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  • 神への冒涜7

神への冒涜7

最終更新:2012年03月07日 06:00

jelly

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『神への冒涜』七人目「獅子アダモフ / Haste makes Mistakes」


 俺たちをこんな目に遭わせた憎き研究者どもに思い知らせてやる――!
 デテンを騙してまんまと自由を手にした失敗作たちは、復讐を誓ってこの研究所の上層を目指して一気に駆け上がる。
 まずは頭を討つ。お偉いさんは最上階にいるのが相場だ、とはこの”解放軍”を率いる筆頭、獅子アダモフの言だ。
「やつらめ、目にもの見せてやる!!」
 しかし、どうも様子がおかしい。
 研究所内はいつも静かだが、今日はいつもに増して静かだ。
 これは普通の静けさじゃない。地下牢に隔離されていたとはいえ、そんなことに気がつかないほど感覚が鈍ってしまってはいない。
 空気が冷え切っている。凍りついてしまったと言ってもいい。そこにはある種の違和感のようなものが感じられた。
 先頭を走っていたアダモフたちが足を止める。
 それにつられるように後続の獣たちも立ち止まった。
「なんだか様子がおかしいようだね。これは一体どういうことだい……?」
 メルがふと言葉を漏らした。
「ただおねんねしてるってだけじゃあなさそうだぜ。これは……血の臭いだ」
 その言葉にテオが返す。
「よくはわからないけど、どうやら”先客”がいるようだねぇ。血の臭いだけじゃない。テオ、あんたと似たような臭いがするよ」
「へぇ…そいつはまた。そのお客さんがおれたちにとって敵じゃなきゃいいんだがな」
 獣たちは周囲を警戒しながら、さっきまでとは対照的にとても慎重に歩を進めていく。

 地下一階。
 目の前に見えてきたのは西側のエレベータ。そして、その前に一面に広がる血の池と、その池の中に転がっている異様な肉塊だ。
 肉塊からは今もなお不気味な液体が悪臭を放ちながらどろどろと流れ出し続けている。
 その肉塊とは言うまでもなく、かつてジェームスだったものだ。もちろん、アダモフたちはジェームスのことなど知らない。
「ははぁ、臭いのモトはこいつだね。……これはまた酷い有様だよ。誰かは知らないけどかわいそうに」
 隔離フロアには失敗作のキメラやゾンビたちも近くの牢に閉じ込められていた。
 皮肉な話ではあるが、そういったものに見慣れてしまったメルたちは、このおぞましい肉の塊を目前にしてもアマンダのように嘔吐感などを催すことはなかった。
 しかし、生理的な嫌悪感は例え見慣れていたとしても決してなくなることはない。
 ある者は絶句し、ある者は思わず涙を流し、ある者はせめてこの犠牲者が安らかに眠ってくれるようにと祈りを捧げる。
「こいつぁひでぇ…」
「研究者ドモメ。アイツラコソ人間ジャネエ、悪魔ダ…」
「もしかしたら私もこうなってたかもしれないのか…」
「おで生きテる。まダ救いある、おでたち。でもこイツにはない…」
 解放軍を得も言われない重い空気が覆う。とくにゾンビたちの間でそれは顕著だった。
 デテンのときのように、食料だ! 肉だ! などと不謹慎なことを言いだせる者は誰もいなかった。
 しばしの沈黙。
 そして沈黙は次第に悲しみに変わり、さらに怒りに変わった。
「許せねえ…。あいつら血も涙もねえんだ! 実験台がどうなろうと何とも思わねえんだ!!」
「傲慢な科学者どもめ…! 自分たちが神にでもなったつもりか? これは神への冒涜だ! 私はかつて神父だった。こんな所業を神が許されるはずがない!!」
「おいらは神は信じちゃいねぇけど、おいらたちと同じように実験台にされちまった仲間がこうして無残にも死に姿を晒させられてるのを見逃してなんかおけないぜ!!」
 獣たち、キメラたち、ゾンビたちは口々に叫ぶ。喚く。咆える。
 怒り、悲しみ、その他諸々のどす黒い感情が渦巻いてうねりとなり場の空気を支配する。
 復讐だ。殺せ、引き裂け、八つ裂きニシロ。愚カナ科学者ドモハ皆殺シダ。死ヨリモ重イ苦痛ヲ――!
 もう誰が何を言っているかさえ理解できない。言葉にならない思いを叫びに変えて、悲鳴とも咆哮ともつかない声を失敗作たちは口々に上げた。
 とうとう我慢しきれずにあたりかまわず、壁や床を殴り出す者。果ては隣にいる仲間に噛み付く者さえも現れる始末。
 辛うじて人としての意識を保っているとはいえ、それはとても不安定なものだった。一歩間違えば、すぐにでもあの被検体Yのように暴走しかねない者もいた。
 そんな中でただ押し黙って一人騒ぎが収まるのを待つ者がいた。
 獅子アダモフだ。
 アダモフはただ冷静に目の前の肉塊を睨みつけている。
 しかしとうとう我慢の限界に達したのか、獅子は騒ぎ暴れる仲間たちに一喝する。
「いい加減にしないか!!」
 獅子の咆哮が響き渡る。研究所内はすぐに再び静まり返った。
「うろたえるんじゃない! 俺たちの目的はなんだ。ただ怒りに任せて暴れまわることか。えぇ!? 違うだろう!! 悪いのはこの研究を指揮したやつらだ。頭の腐ったやつらだ! そんなやつらがいるせいで、俺たちはこんな姿に変えられてしまった。やつらが憎い。憎いのはわかる。怒りがこみ上げてくるのもよくわかる!! だが、こんなばらばらの状態で何ができる!? できないんだよ。何もできやしないんだよ!!」
 獅子はさらに咆えた。力いっぱいに咆えた。
「俺はあんたらに教えてもらったんだ。仲間で力を合わせることがいかに大きな力を生むか…。いかにそれが大事なことかを!!」
 アダモフはかつての地下牢に放り込まれたばかりの頃のことを思い出していた。


