少女団結 ◆30RBj585Is
神様は様々な人々から信仰を得ている。
人々の役に立つ、身を保障する、美の象徴・・・。神は様々な行為を経て信仰を得る。
それが人々にとって大いにありがたいことであり、それが神への信仰に繋がるのだ。
幻想郷の数多の神はその信仰を得ることを生きがいとしている。つまり、人々のためにあらゆる善意を尽くすこと。それが神の生きがいなのだ。
そんな気持ちを持つ神々がこんな馬鹿げたゲームになど乗る気にならない。
誰もがそう思っているのではないだろうか。
豊穣を司る神、秋穣子は途方に暮れたかのような足取りで歩いていた。
山の神の中では活発な性格の彼女だが、今の状態ではそう思えないだろう。
そして
「どうすればいいのよ・・・」
真っ先に思ったのがそれだ。
まず姉である静葉を探したい。理由は簡単、心配だからだ。
だが、それだけでは殺し合いを止めることは出来ない。姉と合流できても、ゲームに乗った妖怪たちに出会ったら殺されかねない。
それに、主催者のあの医者に対抗する手口が思いつかない。いかんせん、自分には力がないのだ。
―――少女捜索中―――
「「あ!」」
しばらく歩いていると、顔見知りと出会った。
最初は誰だと思いお互いびっくりして思わず引いたが、その相手は
「雛じゃない!」
「穣子・・・?いきなり会えるなんて驚いたわぁ」
穣子と同じ山の神である鍵山雛だった。
雛は穣子と同じく、同じ理由で悩んでいた。
特に、彼女は人々の厄を受け取るのが信仰を得る手段である。
厄はあらゆる不運の種となる厄介な存在である。逆に言えば、厄が無くなれば人々は幸せになれるようなものだ。
だから、厄を取り除く神である雛は、人一倍様々な人々を想う心があるといえよう。
だが、それだけだ。今は気持ちでそう思っていても意味がない。雛もまた、殺し合いの対抗手段が思いつかないのだ。
しかも、今日は何故か周りに溜め込んだ厄が無くなっている。これじゃ、ただの雛人形だ。
お互い、信用できる仲間に出会った二人は一旦、そこらにある空家で休むことにした。
「ねぇ、雛。これからどうするつもりなの?」
「うーん、さっぱり分からないわ。なんせ、今の状態じゃねぇ」
「う、やっぱりあんたも私と同じか・・・」
お互いは自分の考えや今後の方針といった情報交換を行う。
「だいたい、私たちには力が足りないと思うのよ。何のための神様なのやら」
「そうそう。こんな厄い状況こそ私の出番だってのにねぇ」
二人とも思ったことは、人々を助けるための力が無いこと。
はっきり言わせてもらうと、神の面目丸つぶれだ。信仰低下間違いなしだろう。
「正直、こんなところで引きこもるだけで悔しいってのに」
「しょうがないわよ。お外は真っ暗だし。もう、全てが厄の塊のようだわ」
「あんたが言うと、洒落にならないよ!」
どれだけ時間が経っただろう。
いつの間にか会話は冗談じみたような軽い内容になっていた。
おそらく二人とも殺し合いにふさわしくない笑顔を浮かべていることだろう。
その時…
「あのー?ごめんくださーい」
「「うひゃあああ!?」」
突然、横からの声を聞き、二人は驚いて飛びのいた。
そして、シンクロするかのように声の発生源を見る。
「だ、誰よ、あんた!?」
明らかに知らない顔だ。
しかも、戦闘のことを全く考えていなかった。
更に言うなら、支給品の確認すら行っていない。ていうか、支給品の入った袋は自分たちから離れている。
なんだかヤバイ?そんな状況になってしまった。
(えーっと・・・何が駄目だったのかなぁ?)
もしかして、自分は空気を呼んでいないのかな?
だって相手の気持ちがよく分からないんだもん、すっかり忘れちゃった。
もっとも、それが全て読み取れるのも辛いことなんだけどね。
心を閉ざした妖怪、古明地こいしはそう思った。
『お集まり頂いて光栄です。ただいまより皆様には、殺し合いを行っていただきます』
あのお医者さんみたいな人は何を考えているんだろう。
まぁ、そんなの、お姉ちゃんにはバレバレだよね。
そう思い、姉である古明地さとりを捜し、見つけた。
でも、お姉ちゃんは何やら困った表情をしていた。
傍から見れば、あのお医者さんの考えに驚いているように思えるかもしれないけど、お姉ちゃんは何故かあのお医者さんと自分の第三の赤い眼を交互に見ていた。
- まるで、あのお医者さんの心が読めてないような感じに。
私の予感が的中しているとすれば、お姉ちゃんの身が危ない。
『心が読める事が弱点で、それを補う為に眼を閉じた?
