説明書P2~3掲載。
時期的には当の昔に出禁を食らってる筈な頃なので、「いっちょ媚売り記事でも書いて関係修復してやるか」等と考えていたのかもしれない。

ガンスターヒーローズとその時代

ゾルゲール哲
(ゲームクリエイター)

時代背景

『ガンスターヒーローズ』が登場したのは1993年9月。
メガドライブの歴史の中でも、ハードの性能を使いこなした傑作が、次々に揃ってきた時期にあたります。
そしてそれは同時に、各社最新ゲームハードがユーザーのシェアを奪い合う、いわゆる「ゲーム機戦争」の、華やかなりし頃でもありました。
実際にはもちろん、王者任天堂の絶対的優位は揺るがなかったわけですが、だからこそと言うべきか、王者に挑もうとするメガドライブのようなチャレンジャーには、熱烈な支持者「セガマニア」もいたわけです。
もっとも、セガのコンシューマーには歴史的に、サードパーティ層の薄さという問題がありました。
メーカー各社のパワーバランス、また一社ですべてを抱え込みがちだった当時のセガの営業体質など、その理由はいくつか考えられますが、いずれにせよ、サードパーティ各社の多彩なラインナップを揃えた他社ハードに比べ、メガドライブはその点少し見劣りしたのは確かです。
そんな中で彗星のように登場したトレジャーの『ガンスターヒーローズ』は、「セガにもこんな心強い友がいる!」とばかりにセンセーションを巻き起こし、テクノソフトの『サンダーフォース』シリーズなどと並び、セガマニアの熱狂的支持を集めたのでした。

新たな表現のはじまり

今回収録されている『ガンスターヒーローズ』『ダイナマイトヘッディー』『エイリアンソルジャー』という、トレジャーのメガドライブタイトルに共通している特徴は、何よりその技術力による表現、アピールでしょう。
多関節、ラフタースクロール、擬似回転拡大縮小、矢継ぎ早に繰り出される超絶技巧の数々が、当時いかに衝撃的だったか説明することは困難とさえいえます。
これより以前、いわゆる「8ビット期」の時代には、ゲームの表現力はごく低いものでありました。世に言うゲームクリエイターは、とりあえず見た目はさておき、自分のアイディアを面白くゲームとしてまとめることで精一杯だったのです。
これが「16ビット期」に至り、ハードウェア性能の向上によって、ゲームはようやく新たな表現の幅を手に入れることになりました。
メガドライブ本体に、金メッキでカッコよくも恥ずかしく記された「16-BIT」のエンブレムをご記憶の方も多いでしょう。
それはまるで、チェンバロからピアノへと至る鍵盤楽器の進歩が、音楽の歴史にも劇的な変化をひきおこしたように、ハードウェアの進歩を武器とした新たな表現、新たな才能が、ゲームの世界にも次々に登場したのでした。
そしてトレジャーのメガドライブタイトルには、まさにその見本市のような華やかさあったのです。

メガドライバーズ・カスタム

今回のトレジャータイトルを特徴付けるもう一つのポイントは、徹底した「ゲーム性」の追求でしょう。
ゲームであるからにはゲーム性を追求するのはいかにも当然のようにも思われますが、実際にゲームを作っていくうえで、「ゲーム性」というキーワードは、意外に難しい問題をはらんでいるのです。
というのも、ゲームというのはインタラクティブな娯楽ですから、見るだけで済む映画などと違って、プレイヤーにもある程度のスキルが要求されます。
つまり、ゲーム性を追求することは、その分スキルをプレイヤーに要求することでもあり、気軽に楽しみたいライトユーザーは脱落させてしまいかねない、一種諸刃の剣でもあるのです。
多くのゲームでは、「奥深さ」と「気軽さ」を天秤にかけ、ゲーム性の追及をあえて避けている部分さえあります
しかし、そうしたゲームを一般向けのファミリーカーとするなら、トレジャータイトルはF1マシンのようなカスタムカー。
操作系、システムともに徹底してチューンアップされたマニアックな作り込みはトレジャーの真骨頂であり、『エイリアンソルジャー』のタイトル画面に誇らしく表示される「メガドライバーズカスタム」の一語に集約されています。
それは、万人向けのゲームじゃ満足できないセガユーザーへの強烈なメッセージであり、最高の賛辞でもあったのでした。
実際プレイしてみて泣くと思いますが。

「2Dアクション」の意義

今回収録のタイトルは、ジャンルで言うと、どれも「2Dアクション」にカテゴライズされます。
それは、アクティビジョンの『ピットフォール』あたりを嚆矢として、『スーパーマリオブラザーズ』で爆発的に流行した、いわば「ビデオゲームの王道」と言えるスタイルでした。
そして同時に、あらゆるゲームが3D化されてしまった今日、歴史の中に埋もれてしまったスタイルであるとも言えます
しかし、もし実際にプレイされたならば、たとえばこの『ガンスターヒーローズ』が、容量や表示能力において数百倍の性能を誇る今日のゲームに比べ、いささかの引けも取らないどころか、わかりやすさ、面白さではかえって優れていることに気づかされるでしょう。
繰り返しになりますが、映画などと異なり、ゲームはプレイヤーにスキルを要求されます。
つまり、ただ見た目がきれいなだけでなく、スキルを問われるそのルールや、ゲームの状況といったものが、いかにプレイヤーにとって把握しやすいか、それが重要なポイントとなるのです
ところが、16ビットから、さらに32ビット、64ビットと、ゲームのハードウェアが進歩するにつれ、ゲームの表現力は、もう途方もなく増大してしまいました。
過剰な表現は、いつしかゲームの本質を押しつぶしてさえいます
画面全体をすばやく一覧でき、コントローラ上の操作を画面表示のXY軸にダイレクトに一致させられる「2Dアクション」。
その優秀さ、意義といったものはこの『ガンスターヒーローズ』が、『ダイナマイトヘッディー』が、『エイリアンソルジャー』がまぎれもなく証明してくれています。
ゲームが、その表現力と引き換えに失ってしまったものがこれらのタイトルには詰まっており、それは今後も、それこそきらめく宝石のように、いささかも色褪せることはないでしょう。


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最終更新:2009年11月02日 01:58