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  • 大いなる意志4B

大いなる意志4B

最終更新:2013年07月19日 04:52

jelly

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第四章B「研究資料の護衛(シルマ編)」


 各地に派遣された各調査団チームはそれぞれ、調査したグメーシス亜種の情報、そして一部の成功したチームは捕獲した亜種の研究サンプルをアルバールの研究本部へと持ち帰った。しかしその結果、この機関には十分な設備が不足していることがわかった。
 そこで本部は外部の研究所に協力を要請することを提案した。マキナやヴェルスタンドの本国には大陸最先端の技術がある。その力を借りれば、この未知なるグメーシスの亜種についての研究が進められるだろうと考えたのだ。
 アルバールに戻って待機していた調査団たちは命じられる。
「マキナのベイクーロ研究所へ研究資料を護送してほしい」
 この任務に指名されたのは調査団のシルマたちのチームだった。先の調査実績や諸々の理由から、彼らがこの任務に最適だと判断されたのだ。
「護送なら亜種と戦闘になる可能性は高くないダろうし、それならおまえたちに任せても大丈夫そうダな…」
「えっ、僕たちに任せるって……?」
 アルバールに帰還してからゲンダーはずっと自分の身体のことについて悩んでいた。
 今やゲンダーは損傷が激しくひどく劣化し、必殺技の汁千本はおろか、満足に走ることもできない。イザールに助けられて事無きを得たが、トメーシスとの戦いでは活躍を見せるどころか、劣化が原因で仲間の足を引っ張ってしまった。
 もし自分が十分に動けたら犠牲になったフィーティン兵やヘルマー中将も救えたかもしれないが、後悔してももう遅いことだ。
「すまないが、オレはここに残る。これ以上はおまえたちの足手まといになってしまうからな…」
 前線に立つ以外にもゲンダーにできることはある。ガイストやメイヴを失った今、精神体について詳しいのは彼だけだ。その知識を活かせば、うまく動けなくても本部の研究をサポートするぐらいのことはできる。
 そう申し出たゲンダーに対して、調査団に任務を伝えに来た男は言った。
「それはちょうど良かった。実はヘルツ殿から英雄様をお連れするようにと託っております。なんでも確認したいことがあるのだとかで…」
「そうなのか? 了解ダ。じゃあ、オレはそっちに向かわせてもらうよ」
 ギシギシと音を立てながらゲンダーは頷いた。
「そういうわけダ。おまえたち、オレがいなくてもしっかりやってこいよ」
「ゲンダー様…。わたしたちの実力を見込んでくださっているのですよね。だとしたら、応えないわけにはいきませんわ。わかりました。ここからはわたしたちに任せてください。それから……こういう場に相応しい言葉かはわかりませんが、どうかお大事に」
「すまんな。そして、ありがとう。オレはおまえたちを信じてる。ダからおまえたちも自分自身を信じてくれ。自信を持つんダ」
 エラキスは暴走しがちだが機械操縦には長けている。イザールは変なやつだが仲間の危機には勇気を奮い立たせることができる。シルマはお嬢様育ちなのか文句は多いが祖国を想う熱意は誰にも負けない。
(あいつらならきっと大丈夫。少なくとも満足に動けない自分に比べたらずっと活躍できるはずダ…)
 ゲンダーの身体を気遣いながらもシルマたちは護送任務に向けて出発していった。そんな彼女たちを見送ると、ゲンダーは大切な話があるというヘルツのもとへ、身体を軋ませながら向かうのだった。


