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竜の涙9

最終更新:2012年04月23日 04:27

jelly

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Chapter9「再び狙われたティル」


「で、出た! バケモノだ!!」
 スノゥグランド村から雪の降りしきる山道を抜けて歩くこと数十分。アイスグランド村には悲鳴が響き渡っていた。
 村の住民たちは逃げ惑い、門番の獣たちが牙を剥く。
「ハローハロー。感度良好、雪山のみなさんこんにちは。ぼくと仲良くしましょう」
 タネリミットは頭上からまっすぐと空に向かって生えた手を振りながら、憎たらしい笑みを浮かべたリミットフェイスを正面に、ふらりふらりとアイスグランドの村ににじり寄る。
 ウィーと同い年か、それより幼いかぐらいの仔竜が建物の陰から怯えた目でタネリミを見つめている。
「あらまぁ、かわい仔ちゃんですね。食べちゃいたいぐらいです。味付けはお醤油派ですか、それともお塩がいいですか」
「う、うわあああっ」
 仔竜は何度も雪に足を取られながら、必死な形相で逃げ出していった。
「照れ屋さんですね。ぼくは照り焼きよりも煮るほうが好きです。……あ、そうだ。食べたことなかったんでした」
 門番が威嚇の唸り声を上げる。しかしタネリミは全く気にすることもなく、さらに村へと身体を近づける。
 タネはかせは、腕を組みながらそれを感心したように見つめていた。
「いやぁ、さすがタネリミ君なのだ。少し見ない間にこんなに有名になっていたなんて。生みの親として私は嬉しいぞ!」
「喜んでる場合か! ややこしいことになるから、おまえらは引っ込んでろ」
 リクが力ずくでタネリミを引き止める。
 引き倒されたタネリミは、ビール瓶のようにごろりと雪面を転がった。
「あぁん、ひどぅいです。まだ親父にもごろーんされたことないのに」
 タネリミはそのままごろごろと雪道を転がり落ちて行った。
「ああっ、待つのだタネリミ君! また私を一人にするつもりかね!」
 タネはかせが慌ててその後を追う。
 崖からタネリミが転がり落ちたのが視界の端に見えたような気がしたが、あいつならたぶん問題ないだろう。
「おお…。見ろ、バケモノをやっつけたぞ!」
「それも二匹もだ! なんて勇敢なんだ」
 その様子を見ていた村民たちがリクを取り囲んだ。
「あんたのおかげで助かったよ」
「うちの子を助けてくださってありがとうございます」
「ああ、長生きはするものじゃ…。ありがたやありがたや」
 突然のことに困惑するリク。
「え、いや…あの。俺は別に何も…」
 村民たちは口をそろえてリクを『バケモノを退けた英雄』だと称賛した。
 リクの頭上を飛ぶメタメタはそっと耳打ちする。
「まぁいいじゃねえか。おかげで簡単に話が聞けそうだぞ。ほら」
 メタメタの指すほうを見ると、周囲に集まっていた村民たちが左右に開けて、その間を年老いたグランディア竜がおもむろに歩いてくる。
 老竜はアイスグランドの村長を名乗った。
「あなた方のおかげで我々の村は救われました。どうかこのお礼をさせていただきたい」
 そんな大げさなと遠慮するリクだったが、好意はありがたく受けるものだとウクツに諭され、一行は村長からの歓待を受けることにしたのだった。

