉や尋問において非常識なまでの有用性を発揮する。
 真矢と面と向かって話し合ったことで、イネスはそれを嫌というほど実感していた。



 サウス・バニングともう一人が退いてからすぐ後のこと。
 ヴァイスリッターをクロガネに収容し、地中に潜り移動した。
 地中に潜行可能な残り約三十分を最大限利用し、敵に襲撃される心配の無い状態で真矢と突き詰めた話をしようとした。
 いずれ手を切ることが決まっているとはいえ、会話を通してそれなりに信頼を育んでおくのは決して悪いことではないはずだ。そう考えた。
 バニングたちへの対応、当面の行動指針、ヴィンデル・マウザー並びにシャドウミラーに関しての考察といった話に加え、お互いの身の上などについても多少の隠し事をしつつ語りあった。

 ――現状の戦力ではバニングたちとはまともに戦えそうもない。なるべく出会わないようにしたい。
 ――差し当たり戦力の確保に努めたい。相手の人となりを慎重によく見極めた上で勧誘。真矢の仲間であれば言うこと無し。
 ――ヴィンデル・マウザーの目的とは? 最後の一人になるまで戦えというが、では殺し合いを強要する理由は? 怨恨、娯楽、あるいは何かの実験? 
 ――最後の一人になれば望むもの全てを与えるとの言葉は嘘か真か? 仮に真として、ではその望みを叶えるための「力」なり何なりの奪取は可能か?
 ――何れにせよあの赤い髪の男、アクセル・アルマーの言うところの我々「参加者」に話されていない何かがまず間違いなくある。
 ――当事者の意思を全く尊重せず爆弾付きの首輪を嵌めて殺し合いを強要しておきながら「参加者」とは、いかにも傲慢な言い様だ。

 実際それは悪いものではなかった。
 クロガネの艦橋で向かい合って座り、それぞれに意見を述べる二人。
 とてもお互い相手をそのうち殺すつもりであるとは思えないほどに和やかな雰囲気だった。
 充実した時間はあっという間に過ぎ去り、ひとまずクロガネを地上にあげることになった。真矢はヴァイスリッターへの習熟と周囲の警戒。
 真矢が席を立った。会話が途切れた。真矢に背を向け、少し大きめに息を吸い込み、静かに吐き出した。
 息を吐ききった、その一瞬、

「ところでイネスさん、私に隠していることがありますよね」

 するりと、真矢の放った言葉は胸に突き刺さった。

「……何のことかしら?」

 真矢に向き直る。動揺を隠す。
 我ながらなんとも間の抜けた返答だった。
 それだけ真矢の言葉は虚を衝いたものだった。

「ここに知り合いはいない、って言いましたよね。本当ですか?」

 嘘だった。しかもそれなりに悪意を含んだ嘘。
 身を守るために真矢と手を組んだが、この協力関係は期限付き。そしていつ期限が切れるかは状況による。
 そんないつ訪れるとも知れぬ期限切れに怯えるよりは、背中から撃たれる心配のない他の人物と仲間になりたい。
 その候補がホシノ・ルリだった。ヤマダ・ジロウ(ダイゴウジ・ガイ)とは直接の面識はないのでこちらは保留とする。
 実際に彼女がどのように考え行動しているかは分からないが、人物を把握している分、真矢よりは遥かにマシだ。
 真矢の仲間が六人揃ったとき、用済みとばかりに自分が殺される様を想像した。自分がこうなのだから、相手もそう考えると想定。
 だから隠した。自分に知り合いがいて、その人物と合流したいと考えていて、そのとき用済みとなった真矢とはサヨナラしたいという気持ちと共に。
 さてどう誤魔化すか。バニングにもそうしたように、必要以上に自分のことを語る必要は無いという、その程度のほとんど意味の無い嘘だった。こんな感じだろうか。
 そのように説明することにした。これは決してあなたを害するためについた嘘ではないのですよ、と。