 今でこそ、この研究所での研究は煮詰まっている状態だったので地下牢へ送られてくる失敗作の数は多いものではなかったが、今よりも研究がはかどっていた頃は毎日のように隔離フロアへ失敗作が連れられてきていた。
 多くの仲間たちが、新たな失敗作が放り込まれるために牢の入り口が開くその瞬間を狙って脱出を計ったものだ。しかし、これまでに脱出に成功したものは皆無だった。
 自分の牢が開かれれば、失敗作たちは誰もが我先にと牢の入り口に殺到し、互いに争い蹴落とし合い、そしてその隙に次々と研究員に非適応薬を撃ち込まれて処分されていったのだった。
 そんな不毛な様子をアダモフはいくつも見てきた。
 自分の牢が開かれたことも何度かあった。そのときも同じことが起こった。アダモフはそんな様子をただぼんやりと見ているだけだった。
 どうせ脱出したって殺されるだけだ。ましてやこの姿なのだ。
 もし街に突然獅子が現れたらどうなる? 当然、捕獲されて処分されるだけだ。
 ではこのまま大人しくこの地下牢にいればどうなる? いずれ処分の日が訪れて結局は処分されるだけだ。
 アダモフは悲観的だった。すべてに絶望していた。
 どうせ死ぬ運命でしかない。下手に暴れればそれが早くなるだけのこと。
 だから俺はじっとしている。抵抗したって無駄だ。ただ疲れるだけなのだ。
 だったら、俺はもう何もしたくない。天国からでも地獄からでも、どっちでもかまわない。あの世からお迎えが来てこんな薄汚い地下牢から俺を救い出してくれるその日までは、俺はもう何もしないし、何も考えない。
 抵抗しても無駄。無駄無駄無駄。すべてが無駄。
 どう足掻いたところで運命は変わらない。
 ならば、大人しくその運命を受け入れてしまうのが最もラクなのだ。
 死ぬことでしか救われない報われない浮かばれない。それならば、俺はそれを受け入れよう。
 他人のことなどどうでもいい。自分のことすらどうでもいい。何もかもがどうでもいい……。
 そんなことを思いながら檻の片隅で獅子は、毎日のように処分されていく仲間たちをばかばかしいとも思いながら、死んだような目でぼんやりと眺めるだけの日々を送っていた。
 たまに思い出したように地下フロアを管理する研究員が檻の中へ”餌”を投げ込みに来る。
 もちろん、十分な量などあるわけがない。失敗作たちはたちまちそのわずかな”餌”に殺到し互いに争い合うのだ。誰もが生きるのに必死だった。ただアダモフだけを除いては。
 アダモフはその”餌”に全く関心を持たなかった。時に愚かに、時に哀れに思いながらその”餌”を奪い合う他の失敗作たちを眺めるだけだ。
 どうせ死ぬしかないのだ。ならば、そんなに生に執着して一体何になるというのか。
 無駄だ。すべては無駄なのだ。
 そんなことをして無駄に苦痛を増やすぐらいなら、こうしてただ静かに死を待つほうがずっといい。こうして待っているだけでお迎えがやってきてくれるのだから、それほどラクなことはない。
 研究員がただ漫然と失敗作たちを生かしているはずはない。与えられる”餌”の量が少ないところをみるとそこまで真剣ではなさそうだが、もしまだ生きていたらいずれ別の実験材料にでもしてやろう程度のことは考えていそうだ。
 それならやはり俺は死を待つことを選ぶ。
 抵抗するだけ無駄。処分されるだけだ。
 生き長らえても無駄。またやつらのオモチャにされるだけだ。
 だから俺はこのまま餓死してやるつもりだ。
 やつらの手にかかって死ぬのは癪だ。やつらのオモチャにされて死ぬのも悔しい。だから餓死してやる。
 失敗作が一匹死んだところでやつらは惜しくも何ともないだろう。どうせまたどこかから別の実験台をさらってくるだけだ。
 だが、やつらに殺されるぐらいなら自ら死んだほうがずっとましだ。だから俺は死を待つのだ……。
 あるいはそれがアダモフなりの抵抗なのかもしれなかった。
 アダモフはどんどん痩せてやつれて衰弱していった。もちろん、そんなアダモフを気にかけるような者もいるはずがなかった。

