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魔法戦争65

最終更新:2018年03月15日 22:11

jelly

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Chapter65「フレイヤ遠征2:俺があなたで私がおまえで」



 俺と私はもともと別の存在で、何かの弾みに精神がひとつに合体してしまったのではないか。

 私にはひとつ思い当たることがあった。
 こうなる前の記憶を思い出してみると、ファフニールに裏切られて身体が黄金に変わっていく恐怖感と、そしてそれを自ら魔法で治療した覚えがある。
 そのときに何かやむを得ない決断をしたような気がする。

 そうだ。身体の意識が戻らないから、私が代わりに身体を操作することにした。
 ということは身体側の意識というものが存在したことになる。それがフリード?
 つまり俺はもともとはフレイヤだったということになる。
 しかしこれまでフリードとして生きてきた記憶も確かにあるので奇妙なものだ。

 やはり何かおかしいが、今はそんなことを気にしている猶予はない。
 私たちが逃げ出したことはやがてトロウの知るところになる。だから拠点に戻ったらすぐに仲間と相談して次の対策を立てる必要がある。

「とにかく槍を追うのは難しいけど、ミストのいる方向はわかったぞ。これを手がかりにあいつを捜してやることにしましょう」

 ミストは城内の方向にいる。敵に見つかる危険性はあるが、それはミストにも言えること。発見されて殺されてしまう前にあの子と合流し、すぐにでもここを脱出しないと。

「フレイヤ様、お待ちを。城内を捜索するにはこのままでは目立ちすぎます。とくにわたしたちが連れている天馬は目を引くでしょう」
「レギンの言うとおりだ。だからといって天馬(グラーネ)をこのままここに置いていくのは危険だし、カムフラージュするにしてもまた黄金像に変えるのはさすがにかわいそうだと思う。そこでだ。フレイヤ様、私にいい考えがあります」

 王城の裏手にはフォルクバーグという別宮がある。
 そこはヴァルキュリアとエインヘリアル、宮廷魔道士たちの拠点と王城兵の兵舎として利用されており、最上階にはフレイヤの私室もある。
 フォルクバーグには天馬の厩舎が隣接しているので、ヒルデはそこに彼女たちの天馬グラーネとグリームニルを隠そうと提案した。
 この城にはヴァルキュリア以外にも天馬を駆る兵士や魔道士が一定数いる。そういった者たちの天馬が厩舎に並んでいるので、二頭ぐらい天馬が増えていても誰も気付きはしないだろう。
 木を隠すなら森の中。天馬を隠すなら天馬の中というわけだ。

 フォルクバーグへは城内を抜けて裏口を通る他にも、この中庭の回廊を横切って城の外側から回っていくことができる。城内を通らないなら幾分かは敵の目につく可能性を減らすことができるはずだ。

 そしてヒルデはもうひとつ提案した。
 城内ではトロウの支配下にあっても執事やメイドたちは普段通りのままの生活を送っている。

「人を隠すなら人の中。フレイヤ様のお得意の魔法で使用人に変装すれば、多少はやつらの目を欺くこともできるのではないかと」

 たしかにその通りだ。幻術が通用しない地竜や、それを見破る術を持っている魔道士にはすぐにばれてしまうかもしれない。
 しかし今のまま堂々と鎧を鳴らしながら闊歩するよりは遥かにマシだろう。
 少なくとも、トロウとファフニールにだけ注意すればいいだけの話になる。

「なるほど。わかったわ、私に任せろ」

 姿を変える魔法に比べれば、ただ服装を別のものに見せかけるだけの魔法なんて簡単なものだ。呪文の詠唱も必要ない。
 ひとたび私が指を鳴らすだけで、私たち三人は一瞬にしてメイド姿に変わった。

「さすがです、フレイヤ様」
「おお……すごい。これ、本当に自分がやったのか」
「え? あの、フレイヤ様?」

 魔法を使うことなんて私には慣れたこと、いつもやっていることではないか。
 それなのになぜだろう。ただ服装を変えるだけの簡単な魔法なのに、俺はそれに強い感動を覚えていた。

 指を鳴らすだけでどんな服装でも自由自在。メイド服だろうが、ナースさんだろうが、いやいやもっときわどいあんなのやこんなのまで、誰にだって着せることができるとは。魔法ってなんて素晴らしいんだ!