「いろいろ心配しちゃうのは分かります。でも、誰かに信頼してもらおうと思うのなら、そういうのはやっぱり良くないと思います」

 説明する前に、真矢が喋った。一切の反論を封じるような声音だった。
 そして、こちらが胸の内に抱いていることを把握しているかのような言葉だった。大いに動揺した。
 もしや彼女は、他人の心を読み取ることが出来るのだろうか? そんな途方もない考えが浮かび、口に出しかけた。

「私、別にイネスさんの考えていることが分かるわけじゃありませんから。だからそんなに困らないでくださいよ」

 考えていることを、ぴたりと当てられた。何も言えなくなった。
 そのまましばらく押し黙ったままでいると、真矢が付け加えるように言った。
 ただ、ちょっとした仕草や、目線や、口の動きとかで、なんとなく相手の抱いていることって分かること、ありますよね。
 例えばイネスさんは、仲間や知り合いを連想する話題が出たときの反応が少し変で。
 言葉の端々にあえて親しみを込めて話しているような妙な響きが混じり。
 隠していたことを指摘されたときには、疑われて悲しいという雰囲気が無く、逆に相手を言い負かそうと挑むような目つきになっていたり。
 普通そんな異常に細かい仕草に気が付いたり、一つ一つの意味を察したりなんてしないだろう。
 一体この娘は、どれだけ僅かな情報から推測を働かせ、相手の真意を読み取ってしまうのだろうか。超自然的と呼びたくなるような読心術だった。
 しかし当の本人はこの才能に自覚が有るのか無いのか、「そういうのって、ほら、誰にでもあるでしょ?」といった調子でいる。
 自分の心に抱いていることを読み取られてしまう側は堪ったものではないというのに。
 イネスは真矢との対話に恐れを抱いた。
 大事な絶対に見られたくない部分まで見透かされてしまいそうな、真矢のその澄んだ瞳に見つめられるのを恐れ、嫌悪した。

「……まあ、とりあえず、あなたには周囲の警戒をお願いしたいのだけど?」

 もういいからさっさと出て行け、という態度。言外に真矢の言ったことを肯定する態度でもあった。
 それを察したのか、特に傷ついた風もなく真矢は艦橋から歩み去っていった。
 と思ったら扉の向こう、姿の見えない位置から声だけが飛んできた。

「別に、六人揃ったからって用済みだなんて言ったりしませんから。そのときは生き残るために協力して欲しいです」

 真矢と顔を合わせるのは二度とごめんだ。



 ライフルを構えたヴァイスリッターを見つめる。
 顔を見られたくないからコックピット内とは音声だけを繋ぎ映像を表示しないようにしていた。
 本当に音声が繋がっているのか怪しくなるほど静かな呼吸音。的に当てても「よし」とか「やった」とかいう言葉の一つもない。
 十発目が放たれた。軌道に乱れは一切無い。命中。真芯を捉えた。岩塊が砕け散った。
 拍手でも送ってやろうかと思った。だがその技術を見せ付けた本人は至って平然とした様子だ。
 動かない標的など地球の裏側からだろうが当ててやると言わんばかりに見えた。冗談だが。

「来た」

 ぼそりと、真矢が言った。
 見ればヴァイスリッターがライフルを脇に抱え、何処かを指差している。
 その先を見れば、なるほど確かに来ていた。機影が二つ。まだ通信圏外だ。
 どうやらバニングたちではない。彼らが撤退していった方角を避けて移動したのだからそうでなければ困る。
 少し話してくると言い、ライフルを構え直したヴァイスリッターが機影に向かっていった。
 さてさて釣れた魚はなんだろう。大物か雑魚か、本命か外道か。
 戦闘には発展しなかったらしく、なにやら話し込んでいる。とりあえず理性的な人物のようだ。
 三機そろって戻ってくる。仲間になってくれるということだろうか。やけにあっさりしている。
 通信圏内に入った。

「俺の名はギリアム・イェーガー。こちらは真壁一騎。遠見真矢から誘いを受けた。出来ればそちらに収容してもらい、直接話をしたいのだが、宜しいか?」
「……どうも」

 スクリーンに映し出される二人の顔。
 すらすらと言葉を並べ立てるやけに落ち着いた雰囲気の片目が髪で隠れている男。
 自分の名前まで言われ何を喋ったものかと迷ったあげくぞんざいな挨拶になってしまったという風情の少年。
 真壁一騎――真矢の仲間。道理であっさりと済んだ訳だ。