 ある日、アダモフの檻にまた新たな失敗作が連れ込まれた。
 脱走を計った失敗作たちがまた何匹も処分された。アダモフはいつものことだと気にも留めなかった。
 ここから出せと威勢よく騒いでいた二匹の新入りたちも次第に静かになって行った。
「ああ、あたしたちこれからどうしたらいいんだい……。もうこんなの……いやだよ……」
 新入りの一匹が悲しそうに啼いた。
「ばか、諦めんじゃねえ! おまえがそんなだと、おれまで暗い気分になっちまう。まだ何かチャンスがあるはずだ! 絶対に諦めるな。諦めたら終わりだろ!!」
 もう一匹の新入りがそれを励ます。そして、その新入りはアダモフを見るなり言った。
「ほら、見ろ。あいつなんて……なんて憐れなんだ。諦めたらおまえもああなっちまうぞ。いいのか? いいわけないだろ、なぁメル!?」
「て、テオ…! そんなこと言うんじゃないよ。し、失礼じゃないか」
 アダモフは二匹のそんなやりとりを関心なくぼんやりと眺めていた。
 すると、女のほうの新入りがアダモフに近づいてきて声をかけた。
「あ、あの…。さっきはごめんなさいね…。うちの人、悪気があったわけじゃないんだよ。その……ちょっと気が動転してて……ごめんなさい」
「……別に。気にしてない」
 アダモフは興味がなさそうにそっぽを向いて返した。
 その様子を機嫌を損ねてしまったと勘違いしたのだろうか、メルは続けてアダモフに話しかける。
「あんた、ずいぶん辛そうだね…。その、さっきの埋め合わせってわけじゃないけど……何か助けがいるならいつでもあたしたちに声かけてよ。できることなら手を貸すからさ」
 アダモフは何も答えない。
「おい、そんなやつほっとけよ…。それよりもこれからどうするのか考えねぇと」
「あんたは黙ってな! ホントすまないね、空気の読めない亭主で…。あたしはメル。あっちはテオ。あんたは?」
 しばらく沈黙を守っていたアダモフだったが、メルがいつまでも顔を見つめ続けているので仕方なく名乗ることにした。
「…………アダモフ」
「そうかい、アダモフ。あんたはなんか他のやつらとは違う感じだねぇ。あんたなら信用できるかもしれない…」
「変わらないさ。……いや、他のやつらのほうがもっとましかもしれないぜ。だって俺は…」
「テオ、こっち来なよ! さっそくここから逃げ出す作戦を考えるよ! 3人で!!」
 それはまさか俺も入っているのかとめんどくさそうに思うアダモフだったが、どうせ死を待つまで退屈なことには違いがなかったので、その余興になんとなくつき合ってやることにするのだった。
 こうして檻の片隅の仲間が増えた。
 ただぼんやりと過ごすだけの毎日は、このメルとテオと自分でこの研究所から脱出する作戦を考えるものに変わった。
 もちろんアダモフは本気ではなかった。本当に脱出できるなどとは端から思ってなどいない。ただ相槌を打つだけだ。
 作戦会議は主にメルが発案してはテオがそれを反論し、テオが発案してはメルがそれを切り捨てるような流れだった。結局、いつまで経ってもこれと言った作戦はできなかった。
 ある日、また別の新入りの失敗作がこの檻に連れられてきた。アダモフたち以外の失敗作はこの機会を逃すものかとこぞって脱走を試み、そしてまた互いに足を引っ張り合った。
 新入りを連れてきた研究員は呆れたようにため息をつきながら、非適応薬を装填した麻酔銃を構えて数発それを撃つ。