 アイスグランド村はスノゥグランド村と対になるグランディア竜の集落だ。
 スノゥグランドと同様にレンガ造りで高床の建物が立ち並んでいる。
 こちらの村のほうが少し規模が大きいらしく、村の中央には大きな氷の張った湖があり、そこで滑って遊ぶ子どもらや釣りに勤しむ者の姿も見える。
 林に囲まれた起伏の激しいスノゥグランドに対して、こちらは山の開けた空間の平らな場所にあり、崖の先からは遠くの島や水平線を拝むことができた。
 村長に連れられて村の公民館へと通される。
 リクたちはバケモノから村を救ってくれたお礼として料理をもてなされることになった。卓上には山の幸や湖で獲れた魚を用いて作られた料理が並べられる。
「これは我々の一族の伝統的な料理です。お口に合えばよろしいのですが」
「いやいや、これはどうも。ここまで歓迎していただけるほど大したことはしていない気もしますので恐縮ですが、感謝しますよ」
「いえいえ、村を救ってくださったのだから、これぐらいは当然です。この先何年もあのバケモノに苦しめられることを思えば、我々は感謝してもしきれないほどですぞ」
 村長とウクツは互いに遠慮し合いながらも、それぞれ感謝の言葉を述べた。
「おおっ、これは珍味だぞ! こんなにたくさんくれるなんて良いやつだな! 早く食おうぜ」
 もう待ちきれないという様子で、さっそくメタメタは吸い込むかのようにそれを食べ始めていた。
「おまえはもう少し遠慮しろよ」
「何言ってんだ。せっかく料理を出してもらったんだ。全部食うのが礼儀だろ。それに最大限の感謝の気持ちの現れなんだぞ」
 本当に一人で全部食べてしまいそうな勢いだ。メタメタに促される形で他の仲間たちも料理を食べ始めた。
 ウクツと村長だけはまだ話を続けている。
 村の英雄騒ぎで忘れていたが、そもそもこの村へ来たのはティルのことを聞くためだ。ウクツが事情を説明した。
「なるほど、そうでしたか。ふむ、たしかに我々グランディア竜の子どもによく似ておりますな」
 村長は口いっぱいに料理を詰め込んでいるティルを微笑ましそうに眺めてから言った。
「しかし……残念ですが、わしは200年程この村で長をやっておりますが、あのような蒼い鱗を持つ子どもは見たことがありませんな」
「ほう…。ティルは珍しいのですか」
「グランディア竜は赤や黒、褐色などの大地に近い色の鱗を持って生まれてきます。それゆえに我々種族はグランディア(大地の加護を受けた者)と呼ばれているのですが……そうですな。むしろ、ティル君は空の加護を受けているようにも見えますな。クラウディアとでも呼びますかな」
 それを聞いていたリクが村長に問う。
「クラウディア……空の加護を受けた者か! たしかに、ナープの話によるとティルは周りに似た姿の竜が全くいない場所に倒れていたらしい。ということは、ティルは空からやって来たんでしょうか? 空にもグランディアの村はありますか!?」
「いや、さすがにそれはわしの想像、冗談ですがね。少なくともこの200年程ではこの村では蒼いグランディアは見たことがないということです。わしらは見ての通り翼を持ちません。ですから、おそらく空に棲むグランディアはいないと思います」
「そうですか…」
 手掛かりがつかめるかと思ったリクは、期待が外れたことにがっかりした。
「ふむ……。そうだ、わしの息子にも聞いてみるとしましょうか」
「息子さん、ですか?」
「うむ。隣のスノゥグランドの村で長をやっておる。バケモノ問題のことでちょうどわしの村に呼んでいたんです」
 どうやらこの老竜はスノゥグランドの村長の父親、つまりウィーの祖父にあたるらしい。
 たしかに老竜は少しくすんではいたが、ウィーと同様の赤い鱗を持っていた。
 老竜に呼ばれて、また別の赤い竜が姿を現す。ウィーの父親、スノゥグランドの村長だ。
「私にご用ですって?」
「ああ、ノヴェルよ。実はだな、この者たちと共にいるあの蒼い仔竜のことなんだが…」
 老竜はティルのことを説明した。
 スノゥグランドの村長はそれを黙って聞いていたが、老竜と同じようにティルをしばらく眺めたあと、老竜と同じように首を横に振った。
「申し訳ありませんが、私の村でもそのような蒼い竜は見たことがありません。お力になれなくて申し話ない」
 どうやら、ティルはどちらの村の住民というわけでもなさそうだった。
 他にグランディアの集落はないのかと聞いてみたがこの山には他の村はなく、彼らの先祖や他の地へと別れて行った一族からも蒼い鱗のグランディアの話は聞かされたことがないという。
 村の医者を呼んでティルを検査してもらったところ、外見はよく似ているが遺伝的にはずいぶん離れていて、突然変異で蒼くなったというわけでもないようだった。

