本編190~196

『命を賭した傷こそ証す!!』

 作者・大魔女グランディーヌ

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無幻城・Gショッカー秘密警察長官室***


ダスマダー「昨夜から諜報部に所属する女戦闘員№55682の
 消息が掴めん。直ちに秘密警察長官の名において
 捜索・追跡の命令を出してもらいたい」
フラビージョ「イヤよ」
ダスマダー「なにっ?」

クライシス帝国の皇帝直属軍事査察官にして、
Gショッカー秘密警察の副長官を務めるダスマダー大佐は、
昨夜から急に連絡が取れなくなった女戦闘員の行方の捜索に関し、
秘密警察長官フラビージョと長官補佐ウェンディーヌに掛け合っていたが、
彼女ら二人の反応はあまりにも鈍かった。

ウェンディーヌ「その女戦闘員とやらは港湾地区でいなくなったんでしょ?
 ならうっかり海にでも落ちて鮫の餌にでもなったんじゃないかしら」
灰色の老人「…し、しかし万一、脱走または敵に捕獲されていた場合、
 こちらの機密が敵対勢力に漏れる可能性が――」

ダスマダーに伴われる形で随行してきた、
古びたクタクタの黒いモーニングを着込んだ灰色の顔の老人も、
偉そうに椅子にふんぞり返る長官の翻意を促そうと必死に食い下がる。
しかし……。

フラビージョ「たかが女戦闘員の一匹や二匹どうだっていいじゃん。
 第一めんどくさいもん」
ウェンディーヌ「長官の決定は下ったわ!
 今日のところは引き下がる事ね、ダスマダー大佐。
 長官はとってもお忙しいのよ。ウフフ…」
ダスマダー「………」


同城内・大廊下***


長官室からにべもなく追い返され、
城の大廊下を並んで二人で歩くダスマダー大佐と灰色の老人。

灰色の老人「なにがとってもお忙しいじゃ!
 闇女王同盟の威光を笠に着て今の地位に落ち着き、
 毎日威張り腐るだけで、ろくに仕事などしとらんくせに!
 いかにヘドリアン女王からの推挙があったとはいえ、
 いったい至高邪神様は何をお考えになって…」

年寄りらしく愚痴を口にする灰色の老人。
その時、急に立ち止まるダスマダー。

ダスマダー「そろそろ潮時だな…」
灰色の老人「――!!…と、すると…いよいよあの男を!?」

振り返るダスマダー。

ダスマダー「その通りだ。すでに至高邪神よりご内意を得ている。
 お前には直ちにあの男を迎えに、例の場所まで出向いてもらいたい」
灰色の老人「キヒヒヒ…心得た!」
ダスマダー「任せたぞ、死神クロノス!」

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一方、その頃…。

東京・国会議事堂・地下***


国会議事堂の地下に住む夢見の姫・丁(ひのと)は、
最高の力を持つ『夢見』の少女で、これまで政治家たちのために
日本の未来を予見していた。だが剣桃太郎が日本の総理となって以降、
以前に比べてその負担も減り、ここを訪れる者も少なくなっていたが……

蒼氷「丁姫様」
緋炎「ご来客でございます」
丁「剣総理ですね。すぐにお通ししてください」

丁を護衛する使命を帯びる
風使いの砕軌玳透(さいき・だいすけ)に案内されて
やって来たのは内閣総理大臣・剣桃太郎その人である。

砕軌「丁姫、剣総理をお連れいたしました」
丁「ご苦労でした砕軌殿。下がっていてください」

人払いを命じる丁。

丁「お久しぶりです、剣殿。その後江田島さまはご壮健で
 あられましょうか?」
桃太郎「はい。おかげさまにて塾長も達者でおります。
 ところで丁姫、見たところお顔の色が優れないようですが?」
丁「そうでしょうか。貴方がこの国の総理となられてからは、
 “夢見”としてのわらわの仕事も減り、ゆっくりと休ませて頂いている
 つもりですが……」
桃太郎「………(じっと見据える)」
丁「フフッ…やはり剣殿は欺けませんね。確かにわらわは眠りの中で
 未来を垣間見る夢見…」
桃太郎「休まれても真の休息ではない…」
丁「………」
桃太郎「ここ最近の黄泉がえりの騒ぎ、
 そして世界、いや宇宙各地での時空クレバスの発生…。
 前大戦で親しい者を亡くしていた人々からの立場、
 そして未知の異文明とのファーストコンタクトという観点から見れば、
 本来喜ぶべきことと言えなくもないが……」
丁「黄泉がえりの奇跡は一度は光の前に滅んだ邪悪な者たちまでも
 再び現世へと蘇らせてしまい、そして一の谷博士も仰っておられるように、
 時空クレバスは我々の友ではなく、敵も呼び寄せてしまう可能性もあります。
 これらは全ていずれ起こるであろう大きな戦乱の予兆であると思うのです」
桃太郎「丁姫、申し訳ありませんが、これからは貴女のお力も
 頻繁にお借りするときが来るかもしれません。どうかそのおつもりで…」
丁「喜んで。わらわに出来る事であれば何なりと…」