 改めてヒルデとレギンの姿を見る。
 モノトーン調でかつロングスカートのエプロンドレス。主張しすぎない程度に留まったフリルの装飾。頭上には同様にフリルのついたホワイトブリム。
 いわゆるヴィクトリアンメイドというやつだ。

 俺に言わせればヴィクトリアンこそが至高だ。クラシカルはまだ許せるが、ゴスロリミニスカメイドなんて論外である。
 そんな短いエプロンが本当に意味を為すのか?
 メイドに主張の強すぎる過度な装飾が本当に必要か?
 否ッ、メイドとは仕えるご主人様あってこそのメイド!
 過度な装飾は仕えるべき主をないがしろにしている。一歩引いてあくまでご主人様の後ろに控えるその従者としての慎ましさと奥ゆかしさこそがメイドがメイドたる必要不可欠な要素にして魅力でもあり、そしてそれでありながらどんな家事もそつなくこなすというその部分もまたメイドには絶対に欠かせないものだ。そういった要素があるからこそメイドは尊いのであり、それらを欠いたメイドはただのコスプレに過ぎないのだ。
 家事のこなせないメイドなどもはやメイドではない。メイドとコスプレを混同してもらっては困る。
 とくにフレンチとかケモ耳メイド、おまえらメイドを舐めてるだろ。
 戦うメイドさんにゾンビメイド? 属性を盛ればいいってもんじゃねえんだよ。
 まあ「ご主人様を守るために戦う」って条件さえ満たしているのなら、戦うメイドさんは認める。というか、ちょっぴり好きだけどな。

「その点バルハラ城のメイドは完璧だな。満点よね。いや待て、満点をつける前に実際に仕事をしているところを見ないことにはまだなんとも……」
「あ、あの。フレイヤ様?」
「ああそうか。ヒルデやレギンは私の従者でもあるからあとは家事さえできれば要件を満たすけど、所詮俺は雇われ。誰かに仕えてるわけじゃないから、メイド姿になったところで自分は結局ただのコスプレでしかない。ううむ、やはり俺はメイド服を着たい派ではなくて誰かに着せたい派……」
「な、なあレギン。さっきからフレイヤ様おかしくないか。ブツブツ一人で変なこと言ってるし」
「変だろうが何だろうがフレイヤ様はフレイヤ様だ。わたしはフレイヤ様の槍。だから黙って従うのみ。我が主の言うことに間違いはない」
「はぁ。おまえに聞いた私が馬鹿だったよ」

 なぜだろう。メイドなんて城で毎日のように見ていたはずなのに、メイド姿のヒルデやレギンを見ていると、何か私の心に熱く込み上げてくるものがある。
 なぜか胸が高鳴り、身体が火照り……はっ。この感覚はなに? とくに下半身が熱い。魔力とはまた違う何か別のエネルギーが集まっていくこの感じは一体。

 まさかそんな。私は女なのに! だが待てよ、よく考えたら俺は男じゃないか。
 ああ、よくわからない涙が出てきた。この感情はなんなの。

「だめだこりゃ。レギンは頭が堅すぎるし、フレイヤ様も壊れている。こうなったら私がなんとかしないと……。さあ、ほら行きますよ」

 ヒルデに手を引かれて私たちは別宮フォルクバーグへ向かった。幸い道中で敵に発見されることもなく、問題なく厩舎に天馬を隠すことができた。

「さてフレイヤ様。もう一度グングニルを」
「どうしてなの? 私はいつから俺になったの。そもそも私は女だったはずじゃない。それなのにこの身体は……嫌。もう嫌……」
「フレイヤ様しっかり! はぁ。どんなフレイヤ様でも好きな自信があったのに、今のフレイヤ様だけはどうしても好きになれない。痛々しくて見ていられない」

 ヒルデはなんとかして私をなだめようとしてくれているが、私はそれどころではなかった。彼女は私をフレイヤと呼んでくれるが俺はフリードであり、しかしフレイヤとしての記憶もあり、もう自分が誰なのか完全にわからなくなってしまった。

 自分の中の「俺」はまあ別にいいじゃないかと楽観的な態度で、その一方で頭の中のどこかで「私」はそんな俺の態度に腹を立てているのも否定できない。
 やはりフリードとフレイヤが混ざってしまったのは間違いないようだ。しかし記憶が混ざり合ったことで、もともと自分がどっちだったのか完全にわからなくなってしまった。もう自分が俺なのか私なのかもわからない。