「ティルはグランディア竜じゃないということか…」
 気を落としながらスノゥグランド村へと引き返したリクたちは、温泉宿の一室に集まって今後のことを話し合っていた。まだ温泉にいたウィザやウィーも入ってきて会話に加わった。
「まぁ、グランディアじゃなかったとわかっただけでも収穫じゃないか」
 ウィルオンはそんなリクをフォローする。
「そうなのだ。ウィルオン君なんて空から降ってきたとわかっているにも関わらず、未だに正体不明なのだ。わけがわからないやつなのだ。でも元気に生きてるんだから、別にティル君の正体だってもうどうでもいいじゃないか」
「わけがわからない生き物のおまえが言うなよ。それ、フォローになってないし」
「では、ぼくがティルのお母さんになってあげます。お父さんでもいいです。妹でもいいです。ぼくは妹が欲しいです」
 タネリミもわけのわからないフォローをしている。
「なぁウィザ、おまえ魔法使いなんだろ。魔法でなんとかならないのか。過去に行ってティルがどこから来たのかを調べるとか、なんか予知みたいなのでさ」
 ウィーがそう提案するが、
「ボクはそんなすごい魔法は使えないし、たぶん今の魔法じゃ無理だと思う。失われたかつての第3世界の魔法だったらそんなすごいこともできたかもしれないけどね」
 と答えた。
「過去だったら私のペンシルロケットがあるだろう」
 とタネはかせが提案すれば、誰もがそれは危険だからやめておけと釘を刺した。
「そんなことより腹へったからウィザ焼いて食おう。リシェでもいいけど」
「「やめて!」」
 結局いい案は出なかった。
「どうしたもんかな…」
 一方、当のティルは既に寝息を立てていた。
「なぁ、ティル。おまえは一体何者なんだ?」
 その寝顔に向かってリクは静かに声をかけるのだった。


 ティルがグランディアではないとわかった以上、もうこの山に用はない。
 次にどこを当たればいいのかはわからなかったが、一行はとりあえず一旦山を降りようということでウィーに見送られて下山を開始し、ステイブルへの道程を辿っていた。これにはウィザも同行した。
「どうしたらいいんだろうな。また振り出しに戻っちまった」
「ボクの記憶が戻れば一発なのにね」
「それもそうだ。ティル、記憶は?」
「ううん、全然思い出せないの」
 誰もティルを見たことがない、知らない、わからないと言う。
 本当にティルとは一体何者なんだろうか。
「なぁ、なんでリクはそんなにティルの親を捜すのに一生懸命になるんだ?」
「そういえばそうだな。ナープは自分の親がいなくなってしまったから、自分を重ねてたって言ってたけど」
 リシェやウィルオンが訊いた。
「ああ…。俺も似たようなもんなんだ。前にも話したけど、俺の親父は天竜って仕事をしてていつも家にいない。お袋は俺がまだ小さかった頃に死んじまったんだ。俺にはじいちゃんがいるけど、ティルは一人ぼっちだろ? まだ小さいのに可哀想じゃないか。俺はよく知ってるんだ、一人の淋しさを。ティルにはまだ親が必要な年頃だと思う」
「そうだったのか」
 リクもまたティルに過去の自分を重ねていたのだ。
 明るく振る舞って見せてはいても、心の中ではいつもどこかに淋しさを抱えていた。
 かつてのリクがわざと馬鹿らしげに振る舞っていたのも、その淋しさを誤魔化したかったという思いがあったからだ。
 もしかすると、ティルも同じように感じているのかもしれない。
「うーん、でも不思議だよね。誰もティルのことを知らないなんて。ティルってそんなに珍しいのかな」
 ウィザがティルを見つめながら言った。
「ええ、とても貴重な存在です。おまえたちはティルの本当の価値をわかっていない!」
 すると、頭上から声が降ってきた。
 忘れもしないあの声だ。
「な、なんだ!?」
 驚いてリシェが見上げると、そこには巨大な蒼竜の姿があった。かつてティルをさらい、水門の城で襲いかかって来たあの原種竜ラルガだ。
「おまえは! たしか海に落ちたはずじゃ…!?」
「くっくっく……甘く見てもらっては困りますね。私はあの程度ではやられませんよ」
「懲りもせずまた現れて…。一体何の用だ!?」
「言わなくてもわかっているんでしょう? さぁ、今度こそティルを渡してもらいましょうか!!」
 蒼竜が念じると雪の塊がいくつも宙に浮かび、それは雨のように勢いよく降り注いだ。
「そうはいくか!」
 ウィザの『ファイア』とウィルオンの吐く炎が降り注ぐ雪を溶かす。
「ではこれならどうです!」
 急に空が曇ると、辺り一面を激しい吹雪が襲う。
「天候を変えた!? こいつの魔法、ただものじゃないよ!」
 吹雪が相手では、ウィザやウィルオンの炎では太刀打ちできない。激しく吹き付ける雪がリクたちの視界を奪う。
「ここは私に任せるのだ! 困ったときのタネはかせの法則……行け、タネリミ君!」
「らじゃーですマスター。食らえ! 必殺『リミットカウント』!」
 タネリミが叫ぶと身体が眩く発光し始めた。
「このカウントが0になったとき、恐ろしいことが起こる!」
「な、なんですって!? まさかそれは封じられたはずの禁断の魔法、死の宣告……!!」
「ふふふ……泣いて謝っても遅いのだ。タネリミ君、やってしまえ!」
 タネはかせが号令をかけると、タネリミがさらに激しく輝き始めた。その輝きは周囲を明るく照らし、この猛吹雪の中でもしっかりとした視界を与える。
「ターゲット捕捉。行きます! 65535、65534、65533……」
 タネリミが恐怖のリミットカウントを開始した。
「って、カウント長ぇ! おい、タネリミ。まさかそれ0になるまで待てっていうのか」
「それほどの大技なのです。でもまぁいいです。ぼくも面倒になって来たので……さんにーいちゼロ」
「そんなもんなの!?」
 タネリミのカウントが0になった。
「し、しまった!」
 タネリミが強烈に眩しく発光する。タネリミに強力なエネルギーが集まっていく。あまりのエネルギーに空間が歪んで見え始める。
「一体何が始まるんだ…!」
「眩しくて……何も……見えないッ!」
 耳を打つような高音が鳴り響く。周囲の空気が激しく振動する。
 そして、一瞬だけ周囲が静寂と暗闇に包まれる。
「うぉぉぉおおおおおおおおっ! 『リミットカウント』!!」
 すると――

