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――都庁の世界樹。
墨田区でレストとハクメンによる死闘が終わって間もない頃。
レストの手によって転送されてきたフェイ・イェンの残骸を機械に詳しい犬牟田が中心となって見ている。
彼女が完全に破壊されたかどうかを確認するために。
その周囲には彼女の仲間たちも集っていた。

『フェイちゃんは、あの子は大丈夫なんですか!?』

小鳥は世界樹の天辺から携帯を使って落ち着きなく、まだ検査を終えていない犬牟田に彼女の無事を聞く。

「落ちつくんだ小鳥さん」
『小鳥、バーチャロイドは体はやられていても頭脳を担うディスクが無事なら再生できると犬牟田から聞いた。
まだ、彼女が死んだと決まったわけではない……』
ごめんなさいダオスさん、カヲルくん……ただ私、仲間をまた一人失うかもしれないと思うと気が気でなくて……』
『気持ちはわかるが、今は犬牟田を信じる他あるまい』


バーチャロイドの本体はディスクであり、体の方は粒子をかき集めて作られた義体のようなもの。
ディスクが無事なら再生装置とも言えるV.コンバータを修理して挿入し、コンバータを動かすためのエネルギーを注げばフェイ・イェンは復活できる。
周りの者たちはこの都庁の中で最も機械に詳しい犬牟田の吉報を待つしかなかった。

しばらくして残骸の中から犬牟田が現れた。
彼はひどく浮かない顔をしている。

『あの……フェイちゃんは……?』
「…………」

恐る恐る小鳥は戻ってきた犬牟田に機械少女のことを尋ねるが、彼もまた報告をしたくないようだった。
だが黙っていては前に進めないため、犬牟田は意を決して告げる。

「ダメだった……肝心のディスクが真っ二つに割れていて修復不可能。
アイスシザースから借りたタイムふろしきで形だけは元通りだけど、彼女の人格を構成するプログラムは消えていて、ただの音楽CDになっていた……後は言わなくてもわかるね……」
「そんな……」
ああああ!』
『小鳥!』

犬牟田の残酷な報告にカヲルは膝をつき、小鳥は半狂乱になって泣き出した。
ショックを受けながらも冷静さは保っているカヲルはまだしも、小鳥の心は明らかに悲しみで押し潰れそうだったためにダオスは彼女を自分の胸に抱擁させた。
世界樹の天辺、ダオスの胸の中で小鳥は慟哭する。
カヲルと赤竜を中心とした7人の歌組は、もはやカヲルと小鳥しか残っていない。
他の五人に二度と会えないことに二人が悲しまないわけがなかった。

「メガネ人間、そのディスクはどこだ? 地下の墓地に埋葬してくる」
「彼女は機械だけど、機械嫌いの君たちの住処に埋めても良いのか?」
「それでも我らの仲間であったことには変わりない」
「……ありがとう」
「俺とイオリにも墓作りを手伝わせてくれ!」
「あのロボット人がいなかったら俺たちは撤退できなかったんだ」

アイスシザースやモブの魔物が死したフェイを埋葬するためにディスクや残骸となったパーツを地下へと運ぶ。
犬牟田やレイジ、イオリもまた残骸を運び墓作りを手伝った。


「ダオス……ただ一言、言わせてくれ。我々のために犠牲を生み出させて本当に済まない」
「聖帝、謝罪はしなくて良い。おまえたちは瘴気のことなど知らなかった。
皆が主催の目的である『何か』の被害者なのだ。
残された者がすべきことは筋違いの相手に恨むことや謝ることではなく、生きて殺し合いを終わらせて真実を解き明かすことだろう」
「……わかった」


都庁にはもう、翠の髪のアイドルロボットの歌は響かない。
嗚咽によるレクイエムだけが無情に鳴り響く――


【フェイ・イェンHD@スーパーロボット大戦UX 死亡確認】


レストがハクメンとの戦闘を終え、ダオスたちの前に転移してきた。

「みんな! 彼女は?」
「レスト!? 貴様、その格好……いや、何でもない」

戻ってきたレストにダオスは何かを言いかけたが、空気的に自重する。
レストはさっそく侍に斬られたフェイ・イェンの安否を聞く。
残念ながら仲間たちは首を横に振り、また一人仲間を救えなかったことに落胆する。
彼女がいったい何の罪を犯したというのか。
ともすれば名前も知らない侍への憤りはなお強くなる
しかし、今仲間に優先して伝えるべきはそこではない。