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日本・成田空港***


サザーランド「お待ちしておりました、アズラエル様」

ここは、日本を代表する空の玄関口の一つである成田国際空港…。

一足先に来日していた、連邦軍内部でのブルーコスモスの一員
ウィリアム・サザーランド大佐が、スーツ姿の優男――
――国防産業連合理事ムルタ・アズラエルを空港ロビーにて出迎える、

アズラエル「出迎えご苦労さん、サザーランド大佐」
サザーランド「白河氏が邸宅にてお待ちです。何やら今日は
 面白い見世物があるのだとか……」


衆議院・予算委員会***


委員長「――では来年度予算についての質疑はここまでと致しまして、
 次の質問に移りたいと思います。参考人、地球連邦軍極東支部長官、
 三輪防人君!」
三輪「ゴホン」

発言席へと立つ三輪長官。

三輪「総理、貴方は現在わが国における社会風紀の乱れをどうお考えですか?
 女子高生による売春・妊娠、乱立する性風俗営業店、子供でも買える
 ポルノ雑誌等など……とりわけ性に関する乱れは目にあまるものがあります。
 総理、貴方のご意見を伺いたい」
桃太郎「委員長」
委員長「内閣総理大臣、剣桃太郎君!」
桃太郎「この地上には男と女しかおりません。そして性は
 その形いかんに関わらず個人の問題であり、人間の本能的なものでしょう。
 法に触れぬ限り、私は国家として口を挟む問題ではないと考えます。
 尤も既に男の道具がお役に立たなくなった方にはご理解頂き辛いとは
 思いますが」

三輪長官を遠回しに皮肉った剣総理のジョークに
委員会の場は爆笑の渦に……。

三輪「……(フフフ……調子に乗りおって。吠え面かくだけではすまさんぞ)」

193
三輪「では総理、貴方は今この地上には男と女しかおらぬとおっしゃいました。
 しかし私はここに興味深い写真を入手しました。これはある男と女の
 密会現場を隠し撮りしたものです。この写真に写っているこの人物は
 どなたですかな総理!!」

三輪は得意げに例の偽写真を出席の議員たちの前に見せびらかした。

桃太郎「………」

議員A「ば、ばかな…信じられん」
議員B「しかしあれは、まぎれもなく総理……!!」

三輪「ご覧ください議員のみなさん!! この写真の中で
 総理と抱き合っている女性は、なんとGショッカーの諜報工作員として
 警視庁公安部がマークしていた人物なのであります!
 もし国のトップが握る安全保障上の国家機密が侵略者に流れていたとしたら、
 これはまさしく由々しき問題なのであります!
 さあ、どう説明なされます総理! まさか貴方が売国奴だったとは!!」

白河尚純邸***


先ほど邸宅に到着したばかりのアズラエルらと一緒に
テレビの国会中継を眺めている白河尚純。

白河「終わったな剣。いかな貴様でもこの場を切り抜けることはできまい……」

194

再び、国会内の予算委員会***


桃太郎「フッ…」
三輪「何がおかしいのか総理! これが笑って済まされる問題ですかな!!」
桃太郎「残念だがその写真、写っているのは私ではない」
三輪「ワハハハハ!! この期に及んでとんだ苦し紛れを!
 これはどこからどう見ても総理、貴方自身ではないか!」
桃太郎「………」
三輪「もしこれが違うというなら、私を殴り殺しても構いません」
桃太郎「その言葉、お忘れないよう」

自ら三輪長官の眼前に進み出る桃太郎。

桃太郎「私は男塾という私塾の出身です」
三輪「知ってますよ。その後東大を卒業し、ハーバード大に留学したことも。
 それがどうかしましたか?」
桃太郎「男塾……そこはまさに命をかけた男の戦場だった。
 私はそこを生き抜いて来たのです。これがその証だ!!」

上着を脱ぎネクタイを外した桃太郎は、
議員たちの前で上半身裸になって見せた。
その肌には戦いの跡である無数の傷がついていたのである。

三輪「……き、貴様!?」
桃太郎「おわかりいただけたかな?」

議員A「総理の体にはあんなに無数の傷跡が……」
議員B「しかし写真の方の総理には傷ひとつない。ということは……」
議員C「その写真は偽物だ!!」
議員D「こんな茶番で国会を混乱させおって!
 一体この責任をどう取るつもりだ!!」