それじゃあ、ただの妹妖怪じゃないの。楽勝ね!』
以前、守矢神社で紅白さんにこう言われた。
今更だが、正直痛いことを突かれたと思う。
自分は長年、第三の眼を閉じていたからかいつの間にか無意識に行動できる術を身につけてしまった。
これのおかげで警備が厳しい妖怪の山を平然と登ったこともある。
でも、お姉ちゃんはどうだろう。
自分と違って眼は開けていても、それで心が読めなきゃそれこそただの姉妖怪。ぶっちゃけ、無能と言ったっていい。
そんなんで大丈夫だろうか。心を閉じているのに、とても心配だった。
心が読めなくなっただなんて、ただの勘違いだと思いたい。そう祈りたいこいしだった。
それに、姉だけじゃない。参加名簿によるとお燐とお空も参加している。この二人(二匹)もどうなんだろう。
二匹のことも想っていたこいし。
ふと、
「・・・そうだ!」
古明地姉妹のペットである火焔猫燐と霊烏路空。この名を挙げて、あることを思いついた。
- それが今、こいしが穣子と雛に話しかけた理由でもある。
「な、何のつもりよ!動かないで!」
穣子は突然の訪問者に戸惑っていた。それは雛も同じ。
「動かないでって言われても、こっちも困るんだけど・・・」
ただ話しかけただけなのに、そんなことを言われても困る。こいしはそう思った。
相手は何も持っていないとはいえ、スペルカードによる弾幕攻撃のことがあり、油断できない。
正直、こいしにとっては目の前の穣子と雛が危なく思える。
自分の思っていることがお互いに伝わってくれればこうならないだろうに。そう考えると、心を読むこともいいかもしれない。
とりあえず、自分が思っていることを説明することにした。
だが、
「ねぇねぇ。あなたたちって、神様でしょ?」
まず、こいしは尋ねる。
「・・・そうだけど?」
「神様だからなんだってのよ!?」
二人はそう応えた。
「わぁ、やっぱり!
・・・あ、それでお願いがあるんだけど」
「な、なにが目的よ!」
まだ警戒しているようだが、かまわないでそのまま続ける。
「えーと、何て言えばいいのかなぁ。
あーでもないし、こーでもないし・・・うーん」
(なんなのあの子?急に考え始めて・・・)
(さぁ?でも、襲うような姿勢じゃなさそうだし・・・)
こいしがうーうー悩んでいる時、穣子と雛はこいしを見て戸惑っていた。
どうも敵意がないような雰囲気だ。
もしかして、ゲームには乗ってないのか?そう思い、少し落ち着きを取り戻しつつあった。
「あのね・・・」
雛は口を開いた。なんとなくだが、話し合えば分かり合えそうな気がしたからだ。
「あ、そうそう!」
突如、こいしが雛の呼び声から割り込んだ。何て言うのかを思いついたのだろうか?
「あのね、うちのペットは突然、パワーアップしてたことがあったの」
「「は?」」
パワーアップ?何が言いたいのか。
「それでね、お空が言うには神様を食べたからだって言うんだって!」
「・・・神様を」
「食べる・・・?」
まさか・・・?
二人は、特に穣子は自分の体を見ながら疑問に思った。
「だから私もパワーアップするために、あなたたt・・・」
その瞬間、二人は無意識に
「「このっ・・・ケダモノおぉぉーーーー!!!」」
拳骨をこいしの脳天にぶちこんだ。
「うう~、あたまが痛い・・・」
「なんていうか、その。ごめんね・・・」
殴られたこいしは泣き顔になりながら頭部を押さえていた。
そして、殴った穣子と雛は気まずい表情で謝っていた。
ようするに、ただの誤解だった。
こいしたちのペットの一匹である霊烏路空はヤタガラスの力を飲み込むことでパワーアップした。
そして、そのヤタガラスの力を与えたのが守矢神社の神様とのこと。
そこで、こいしは閃いた。こういうときこそ、自分も神様から何か力をもらってパワーアップしよう、と。
そして、その力で姉やペットたちを助けたいとのこと。
だから、こいしは偶然見つけた穣子や雛に話しかけたのだ。
実に子供じみた単純な考えだが、その姿勢には好感が持てる。特にこいしと同じく姉がいる穣子にはよく伝わったようだ。
だが、
「ふーん、そういうことかぁ。残念だけど・・・」
「私たちはそんな、誰かに力を与えるようなことなんて出来ないわよ」
二人とも、答えはNOだった。
誰かに力を与えるなんて、元々そんなことなんて出来ない。
その力を与えたという守屋の神々とは違うのだ。
「そっかー、残念」
とはいえ、こいし自身も無理だろうと思っていたのか、落胆するような様子はない。
「・・・で、こいしちゃんだっけ。あなたはこれからどうするの?」
「うーん、みんなを捜したいけど・・・。当てはないし、今は真っ暗で何も分からないからなぁ。
あなたたちはここで休むんでしょ?私も入れていい?」
ジッとするのは性分に合わないが、何せ今は真夜中。視界が悪すぎて捜すのが大変だ。
それに、今まで一人だったのが心底、不安だったというのもある。
「もちろん!仲間は多いほうがいいしね」
一人では大した力は無い。だが、それが何人も集まれば非常に心強い。
三人とも力が欲しかった。ゆえに、これは願ってもない事だろう。
こうして、三人は共に行動することになった。
しかし、少女たちがやらされているのは一人になるまで続ける殺し合いというゲーム。
チームを組んだところで生き残れるのはただ一人。
守りたい人が居ても生き残れるのはただ一人。
それらを解決するには、力を得るだけではどうしようもない。
そんな中・・・少女たちに何が出来るのだろうか。
【C‐4 民家の中・一日目 黎明】
【秋穣子】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]姉を捜したい。ゲームに反対
【鍵山雛】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]ゲームに反対
[備考]集めたはずの厄が無くなっている。能力制限?
【古明地こいし】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明アイテム
[思考・状況]姉、お燐、お空を捜したい。神様の力が欲しい。ゲームに反対
[備考]姉の心を読む能力がなくなったのではと思ってます
最終更新:2014年05月31日 03:25