「悲しみに水を差すようで恐縮だけど、まずいことが起きたんです!
沖縄には大災害が具現化した存在がきていること、それによる冥府の崩壊が……すぐ近くでは狂信者とは違う暴徒集団がここに向かってきているんだ!」
「レスト、沖縄の異常気象や暴徒に関してはこちらも感知している。
冥府の崩壊の件も小町から聞いた」
「え……小町さんが?」

ダオスを始めとする仲間たちの反応は予想していたよりは冷静であった。
というより、小町から先に聞いていたがためであると言える。

「人間らしい見てくれと人格で忘れそうになるが奴もまた死を司る死神。
この前までは下っ端の船頭だったが、この殺し合いとドラゴンハートの恩恵で死神としての力が増大した結果、あの世の様子もなんとなくわかるらしい。
奴はあの世の霊圧が壊れる寸前まで乱れていると言っていたがな」
「そうなのか……」
「流石に冥府まで見る力はない我々としてはあの発言は困惑しかなかったが……なるほどレストまで言うからには間違いではないらしい」

小町の口から教えられた事実によりあの世にすら逃げ道はないと知った都庁同盟軍。
むしろ、それを知ってしまったがために都庁の空気はより重いものとなった。
金竜など先に逝った者たちの魂が危険に晒されている可能性があるからだ。
先ほど旅立ったフェイら聖帝軍救助隊の魂も今頃どうなっているか見当もつかない。

「ところでその小町さんはどこに?」

ふと、冥府崩壊の事実を教えてくれたらしい小町がいないことに気づいたレスト。
よく見ると影薄組やオオナズチもいない。
その件はダオスの胸の中で泣いたことにより、少しだけ精神が落ち着いた小鳥の口から話される。

「小町さんたちなら……暴徒を止めに行きました」
「え……彼女が?」

小町はネット上ではイチローチームと同じく数少ない信頼された主催だ。
世界樹をヘルヘイムとやらと勘違いし、暴徒を止めるにはうってつけかもしれないが……返って愚策にも思えた。

「いや、都庁の仲間だと知られれば彼女まで風評被害に付き合うことになってしまう。
そうなると小町さんまで人類の敵とみなされてしまい、攻撃される羽目になってしまうよ」

小町ならば都庁の魔物たちの誤解を解こうとするが、上手く言いくるめられなければ彼女も追われる身となってしまう。
暴徒を直に相手にし彼らの無知蒙昧さと身勝手さを知ったレストからすれば、ネットで女傑と讃えられた女が自分の意思で魔物に味方したと知ったとき、勝手に絶望して小町をも殺そうとする。
小町ならばあの程度の暴徒に殺されはしないだろうが、風評被害が巡り巡って他の有力対主催に狙われる理由になると危険である。
悪名は最悪、カオスロワが終わった後でさえ尾を引くことになるのだ。
最初からお尋ね者であり狙われ続けてきたダオスやレストのように彼女がその重圧に耐えられるだろうか?

「その心配はいりません」

レストの言葉に答えたのは、瞳の下を赤く腫らしつつつつも泣き止んだ小鳥であった。

「小鳥、もう良いのか?」
「ええ、もう大丈夫です、ありがとうダオスさん」
「小鳥さん、心配はないってどういうこと?」

小鳥は涙を拭き、キリッとした瞳で答えた。

「今後、都庁に向けられた世間からの誤解は『解きません』。
そして、小町さんには後に都庁の魔物、ここにいる魔王ダオスを『倒していただきます』」

小鳥のその言葉に、レストは短く答えた。

「は???」



「全ては世界のために! 走れェーーー!!」
「我々の犠牲は決して無駄にはならない!!」
「オーバーロード恐るるに足らず!!」
「ヒャッハーッ! インベスは皆殺しだぁーーーッ!!」
「ついでにここに逃げた聖帝軍も皆殺しだぁーーーッ!!」