 檻の入り口へとひしめき合う失敗作たちは次々と倒れていった。そして、その失敗作たちから狙いが逸れた流れ弾が一発。その射線上にはアダモフの姿があった。
 痩せ細り衰弱し切っていたアダモフには到底それを避けることなどできない。
「まあいいさ…。やつらに殺されるのは気に入らないが、これでようやく俺もこの苦痛から解放されるんだ……」
 否、アダモフにはそれを避けるつもりさえなかった。アダモフはそのまま死ぬつもりだった。しかし……
「アダモフ! 危ねぇ!!」
 衝撃。
 痩せて軽くなっていたアダモフの身体はいとも簡単に弾き飛ばされ、檻の角のほうに転がった。
「あ、あんた! 大丈夫かい!? アダモフも!!」
 メルが心配そうに言った。テオは平気そうな様子でそれに返す。
「あんなもん当たりゃしねえよ。それよりアダモフ! おまえは無事か!?」
 どうやら流れ弾に気がついたテオが咄嗟に体当たりをして、アダモフをその射線上から逃がしたらしい。結果として、アダモフもテオも非適応薬を受けて倒れることはなかった。
 アダモフは驚いていた。
 今まで、誰も他人のために身体を張るような者などここにはいなかった。誰もが自分が助かることだけを考えていた。
 だがテオは違った。失敗作たちにとって非適応薬は劇薬も同然、少しでもかすれば拒絶反応を起こしてすぐに死んでしまう。にもかかわらず、テオは己の身を危険に晒しながらもアダモフを救ったのだ。
「どうして……」
 アダモフは呆然とテオの姿を眺めていた。しかし、それはかつてのただぼんやりと様子を眺めていた頃のものとは意味が違っていた。
「良かった、生きてるな。当然じゃないか、おれたちは仲間だろう? 一緒にここを出ようと約束したじゃねぇかよ」
「そうだよ。あたしたち3人でここから出るんだ! 生きて! ……ね。言ったじゃないか、できることなら手を貸すってさ」
「……なぜだ?」
 アダモフは静かに呟いた。
「うん?」
「どうしてあんたたちは俺を助けるんだ? 俺なんか助けたところで何の得にもなりやしない。それにどうしてそんなに希望を失わずにいられるんだ。もし脱出できたとしてもこんな姿だ。もうまともに生活することだってできやしないのに…」
 メルとテオはきょとんとして顔を見合わせた。そして、笑いながらこう返した。
「あはははは! どうしたんだいアダモフ、頭でも打った? 今日はやけに気弱じゃないのさ。まぁ、そんなに痩せてちゃ元気もでないか! テオ、次の”餌”が来たらアダモフの分も獲ってきてやりなよ。この弱りっぷりだ。きっとなかなか競争に勝てなくて落ち込んじゃってるんだよ」
「ああ、他のやつら容赦ねぇからなぁ。任せときな。一番良いのを獲ってきてやるぜ!」
 テオは二つ返事で答えた。
「アダモフ、当然じゃないか。それとも何か理由がないと誰かを助けちゃだめだとでも言うのかい? それに脱出した後のことを今から考えたって仕方ないさ。だってまだあたしらは脱出できてないんだから。それこそ獲らぬタヌキのなんとやらだね。それは脱出してから考えようよ。でなきゃ、いつまで経っても何もできやしないよ」
「そうさ、助け合うことは大事だぜ。なんせ敵はこの研究所の科学者全員だからな。それに研究を指揮してるやつもいるだろう。そんなところに一人でぶつかっていって何ができるってんだ? 多勢に無勢。だったら、こっちも数で勝負しねぇとな。仲間は一人でも多いほうが心強い! おれたちはおまえの力が必要なんだよ!」
 衝撃を受けた。まるで世界がひっくり返ったかのようだった。