 タネリミは爆発した。

「ぎゃぁぁぁあああっ! なんて恐ろしいのです~」
「”おまえに”恐ろしいことが起こるのかよ!」
 ささやき、えいしょう、いのり、ねんじろ。タネリミは灰になりました。
「た、タネリミ君! 大変だ、これは蘇生に失敗できないのだ…」
「お、驚かせおって…。私を馬鹿にするなッ!」
 蒼竜が魔法を唱えると吹雪はさらに激しくなった。
「あ……うわぁ!」
 吹雪の強い風に吹き飛ばされたティルは、まるで風に弄ばれるかのように宙を舞い蒼竜のすぐ近くに落ちた。頭から落ちたティルは気を失ってしまった。
「しまった、ティルが!」
「相変わらず他愛のない。今度こそティルは頂いていきますよ」
「ま、待て!」
 ウィザやウィルオンは炎、リクは近場にあった岩を投げつけ、メタメタは体当たりを試みるが、どれも強風に阻まれて届かない。
「ウィルオン! 事情が変わりました。おまえは次の機会まで生かしておいてあげましょう。では、さらばだ」
 蒼竜はティルを鷲掴みにすると、その場を飛び去って行った。

「くそっ……ティルが!」
 膝から崩れ落ちたリクは悔しそうに雪の大地に拳を叩きつける。
「また手も足もでなかった…。なんだよ、魔法って! しかも空まで飛びやがって! 卑怯だぞ…!」
 空に向かって叫ぶ。しかし、既にそこに蒼竜の姿もティルの姿もない。
「”生かしておいてやる”だと。俺はあいつに命を狙われているのか!?」
 ウィルオンは蒼竜の最後の言葉が気になっていた。
 水門の城でもラルガはウィルオンに用があると言っていたが、ウィルオンにはラルガには全く面識がなかった。それなのに、なぜ自分は命を狙われなければならないのか。
「とにかく、何とかしてティルを助け出さないと! あいつ、ティルに何をするかわからないぞ!」
 もしかすると、自分と同様にティルも命が危ないのかもしれないとウィルオンは考えた。もしそうだとすれば一刻を争う事態だ。
「もしそうだとしなくても、このまま指を咥えて見てられるもんか。ウィルオン、俺を乗せて飛んでくれ! あいつを追いかけるぞ!」
「リ、リク。落ち着け! おまえたちだけが行って何になる、無謀だ。相手は強力な魔法を使うんだ。ワシらが正面から向かって行って敵う相手じゃないぞ! とにかく落ち着いて作戦を立てるべきだ」
「落ち着いてなんかいられるか! その間にティルがどうなるかわかったもんじゃない!」
 ウクツがなだめるが、リクは全く聞く耳を持たなかった。
「でも居場所がわからないぞ。さすがに空を飛んで行かれたら、オレも臭いを追うことはできないし……どうするんだ?」
「おれは飛べるけど、どこにいるのかわかんなきゃしょーがねぇよなぁ」
「ふーむ、こんなことならティル君に発信器でも付けておけばよかったのだ」
 今回は水門の城のときのように誘き出されたわけではないので、相手の居場所は全くわからない。
 あのときのように矢文が飛んでくるようなこともなかった。
「ティルの本当の”価値”だって? そんなもん知るか! ティルはティルだ。価値だとかそんなの関係ない。ティルは俺たちにとって大切な存在なんだよ……」
 成すすべもなく途方に暮れてしまう一行。
 タネはかせの言うように発信器でもつけておけばこんなことにはならなかっただろうか。しかし仮にそうだとして、ラルガの襲撃からティルを守ることが果たしてできただろうか。
 さらにティルの居場所がわかったとして、果たしてラルガの手からティルを取り返すことができるのだろうか。
 あの強大な魔力を前にして、リクたちは手も足もでないのだ。
「くそっ…。俺はなんて無力なんだ…」
 悔しさを噛み締めるリク。
 こうしている間にも、ティルは淋しい思いや怖い思いをしているかもしれない。