都庁の世界樹に迫る暴徒集団。
その数はざっと30人程度。
ぶっちゃけモブ参加者の中ではかなり弱い部類であり、少しでも戦闘の心得があるネームドキャラなら一人でも一掃可能なレベルである。
そんな力のない彼らはずっとどこかで引きこもっているのが関の山であったが、度重なる殺し合いの恐怖と拳王連合軍がダイジョーブ博士を介してバラ撒いた情報により都庁の世界樹をヘルヘイムと誤解し、早急に滅ぼさねばならないと思った結果、暴徒化したのだ。
彼らを狂信者のような確固たる信念すら持たない愚か者どもと呼ぶかは、ただ弱者として情報に流されるしかない殺し合いの犠牲者と取るかは読者の判断に任せよう。

そんな彼らだったが変態オーバーロードと見なしたレストの無抵抗を勝機と勘違いし、都庁へと突っ込んでいく。
調子づいた者たちが都庁の領域に踏み入れたらどうなるか?

「ちょっと待て!?」
「あれは何の光ぃ!?」

答えは光の洗礼である。
世界樹の天辺に居座る存在による強力なレーザー攻撃が放たれることになった。
ある者は光から逃げ、ある者は盾で防ごうとするが、はっきり言って彼らの実力と装備では無駄。
先程まで都庁を包囲していた狂信者らと同じように蒸発するのが関の山だろう。
放たれた以上は叫んでももう遅い。

「あわわ……」
「やべーぞこれえ!!」



「全く、世話の焼ける奴らだねえ!」

暴徒集団が生存を諦めかけたその時、彼らの目の前に赤毛のツインテールに蒼い衣に包まれた揺れる巨乳が特徴的な女が現れた。
そして彼女は手をかざし「距離を操る程度の能力」を使ってレーザーを逸らさせ…それだけでなく能力の応用を聞かせてレーザーを押し戻し(射程距離を操作した)、送り主まで跳ね返してしまったではないか。
そして、世界樹の天辺が爆発を上げた。
暴徒たちから歓声が上がるが、赤毛の女はすぐに注意を呼びかける。

「油断するな! おまえたちは囲まれている!」
「ええ……なんだって!?」
『キシャアアアアアア!!』
「イ、インベスの大群だああ!」

いつの間にか背後をとっていたオオナズチを中心に大量の中級・下級のモブFOEやドラゴンが現れ、あっという間に包囲されてしまった。
少し遠くでは巨大な生きた黒い大木が攻撃態勢に入っている。

「か、囲まれた!?」
「あの金髪が攻撃してこないところからして油断したね。
最初から逃げるフリをしてここに誘い込むための作戦だったのさ!」
「やたら弱いと思っていたらそういうことだったのか!」

赤毛の女から自分たちが変態オーバーロードにはめられたことを知って愕然とする暴徒たち。

「こ……こうなりゃ一匹でも道連れに」
「その必要はないね、出番だよみんな!」

「はーい!」

戦場には似つかわしくない、明るい少女の声が響いたと思いきや、暴徒たちの目の前に四つの影が幽霊のように現れた。
四人は常人たちにはよく見えないが、未来的なスーツとバケツみたいなヘルメットを被っていた。

「ええええ?! こいつらいつの間に!」
「安心しな、こいつらはあたいの仲間だよ……さあ、暴れな!」

赤毛の女の指示に従い、バケツヘルメットのスーツ……デモニカを纏った四人の戦士たちは魔物に立ち向かった。
まずマッチョな男は敵陣に切り込み、魔物を殴り蹴り飛ばしていく。
銃士と思われる少年は冷静に魔物を銃撃していき、流血させ倒していく。
剣士と思われる少女は雀力を発揮して斬鉄剣で次々と敵を切り伏せていった。
特徴のない小さな少女は雷の剣で、遠巻きからくる神樹の攻撃を押しとどめていた。
止めは赤毛の女が銭の弾幕でオオナズチをフルボッコにしていく。