 アダモフはこれまでいつも独りで生きてきたのだ。彼にとって『仲間』などあり得ないものだった。
 とても貧しい家庭に生まれ、さらに幼い頃に両親も家も失ったアダモフは盗みで己の命をつないできた。
 当然、他人には嫌われる。お尋ね者にもなった。
 頼れるものなどいない。自分の腕だけが頼り。失敗したときが死ぬときだ。
 そして彼は失敗を犯してしまった。
 たまたま盗みに入ったところがこの研究所だった。そして運悪く研究員に見つかってしまったアダモフは拘束され、薬品を嗅がされて意識を失い、気がついたときにはもうこの檻の住人だった。
 あまりに静かだったので油断したのだ。それに表向きにはここは廃病棟。ここに人がいるなどとは思ってもみなかった。
 もう使われていない金になりそうな機械でも拾えないかと考えていた。誰もいないだろうと踏んで、ロクに確認もせずに忍びこんでしまった。迂闊だったのだ。
 目を覚ませば檻の中。
 初めはしょっ引かれたのかとも思った。しかし、そうではないことにアダモフはすぐに気がつく。
 やけに暗い室内。にもかかわらず、どういうことなのか室内の様子はよく視えた。
 室内は奇妙な臭いが充満していた。腐ったような臭い。獣の臭い。嗅いだ事のない不快な臭い。
 その臭いのひとつは自分から発されていることに気がつく。不思議に思って試しに腕の臭いでも嗅いでみようかとしたところで新たな違和感に気がつく。
「な、なんだこの手は…。お、俺は一体!?」
 慌てて己の全身を確認する。どこまでもどこまでも毛で覆われている。
 背筋を冷たいものがぞわぞわと昇ってくるような感覚。毛が逆立つ。足腰にはまるで力が入らない。そして、さらにその後ろはピーンと張ったかのように強張っている。
 ……後ろ?
 なんだ、その後ろって。それ以上後ろに何があるというのか。
 薄々予想はついた。だが、それを確かめずにはいられない。この目で確認してそんなものはなくて、さっきまで見たものも実は目の錯覚か幻覚で、すべては夢だったのだと信じたかった。
 しかしそれは叶わない。
 振り返るとそこには……先端にふさふさとした毛を生やした尾が不機嫌そうに揺れていた。
 その尾に意識を集中する。右へ動けと念じると右へ。左へと思えば左へ。それは自分の思ったように動いた。紛れもなくそれは自分自身の身体の一部だった。
 驚いて思わず立ち上がって檻の低い天井に頭をぶつけそうになった。しかし、それは絶対にあり得ない。
 なぜなら、既に彼は二本足で立ち上がることすらできない身体になってしまったからだ。その事実が虚しく宙を切って、再び床に押し付けられる前足によってこの目の前に突き付けらている。
 ああ、これは今までの罪の報いなのか――
 かつて人間だった獅子は絶望し、過去を悔い、そしてすべてを諦めてしまった。
 そんな彼を救ってくれるような仲間はいるはずもなかった。