 アルバール公会議場の裏手。大樹の幹、そのすぐ麓。
 ヘルツに呼ばれた英雄ゲンダーは、待ち合わせに指定されたその場所で彼と合流した。
「すまんな、遅くなっちまって。荒野の砂塵にやられたのか、帰って来てから思うように歩けないんダ」
 到着した頃にはすでにヘルツはそこで待っていた。こちらに背を向けて、相変わらずぼんやりと空を眺めている。
 声に気付いておもむろに振り返ったヘルツは、周囲に誰もいないことを確認すると落ち着いた様子で言った。
「かまわん。俺だって膝を悪くしてしまって、昔ほどは元気に走ったりもできないし、お互い様だ。老いは避けられないからな…」
「”俺”……? 今日は”私”じゃないんダな。それで、オレに用っていうのは?」
「ああ。大統領としてじゃなく、俺個人として聞きたいことがあってな」
 ともに英雄として知られるゲンダーとヘルツ。二人は20数年前のHiveMindで協力し合った仲間でもあり、友でもあった。
 今はヴェルスタンドの大統領ではなく、友として問う。
「おまえは、『英雄』と呼ばれることをどう思っている?」
 精神体を発明し、その暴走を自らの命を賭けて食い止めた英雄ガイスト。
 非情に高い演算能力を有し、数々の活躍を見せてきた機械、英雄メイヴ。
 彼らはたしかに英雄と呼ぶに相応しい能力を持っているだろう。ガイストがいなければ、精神体の暴走は食い止められなかっただろうし、メイヴがいなければ乗り越えられなかった壁はたくさんあったはずだ。
 何より彼らは、大陸の平和と引き換えにこの世から去ることになってしまった。英雄と呼ばれるのは当然だ。
 しかし、ヘルツ自身は彼らに比べて自分は大きな活躍をしたわけではなかったと考えている。
 人々は英雄としてヘルツを称賛し、ヴェルスタンドの大統領へと推薦した。それはもちろん、名誉なことではあるのだが、ヘルツにとってその事実は、そして英雄の称号はただ手放しで喜べるものではなかった。
 彼には重かったのだ、その英雄という肩書が。
 ヘルツは言った。ヴェルスタンド国民はたしかに自分に期待してくれている。しかし、自分には本当はそんな実力はないと。
「俺はガイストやメイヴ、そしておまえのように特別に優れた能力を持っているわけじゃない。おまけで英雄の一人に入れてもらっているような感じがしている。俺は期待されてるほど役に立てる男ではないんだ」
 国民は彼に期待を寄せ、その期待にそぐわなければ文句ばかり。自分たちは何もしようとしないくせに。そう腹を立てたことも少なくはなかった。
 だがヘルツ自身がよくわかっていた。文句を言う国民にいら立っているのではない。本当は不甲斐ない自分に腹が立っているのだということを。
 大統領として選ばれた以上、そしてその道を受け入れた以上は、国民の期待に沿えるように努めるのが彼の役目。称賛されたいから大統領になったわけではない。自分がヴェルスタンドという国を良くしてみせるという情熱がかつての彼にはあった。祖国のことを想ってその役目を引き受けたはずだった。
 しかし、現状はとても厳しい。グメーシス亜種の発生に伴って、ヴェルスタンドの信用は簡単に失われてしまった。
 これまでに自分がやってきた政治、外交はなんだったのか。自分は大統領としては力不足なのか。ヘルツは思い悩んだ挙句、ついには自信を喪失してしまったのだ。
「とても公の場じゃ口にできないことだが、俺は大統領失格だ。国の為にまるで役に立てていないのだからな…」
 そう言ってヘルツは深いため息を吐いた。
 すると、それまで黙って話を聞いていたゲンダーも並んでため息を吐く。
「そうか…。その気持ち、オレにもわかる気がするな。大統領のほうじゃないぞ。力が足りないって意味でダ」
「おまえでもそう思うことがあるのか?」
「見ての通り、オレはもうポンコツダからな。トメーシスとの戦いでも仲間の足を引っ張っちまった……。これじゃ足手まといダと思って、調査団の同行は自分から辞退させてもらった」
 ゲンダーもまた己の力不足に悩んでいる。そういう意味では二人の悩みは共通していた。
 それを聞いて、ヘルツはほっとしたような哀しいような複雑な表情になった。
「なるほど、そうだったか。……いや、実はな。おまえに話があるというのは半分嘘だ。呼び出したのは、おまえを引き止める口実みたいなものだったんだ。自分から残ってくれるとは思ってなかったからな」
「オレを引き止めるため?」
「ああ。ガイストがいないから仕方なくとはいえ、半ば無理やりおまえを今回の一件に巻き込んでしまった。英雄を理由におまえを利用してしまってるような気分になって申し訳ないと思ったんだ。それに今のおまえの状態を考えれば、あまり無理はさせられんだろう」
「利用? それは考えたことなかったな。オレは自分の意思で協力してるまでダ。もしガイストが生きてたらこうしてたダろう、と思ってな。オレの身体を心配してくれるのは嬉しいけど、オレとしては本当はもっと最前線に立ちたかったよ。でも今のオレにはそれは難しいみたいダ……」
「ゲンダー…」
 そこで会話は途切れた。
 沈黙のままに空を見上げる。と、快晴の青空が視界一杯に広がる。
 空はこんなにも青いのに。彼らの心はどんよりと曇って晴れない。
 大統領として自分は無能なのか。壊れた機械は役に立てないのか。
 二人して己の無力さを悔む。そして同時に大きなため息を吐いた。
(今の自分は役に立てないのだろうか……)