「ええ、構いません。お互いにとって有意義なものとなることを期待します」

 努めて友好的な態度でもって迎え入れる。
 二人との通信が切れる。そこへ真矢から通信が入った。対象をイネスのみに絞った回線。
 下手な嘘はつかないほうが良い、自分は残って警戒を続ける――それだけ言い、すぐに切れた。
 仲間が一人見つかったというのに、それほど嬉しそうでもないのを疑問に思うが、それはどうでも良い。
 確かにギリアムという男は油断のならない気配を持っていた。
 ここは素直に忠告を聞いておくべきだろう、と思った。



 話し合いは円滑に進んだ。
 ギリアムからはシャドウミラーに関する情報が提供された。
 イネスからはブラックサレナに搭載されたボソンジャンプ機能についての知識。
 ギリアムはボソンジャンプに興味がある様子で、後でよく調べたいからとイネスに協力を要請した。
 これを快く承諾し、代わりにギリアムには一騎と真矢への戦術指導を依頼した。
 機体の修理についてもギリアムに一任された。
 ブラックサレナ以外はよく知る機体であり、資材さえ揃えばヴァイスリッターの左腕も使えるように出来ると言った。
 それぞれの知り合いについてや、今後どのように動いていくのか細部を詰め――先が読めない以上、最終的には臨機応変、ということで落ち着いた。
 バニングたちについては、こちらが誤って攻撃してしまったことで戦闘に発展したのであって彼らに非は無い、と説明した。
 誤って攻撃した、というところ以外ほぼ事実のままだった。

「なんとか誤解を解こうとはしたのですが、私たちも気が動転してしまいまして……」

 そう語るイネスを見つめるギリアムの瞳は冷ややかなものだった。
 疑っているというより、純粋に真実を見極めようとする眼といった感じだ。

「次に会うことがあったなら、俺が仲介人になろう。和解出来るならそれに越したことはない」

 一応は信用しておこうという口調。安心は出来ない。
 イネスとギリアムが話す間、一騎はほとんど口を挟まず、真矢も音声だけを繋ぎただ黙って聞いていた。

「ひとまず話はここまでにしておこうか。一騎、シミュレーターで簡易だが訓練を行う。ついてきてくれ」
「わかりました。ではクロガネが地中に潜行可能になったら遠見さんもそちらへ寄越しましょう」

 時間が惜しいとばかりに足早に動き出すギリアム。それに続く一騎。
 二人が艦橋から出て行き、イネスはほっと一息ついた。
 全てを包み隠さず話したわけではないだろう。だが十分に期待した以上の成果。
 多くは俄かには信じ難いものだった。しかし全くの出鱈目とも思わない。
 死んだ筈の者の存在というのも面白いが、特に興味を引いたのは、シャドウミラーが純粋な地球人類の集団であるという点だ。
 アンドロイドなどもいるそうだが、基本的には科学の範疇。魔法や超能力といったものを扱う、コミックの世界の住人ではない。
 ということはヴィンデル・マウザーの願いを叶えるための「力」とは科学技術の産物である公算が高い。
 それはつまり、この自分にもその「力」を扱うことが出来るかも知れない、ということだ。
 手段は何でも良い。その「力」を奪取できれば――
 俄然やる気が出てきた。
 ふと、ヴァイスリッターとの回線が繋がったままな事に気付いた。
 そういえば、と思い、何気なく真矢に話しかけてみた。

「良かったわね。まだ一人だけど、仲間が見つかって」
「……そうですね」

 やはり、嬉しそうではない。
 いったいどうした訳か――ちょっと考え、なんかピンと来た。
 真矢の仲間の名前には、女性らしきものがあった。
 羽佐間翔子に、カノン・メンフィス。
 ひょっとして真壁一騎少年はその二人のどちらかを好いていたりするのだろうか。
 そして遠見真矢はその真壁一騎少年に惚れていたりなんかしちゃうんだろうか。
 中学生という年齢を考えれば、十分にあり得る話だ。
 もしそうだとすれば、三角関係とは実にたいした乙女っぷりである。
 途端、どこからか意地の悪い気持ちが湧いてくるのを感じた。
 決して、先程の仕返しをしようというのではない。
 本当に、全然、そんなんじゃぁない。