 ……そんな仲間が今は二人もいる。生まれて初めての奇跡だった。
「俺は……助けられていいのか? 俺は仲間を頼っていいのか……?」
 思わずそう呟いていた。
「なーに言ってんだい。あたりまえじゃないの!」
「おれも、おまえなら信用できると思ってる。だからもちろんおまえもおれたちを頼ってくれていいんだぜ」
 メルもテオもそれが当然であるかのように答えた。
 獅子は生まれて初めての光を見た。この闇の中で見つけた、仄かで明るくて温かい光だった。
 光を見つけて生きる気力を取り戻した獅子は、仲間たちの助けを受け入れて少しずつ元気になっていった。
 自分のどこにこれほどの前向きな気持ちがあったのだろう。それはアダモフ自身の予想を遥かに超えて、気がついたときには地下牢にいる失敗作たちのほとんどが自分たちの仲間になっていた。これはアダモフ自身が勧誘していったものだ。
 これにはメルも驚いていた。まさかあの互いに争い合っていた失敗作たちをまとめ上げてしまうなんて、ただものではないと称賛した。
 三人寄れば文殊の知恵とは言うが、今やそれ以上の頭がここに集った。
 脱出するための作戦として様々な案が飛び交った。初めにメルの発した案が、他の一人の一言でより洗練されていき、また別の一人の声でさらに磨きを増していく。そしてとうとう作戦は完成した。
 最後にメルは確信した。
「なるほど…。いける…! これならいけるよ! きっとうまくいく!!」
 テオもそれに同意だった。
「ああ、これならきっとうまくいく。あとはチャンスを窺うだけだな」
 誰もそれを否定する者はいなかった。
 その作戦を実行するリーダーに仲間たちをまとめ上げたアダモフが選ばれるのもおかしなことではなかった。
 初めは自分なんか……と謙遜していたアダモフだったが、仲間たちに励まされ、持ち上げられていくうちに満更でもないように思うようになった。
 そして何も知らないデテンが地下牢を訪れたとき、とうとう作戦は実行されたのだった。


