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ひデブ@みくるたんと愉快な仲間たち
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ひデブ@みくるたんと愉快な仲間たち

短編7

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陽差


私はそこまで酷い罪を犯したのだろうか。
死してなおこの身に受ける拷問は、文字通りの地獄の業火。

「そこまで言わなくても…」
「何も言ってないよ」
すぐ後ろを歩く少年が困ったように苦笑する。

「死んだらだめですよ~」
「だから何も言ってない」
心の声に突っ込まれるとこちらも困る。

「テス様かわいいー」
「かわいくない」
やはり罰ゲームだろうこれは。

溜め息をつきつつ後方に視線を移すと、
ひとりの男性が楽しそうにニヤニヤしている。
私が軽く睨むと、わざとらしく肩をすくめて視線を逸らした。


と言う事で、私は何故か海に連れてこられていた。

夏場の直射日光は、本当に冗談抜きで死ぬ可能性があるのだが、
そこはまるで計算されていたかのように、
可愛らしい日傘が予め用意されていた。

いや、計算ずくだったのだろう。



発端は至って単純だ。

ここ数日、日差しに弱い私では、迂闊に外に出るのも危険な陽気が続いていた。
隣町に出るにも身の危険を感じていたので、定期検診は2週おきに変えてもらい、
薬は近所の個人病院で処方してもらっていた。

そんなある日の事。

薬を貰った帰り際に院長のとこの娘さんに遭遇して、こんな会話になった。

「テス様も引き篭もってばかりじゃなくて、たまには外に出ようよ」
「そこまで引き篭もってるわけでもないし…。別に構わないけど、どこかに」
「じゃあ決定ねっ」

意見を挟むタイミングもなく。
少し離れたところでわざとらしくタバコを吸っていた院長も、
とても乗り気で保護者役を買って出る始末。


その結果がこれである。


若者3人組にいい歳した院長も加わって、
視界の隅ではしゃいでいる。
元気なものだ。

まぁ、歳の話をすると、今の私の姿も、
おそらく歳相応ではないのだろうけど。

そんな私はと言えば、
まず日傘は色んな意味で耐え切れないので、ビーチパラソルを借りてこさせた。
その下にシートを敷いて、足を投げ出してタバコを吸っている。

…まるで私の方が保護者のようだ。


さすがにみんな私の体質を知ってはいるので、
無理に一緒に遊ぼうなどとは誘ってこない。
それが唯一の救いと言えば救いだが、
ならば最初から連れてこなくても良かったんじゃないかとも思う。

ふと気付くと、タバコの吸殻の量がなかなか酷い事になっていた。

まぁこうやって外から見ているだけでも、
充分楽しい気分が味わえると言えばそうなのだし、
誘ってくれたことに文句などあるはずもない。
海と日傘には少しだけ言いたいことはあるが。

ただ彼女達にとって意味があったのかな、と疑問には思う。
こうなることは分かりきっていたことだし、
いてもいなくても変わらない。

「…で、何でこそこそしてるんだ」
いつの間にか輪から外れて、露骨に私の後ろでそわそわしている少女に、
後ろ向きのまま声をかける。
「いやぁ、黄昏れてるテス様の邪魔したら悪いかなっと」
「黄昏れてないし」
タバコの火を消して振り返る。

「まぁ、これはこれで楽しんでるよ」
「そ?」
私が火を消したのを見てから、少女はすぐ横にしゃがみこむ。


気が付いていたら咥えていたタバコには火をつけずに、
それでもタバコは咥えたまま、相変わらず元気な3人をぼんやりと眺める。
横にしゃがみこんだ少女も、膝の上で腕を組んで顎を乗せると、
私の真似でもしているのか、同じ方向をぼんやりと眺めている。
普段活発な彼女だけに、こういう姿を見るのは少し珍しい。

私達ふたりの視線の先では、3人が海ではしゃいでいる。
日差しだけでなく、溢れる若さが眩しすぎる。

「てすさま~」
「おー」

時々こちらへ向けて手を振ってくるので、
私も軽く手を挙げて返す。
横にしゃがみこんだ少女も、やはり私の真似をするかのように、
へらっとした中途半端な笑みを浮かべながら軽く手を振っていた。


