生命遊戯 Lunatic

生命遊戯 Lunatic ◆Yke3utbQug




そこは暗く、少しばかり湿ったような感じがする場所だった。
慣れてきた目を凝らせばあちこちに大きな樽のような物が見える。
そして目に入る沢山の人・・・いやその殆どは人ならざる者だが。
私はそれだけ確認するとゆっくりと立ち上がり、数多くの聴衆に向け語りかける。

「お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます。」


予想よりも反応は鈍く、想定していた騒然とする聴衆の姿は一向に見られない。

「皆様には今ここにいる自分以外の全員を殺害していただきます。
 最後の一人になるまで互いに殺しあっていただき、その結果残った一人が
 生きたまま解放される・・・ということになります。」

「ここに集めた方々はほぼ全員がなんらかの形で魔力、霊力、妖力の類のものを持っていると記憶しております。
 無論それを使って戦って頂いても一向に構わないのですが、それだとあまりにもお互いの力量が違いすぎます。
 今回それを軽減すべく、この手の能力はこちらで制限させていただくことに致しました。」

何人かが不審の目でこちらを見ている。想定済みの事なので軽く受け流す。
さらに何人かが驚愕の目で見ているのには面食らったが、今の自分の姿―――特徴的な看護服を纏った姿を思い出し納得する。

「先程申し上げましたように本来の実力を制限させていただき、尚且つ今回の企画を円滑に進めるため、
 こちらから武器を支給させていただきます。
 後ほど説明いたします袋の中に幾つかの共通の支給品、それと幾つかの各々異なります支給品を詰めてお渡しいたします。
 尚、物によっては武器となるものが支給されていない場合がございますが、ご了承願います。」

ひとまずここまで話し、聴衆の様子を見る。
無音の空気に気圧され、語ろうとする言葉を失った様子の聴衆は、次の言葉で一気に様変わりする。


「さて、ここまで一度に説明させて頂きましたが―――この中に、『棄権したい』という方はいらっしゃいますでしょうか。」

安堵の息を漏らす者、尚一層不審に思っている者、参加者が減ることへの不満を漏らす者・・・
そして挙がる何本かの手の中から一つ―――冴月 麟の手を指差す。

「ではこの方から順番に一人ずつ、棄権手続きを行わせて頂きます。
 お手数ですが棄権希望者にはルール説明の補佐をお願いします。―――えぇ心配はいりません、唯の説明です。
 それではそちらの出口から・・・」

「それではルール説明を映像を用いて続行致します、冴月さん、足元を確かめて頂けますか
 ―――はい、これが先ほど申し上げました『袋』になります、どなたか指摘して下さいましたが某女史の『隙間』を参考にさせていただきました。
 中身は食料、飲料水、懐中電灯、時計、地図、コンパス、筆記具のセット、それから、あぁ拳銃が当たりましたか。
 その引き金を引けば弾が出るという武器です、使う時にはそこの金具を動かして、えぇそうです。」


「で、このように遭遇した相手を倒すわけです、彼女が今やっているように。
 今回は的ですが実際には当然他の参加者ということになります。
 お疲れ様です冴月さん、東へ抜ければ出られますので」


「さて、最後になりましたが・・・皆様の首に首輪を巻かせて頂きました。
 この首輪には爆弾が内蔵してあります、よって無理に外そうとしたり強い衝撃を与えたりすると爆発します。
 また、こちらで定めました『禁止エリア』への侵入によっても爆発します。
 24時間死者が出なくても全員の首輪が爆発しますので、早々に殺害を行ったほうが得かと思われます。
 念のため言っておきますが、これは事実です。疑うのなら自分の物を引っ張ってみればよいかと。それとも・・・」

語りが途絶えた瞬間、映像のなかで何かが破裂するのが見え、

冴月 麟は、頭部無き骸となって首から血を流しながら、

「もう一度彼女に説明していただきましょうか?」

突如、聴衆達の前に、降ってきた。


いまだその躯に熱を残す冴月のもとに幾人かの聴衆が集まる。
前に立っている女は棄権希望者がいないかと再度問い掛けるが、誰も彼女の話に耳を傾ける者はいない。
そして刹那、聴衆達は一人、また一人とその場から消えうせ、

そして誰も・・・いや、一人が残った。


残された一人―――ずっと喋りつづけていた女はそこで一息つき、ゆっくりと暗い湿った空間を歩きまわる。
どこからか酒瓶を取り出し、用意しておいた席につこうとして、ふと一人会場に送りだし忘れた事に気付く。
そしてその者はゆっくりと一つの酒樽に向かって歩み寄り、

「八意君を送り忘れる所だったな・・・」

酒樽の中には、見下ろす一人の女と全く同じ姿をした・・・いやそうではなく、

酒樽の中に詰められた女が、同じ姿をした「女」に見下ろされていた。

刹那酒樽の中の女―――「本物」の八意永琳―――が煙のように掻き消え、
後には一人の女・・・いや、既に元の姿に戻った一人の痩せた男が立っていた。
薄ら笑いを浮かべて。


幻想郷史最も醜い異変が、一人の男「ZUN」の手により、静かに幕を開けた。




【東方projectバトルロワイアル 開始】

【冴月 麟 死亡】

【残り 54人】

 ※ZUNはルール説明を「八意 永琳」の姿で行いました。
  また、これにより「八意 永琳」はルール説明を全く受けずに会場に送られました。


時系列順 01:悲しき盲目の信頼
投下順 01:悲しき盲目の信頼
八意永琳 14:月の頭脳の苦渋
ZUN 56:第一回放送
冴月麟 死亡


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最終更新:2021年08月23日 13:02
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