「ああ、俺これからどうしたらいいのかしら。これじゃあもう、フリードとしてもフレイヤとしても死んだようなもんだ。私はそのどちらでもない」
「フレイヤ様……いやフリードの意識が戻ったのか? どっちで呼べばいいんだ。ぐあああっ、私にもよくわからん! 誰かこれを治してくれるやつはいないのか」

 そのときフォルクバーグの扉が開いて中から誰かが姿を現した。
 それは今日知り合ったばかりだが、それと同時にずいぶん昔からよく知っているような懐かしさもある顔。

「スキルニル……?」

 彼はこちらを見るなり驚いた顔をした。

「なっ、なんだおまえは! 男のくせしてメイド服だなんて……。まあオレは他人の趣味にケチをつけるほど野暮じゃないけど、そんな筋肉質な体型じゃ似合うもんも似合わないと思うぜ」
「スキルニル! 良かった、無事だったのか。王の間から逃げ出すときに先導してくれたのは助かった。だが途中で見失っちまって、それから姿が見えなかったんでやられちまったのかと心配してたんだ」
「え? もしかしておまえ……フリードか! そうか、変身の魔法を解いたのか。でもなんでまたそんな格好を。やっぱりおまえ女になりたいのか」
「それは誤解だ。私はもともと女よ! あっ、いや俺は男なんだけど私は……じゃなくって俺は本当はフレイヤ……ぬがああああああああ!!!!」
「えーと。大丈夫か、おまえ」
「あまり大丈夫じゃない。今のは忘れてほしい」
「わかってるよ。オレの心の中だけに閉まっておくから」
「違う! そうじゃない! その記憶は抹消してくれ!」
「安心しろって。誰にも言わない。誰にだって内緒にしておきたい秘密のひとつやふたつぐらいあるもんだよな」
「いや、それが誤解なんだってば!」

 なんだか泣きたい。いや確かに私は生まれたときから女のはずなんだけど、この身体は間違いなく男だし、そういえば俺は昔から男だったような気もするし。

「スキルニル殿。実は我々はミストとはぐれてしまったのだが、彼女の姿を見かけなかっただろうか? 先程から捜しているんだが」

 冷静な様子でさらっとレギンがスキルニルにそう訊ねた。

「レギン。それにヒルデも。なんだっておまえたちまでそんな格好を……。だが無事でよかった。実はオレ、これからおまえたちを助けに行くつもりだったんだ」
「助けに?」
「そうだ。まずそちらの質問に答えるとミストは無事だ。別宮の中にいる。あいつがおまえたちの危機をオレに知らせてくれたんだ」
「そうだったのか。しかしなぜフォルクバーグに?」
「ここには陛下の船がある。兵士たちが管理しているそうだが、おまえたちの天馬がやられたの見て、脱出するためにその船を使おうとミストは考えたらしい」
「そうか、スキーズブラズニル号! しかしミストはよくそれがここにあると知っていたな。わたしたちにも知らされていなかったのだが」
「とにかくミストが中で待っている。まずはおまえたちの無事を知らせてやろう」

 それから私たちはスキルニルに促されてフォルクバーグの中へ。
 この別宮は四方に四つの塔がありそれぞれがヴァルキュリア、エインヘリアル、宮廷魔道士、王宮兵士の区画として分けられている。
 ヴァルキュリアの塔への扉を開くと、泣きそうな表情をしたミストがさっそく飛び出してきた。

「よかった、みんな無事で……。竜に殺されちゃうかと思った」

 そしてそのままミストは俺の胸へと抱きついた。

「あ~ん、フリード。あたし怖かったよぉ。慰めて」
「お、おう」
「あれっ、そういえばお姉様役はもうやめちゃったんだ。でもなんでメイド服?」
「まあその、いろいろあって」
「ふーん。でも似合ってると思うよ。意外とかわいいじゃん」
「そ、そうか」
「……え、そんだけ? なーんだ。もっと恥ずかしがって真っ赤になるかと思ったのに。つまんないの」

 たしかにフリードだったらそういう反応を示していたのかもしれない。しかし、今の俺は私でもある。もはやそんな些細なことを気にするような次元などではなくて……あれ? でもさっきスキルニルと話してたときはあんなに……ええい、もうわけがわからない。