その魔物をものともしない鬼神の如き戦いぶりに暴徒たちも昂ぶる。
赤毛の女以外は存在が薄すぎて目に入りにくいが、とにかく五人が強いことは明らかであった。


「おお、すげえ、この勢いに乗って俺たちも……」
「待て」

暴徒に待ったをかけたのは赤毛の女であった。

「おまえさんたちの実力じゃ足でまといだよ。
それに天辺の奴がまだ死んじゃいない……直にさっきのレーザーが来るかもしれない」
「ええ! でもアンタがさっきやっつけたじゃないですか!」
「手応えが浅かった。レーザーを跳ね返すだけじゃ勝てない相手らしい」

赤毛の女が言ったとおり、世界樹の天辺から再びレーザーが放たれたが、女が距離を操って逸らしたことで犠牲者は出なかった。

「これじゃ埓が開かない! あたいはこいつらを連れて退くよ。
みんなはこいつらを安全圏に運ぶまでここで時間を稼いでくれ」
「応!」
「了解っす」
「任せてください」
「あかりがみんなの命を守るよ!」

四人は女の指示通りにその場に残り、魔物相手に奮闘を続ける。
その間に赤毛の女は暴徒集団を都庁の手の届かない場所まで誘導していく。
暴徒の後では舞い上がる土煙とレーザーで何も見えなくほど激しい戦いが行われた。

「さあ、こっちだよ」
「か、彼らは大丈夫なのか?」
「心配ご無用。今はあいつらに任せて逃げるんだよ!」



そして赤毛の女に導かれた集団は都庁の魔の手が届かない場所まで逃げることができた。
この頃にはひと握りの人員でも多少は思考が落ち着いたのか、一行の代表らしいモブがお礼を言う。

「まさかあなたに助けられるなんて……



『正義の乳神』様!」
「まったく……あたいは『乳神』じゃなくて『死神』だよ!」



そう、赤毛の女の正体は女傑『正義の乳神』こと小野塚小町である。

「しかしあなた様は半日以上前にヘルヘイムに入ったきりで戻られず、放送の死亡者リストにも流れなかったので囚われているとばかり」
「……ああ、ちょいとあいつらに捕まって厄介な洗脳を受けていたが、ある時の戦闘の弾みで解けたらしい。
さっきの仲間たちと共にうまいこと脱出できたよ」
「なんと……」
「しかし、あたいと仲間たちでさえ撃退が限界で攻略は厳しい。
どうしてあんたらは攻め入ろうなんて考えたんだい?」

小町が不思議でならなかったのは、一万を超えているモブ狂信者や数あるネームド狂信者さえ敗れ死んでいった都庁。
かつての自分たちのように知らないで飛び込んだならまだしも、都庁の実力はネットを介して周知のハズである。
そんな地獄にどう考えても戦力的に足りない集団で飛び込むのは全滅犬死に待ったなしである。
正気の沙汰ではない所業の理由を彼女は知りたかった。

「それは……あの大木が世界を滅ぼすヘルヘイムだからです」
「ヘルヘイム? 前の放送で呼ばれていたけど」
「参加者のことじゃござりません乳神様! これを見てください」

小町はモブが持ってきたパソコンから、ダイジョーブ博士によって伝えられた危険植物ヘルヘイムの概要を知る。
しばらく沈黙した後に、溜息をつきながら小町は感想を漏らした。

「なるほどねぇ」
「これこれこうだからヘルヘイムは早急に潰さないといけないんです。
世界や家族、友人たちを守るためにも自身の犠牲を覚悟の上で攻勢にでなくてはいけないのです」
「それで敵の罠にハマっちゃ世話ないけどね。
おおかた金髪のオーバーロードがボロボロでろくな抵抗もしてこないから調子に乗って攻め入っちまったんだろうが。
あたいがいなきゃ今頃あんたらインベスに食われるまでもなく、レーザーで全滅していただろうさ」
「ぐぬぬ……お恥ずかしながら……」
「正直、中途半端な実力者は足でまといだよ。
あそこを攻め落とすならイチローチームでも連れてくることだね」