 一方、アルバールを発った調査団一行は、エラキスの運転する装甲車でマキナへと向かっていた。
 護送する資料の中には捕獲したグメーシス亜種も含まれる。あるいはそれに反応した他の亜種たちが近寄ってくる可能性もあった。
 どこを通っても亜種に遭遇する可能性はなくならない。そこで彼らは安全性を優先して、報告されている亜種のうち比較的危険性の低い亜種ホルメーシスの出現が確認されているヴェルスタンドを通ってマキナを目指すことにした。
 装甲車は大樹から北上、国境を超えてヴェルスタンドの研究所帯ヒュフテを経由して東、マキナ領内へと進む。
 広がる草原を抜けて国境を越えればそこはもうヴェルスタンド領内。これまでの景色とは一変して、周囲にはドームと呼ばれる研究施設がいくつも並ぶ。
 そんな円形のコンクリートの谷間を縫って、エラキスは東方へとハンドルを切るのだった。
 このヒュフテには研究関連の建物しか存在しない。ヴェルスタンドの一般人は、首都のゲーヒルンや港街ゲズィヒトに多く居を構えている。あるいは大農園バオホ、西部海岸沿いの山脈に隔たれた都市リュッケン。その他小さな村落にも少数のヴェルスタンド人が暮らしている。
 研究所帯を進んでいくと、左手には天を突くように伸びるツインタワーが目に飛び込んできた。
 その立派な塔にイザールが深いため息を吐く。
「はあぁ、あれはすごいものだね。なんというか芸術的だよ。ヴェルスタンドにあんなに美しいものがあったなんて…!」
「美しい? おまえの言う美しいは基準がいまいちわかんねーや」
「可哀そうに。芸術的センスがわからないなんて、君は人生の半分を損しているよ」
「Not make sense...」
 わけがわからないといった表情でエラキスは肩をすくめた。
 そんな二人とはまた違った思いで、シルマはそのヴェルスタンドを象徴する巨大なタワーを眺めていた。
(あれはわたしの決意の象徴でもある。わたしはあのタワーに誓ったのだから……必ず祖国の為に役立ってみせると!)