「それでここにお父様の船があるんだって? よく知ってたわね」
「えっ……知ってたわね??? それにお父様??? フリードなんか変」
「私だってここにあるなんて知らなかったのに、どうしてそれを知ってるの」
「うーん。フリードがおかしくなっちゃった。お姉様がずっと憑依してたからその副作用? ま、いっか。ええっとね、船のことなんだけど」

 ミストはファフニールの攻撃を受けて助けを呼ぶために中庭から離れたときに、黒い服を着た男に遭遇したらしい。いや黒い服って、執事の服も黒いし、兵士の制服にも黒い色は使われているし、それだけではよくわからない。さすがにトロウや敵側の誰かということはないだろうけど。
 そしてその男がご丁寧にも船のことを教えてくれたのだという。

「出来過ぎた話だな。もしかしたら罠という可能性も……。でもそういえばスキーズブラズニルに乗せてもらうときは、よく別宮の裏手側から乗り込んでいたわね」
「兵舎の奥から地下ドックに入れるんだって。大樹の覆い茂った葉の内側にあたる空間をそう呼んでいるらしいよ」

 このバルハラ城は大樹の上にある。その下には四方八方に伸びる大樹の枝と枝の間の空間が存在する。なるほど、たしかにものを隠すのにはもってこいの場所だ。

「つまり兵舎を突破すれば船は俺たちのものってわけだな」
「そういうこと。それに船を奪っちゃえば、逃げるときに兵士や魔道士たちがあとを追って来れなくなるでしょ」
「なるほど」

 長年この城に仕えてくれている兵士の中には私にとって顔見知りや親しい者も少なからずいる。そんな彼らに攻撃をしかけると考えると少し心が痛むような気もしたのだが……。
 まあ別にいいか。だって今はフリードの顔をしているからな。
 それにどうせ兵士たちもトロウに操られてて正気じゃないだろう、たぶん。

 兵舎はヴァルキュリアの塔のちょうど対角線上に入口が見えている。
 操られていたとしても所詮はただの兵士。竜やトロウのような化け物級のやつらに比べれば全然大したことはないはずだ。この戦いは勝てる。

「よし。だったら早速、兵士たちを蹴散らして船を奪うぞ。正面突破だ」

 俺はグングニルと刀剣フロッティを両手に駆け出すと、兵舎への扉を蹴破って道場破りよろしく高らかに宣言した。

「頼もーっ! 突然だが看板の代わりにおまえらの船、いただきに来たぜ」

 兵舎というからには、兵士がうじゃうじゃいるんだろうと身構えていた。
 しかし実際に踏み込んでみるとどうだ。そこは全くのもぬけのカラで人っ子ひとりいないではないか。正直言って肩透かしを食らったような気分だった。

「なんだよ、誰もいないじゃないか」
「あれー。おっかしいなぁ。出払ってるにしても、完全に無人ってことはないはずなんだけど。いつもは非番の兵士が掃除とかしてるんだけどなぁ。それに船が隠してあるなら、なおさら誰かが残って見張っておかなくっちゃ」
「やれやれ、大丈夫かこの国。だが今は都合がいい。誰もいないのなら、この隙に船をいただいちまうだけだぜ」

 俺たちはそのまま無人の兵舎を進み居住スペースを通り抜けると、やがて兵舎の奥の広い空間にたどり着いた。壁には使い古された練習用の武器が並び、中央には藁で作った人間や竜を模した的が設置されている。どうやらここは訓練場のような場所らしい。
 床には破損した武器の破片や木くず、それから的が壊れて撒き散らされたのであろう藁くずなどが散乱している。

「ずいぶん散らかってるな。ここの兵士たちはものを片付けられないのかしら。お父様に言いつけてやるわ」
「あっ、ちょっと待って。フリード、あそこの床。なんか変じゃない?」

 ミストが指差す先には、藁くずに埋もれてわかりにくいが切れ目のある床があった。これはもしかしてと藁くずを取り払ってみると、床面に隠し扉を発見した。
 隠し扉を持ち上げてみると、地下へと続く階段がその先に伸びている。

「あっ、これは! すごいじゃないミスト。お手柄よ」
「えへへ。これがあたしの実力ってね。もっと褒めて褒めて」

 どうやらこの先がスキーズブラズニルを隠した地下ドックらしい。これで脱出の目処は立った。俺は船の動かし方についてはわからなかったが、なぜか心のどこかで大丈夫だろうという謎の自信があった。心配はいらない。きっとヒルディスヴィーニとそれほど違いはないはず。あれなら私は操縦しなれている。だからきっとこの船も動かせるはずだ。