 助け出さなければ……しかしどうやって。
「あいつは俺の命を狙っているんだろ? だとすれば、あいつはきっとまた襲ってくる。勝てるかどうかじゃない、俺たちは勝たなくちゃならないんだ。もちろん、ティルを救うためにもな」
「そうだとも。ワシらはやらねばならん。だからこそ作戦を考えるのだ。何も正面から戦って勝つ必要はない。今はまず、ティルを助け出すことだけを考えよう」
「そうだよな。こっそりティルを連れだせばいいんだ。おれの腹の中に隠してさっさと逃げる! うん、これでいこう。あとは居場所さえわかればな~」
 仲間たちからは様々な案が出された。
 あれこれ案が飛び交う中、誰かがラルガの気を引き、その隙に他の仲間たちがティルを助け出すのが有効だろうかということで話はまとまりつつあった。
 しかしどんな案が出ようとも相手の居場所を特定できない限り、それは意味のないものだった。
「おい、困ったときのタネはかせ。ティルレーダーでもティルの場所がわかる薬でも何でもいいから、また便利なトンデモアイテムを出せよ」
「いやだなぁ、君たち。いつでもどこでも、なんでもかんでも私に頼ってばかりじゃ大きくなれないよ。私は悲しいのだ。そんな私を便利屋みたいな目で見ているなんて……あーあ。ウィルオン君、私は君をそんな子に育てた覚えはありませんっなのだ」
「そんな風に育てられた覚えもねーよ。できないならできないと素直に言えよ」
「わ、私は天才だぞ。私に不可能はないのだ! い、いつかは必ずできるのだ」
「いつかじゃ遅えよ」
 結局、ティルを助け出す作戦の案は出ても、ティルの居場所を特定する案はでなかった。
 今度こそ途方に暮れてしまう一行。
 すると、そのとき今までずっと黙っていたウィザが静かに呟いた。
「砂……。砂漠? どこまでも広がる砂だ。でもすぐ近くに海も見えてる。これはきっとウィングの南の……ビゲスト大陸?」
「どうしたんだ、ウィザ」
 リシェが聞くと、
「光の魔法だよ。火や雷の魔法に性質が似てるから、ボクにもできるんじゃないかとやってみたんだ」
 と言って、ウィザは再び目を閉じて意識を集中させ始めた。
「なんだ? 砂漠がどうしたって! そこにティルがいるのか!?」
 リクがそれに食い付いた。
 他の仲間たちのウィザを囲むようにして周囲に集まる。
「ティルが今見ている光景を映し出して見ているんだ。ボクの実力じゃ、それを外に映し出すことはできないけど、イメージとして瞼の裏にはぼんやりと見えてる」
「すごいぞ、ウィザ! そんなことができるのか!」
「あくまでボク程度の力じゃぼんやりとしか見えないよ。それに本当にティルが見ている光景がどうかの確証がない。もしかしたら、ティルに似ているだけの別の誰かの光景かも…」
「それでも構わない。今は他に手がないんだ。ウィザの力が頼りだ」
 ウィザを集中させてやろうと、仲間たちはウィザを黙って静かに見守る。
 沈黙に耐え切れなくなってしゃべり出しそうになったメタメタの口に、タネはかせを詰め込んで塞ぎつつさらに見守る。
「……街だ。古い街が見えるよ。誰も住んでないけど、壊れた家が点々と見える。……遺跡かな」
 ウィザが次に見えた光景を口にした。
「砂漠で遺跡か…。ビゲスト砂漠かもしれないと言ったな。だったら心当たりがあるぞ」
 ウクツはそれは『スロヴェスト遺跡』ではないかと説明した。
 スロヴェストとは、砂漠に遺された第2世界の名残。
 大昔にかつて栄えた機械文明の中心地、機械都市マキナの跡地だ。
 かつての都市は失われて久しく、土地は荒れ果てて砂漠になってしまい、今はもう誰も住んでいない。
 機械都市では空を飛び、海を進む船が活躍しており、その中でもとくに大型のものをスロヴェストと呼んでいたらしい。