「ところで遠見さん。一つ、良いかしら」
「……なんですか」
「あなた、好きな人って、いる?」
「…………」

 プツッ、と音を立てて回線が切断された。流石に直球すぎた。
 怒ったか、不都合なことを聞かれると察したか、それとも単なる照れ隠しか。
 ふむふむ、なかなか可愛いところもあるものだ。と大して悪びれもせず思った。

 ……いや、待てよ。

 むしろ逆ではないだろうか。
 唐突に違う考えが浮かんできた。
 真壁一騎が誰かを好いているのではなく、誰かが真壁一騎を好いている。
 そしてその誰かは遠見真矢の友人か何かで、そのため遠見真矢は身を引いている。
 そう言えば、羽佐間翔子という少女は、死んだ筈だという話だったが――
 まるで根拠の無い考えだった。だが不思議とこれが正解の気がした。
 真矢の性格的にもそう思えた。

「……嫌われちゃったかしらね」

 何故か、残念な気持ちがあった。



 シミュレーターによる訓練。クロガネにブラックサレナの機体データは無かったため、一騎もギリアムと同じくアルトアイゼン・リーゼを使っていた。
 アルトアイゼン・リーゼ――同系統の機体と比べ破格の火力と突進力を獲得した機体。
 頭――電撃を迸らせる刃状の角。
 両肩――指向性散弾地雷射出装置。
 左前腕部――五つの銃身を束ねた機関砲。
 右前腕部――大型の回転弾倉式炸裂杭打ち器。
 爆発的な推進力を生み出すバーニア、スラスター類。
 推進力と重装甲が機体そのものを巨大な弾丸と化せしめる。
 全身隈無く呆れるほどの突撃仕様。突撃こそがこの機体の本領だ。
 一騎はそのアルトアイゼン・リーゼの本領を発揮させんばかりの動きを見せた。
 というより、最初から機体を全開で吹かしそれから自分が機体の動きに合わせていった。
 物凄い勢いで転倒。ビルや岩肌に激突。実機なら衝撃で全身骨折と内臓破裂でほぼ死体だ。
 無茶苦茶だった。いくらシミュレーターとはいえ、そんな動かし方をして平気でいられるはずが無かった。
 感覚器官をぐちゃぐちゃに掻き乱され盛大に吐瀉物をぶち撒けてもおかしくない。だが、一騎はまるで意に介していなかった。
 しばらく転倒と激突を繰り返していたが、次第に動きが安定してきた。
 ギリアムから見ても、一騎の戦闘への適性には目を見張るものがあった。
 とても十代半ばの少年のものとは思えない、耐久力、運動能力、反射神経。
 一騎の体は一見して細い。柔軟で本当に有用な筋肉しかついていない証拠だ。
 競い合う相手さえいればどこまでも伸びていきそうな有り余る才能。完成された肉体。

「感覚は大体掴めたようだな。……君の実力を見たい。全力で来てくれ」

 そんな場合ではないのは重々承知しているが、それでも才ある若者を指導できることに喜びを感じるのは確かだった。
 突撃してくる一騎、迎え撃つギリアム。ギリアムの背後には岩壁があった。正面からぶつかり合う二機。
 勢いそのまま、ギリアムは一騎の突撃を受け流した。宙に投げ出される一騎の機体。停止不可。
 岩壁に叩きつけられる瞬間、スラスターが火を吹く。体勢を立て直す。岩肌に着地。健在。
 さらにスラスターを吹かす。岩肌が抉れる。またも突撃。受け流せない。迎撃。
 正面衝突。目も眩まんばかりの衝撃。組み合う二機。拮抗する推力。
 地面を抉り飛ばし停止。密着した状態での超近接格闘戦へ。
 凄まじい勢いで繰り出される拳、杭、拳、膝、杭、角。
 装甲が陥没。指が千切れる。弾丸が零れる。
 杭が突き刺さる。それを圧し折る。
 角が食い込む。圧し折る。
 両肩部装甲展開。
 散弾地雷。
 不可避。
 炸裂。
 間。