議場内に一斉に怒声と野次が飛ぶ。

桃太郎「所詮は猿知恵。沐猴にして冠す――やはり貴様に相応しい言葉だったな。
 さあ、さっきの約束を果たしてもらおうか!!」

周囲から大顰蹙を買ってオロオロしている三輪長官に
拳をポキポキと鳴らしながら迫る桃太郎。

三輪「ま、待て! やめろー! あれはつまり言葉のあやで……!
 ヒイイ――ッ!!!」

しかし桃太郎は繰り出したパンチを、三輪の眼前寸前のところで止めた。

桃太郎「覚えておけ。俺は日本国初の武闘派内閣総理大臣、剣桃太郎だ!!」

三輪「……*1)))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク」

恐怖と混乱のあまり、腰を抜かしてその場に座り込み
全く動けないでいる三輪は思わず失禁してしまっている。
再び上着を身につけ、席へと戻る桃太郎。

桃太郎「さあ、審議を再開しましょう」

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白河尚純邸***


アズラエル「あー、もうダメダメです」
南「馬鹿めが……とんだ醜態を晒しおって」

テレビで国会中継で一部始終を見ていた白河たちであったが、
三輪長官の無様な失敗に失望を禁じえなかった。

白河「三輪長官も非を認め、おとなしく殴られれば
 まだ救いようがあったものを」
サザーランド「おそらくそれも計算した上でのパフォーマンスでしょう。
 残念ですがこれで三輪長官は、今の極東支部での地位も危うくなりましたな。
 これではいかにティターンズのジャミトフ・ハイマン大将といえども
 彼を庇いきれないでしょう。逆に剣総理は若年層を基盤に
 今後も一層支持率を得ることは確実ですな」

傍らに控えていた南雅彦が、白河にそっと耳打ちする。

南「それと白河先生、どうやら例のサコミズの一件で、
 何やらあちこち嗅ぎ回っている者がいるようです」
白河「報告にあった、以前のサコミズの部下だったとかいう、
 GUYSの元女性隊員の二人か……。南君、君らしくない不手際だったね」
南「申し訳ありません……」
白河「余計なことに気づかれては面倒だ。監視を続け、
 その二人の始末も早急につけてくれたまえ。もはや猶予はない」

外の空気を吸うためバルコニーに立つ白河。

白河「消すしかない。剣桃太郎をこれ以上生かしてはおけん」
アズラエル「よろしければこちらの生体CPUをお貸ししますヨ」
白河「生体CPUの駆る3機のガンダムか。しかし戦闘力だけで
 奴を殺すことは難しい……」

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●フラビージョ、ウェンディーヌ→ヘドリアン女王の後ろ盾で、
 Gショッカー秘密警察の長官と長官補佐に地位にそれぞれ納まっている。
●ダスマダー大佐→フラビージョとウェンディーヌの二人に見切りをつけ、
 死神クロノスに"ある男"を呼び戻すよう指示。
○丁→剣桃太郎と会見。どうやら今のところ、二重人格は克服されている模様。
○剣桃太郎→国会での三輪防人からの追及を撃退する。
●三輪防人→剣総理失脚の陰謀は失敗。逆に国会内で大恥をかく羽目に。
●ムルタ・アズラエル、ウィリアム・サザーランド→ロゴスの日本支配計画の
 現状視察のため極秘裏に来日。
●白河尚純→剣総理の失脚計画が失敗し、暗殺に作戦変更。
●南雅彦→サコミズの無実証明のために独自に奔走している
 カザマ・マリナとアマガイ・コノミの二人の始末を白河より命令される。

【今回の新規登場】
●フラビージョ(忍風戦隊ハリケンジャー)
 宇宙忍群ジャカンジャの幹部である上忍・暗黒七本槍の壱の槍。
 元宇宙コギャルであり、上忍・中忍の任務達成状況などの報告・査定を
 担当している。可愛い外見とは裏腹に、やることはかなりえげつない。

●ウェンディーヌ(忍風戦隊ハリケンジャー)
 宇宙忍群ジャカンジャの幹部である上忍・暗黒七本槍の四の槍。
 倒された中忍の再生・巨大化を担当。怒りが頂点に達すると
 自らが巨大化してしまう体質(星一つ滅ぼしたことがある)を持つ。

●死神クロノス(仮面ライダーX)
 GOD日本秘密基地アポロン宮殿の案内人。クロノス地獄鎌が武器。

●ムルタ・アズラエル(機動戦士ガンダムSEED)
 ブルーコスモスの初代盟主。軍事産業連合理事を務め、
 政財界に対し強い発言力を持つ。Nジャマーキャンセラーを求め
 ジャスティスとフリーダムを付け狙った。

●ウィリアム・サザーランド大佐(機動戦士ガンダムSEED)
 地球連合軍のアラスカ本部に所属する、軍政部の大佐。
 実はブルーコスモスの一員。

○丁(Χ -エックス-)
 国会議事堂で政治家たちのために未来を夢で見る「夢見」の姫。
 世界の終末を知り、それを回避させるために「天の龍」を集める。
 裏丁と呼ばれる醜悪な二重人格が存在する。

○蒼氷(Χ -エックス-)
○緋炎(Χ -エックス-)
 丁に仕える二人のくノ一風の侍女。見た目は双子。
 どうやら式神のようである。

○砕軌玳透(Χ -エックス-)
 伊勢付きの『風使い』一族の一人で、蒼軌征一狼の甥。
 10歳の頃から丁に仕え、密かに想いを寄せる。

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最終更新:2020年10月29日 11:00

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