 別名『鯨』とも呼ばれたその伝説の船の名を取って、かつての機械都市の遺跡はスロヴェスト遺跡と呼ばれているそうだ。
「知ってるのだ。アットロー君のもとになった伝説だね。その話をもとに私はあれを開発したのだよ」
「空飛ぶ魚の船……本当だったのか。タネはかせの言うことだから、どうせただの妄想だと思ってた」
「違うぞウィルオン。鯨は魚じゃねぇ、鯨は泳ぐ肉だぞ」
 機械都市の跡地には今でも数多くの当時の遺品が埋もれているという。もしかするとサボテンの形をした機械や、謎の漆黒球体も埋もれているかもしれない。
 ティルがそんなところに何の関係があるのかはわからないが、ウィザによってもたらされた情報から考えると、ティルはそこに捕らえられている可能性が高かった。
「どうしてそんな場所なんかに…。ティルは機械文明に関係があるの?」
「それはわからない。けど、場所がわかったなら助けに行かない手はないだろ? 行こう、その砂漠の遺跡に!」
 タネはかせが待ってましたと言わんばかりに、どこからともなくアットロー号を取り出した。
 例によって山のど真ん中で取り出したので全く役に立たない。
「もちろん急ぐよね。ここはボクに任せて」
 ウィザは風の魔法で、さっき見た映像の場所にみんなを送り込めるのだという。
「それってワープか!?」
 メタメタが目を輝かせながら聞いた。
「ワープは光の転移魔法の一種だよ。でもボクはまだそんなすごい魔法は使えないから……風でなんとか代用してみる!」
「なんだ。それってつまり風で飛ばすってことか?」
「飛んで行くより速いし、少なくともタネはかせよりは安全だと思うよ」
「む、失礼なのだ…」
 ウィザが魔法を唱えると、目の前に空気の渦でできた球体が現れた。
 球体からはどこかへ向かって弧を描くように風が吹き流れている。おそらく、ティルのもとへと続いているのだろう。
「これでティルのところへ行けるんだな」
「たぶんね」
「よし…。待ってろよ、ティル。今すぐ助けに行ってやるからな!」
 そう言うとリクは一番に、風の流れに飛び込んで行った。
 メタメタ、ウィルオン、タネはかせがそれに続く。
「こ、これ大丈夫なのか? 途中で落ちたりしない?」
 そして恐る恐るリシェが後に続く。
「魔法……か。ワシは科学を信仰する身だ。だから魔法のことはよくわからないが、あの蒼竜に対抗するにはウィザ、おまえの魔法が頼りだ。目には目をと言ったところだな。ワシはあまりリクの力になってやれないかもしれん。おまえの力でどうかリクを、そしてティルを助けてやってくれ」
 残るウクツがウィザに言った。
「ボクが頼り……か! わかった、できるだけのことはやってみるよ」
「期待しているぞ。ワシはこの通りもうトシだ。若い者には敵わない。助言ぐらいしかできないが、ワシもできるだけのことはやろう」
 ウィザとウクツ互いに面と向かって頷き合った。
「時にウィザよ。これは風で目的の場所に飛んでいくと言うが、着地はどうすればいいんだ?」
「あっ……。だ、大丈夫だよ! 下は砂漠だし、いざとなったら飛べば……あ、ウクツは飛べないんだった。ボクが最初に行って、着地をサポートするべきだったかな。急いで行かなきゃ!」
 慌ててウィザが風に飛び込んだ。
「やはり無謀だ……」
 最後にウクツが風に飛び込む。

 こうして一行は、ティルを助けるためにビゲスト大陸へ。
 かつての機械都市マキナ、スロヴェスト遺跡へと飛び出していったのだった。
 誰もいなくなった後、風の球体は静かに消えた。


Chapter9 END

竜の涙10
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