 一騎の攻めは苛烈を極めた。
 それ以上にギリアムの守りは堅かった。
 ギリアムの機体――ところどころに装甲の陥没。左腕に半ばから折れた角、左脚に杭が突き刺さっているが、概ね五体満足。武器の損失も無い。
 一騎の機体――超至近距離の散弾から胴体と頭を守った両腕は肩から脱落。度重なる無茶苦茶な衝撃で磨耗しきった関節。内臓機器への甚大なダメージ。残った武装は半ばから圧し折られた頭部の角のみ。
 一騎の機体は既に立っているだけで精一杯の状態だった。
 ギリアムが、ここまでにしよう、と言った。

「まだやれます」

 簡潔な返答。臆すること無く。
 一騎の戦意は些かの衰えも見せていなかった。
 ギリアムはそこに、危ういものを見たような気がした。
 最後まで諦めないことは、生き残るための大切な要素だ。
 一騎のはそれとは違った。
 敵を倒すことだけを考えているかのようながむしゃらな攻撃。
 自分が傷つくことなど気にも留めない。
 まるで、それが自分の役目だというように。
 そんな戦い方では、いずれ取り返しのつかないことになってしまう。

 ――死なせたくないものだ。

 どこからか、卒然とそんな気持ちが湧いてくるのを感じた。
 一騎と、そして、真矢も。
 出会ったときの真矢は、非常に危なげな雰囲気を持っていた。
 自分の心を押し殺すことで何かを為し、その辛さに悲鳴を上げているような。
 心を殺すことは大変な苦痛だ。とてもそれに耐えられそうには見えなかった。
 一騎と真矢は仲間だ。
 お互いに支えになってもらえれば良いが……
 そう思わずにはいられなかった。



【イネス・フレサンジュ 搭乗機体:クロガネ(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好 格納庫にヴァイスの左腕あり
 現在位置:B-3
 第1行動方針:ギリアムには隙を見せないように行動
 第2行動方針:一応、真矢への対抗策を用意
 第3行動方針:ルリと合流、ガイもついでに
 最終行動方針:願いを叶える「力」の奪取。手段は要検討。
 備考1:地中に潜れるのは最大一時間まで。それ以上は地上で一時間の間を開けなければ首輪が爆発
 備考2:クロガネは改造され一人でも操艦可能】


【ギリアム・イェーガー 搭乗機体:アルトアイゼン・リーゼ(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好 クロガネの格納庫に収容
 現在位置:B-3
 第1行動方針:一騎と訓練
 第2行動方針:仲間を探す
 第3行動方針:首輪、ボソンジャンプについて調べる
 最終行動方針:バトルロワイアルの破壊、シャドウミラーの壊滅】


【真壁一騎 搭乗機体:ブラックサレナ(機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好 クロガネの格納庫に収容
 現在位置:B-3
 第1行動方針:ギリアムと訓練
 第2行動方針:仲間を探す。総士は……
 最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】


【遠見真矢 搭乗機体:ヴァイスリッター(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:身体的には良好
 機体状況:左腕欠落、ミサイル半分ほど消費、EN消費(小)
 現在位置:B-3
 第1行動方針:一騎を守る
 第2行動方針:総士、翔子、甲洋、カノンと合流し、守る
 第3行動方針:仲間を傷つける可能性のある者(他の参加者全て)を率先して排除する
 最終行動方針:仲間を生き残らせる。誰かが欠けた場合は優勝も視野に入れる】


【一日目 8:10】


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027:そういう時は、身を隠すんだ! イネス・フレサンジュ 055:世界~じぶん~
015:実験室のフラスコにて ギリアム・イェーガー 055:世界~じぶん~
015:実験室のフラスコにて 真壁一騎 055:世界~じぶん~
027:そういう時は、身を隠すんだ! 遠見真矢 055:世界~じぶん~

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最終更新:2010年02月21日 18:11