 シルマはここゲーヒルンのとある名家に生まれ、何一つ不自由のない少女時代を送っていたが、それは永遠には続かなかった。
 20数年前の出来事。精神体が暴走し、ヴェルスタンドが壊滅的被害を受けたHiveMindと呼ばれる事件。
 英雄ガイストの活躍で精神体の暴走は食い止められたが、それから後の数年間、ヴェルスタンドは不遇の時代を迎えることになる。
 首都ゲーヒルンは精神体との戦いで主戦場にもなった場所。多くの人間が犠牲になり、象徴的なあのタワーを含めた数多くの建造物が倒壊した。
 シルマは辛うじて精神体の暴走を生き延びていたが、名家として名高かった彼女の住む屋敷も崩れ落ちてしまい、また精神体に襲われたことで彼女は両親を失ってしまった。まだ彼女が10歳にも満たなかった頃の出来事である。
 彼女のもとに残った家族と呼べるものは、召使いとして仕えていた女ただ一人。しかし、彼女もまた精神体の襲撃によってひどい傷を負っていた。
 召使いは幼いシルマを庇いながらなんとかゲーヒルンを脱出し、首都から西にある大農園バオホへと避難することができた。
 当時バオホには、彼女らと同様に首都やゲズィヒトなどから避難してきた多くのヴェルスタンド人が集まっており、互いに身を寄せ合いながら避難生活を送っていた。幸いなことに、大農園が精神体の襲撃を受けることはなかった。
「お嬢様…。私はここまでです……この傷ではもう助かりません。ですがお嬢様だけは……生きてください。旦那様や奥様のためにも……どうか、生きて…」
 召使いはシルマをバオホまで送り届けると、人々が集まっている避難所まで辿り着くことなく息絶えてしまった。
 倒れた唯一残った親しい人を目の前に、幼いシルマにはそれをどうすることもできなかった。
 ただただ「死なないで…目を開けてよ……」と、涙を流しながら彼女の身体を揺さぶるだけ。後に泣き疲れて眠ってしまったシルマは、新たに避難してきたヴェルスタンド人に保護されて避難所へと移されることになった。
(あのとき、わたしがすぐに人を呼びに行っていれば彼女は助かったかもしれない。それなのにわたしは……)
 それから数年。シルマはバオホの避難所で、避難民たちと協力しながらも辛い日々を送っていた。
 今でもあの召使いの最期を夢に見る。助けられた命かもしれないのに、と深い後悔の念が胸に突き刺さる。
 救国の英雄たちの活躍で大樹大陸は精神体の暴走から救われた。大きな被害を受けなかったマキナやフィーティンはすぐに平和な日常へと戻っていたが、ヴェルスタンドはそうはいかなかった。
 一度は三国互いに協力し合い大陸の危機を切り抜けた彼らであったが、いざ平和になってみるとその関係は脆くも崩れ去った。
 精神体はヴェルスタンドが管理していたもの。今回の事件の責任はヴェルスタンドにあるとして、マキナやフィーティンはヴェルスタンドの復興に一切援助の手を差し向けなかった。
 HiveMindの少し前に当時のヴェルスタンド大統領が精神体を利用した兵器でマキナへ侵攻した件のせいもあったのだろう。ヴェルスタンドの信用は完全に失われ、責任を問われた政府はとても対応し切れずに破綻。また経済は崩壊し、貨幣は紙切れ同然と化す。ヴェルスタンドという国そのものが崩壊の危機にあった。
 そのため、ヴェルスタンドは生き残った人々の力だけで国を立て直す必要に迫られた。
 バオホの避難所からもほとんどの男性が駆り出され、残された女性や子ども、老人だけでの苦しい生活を余儀なくされていた。
 料理が得意な者は人数分の食事を用意し、医学の心得がある者は避難民たちの健康管理。それぞれが自分のできることを活かして力を合わせながら、なんとか日々の生活を送っていた。
 十代前半を迎えていたシルマは、言わば子どもと大人の境目の時期。ただ黙って世話をされるだけではなく、自分もみんなの役に立ちたい、助けたいと考えるようになっていた。
 だが箱入り娘のお嬢様として育ったシルマは世の中をまるで知らない。
 料理はできないし、当然医療の知識なんてあるわけがない。せめて簡単な手伝いができればよかったのだが、大抵のことはすべて召使いにやってもらっていたため、何をすればいいのかがまるでわからなかった。
 シルマには何もできることがなかった。彼女が誇れたのはただ家の財力だけ。それを失った今、彼女には何も力がなかった。
 忙しそうに走り回る大人たちの背中をただ指を咥えながら眺めるだけ。シルマはそんな自分が情けなくて悔しかった。
(お金さえあれば、着るものも食べるものもなんでも買える。安心や健康だって買える。ここにいるみんなを助けてあげることだってできる。お金さえあればなんだってできたのに……でも、わたしには何もできないの……?)
 そうだ――お金さえあれば。
 そこでシルマはこっそり避難所を抜けだして、廃墟と化したゲーヒルンへと戻ることにした。あそこにならば、みんなを救えるものがまだ残っているかもしれない。
 瓦礫の山になったかつての自分の家の前に立った。変わり果ててしまった景色に強い悲しみを覚えたが、今は泣いている暇なんかない。
 シルマは瓦礫をかき分けて、なんとか破けていない貨幣や換金できそうなものを掘り出そうとした。
 服が汚れたって、爪が割れたってかまわない。自分がこれを持ち帰りさえすれば、みんな助かるんだと信じて掘り続ける。
 そんな彼女の姿に気がついて、首都の復旧作業として瓦礫を片付けていた男たちが注意する。
「おい、お嬢ちゃん。子どもがこんなところにいたら危ないぞ! 親はどうしたんだ。はぐれたのか?」
 それでも聞かないシルマは、男たちに無理やり瓦礫の山から引き離されてしまう。