その手と表情が固まったように止まって、こちらを向いた。
「いや絶対つまんないでしょ、こんなの」
拗ねたような声で言う。

「そうでもないから、私の事は気にしないで遊んできていいよ」
私の言葉を聞いて、更にむくれた顔をする。
「むー、気にしてって言ってるようなもんじゃーん。テス様も行こうよー」
「いや本当にそんなことはないんだけどな…」

と言うかこんな日差しの下に出たら10分で死ぬ。
まぁ死ぬのは比喩的表現だが、倒れて意識を失うのは確かだ。
そして怖すぎて試した事もないが、おそらく海水も無理だろう。

「タバコ吸っていいかな」
「いーけど」
隣人の了解を得て、ようやく咥えっぱなしだったタバコに火をつける。

そのまましばしお互い無言が続く。


「あの子がいるから遠慮してるとかじゃないの?」
「どういう意味か良く分からないけど、単に日差しが苦手なだけさ」
「…本当にそうならいいけどー」
どうやら納得していない様子だが、それ以上追求するつもりもないようだ。

気を使ってくれることには素直に感謝したいが、私はそこまで繊細じゃない。
そして日差しが苦手なのも確かだ。


そしてまた無言。
遠くからは3人の声と波の音だけが聞こえてくる。

「よっ」
こののんびりした空気に耐えられなくなったのか、
少女は、軽く気合を入れながら立ち上がった。
腰に手を当ててこちらを見下ろす。

「テス様、そんな長袖着てて暑くない?」
「かなり暑い」
もしかしたら外からは涼しい顔をしてるように見えるかもしれないが、
もはや暑さで頭がぼーっとしているだけである。

「よし、ならとりあえず着替えるんだっ、色気も足りてないし!」
「意味が分からない…」
私に色気を求めるのはどうなんだ、うら若き乙女として。

「確かに足りない」
「貴方が言うのは少し問題です」
(主にひとりが)騒ぎ出したせいか、遊んでいた3人がいつの間にか傍に来ていた。

「てすさまも遊ぶ~?」
「遊ばない」
いや死ぬから。

「…」
そこの少年も、遠慮がちに無言で期待の眼差しを向けるんじゃない。

「え…なにこの流れ」
…どうしろと言うんだ。

「遊ばなくてもいいからとりあえず着替えればいいんじゃないかなっ」
なんでそうなる。
と言うかいい加減色気から離れてくれ。


「ただでさえこんな危険な場所にいるのに、水着なんか自殺行為だろ」
4人から降り注ぐ、夏の日差しにも負けないほど期待に満ちた視線を、
私は北風の如くあっさりと吹き飛ばしておく。
「ましてや遊ぶなんてもっての他」

言いながら新しいタバコを咥えると、私はのんびりと立ち上がる。
そして逆の手には似合わない日傘。
背に腹は変えられない。

「着替えないし遊ばないけど、お昼ぐらいは付き合うさ」

そろそろそんな時間だしね、と付け加えると、
返事も待たずに、離れたところに見えている夏の定番、海の家へと足を進めた。

「おなかすいたね~」
そのすぐ後ろを、先程まで遊んでいた少女が跳ねるようについてくる。
さすが切り替えが早い。

「まぁ、日傘がかわいいからいっか」
それを見ると、私よりよっぽど健康的で色気のある少女は、
仕方がないなとでも言いたげにわざとらしく溜め息をついた。
そして私達ふたりの傍に小走りで寄ってくる。
「日傘は確かに可愛いな」
似合わない日傘は命綱だ。


そこでようやく、少し遅れて追いかけてくる男性陣ふたり。
背後からは無言の恨めしそうな視線が飛んできている気がするが、
当然気にしないことにする。


「夕方になったら着替えればいいんじゃない?」
「名案ですね~」
「何の意味が」
「たまにはてすくんも本気になってくれないと」
「本気になっても日差しに強くはなれません」


バカな話をしつつ明らかに割高の昼ご飯を食べる。

「絶対この方が楽しいでしょ」
「遠くから見てるだけで満足なんて、恋する乙女じゃあるまいし」

そんなに繊細じゃないさ。
多分。


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