「俺はあんたらに教えてもらったんだ。仲間で力を合わせることがいかに大きな力を生むか…。いかにそれが大事なことかを!!」
 静まり返った研究所にアダモフの声が響き渡る。
 既にそこには我を忘れて嘆き哀しみ暴れていた者たちの姿はない。
「個々の力じゃ研究員たちには適わない。多勢に無勢だってテオが言ってたもんな。だからこっちも数で挑まなけりゃならないんだ。ばらばらじゃだめだ! 俺たちは力をひとつに合わせなければならないんだ! そうでなければ俺たちに勝利はない!!」
 誰もがその言葉を静かに、真摯に受け止めていた。
「だから……頼む。俺たちと共に戦うと誓ってついてきてくれたみんなにもう一度だけ頼みたい。どうか俺たちに力を貸してくれ。そして、力を合わせてくれないか。ばらばらじゃない、ひとつの力だ。力をひとつにするんだ!」
「アダモフ、あんた……」
「こんどは逆におれたちが教えられることになるとはね…。こいつはうっかりしてたぜ」
 仲間たちは口々にすまなかった、目が覚めたというようなことを声に出した。
 改めてそれを確認したことで解放軍は再び……いや、以前よりも増してその結束を固めたのだった。
「わかった。おれたちはもう自分勝手な真似はしないと約束する。これからはすべてアダモフの指示に従う。それでいいな、おまえら!?」
 テオが仲間たちに確認する。
 仲間たちはそろって咆えた。もちろん、その意味するところは言葉を以って語らずとも明確だった。
「テオ…。それにメル、みんなも。ありがとうな……! みんなのおかげで俺は今こうしていられるんだ。とくにメル。あんたが俺に声をかけていなかったら今ごろ俺は死を選んでいただろうよ。だから、あんたには本当に感謝している。あんたには命を救われたんだからな」
 獅子は深く頭を下げた。
「ちょ、ちょっとちょっとぉ?! な、なにさ。急にそんな……あ、あたしは別にそんな大したことなんか…。て、照れるじゃないのさ。そんな改まって礼を言われるほどのもんじゃないよ、あたしは」
「おいおい、アダモフさんよ。おれの嫁さんに向かってそいつぁ……少し妬いちまったじゃねぇかよ。そういうのは戦いが終わってからにしてくんな。じゃないとおれの士気が下がっちまうぜ。勢いが落ちちまう前に一気にカタをつけに言ってやろうぜ。敵も待ちくたびれちまうぞ」
 メルもテオも心からアダモフをリーダーとして認めていた。
 今さら誰も文句など言うはずがない。誰もがアダモフを解放軍の将として認めていた。
「わかった。だったら敢えてもう礼は言わねえよ。勝とう、この戦いに! そしてその戦果を以って俺からの礼とさせてもらう。足を止めてしまってすまなかったな。改めて……行くぞ! 責任者の血を以ってこの愚かな研究を終わらせてやろう!!」
「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」
 もう何度目かわからない咆哮。
 解放軍の心は既にひとつになっていた。
 目的を再確認した解放軍はエレベータ横の階段を勢いよく駆け上がって行った。
 研究所一階へ。
 エイドの研究室前を通りかかる。
 もう何も言わないエイドの頭や、頭のないアマンダの身体がそこには転がっている。
 一行はそこから二人の遺品であるライフルや散らばった資料を入手した。そこにはこの研究所の見取り図もあった。
 それによるとアダモフの予想通り責任者はここより上階、3階の管理区画にいることがわかった。
 ライフルはまだ両手が変化しておらず自由になっている仲間に持たせることにした。
 さらに八神が落としていったと思われる非適応薬装填済みの麻酔銃も手に入れた。非適応薬のことはかつて処分されていった失敗作たちを観察していたアダモフがよく知っている。
 デテンが持ってきていた麻酔銃や予備の薬も回収して持ち運んでいたので非適応薬のことはすぐにわかった。
 何かの役に立つかもしれないし、こちらが確保することで敵の武器を減らせることも考えて、これも持っていくことにしたのだった。
 その場に八神の姿はなかった。跡形もなく喰らい尽くされてしまったのか、それとも……。
 研究所内を駆け抜けさらに進む。
 壁は抉られ、血は飛び散り、研究者の亡骸はあちこちに転がっている。やはり先客がいるのは確からしい。
 研究所入口に辿り着く。
 扉は壊され開かれている。今なら難なくここから逃げ出すことができるだろう。
 どれだけぶりの外の光だろう。いつの間にか暮れていた陽は再び顔を出し始め、研究所の外からは朝陽が顔を覗かせている。
「逃げたい者がいるなら好きにしてもらっていい。俺はそれを止めないし咎めたりもしない」
 アダモフは仲間たちに再確認するが、もはや今すぐ逃げ出して自分だけ助かろうと思うものはいなかった。
 仲間たちは口々に言った。
 自分は最後まで共に戦うと。やつらへの復讐を果たして気持ちよく共に脱出しようと。
 もしかしたらまだ元の姿に戻れる可能性があるかもしれないと信じている者もいた。憎き研究者にひと泡吹かせてやらなければ気が済まない者もいた。そして、将として慕うアダモフの力になりたくて協力を願う者もいた。
 意図は様々だったが、誰もが最後まで共に戦うことを誓った。
 誰もがアダモフを信頼し、そして誰もが勝利を確信していた。
「後悔するなよ。わかった、行くぞ! 目的は3階、管理区画の研究責――」
 そのときアダモフの身体はぐらりと傾いた。
 言葉は遮られ、獅子の身体は乱暴に横倒しになる。
 大柄なその体躯が打ち倒された音が研究所内に……いや、あるいは仲間たちの心に反響する。
 あまりにも突然のことで何が起こったのかわからなかった。
 目の前には驚いた表情のままで、まるでそのまま時間が止まってしまったかのようなアダモフが横たわっている。その身体には一本の麻酔銃から放たれた注射器が刺さっている。
 そこで初めて気がついたのだ。
 アダモフは死んだ。
 あっけなく死んだ。
 殺されてしまった!
 しかし一体誰の手によって?
 混乱する仲間たちに追い打ちをかけるかのように、拡声器を通したそれは無慈悲にも言い放たれたのだ。
『我々は制圧部隊だ! 無駄な抵抗は止めて、直ちに投降せよ!!』


To be continued...

神への冒涜8
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