小町の反応は冷ややかであったが、言っていることは正論でもありモブたちは何も言い返せなかった。

「だが、あんたたちの気持ちはわかったよ」

これまで冷淡な態度だった小町だが、今度は温情を感じさせる言葉で語る。

「あたいがあんたらの分もヘルヘイムを倒すために戦おう」
「おお!」
「無論、今はヘルヘイムの攻略方法がわからないが必ず掴んでみせる。
倒せなくとも撃退はできたんだ。望みはある」

その姿は映画の中のヒーローのような出で立ちであり、モブたちの目にはまさにネットの噂通りの女傑に映り、歓喜の声を上げさせた。
カオスロワでは正義の行動で名を挙げている対主催が少ないため、なおさら小町が自分たちのために戦ってくれるという言葉がモブたちを安心させたのだった。


「で、あんたらにもいくつか頼みがある」
「なんでしょうか? あなたのためならお命だって差し出せますよ!」
「いや命はいらないよ、今は死神の仕事どころじゃないし」

小町のお願いとは?
モブたちは耳を傾けた。

「まず一つ、ヘルヘイムに核攻撃みたいな破壊力の大きすぎる攻撃はしないよう他の対主催に伝えてくれ」
「それはどうしてですか?」
「ヘルヘイムにはあたいのように洗脳された人間やインベスに関係ない無実の生き物も数多くいる。
言ってみれば兵士兼人質みたいなもんだね」
「なんですと!」
「貴虎とやらみたいに爆弾で吹っ飛ばそうものなら罪のない人間も巻き添えになっていた。
仮に核以上の攻撃をしようものなら大量虐殺者の仲間入りだよ」


「人質? 何を悠長な、ヘルヘイムを焼かないと世界が滅ぶんすよ?」
「その程度の犠牲で世界を救えるなら安いものっしょw」
「!!」


一部心無いモブの発言に対してカチンときた小町は死なない程度に銭をぶつけてやろうかと思い、胸の谷間に隠している銭に手を伸ばす。

「コラッ、血も涙もないことを言うんじゃない!」
「すいません乳神様、このクズどもはキツく叱っておきますんで」
「あ、ああ……わかってくれるなら何よりだよ」

しかし小町が銭を投げるよりも早く不届きモブは他の良心的モブに取り押さえられ非難された。
一度は暴走していたとはいえ全員が全員、人の心を失っていないのは幸いだった。

「とにかく強力な攻撃で一気に吹き飛ばすのは無し。これはよく覚えといとくれ。
次にあんたらのように正義感に流されて飛び込もうとする奴らも止めること。
実力はもちろん無策で挑んで勝てるほど都庁は甘くない。
イチローチームみたいな有力対主催に出会ったら攻め入る前に遠巻きから何らかの合図をすることを教えるんだ。
合図を見たらあたいの仲間が合流し、攻め入るのに好都合な進入路を教えてくれる。
最後にヘルヘイムには最強のオーバーロードである魔王ダオスって奴がいる。
インベスの総本山で奴一人倒せばヘルヘイムは総崩れになる。
そいつを倒すのだけはあたいにやらせてくれないか……奴には洗脳された借しがあるからね」
「わかりました」
「他の対主催たちにあたいの伝言を届けるのがあんたらには似合っている。
戦闘はしなくていい……情報を伝えることでヘルヘイムの中にいる人質や無実の参加者、他の対主催の被害を減らすことがアンタたちの戦いだ」

モブたちは小町の願いをしっかりと聞く。
精神的に参ってるかとはいえ狂信者になれるほどDMCが好きではない彼らにとって、自分たちを死地から救ってくれた小町の言葉は女神のそれに聞こえたのかもしれず、すんなりと受け入れられた。


「さて、お願いしてばかりで悪いね。
せっかくだからここにいる全員にあたいからサービスしちゃうよ」
「「「サービスゥッ!!?」」」

乳神のサービスという言葉に元暴徒のモブ全員が反応した(特に股間が)。

「まずはアンタからだね」
「おおう……これは……」

何を考えているのか、衣に包まれた小町の胸の谷間が一人のモブの目の前にどアップでやってくる。
胸が大きいだけではない、肢体も素晴らしいものであった。
これまでの戦闘とドラゴンハートの恩恵によるものか、彼女の体は程よく筋肉がついてシェイプアップされている。
夢の中でも四季に叩かれていたが、どちらかといえばだらしない体型だった彼女がカオスロワという修羅場によってモデル並の体型に進化したのだ。
服の上からでもわかる爆乳と色香漂う肢体を見れば、小町のサービスという言葉に期待が高まるのも無理はない。