「それじゃあ私が船を取りに行きます。あなたたちは天馬を連れてこないといけないから一旦厩舎へ戻りなさい。私が船を上へまわすから、そこで合流しましょう」

 ヴァルキュリアたちに指示を送りスキルニルを連れて地下への階段を降りようとすると、そのとき後ろから声が聞こえた。私たちの誰のものとも違う声が。

「キシシシ! やっぱりな。おまえら、絶対にこの船を奪いに来ると思ったゾ」

 振り返ると兵舎の居住区と訓練場を繋ぐ扉のところに小さな竜が立っている。トロウの作戦会議の場で見かけた、あのちびっこい赤い竜だ。ファフニールのような身体の大きな竜とは違って、赤い竜の体格は人間一人とさほど変わらない。だから兵舎の中へも問題なく入ってこれたのだろう。

「なんだおまえは。トロウの手下にはこんなチビ竜もいるのか。私はおまえなんか怖くもなんともない。痛い目を見たくなければそこをどけ」

 ヒルデが槍を突きつけて牽制すると、そのときチビ竜の目が妖しく光った。
 その瞬間ヒルデの槍が発火し、あっという間に灰になってしまった。

「げっ! な、なんだこいつ」
「オレは第三竜将イフリート! トロウ様に選ばれた言わばエリートなんだゾ。どうだ恐れ入ったか」
「竜将! こいつが!?」
「知ってるぞ。魔法を使えない人間は武器に頼る。そして武器がなければ無力だ。おまえたちヴァルキュリアも勇者フリードもスキルニルも! 誰ひとりとして魔法が使えないことはとっくにトロウ様が突き止めている」

 そして続け様にレギンの風槍も俺の刀剣フロッティも一瞬にして燃え上がり灰と化してしまった。

「くっ、やってくれる。だが俺にはまだグングニルがある」

 魔槍グングニルは特殊な槍であるからか、イフリートの発火魔法を受けても燃え尽きることはなかった。

「槍の扱いには慣れていないが、これは必中の投擲槍。これさえあれば、おまえの心臓を一撃で貫くことだってできる」
「そうなのか。じゃあ、そんな物騒なものはこうしてやる!」

 イフリートは炎の息を吐いた。
 だが俺は竜のブレスはすでに見切っている。その軌跡は単調でいつも直線的だ。だからこうして左右に身をかわせば簡単に……。

「なにっ!?」

 しかしイフリートの炎は蛇のようにうねり、回避したはずの俺のほうへと曲がってくるではないか。慌てて飛び退き距離を取ると、またしても炎は不自然に軌跡を変えてこちらを追ってくる。
 とうとう追い付いた炎はグングニルの槍を呑み込んだ。いくら燃やされてもグングニルは灰になることはなかったが、さすがに炎に包まれていては熱くて持っていることはできず、ついに俺は槍を落としてしまった。

「くそっ、なんだこの炎」
「キシシシ! オレの炎は特別でね。その炎は絶対に消えない。絶対にあたる槍だか知らないけど、持てなければ使えないんだろ」
「悔しいがその通りだ……」
「さあ、おまえたちの武器を奪ってやったゾ。どうやってオレと戦うつもりかな? それとも降参するか? 素直に降参するなら苦しませずに一瞬で殺してやるゾ」

 イフリートはにやにやと勝ち誇った笑みを見せている。
 たしかに武器がなければ俺は無力だ。だがどうやら敵はひとつだけ突き止め損ねていることがあるようだ。
 なぜなら俺はフリードだけじゃない。フレイヤでもあるのだから。私なら魔法を使って戦うことができる。あのチビ竜を石に変えることだってできる。

 今、イフリートはこちらが手出しできないと思って油断している。その隙をついてやっつけてやる。こんなやつに構っている暇などないのだから。

「どうやら俺の負けのようだ。それは素直に認めるとしよう」
「ありゃ。やけに潔いんだなー。じゃあ……おまえから死ぬ?」

 きょとんとした顔をしているイフリートを眺めながら、私は脳内で呪文を詠唱する。詠唱の効果で俺の身体に魔力がみなぎっていくのが今は理解できる。

「だけど私はまだ負けを認めていない! 覚悟しなさい、イフリート!!」

 そして俺は(私は)両手を突き出すと、みなぎる魔力を一気に解き放った。
 さあ、反撃開始だ。


Chapter65 END

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