「やめてよ! はなして! わたしはみんなを助けたくて……!!」
 涙ながらに事情を説明するが、男たちはそれを認めずに彼女をこの場から遠ざけようとする。
「いいかい、お嬢ちゃん…。ヴェルスタンドの経済はもう破綻してしまった。お金なんかもっていても意味がない。モノにだって価値はほとんどない。今必要とされてるのは食糧か資材ぐらいのもんだ。マキナやフィーティンから信用を失った以上、外貨に頼ることもできない。そんなことをしても、何の役にも立たないんだよ…」
 幼いシルマには彼の話は難しくてよくわからなかったが、ただ自分のやっていることは意味がないということだけは理解できた。そして、まるで自分が何の役にも立たないと言われているかのような錯覚に陥った。
(わたしは役に立たないの…? 一体どうしたらいいの…)
 気を落としながら、あふれる涙をぬぐいなら、一人とぼとぼとバオホの避難所へと歩いて帰る。
 彼女が避難所へと戻ると、避難所の仲間たちが彼女の身を案じていて、その無事を喜んでくれた。
 シルマの身体にはあちこちに擦り傷ができていたが、一人の女性がシルマの傷の手当てをしてくれながら声をかける。
「勝手にいなくなっちゃ駄目じゃない! 心配してたのよ」
「ごめんなさい。でも、わたし……」
 みんなの力になりたくて。そう言いたかったが、悲しさと悔しさに声が詰まってうまく言うことができない。
「もういいわ。よかった、シルマちゃんが無事で…。はい、これで怪我はもう大丈夫ね。身体が冷えたでしょう。さぁ、これを飲みなさい」
 言って、温かいスープを手渡してくれる。シルマは黙ってそれを口にした。
 しばらくして、ようやく落ち着いて来たシルマは彼女に訊いた。
「わたしは何もできないのに…。みんな助け合ってがんばってて、わたしだけ何もしてあげられてないのに……どうして、そこまでわたしのことを心配してくれるの? どうしてわたしを助けてくれるの?」
 すると、スープを渡してくれた女性は笑ってこう答えた。
「当たり前じゃない。困った時はお互い様、私はお礼が欲しくて助けてるわけじゃないもの」
「でも、わたしは何も…」
「そんなことない。シルマちゃんを見ているとみんな元気がもらえるの。あなたが何かしようと頑張ってくれていることはみんな知ってるわ。そんなあなたを見て、私たちも頑張らないとって元気が湧いてくるのよ」
 結果として役に立ったかどうかではなく、その気持ちが嬉しいのだと女性は語った。
 大切なのは行動する意思。みんなのために何かしてあげたいという意志なのだと。
(ヴェルスタンドはなんていい国なんだろう。マキナやフィーティンの人は悪い国だっていうけど、わたしは知ってる。ヴェルスタンドの人はみんないい人。そんなヴェルスタンドのためにわたしも何か役に立ちたい)
 シルマはヴェルスタンドの人々の温かさを知った。祖国の温かさを知った。
 彼女が祖国を誰よりも大切に思うようになったのはこの頃からだ。祖国を馬鹿にされると人が変わったように怒る一面がシルマにはあるが、それは彼女がこのヴェルスタンドの人々の精神を大切に思っているからだ。国とは人である。
 こうした経緯があって、シルマは祖国に貢献したいという思いをますます強めていった。
 それからさらに数年の月日が流れる。
 HiveMindの英雄として知られていたヘルツを大統領としてヴェルスタンド政府は再建され、廃墟と化していた首都も順調に復興を進め、ついに国を象徴するツインタワーも建て直された。
 それを記念してゲーヒルンでは盛大なセレモニーが開かれる。
 人々はヴェルスタンドの復興を祝い、今後の更なる発展を願い、タワーには黙祷が捧げられる。
 また大統領ヘルツもこの式典に出席。ヴェルスタンド軍が式典の警備にあたっていたが、その警備隊の中にはシルマの姿があった。
 家も家族も失ったシルマには帰るところがなかった。そんな彼女は、避難所でともに過ごした仲間に誘われてヴェルスタンド軍に入隊していた。彼女にスープをふるまってくれたあの女性はヴェルスタンド軍の兵士、衛生兵だったのだ。
(今のわたしには強い力もないし、もうお金もない。こんなわたしでも祖国の為にできることは……)
 シルマは彼女の言葉を今でもしっかりと心に刻んでいる。
(大切なのは行動する意思。みんなのために何かしてあげたいという意志。その気持ちが……心が大切なんだ。今は力が及ばなくてもいい。大した貢献ができなくてもいい。でもいつか……いつか必ず祖国の為に役立ってみせる!)
 そして黙祷の号令。シルマはタワーに己の意志を誓った。


 タワーが視界の後方へと流れていく。
 装甲車はヒュフテを抜けてマキナ領内へと入っていた。舗装された道路から乾いた砂地へと道は変わり、ジャリジャリと音を立てながら車が進んでいく。マキナの機械都市まではもうすぐだ。
 男たち二人はマキナの飛行艇のほうが速い、フィーティンの戦車のほうがかっこいいというような、くだらない意地の張り合いで賑やかな様子だ。
 そんな彼らをよそに、わたしは窓の外のタワーを見えなくなるまで見送っていた。
 そして静かに目を閉じて、祈り、誓う。
 たしかにわたしは世間知らずかもしれない。荒っぽいのは賛成できないけどエラキスのように運転はできないし、彼の前ではつい見栄を張ってしまっているけど本当はイザールのような財力もない。わたしには大したことはできないかもしれない。
 でも、それでもいい。動き続けたい。この任務が少しでも祖国への貢献になるのなら、わたしは――


第四章B 了

大いなる意志5
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