「ふう、終わったよ」
「へ?」
「首輪を外してやったんだよ。
ヘルヘイムのある奴がやっていた解除方法を真似たのさ」

何かを期待して鼻血を垂らしていたモブの首輪が外れていた。
これで彼は参加者ではなくなり主催によって首輪が爆破される心配はなくなった。
本来はできない禁止エリアに逃げ込むことも可能である。


「うう……ちょっと残念、いや、無理だと思った首輪解除と神の谷間を見れただけですごく嬉しいです」
「つ、次は俺が」
「いえいえ私が」
「アタシも!」
「おまえレズかよぉ!(驚愕)」
「全員やってやるから焦んなさんな。
狂信者もくるかもしれないからパパッとやるよ。
終わったらコツを書いたメモを渡してやるから他の連中も解放してやるんだ。
……それから見る分には良いけど触るのは無しな、手が滑って首輪が爆発するかもしれないから」

こうして小町の谷間を堪能するついでに30人近いモブの首輪が外され、表向きではあるがカオスロワから解放されたのだった。


「ついでだから煙玉とか逃走に使える道具も渡して起こう。
これで狂信者や殺し合いに乗った奴に出会っても当座は凌げるハズだ。
あたいはもう行くよ。仲間たちと一緒にヘルヘイムを攻め落とす手段を探さないといけない。
さあ、インベスや狂信者に見つかる前に早く行くんだ」
「ありがたや……ありがたや……」
「乳神様、ご武運を!」

モブたち一人一人が小町に感謝し、ヘルヘイムから離れて行く……その中で、ただ一人のモブの代表者だった男が去りゆく小町を呼び止めた。

「待ってください、乳神様! どうかこれを受け取ってください」
「これは?」

代表者モブがディパックからトンファーのような機械の刀を取り出し、小町に渡した。
ストライダーご用達武器のサイファーである。
小町にはこのサイファーに見覚えが有る。
大阪で出会ったハクメンの隣にいた忍者みたいな男が持っていた刀である。

「これをどこで?」
「ここの近くで白濁……失礼、ケフィア塗れの死体の横に転がっていたものを拝借したものです。
死体の方や他の支給品は色んな意味でひどい有様でしたが、ヤられた際に取り落としたらしいこの刀は無事でした」

このモブはマーラにやられたテルミ(飛竜ボディ)の死体をハクメンが見つけるよりも早く発見し、サイファーを拾ったのだ。
故にハクメンはこれがライバルでないと現実逃避に走ったことも手伝ってテルミの依代に飛竜が使われていたことに気付かなかった。
ちなみに蛇双・ウロボロスはマーラの様の特濃な魔力が詰まったミルクで汚染されて使い物にならなかったそうな。

小町は飛竜と同じデザインの機械刀があったのは気になったところであるが、オリハルコンなどの希少金属でできた刀剣はまだしも、こちらは機械故に複製は可能だろうし、同じ支給品が配られてもおかしくないだろうと思って一人納得した。

「見てくれはトンファーソードですが私が適当に振っただけでMSさえ両断する恐ろしい斬れ味を持っています」
「そんなもんあたいがもらって良いのか? 強力な武器は生き残るために必要だろ」
「いいえ、あなたが持っていた方がこの刀の性能を生かせるハズです。
どうかこの刀で人々のために魔王ダオスとヘルヘイムを倒してください」
「……ああ、任せな」
「乳神様、ご武運を」

代表者モブも小町に一瞥して、他のモブと共に去っていった。
去りゆく彼らを見送った後に小町は『騙して悪かった』と思いつつ、距離を操る程度の能力を応用した瞬間移動で誰にも見られないように世界樹の中へ入っていった。


最終更新:2018年05月31日 16:13